モノローグ ~はじまりの白~
『雪か…』
ふわりふわりと舞い散る雪は徐々にその質量を増し、硬い白銀の鱗に着地しては水跡だけを残していく。
ひっそりと、まるで存在した証を残すかのように。
(もうじき、この熱も消え果てる。雪に看取られて逝くのも悪くない)
切り裂かれた大地。傾斜した山の地面は削られ滑り落ち、多くの木々は炭と化している。
事象を見ればもはや天災。しかしこの現状は、我々がもたらした結末だ。
元々水も多く緑豊かなこの土地は日々太陽の光を蓄えて温かく、多くの生き物が好み住まう場所だった。
このように、冷たい雪が吹き荒れるような場所では無かったのだ。
(……すべて滅びた。やはりこの血は、災いの元凶か)
雪で視界を遮られているものの、命尽き果てた同族の気配を感じられる。
最強と謳われたこの血を、始祖である私自身の手で絶やすことになろうとは。
頭の中で永い記憶の回想が始まっていく。
何倍速ものスピードで進む回想は、時に時間を切り取って、一枚の絵のような情景を写しだす。
霞みゆく視界、ゆるやかに消えようとする命の灯。
(永い生の中でただ一つ、成しえなかったこととすれば……)
「……ッ!」
目の前で、息を吞む音が聞こえた。
時間の経過とともに重くなる瞼をゆっくりと持ち上げて、対象と視線を合わせる。
(私が吹雪のベールと同化していたせいか、ここまで近づかねば気づけなかったか)
「あっ、あの、どうか……!」
その手に抱えているものを見た瞬間、頭の中で進んでいた回想は一時停止をかける。
薄れゆく意識の中で、私は一つの可能性を見つけたのだ。