4話 ちょっとした『ざまぁ』
冒険者ギルドにて――
「おい、ありゃどういうことだ?」
「剣聖姫――コレットさんが追放魔術師にべったりくっついてる……だと!?」
冒険者ギルドへと戻ってきたイオリとコレットを見て、周囲の冒険者たちがざわめいている。
剣聖姫などと呼ばれているあたり、コレットはこのギルドで有名、それに男たちのアイドル的存在だったようだ。
であれば男の冒険者たちがざわめくのも仕方あるまい、なんせ、勇者パーティを追放されたことを嘲笑されていたイオリが、そんなコレットに腕を絡められてギルドに入ってきたのだから。どいうわけか、コレットは迷宮を出てもイオリを離してくれないのである。
周りの冒険者の視線を浴び、居心地が悪い思いをしながらもイオリは受付へと向かう。
「えっと、どういう状況なのでしょうか……?」
コレットに甘えたように密着されるイオリを見て、受付嬢がキョトンとした表情で聞いてくる。
「ぼくにもよくわかってないのですが、とりあえず報告がありまして」
「報告ですか?」
「はい、迷宮の一層目にドレイクが出現しました」
「い、一層目にドレイクが!?」
イオリの報告を聞き、受付嬢が素っ頓狂な声を上げる。
周囲の冒険者も……
「ドレイクが一層目に出現しただと!?」
「ドレイクっつったらAランクのドラゴン族モンスターじゃねぇか!」
……などと、騒然としている。
(まぁ、そんな反応にもなるよね……)
そう思いつつも、イオリが話を先に進めようとした……そんなタイミングであった――
「おいおい、嘘つくんじゃねーよ、イオリ!」
――イオリたちの後ろから、そんな声が聞こえてきた。
振り返ると、そこにはアレク率いる勇者パーティの三人が立っていた。
「あなたなんかがAランクモンスターと遭遇して生きてるわけがないじゃない」
「イオリくんってば、パーティを追放されておかしくなっちゃったのかな〜?」
アレクに続き、レイネとルナまでそんな言葉で煽ってくる。
「受付嬢さん、ここにモンスターの素材を出してもいいですか?」
イオリはアレクたちを無視して受付嬢にそんな質問をする。
コレットはイオリをバカにされたせいかアレクたちを睨んでいるが、イオリは受付嬢からO Kをもらうと、「《黒次元ノ黒匣》――」と呟き、次元の狭間からドレイクの首を取り出した。
「こ、これは確かにドレイクです!」
ドレイクの首を見て、興奮した声を上げる受付嬢。
そんな彼女の反応に、アレクたちが「な……!?」と声を漏らす。
「イオリさんはすごかったんですよ! ドレイクに襲われてピンチになってたわたしを守るために、黒い炎の魔法を使って一撃でドレイクを倒しちゃったんです!」
「ド、ドレイクを一撃で!? し、信じがたいですが、こうしてドレイクの死体もありますし、何よりコレットさんが証言するのであれば本当、なのでしょうね……」
戸惑った表情を浮かべながらも、受付嬢はイオリの言葉を信じることにしたようだ。
状況的証拠もあるし、何よりAランク冒険者のコレットの言葉が大きかったようである。
「ふ、ふざけるな! お前みたいな役立たずがドレイクを倒せるはずがないだろ!!」
話は終わり……と思われた矢先に、アレクが凄まじい剣幕でイオリに迫ってくる。
どうしたものかと、イオリは考える……のだが――
「ちょっと! アレク、それ以上はまずいわ」
「周りを見て!」
――そんな言葉とともに、レイネとルナがアレクを制止しようとする。
周りを見れば、冒険者たちが……
「おいおい、なんだアイツ?」
「魔術師さんをパーティから追放したのに、活躍したもんだから嫉妬してるのか?」
「もしかしたら、イオリさんの強さに嫉妬して、勇者は彼を追放したんじゃねーか?」
……などとざわめいている。
「く……!?」
冒険者たちの反応に、苦しげな声を漏らすアレク。
このままでは外聞的にマズいと悟ったのか、小声でイオリに「(覚えておけよ……!)」と言い残すと、レイネとルナを連れてギルドを去ろうとする。
「なんか、勇者様って小者なんですね……」
何気なくコレットがそんな風に呟くと、周りの冒険者たちが「「「ブッッ!!」」」と、思わず吹き出した。
「くそ……ッッ!!」
最後に悪態を吐いて、アレクたちは逃げるようにギルドを去っていく。
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