14話 うわぁ! おねショタだぁ!
「さて、それじゃあ今日のところは解散しましょう」
ギルドを出たところで、イオリが言う。
この後はティアもいることだし、今よりもいい宿屋を確保するつもりだ。
「それでしたら、わたしが泊まっている宿屋はいかがでしょう? 少々値は張りますが、綺麗で防犯も信頼できる宿屋です!」
「なるほど、そういうことなら……」
コレットの提案に、イオリは彼女の泊まる宿屋へと案内してもらうことにする。
◆
宿屋街の方へと歩いていくと、なかなかに大きく、三階建て綺麗な外観の宿屋が見えてきた。
中に入ると綺麗なエントランスが広がっており、すぐに係の女性が笑顔でイオリたちの方へと寄ってくる。
「わたしの冒険者仲間の方たちです。部屋は空いていますか?」
「もちろんです、コレット様。こちらへどうぞ」
コレットの質問にそう答えながら、係りの彼女は受付へと案内する。
「お部屋の方はふた部屋でよろしいでしょうか?」
係の者が帳簿を開きながら、イオリに尋ねてくる。
はい、お願いします。とイオリは答えようとした……のだが――
「部屋は一つでお願いします!」
横にいたティアがそんなことを言い出す。
「あの、ティアさん?」
このサキュバス娘は何を言っているのだろか、とイオリがティアに視線を向ける。
そんなイオリに、ティアは――
「イオリ様、実はあなた様に隷属したことにより、私はイオリ様より一定の距離から離れられなくなっているのです。もう少し隷属魔法が体に馴染めば大丈夫なのですが……」
と、申し訳なさそうな表情で告げる。
(まさか隷属魔法にそんな制限があったなんて、予想外だな……)
困った顔を浮かべながら思うイオリ。
魔王ベヒーモスの記憶を完全に思い出せたわけではないので、イオリが把握していない効果があっても不思議ではないのだ。
「それじゃあ、彼女の言うとおり一部屋でお願いします」
「かしこまりました」
係りの彼女は、少々顔を赤面しながらイオリに答える。
若い男女が同じ部屋に泊まると聞き、少々アレな想像でもしてしまったのだろう。
「ふふっ……♡」
部屋の確保に成功したところで、ティアがほくそ笑みながら、舌舐めずりをする。
係りの彼女とやり取りを交わしているイオリはそれに気づかない。
と、ここで――
「ちょっと待ってください! それなら私も一緒の部屋にしてください!」
イオリたちの間に、そんな声とともにコレットが割って入る。
「コ、コレットさん? いったい何を……」
「イオリ様、よく考えてください! ティアはサキュバスクイーンですよ? 隷属魔法の支配下にあるとはいえ、必ずしも安全とは言えません!」
困惑した表情のイオリに、そんなこと言うコレット。
それを聞いたイオリは、「確かに!」と納得した様子を見せる。
確かに、ティアはイオリの隷属魔法の制御下にある。
しかし、先ほどの話にもあった通り、何かイオリの知らない効果や不備があるかもしれない。そういう意味では、第三者の目があった方が安全だ。
「というわけで、受付嬢さん。部屋はわたしも含めて一つでお願いします♪」
「か、かしこまりました……」
有無をいわさぬコレットの雰囲気に、係りの彼女は気圧された様子で帳簿を書き直す。
「(くっ……、邪魔をしてくれましたね、コレットさん?)」
「(当然です。イオリ様の貞操はわたしのものですからね!)」
イオリに聞こえないように、ティアとコレットがそんなやり取りを交わす。
いったい何を話しているのだろうと、イオリは不思議そうに首を傾げる。
「さぁ、それでは部屋に向かいましょう、イオリ様♡」
そう言って、コレットが腕を組んでくる。
イオリの腕に彼女の柔らかな感触が、むにゅん! と襲いかかる。
「あ、ずるいですよ、コレットさん!」
負けてなるものか! といった様子で、ティアがイオリの反対側の腕に自分の腕を絡ませる。
左右から柔らか物体に挟まれて、イオリが「ひぇっ……」と情けない声を漏らす。
「ふふっ、可愛い声です……♡」
「食べたちゃいたいです、イオリ様ぁ……♡」
イオリの耳元で、甘い声で囁くコレットとティア。
それを見ていた係りの彼女が、「(うわぁ、おねショタだ! おねショタが始まっちゃうんだぁ!!)」と、興奮した小さな声を漏らしている。




