プロローグ
こちらの投稿は超鈍行となります。
プロローグ
“20年前”
「・・何で・・何でよ!・・ねぇ!アン、これは何なの!?二人は何でこれを置いて行ったの!?・・・ヤダよ・・・」
取り乱し、泣き崩れる女性の目の前には
二本の“刀”が並べて置かれていた。
俺はその女性の肩にそっと手を置き
やさしく語り掛けた。
「・・ソロル・・・今思えばナトスもミノアもこうなる事を言及していた・・・その涙は・・・わかっているんだろう?・・・」
「・・・うぅぅ・・・」
泣き崩れる女性の名前はソロル・ノウビシウム。
彼女もわかっていた“二人”の行動の意味を、
この“刀”は二人の“形見”なのだと。
今は閉ざされているあのゲートに入った二人は
もう戻ってこない。
「・・・そんな運命・・・受け入れてたの?・・・」
ソロルが二人に対して言った言葉・・・
その答えは返ってこない。
そして目的を終えたゲートが消失していく。
俺は自身の持つ技能でソロルを見ていた。
ソロルが覚醒していた“異界万象”の力。
ゲートを召喚したその力が
ステータスから消えていくのを。
「(・・ソトリ・・・?)」
“16年前”
歴神328年4月10日、
この日俺とソロルの間に子供が生まれた。
しかもそれは・・・
「ふぉっふぉっふぉ、何たる太々しい目つきじゃ、これは大物になるのぉ」
「ちょっとおじいちゃん、変な言い方しないで!」
ソロルの祖父、シェンター・ノウビシウムが
子供の顔を見ながら言うと、
ソロルが突っ込みを入れた。
「ちょっ父さん、僕にも見せてください!」
そう言いながら割って入って来たのは
ソロルの父、リテータ・ノウビシウム。
リテータ殿は子供の顔を見ながら嬉しそうに言った。
「この悟りを開いたかの如き気だるそうな笑顔!・・・間違いない、弟の方は良い研究者になれる」
「お父さん!孫の将来を勝手に決めないで!意味も分かんないし」
そう、俺とソロルの子供は双子だった。
双子の兄弟。
「ハッハッハ!いやーしかしめでたい!アンプレス、君のギルドもBランクになったと聞いている、これから益々頑張らんとな!」
「はい!お義父さん」
俺がリテータ殿に返事をすると、
ソロルがおもむろに話し出した。
「・・ねぇアン、お願いしたい事があるの・・・この子たちの名前の事で・・・」
俺は直ぐにピンと来た。
ソロルが何を言いたいのか。
「ソロル、実は俺もだ、双子の“兄弟”と聞いてすぐに思いついたことがある・・」
「アン!」
ソロルが明るく笑う。
「ふぉっふぉっふぉ、えぇと思うぞ」
「・・良い名だと俺も思う」
シェンター殿もリテータ殿も、
気付いたようにそれを肯定した。
命名
兄“ナトス・ノウビシウム”
弟“ミノア・ノウビシウム”
“そして現在”
~民間A型ギルド「アルフィーン」
「行ってきまー」
「母さん、行ってくるねー」
ナトスとミノアが学校へ行くため自宅から出ていく。
それを慌ててソロルが引き留めようとした。
「ちょっとー!二人とも!お弁当はー!?」
ナトスは手だけ降りながら言った。
「昨日、今日は半日だって言ったよー」
ミノアが振り返り手を振りながら補足した。
「帰ってから食べるよ!置いといてー」
去っていく二人を見送るソロルに
俺は話しかけた。
「ナトスの言葉をミノアが補足する感じ・・・二人を思い出すな・・・」
「ふふふ、確かに♪生まれ変わりだったりして♪」
嬉しそうに笑うソロルを見て俺も嬉しくなり、
去っていく二人の後姿を見送った。
そして俺は知っていた。
俺の持つ技能“真鑑定・極”で見えていた、
ナトスとミノアが持つ三段目の“ある項目”・・・
そして異常なまでに高い“魂魄強度”が・・・。