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13話 Aランク冒険者

「ふぅ、お腹いっぱいですね」


「そうですね、イオリ様♪」


「私、こんなに美味しいものを食べたのは初めてです……!」


 イオリの言葉に同意するコレット。

 そして、至福の表情を浮かべるティア。

 モンスターの彼女にとって、人間の食事は世界が変わるほどに美味だったようだ。


 蜂蜜酒も飲み、ほろ酔い気分で、三人で受付カウンターへと向かイオリたち。

 そんな彼らを、笑顔の受付嬢が待っていた。


「今回の報酬、そしてモンスターの素材の査定額はこちらになります!」


 そう言って、カウンターの下からトレーを取り出す受付嬢。


 トレーの上にはかなりの数の金貨――のさらに上、金貨十枚分に値する白金貨が乗っていた。


「え、こんなに!?」


 驚きの表情を浮かべるイオリ。

 まさかこれほどまでの査定額が出ると思わなかったのだ。


 わかりやすく言えば、金貨一枚で一ヶ月は暮らしていける。

 それの十倍の価値のものが、何枚も並べられているのだ。


「ドレイクの素材が丸々一体手に入ることなんて滅多にありませんからね、それが二体ともなれば、この査定額は当然です!」


 驚いた表情を浮かべるイオリに、そんな説明をする受付嬢。

 コレットも「その通りです!」と頷いている。


「よくわかりませんが、さすがはご主人様です!」


 お金に関することはモンスターなので理解していないが、ティアも瞳をキラキラさせながら、イオリに称賛の言葉を送る。


「それと、イオリさん。こちらをどうぞ!」


 そう言って、受付嬢が装飾の施された小さな箱をイオリに差し出してくる。


「これは?」


「開けてみてください」


 受付嬢に言われ、箱を開けるイオリ。

 するとそこには、白金の冒険者タグが納められていた。


「これは……Aランク冒険者のタグですか?」


 タグを手に取りながら、声を漏らすイオリ。


「その通りです! ギルドはイオリさんをAランク冒険者として認定することを決定しました!」


 不思議そうな表情を浮かべるイオリに、受付嬢が言う。


「イオリ様はドレイクを討伐しただけでなく、サキュバスクイーンであるティアを隷属させてしまいましたからね。これは当然の結果です!」


「ご主人様の功績が認められたのですね! 素敵です!」


 受付のうに続き、コレットとティアも、イオリのことを称える。

 急な出来事に、イオリは少々恥ずかしげに頭をかく。


「本来ならAランクモンスターを複数倒したので、Sランク冒険者の地位を用意すべきなのですが、イオリ様は冒険者になったばかりですので、そこを考慮して今回はAランク認定とさせていただきました」


 少々申し訳なさそうに言う受付嬢。

 イオリとしては、別に階級や地位にこだわるつもりはないので問題なしだ。

 むしろ劣等魔術師と認定され、勇者パーティを追放されたばかりなので、嬉しいまである。


「やったな! イオリさん!」


「Aランク冒険者、昇格おめでとう!」


「迷宮の異変を解決したアンタは、この王都の英雄だ!」


 イオリたちがやり取りしていると、周囲の冒険者たちがそんな言葉を送ってくる。


 これ以上迷宮内でモンスターたちの異常行動が続けば、やがて迷宮の外に溢れ出し、王都に被害が出ていたかもしれない。

 勇者アレクたちでも解決することができなかったそのような事態を未然に防いだイオリは、この王都にとって英雄扱いになったわけだ。


(劣等魔術師だったぼくが英雄、か。ちょっと恥ずかしいけど、悪い気はしないな……)


 皆から熱い視線を注がれ、イオリはそんな風に思う。


「イオリ様、何かみんなに向けて何か言葉をかけてみてはいかがですか?」


 小声で、コレットがそんな風に耳打ちしてくる。

 なるほど、英雄となったイオリから、何か一言ないかと皆は期待しているようだ。

 しかし、生憎イオリは大人しい性分で、気の利いた言葉は見つからない。


 ならば――


(これしかないかな?)


 ――そう思い、イオリは自分の杖を頭上に掲げてみせる。


 たったそれだけの行動で、ギルドにいる者たちは熱狂の渦を生み出した。


「さすがです! イオリ様!」


「素敵です! ご主人様!」


 コレットとティアが、改めて称賛の言葉を送る。


「「「イ・オ・リ! イ・オ・リ!」」」


 興奮した冒険者たちがイオリの名前をコールする。

 思った以上の反応に、イオリは恥ずかしさのあまりに顔を赤面しながら、ちょっと涙目になり、小刻みに震えるのだった。


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