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PLOT OF WIZARD  作者: O2
7/25

2日目…パーティ(1)

翌日は雨だった。


雨は朝からしとしとと、地面を覆う様に静かに降り続けた。陽はほとんど照らず、薄暗い朝を迎えてからほとんど

明るさが変わらずに、時間が経っていた。


宿泊して一夜明けた朝は決まって、パーティ全員が積極的に寝坊した。長いこと歩いてきた疲れからというよりも、

久し振りに草の上に薄い布を敷いただけの野宿ではなく、簡素ながらも屋根のある寝床にありつけたから、という

方が本音の所かもしれない。


いつもは一足先に起き出して、他の三人の目覚めの原動力となっているテルルも、宿に泊まっている限りは何も

支度する必要が無いため、余裕で寝息をたてていた。

しかし、耳の遠くで段々大きくなる音に、彼女の意識は眠りから徐々に現実へ引き戻された。


「…ん〜〜…」


まだ寝ぼけまなこなテルルの耳に一番に届いたのは、しつこく降り続ける雨の音であった。

ひとつベッドの隣でこちら向きにうずまっているリンを横目で確認し、宿先の街道が見渡せる窓へと足を運ぶ。


「雨…降ってたんだ」


半目のままの呆けた表情で薄暗い空を見上げ、それから舗装されていないせいで、ところどころに土色の水溜りが

出来上がっている地面へと、目を落とした。


そこで初めて、先ほど自分を起こした本当の音の存在に気付く。


「…何、やってるんだろ」


外の通りは一見にぎわっているように見えたが、よく注視すると何かちょっとした騒ぎが起きているようだった。

上から見渡せる町の人が、誰かを呼びに行ったり、呼んで来たりして、段々人が増えていく。そして、その

人だかりは確実に、この宿の正面に溜まりつつあるようだった。


何気無しに見下ろしていたテルルにも、次第に好奇と不安の気が入り混じっていく。すっかり覚めた目で、

真下にある宿入り口を食い入るように見つめる。


…なになにっ、何なの!?


やがて、宿を正面にしてまっすぐ伸びる大きめの街道から、ひときわ密集した人の一団が現れ…一気に宿の中へと

滑り込んだ。それは一瞬の出来事だったが、テルルははっきりと見届けていた。

その一団が、何かを担いで来ていたこと。

その何かが、確かに見覚えのあるものだったこと。


澄んだ蒼の瞳を見開いて、驚愕の中小さくつぶやいた。


「…シド…!?」





シドが宿内に運び込まれてから直後、テルルはパーティ一同を片っ端から叩き起こした。

彼らの、まだ現実と夢とを行き来したままの頭に事情を説明すると、案外全員が速やかに覚醒していた。

中でもネオンの目覚めの良さは人一倍で、驚きと興奮が入り混じった心持ちからか、階段をほとんど転げ落ちる

ように駆け下り、他面々もそれに続く。


食堂に入ると、そこは既に人で一杯になり、雨と土で濡れ汚れた男達が、何やら宿主と言い揉めている最中であった。


「冗談じゃない、うちは病院じゃないんだ!」


「旅人を泊めるのが宿の仕事だろうが。それに、この男に見覚えがあるんだろ?」


「確かに昨日見たし宿に入ったが…すぐ出てったんだ、客じゃない!」


「とにかくこの状態なんだ、ひとまず引き取ってくれよ!」


「あいにくと満室だよ、そっちが引き取れ!!」


双方勝手な言い分を並べていがみ合っているのを横目に、店内を見回したネオンは、ほどなくシドを確認した。


問題の渦中の人は、食堂の隅の方の席に預けられていた。

昨日一度目に会った時のような、全身傷だらけという状態ではなかった。その代わり、長いこと雨ざらしのまま

だったのか上から下までずぶ濡れで、身体から滴る雨水がとめどなく床に落ち、辺りに水たまりを作り上げていた。

顔も唇も、昨日よりなお一層、透けて消えてしまうかのように青白くなっていた。


ネオンは、荒れている場から気付かれないように、こっそりとシドに近づく。


「…シド…!」


小声で呼んでみたが、昨日と同様気を失っているのか、シドは目を閉じたまま動かない。

頬に手をあてると、ひんやりと冷えきっていた。このまま放っておいたら、風邪をひいてしまうかもしれない。


「本当に意地っ張りなオヤジだな、人で無し!」


「て、てめぇらっ…! 毎日飯食わせてやってる恩も忘れたか!?」


「おいおい、ちょっと落ちつけよ大将!」


ネオンが振り返ると、運んできた男達と宿主側とで場は既に混戦と化しており、間に割って止めようとする宿客らも

加わって、壮絶な景色が広がっていた。

声を掛けるチャンスを伺うネオンだったが…一向に騒ぎが収まる気配は無い。

ネオンは宿主らの塊をじっと睨み、やがてすうっと大きく息を吸った。


「あのぉっ!!!」


突然のネオンの大音声に、揉めていた場の動きがぴたりと止まった。そして掴みあい、殴り合う寸前であった

男共の興奮した顔が、一気にネオンへと集中する。


「…なんだよボーズ」


気が立っている宿主から刺すような怒気を向けられ、ネオンはたじろいだが…負けじとまっすぐに視線を返す。


「あのっ…あの人、おれが泊ってる部屋に引き取ってもいいかな?」


「はぁ? お前の連れか? そういや昨日お前、あの男と一緒にいたような…」


「うんっ、あ、いや…連れじゃないんだけど…連れ…みたいな」


「なんだぁそりゃ!? はっきりしろよ!!」


「っ…」


まだ興奮冷めやらず、不快と苛立ちの色があからさまに露出している宿主に向かって、ネオンは懸命に言葉を続けた。


「泊める部屋無いなら…なら、相部屋だったら問題無いだろ?」


「あぁ? …ん、まぁ…無いが…」


「後始末はちゃんとこっちでやるから、宿には迷惑かけないよ…お願い」


「……」


必死に訴えるネオンに、連れて来た男連中と掴み合っていた手を振りほどき、宿主は腕組みをして唸る。


「本当に任せていいんだな?」


「うん!」


「…よしわかった。運んでいきな」


「いいの!? やったー、ありがとう!」


渋々ながらも承諾した宿主の言葉を受けて、ネオンはその場で飛び上がって喜んだ。

周りの輩も、その様子を見て万事解決したと解釈し、宿主に悪態をつきながらもあっさり宿を後にしていった。


緊迫した空気を、かたずを飲んで見守っていたテルルだったが、ネオンがいつもの調子に戻っているようで、

少しだけ胸をなで下ろした。


「クロム、シド運ぶの手伝って!」


そして、急きたてるネオンに普段通り無言で応じているクロムも確認する。

昨日、あのまま食堂に戻ってこなかったネオンや、どういう訳か怒りを振りまきながら戻ってきたリンを気がかり

にはしていたが、クロムにはあえて何も聞かなかった。

しかし、一連の様子を見ると…ひとまず安心して良さそうだった。


でもそれも束の間、テルルの頭の中には、また新たな問題が浮上する。


…シド、パーティに入るのかな?





ネオンとクロムの手によって二階の宿部屋へ運ばれたシドは、すぐさま部屋の奥にあった、ネオンの寝腐っていた

ベッドに寝かされた。そしてネオンが濡れた服を着替えさせ、テルルとリンが炭で熱した石で簡易の懐炉を作り、

肩口や足元を温めた。


…そうこうしている内、青白かった顔色にもわずかだが血の気が戻り…熱も出ていなさそうなので、とりあえず

一同手を休める。腰を落とした途端、起きがけのひと騒動だっただけにどっと疲れが押し寄せて、揃って深い

溜息が出てしまっていた。


少し暖かくなり過ぎた室内で、リンが顔を手で仰ぎながら、ネオンへと振り返った。


「――なんかまた連れて来ちゃったけどぉ、どおすんのよ?」


「! うん…」


同じように、袖口で顔の汗を拭っていたネオンは、リンの方へ振り返り、少しだけ考え込むように沈黙すると…

ぽつりと言葉を漏らす。


「おれ、こいつ…シドを、パーティに加えたいんだ」


うつむき加減に言うと、部屋の中にいたパーティメンバーを見回す。ネオンのその、いつにない真剣な表情に、

全員が注目する。


「本当は、昨日…連れて来た時にはもう、仲間にしたいと思ってたんだ。で、その時は…ただ、シドのことを

もっと知りたいからって、それだけが理由だったんだけど…もう少し色々考えてみた。シドが加わった場合と

そうならなかった場合とで、色々想像してさ」


ネオンはちらりと、静かに横たわっているシドを見やりながら、話し続ける。


「おれさ、いっつも皆に助けられてばっかじゃん? 迷惑掛けてばっかりなのに、何も出来てないよなぁって。

でも…おれでも、シドになら何かしてやれるんじゃないかって…思って。

昨日会った時も、今日も…どうしてこいつがこんなになってるのか、よくわからないけど…

何か、放っておけなく

なっちゃったっていうかさ。シドのことが、頭から離れなくなっちゃって…」


必死に考えた胸の内を吐露するネオンの言葉を、三人が黙って聞いていた。


「おれ、ここでこのままシドと離れちゃったら…きっと後悔すると思うんだ。正直何が出来るか、全然わかんないん

だけど……力になりたいんだ。そういうのって、駄目…かな?」


沈黙が下りる中、ネオンがおずおずと、上目遣いにメンバーを見回す。


「…それが、一晩考えた、あなたの理由?」


しばしの沈黙の後…最初にそれを破ったのは、テルルだった。


「…うん」


「わかった。あたしはいいよ」


その返答に、ネオンがテルルの方へ顔をあげると、幾分か呆れたような彼女の表情があった。


「あたしもね、本音はちょっと心配な所があるんだけど…でも、多分ネオンよりは手が掛からないんじゃないかなって思って」


「うん…ん、えぇ!?」


「元々みんな好き勝手にやってるもの。今さら一人くらい増えたって、どうってことないよ」


いつもこのパーティの面々には、事ある度に振り回されているテルルであった。

加えてネオンの幼馴染でもある彼女は、ネオンの行動パターンを嫌というほど間近にし、常に辛酸を嘗めさせられて

きていた。彼女にしてみれば、これしきのことは既にアクシデントにも数えられないのかもしれない。


ネオンが、何も言えずにきまり悪そうにしている横で、リンがプッと吹き出した。


「そぉねー、とりあえずネオンよりは聞き分け良さそうだし、問題無いかもね。食費もかからないだろうしさ♪」


「寝起きの悪さもね」


「っ…ひでー!! 何だかおれがすげぇ問題児みたいじゃねぇ!?」


「え、違うの?」


「自覚無さ過ぎ~」


笑いながら茶化すリンと、つられて笑っているテルルを見て、ややふくれてみせるネオンだったが、その表情には

内の安心感が表れていた。


「――で、OKなのか、な?」


と、笑い止んだリンが、視線をクロムにやる。


そういえば、彼はさっきから黙ったままだ。ネオンの緩みかけていた緊張感が、再び引き締まった。


バチッと、クロムと目が合った。その圧倒的な威圧感に、ネオンは本音のところ視線をそらしたかったが、

ここで引き下がったら全てが無駄になってしまう。

ネオンは、昨日のクロムとのやり取りを思い出した。彼が本当の所どう思っているのかはわからないが…彼が

否定しない何らかの糸口が必ずあると、ネオンは感じ取っていた。

クロムを説得出来るとは思ってない。でも、自分の意思は伝えたのだ。後は彼が、どう認めるかだ。


いつまで続くか視線勝負は、クロムが自然にそらしたことで、一応収拾がついたようだ。

テルルが、押し黙ったままのクロムをうかがう。


「クロムは…いいの?」


「いいのも何も、ここまでまとまってきちゃってる話、今さらいちゃモンつける隙は無いと思うけどねぇ?」


「リン…っ」


微妙にケンカ腰になっているリンを制し、テルルはネオンに振り返る。


「ちゃんと面倒見れるんだよね? 大丈夫だよね?」


テルルに助言してもらい、ネオンは懸命に首を縦に振った。


「うんっ…大丈夫!! 多分」


……頼りねぇ……!


せっかく彼のフォロー側に徹していたのに、女性陣は揃って脱力する。


そんな不安の残るネオンの決意に、クロムは軽く息をついた。全員が、彼の一言を息を呑んで待った。


「言い分はわかった。…お前の好きにすればいい」


冷ややかながらも脈のある彼の反応に、ネオンの顔がぱぁっと明るくなる。


「じゃあっ…」


「だが、昨日から言っているように、俺はその男を信用していない。それは今でも変わらない」


「うっ」


困ったように言葉を詰まらせるネオンを見、テルルがもうひと押し突っ込む。


「…それって、結局反対ってこと?」


「少なくとも『賛成』では無いな」


「えー、どういうこと??」


クロムの言葉の意図が理解できず、ネオンは首を傾げていたが…テルルは何となく、彼の真意を感じ取った。

リンも呆れたように頬杖をついて、クロムをじとっと睨んでいた。


反対しない。でも、歓迎はしない。


「…後は、本人に進退を問うことだ。加わろうが拒否しようが、俺は一切関知しない」


全員が何かを言いたげに黙っている中、クロムはにわかに立ち上がり…そのまま部屋から出て行こうとする。


「ちょっ…どこ行くのよ?」


「朝飯」


「っ…」


リンの問いかけに、ちらとだけ振り返り、当然の事のように返してきた。


「こんな時によく――」


ぐぅぅぅぅぅ〜〜


更に啖呵を切りかけたリンだったが、すぐ横で巨大な腹の音が。


「……ネオン…」


「…わり、なんかおれも腹減ってきちゃった」


「…ま、昨日全然食べてなかったしね…」


申し訳なさそうにしているネオンに、テルルは苦笑する。


「いいよ、行ってきなよ。シドはあたしが看てるから」


「わりーな! 食い終わったら、なんか部屋に持ってくよ」


テルルに促され、ネオンは心底嬉しそうな表情を浮かべつつ、足早にクロムを追って部屋を後にした。


溜息をつきつつ、テルルはリンへと振り返る。


「リンは? 食べてくれば」


「…いー。二度寝、ってかフテ寝! 私が起きるまで起こさないでいいわよ」


しかし声をかけた時には、彼女は頭を振りつつ、ベッドの方へと向かっていた。


「…リン…」


テルルは困惑した顔を浮かべ、リンを視線で追う。

疲れ切ったようにリンはベッドへ倒れこみ、昏々と眠り続けているシドの方を見やる。


「私だって、ハナからその人信じてる訳じゃないけどね。実はすごい重罪人なんじゃないかとか、何かに追われて

るんじゃないかとか、考えちゃうけど」


「うん…」


「でも仲間は増えた方が、問答無用で楽しいじゃん? 誰だって、最初はよく理解んないんだし。信用なんて、

そこから作ってくモンなんだからさー…」


「うん」


テルルは頷きながら、リンの側へ座り込んだ。


「リンのそういう性格、好きだな」


「へへ、惚れるなよ〜。 とにかくま、これから益々あんたは大変だろうけど、頑張ってちょうだいね」


「…やっぱり、そうなるんだ…」


折角の幸せそうだったテルルの顔が、ニヤつくリンの追い打ちを受けて、再び落胆した。





……暖かい…


「――気がついた?」


うっすらと霞む視界の向こうに、黄色めいた明るい景色が見えた。それが、目の前にいる金髪の娘のものだと

気付くまで、それほど時間は掛からなかった。


「…ぁあ……」


「良かったっ…なかなか起きないから、心配しちゃった」


緩慢な動作で起き上がろうとするシドを支えながら、テルルは彼へ笑いかけた。


「熱は出てないみたいだけど…具合はどう?」


「…ぇえっと…」


しかしシドは、まだ今の自分の状況を解っていないようだ。一方的に話を進めてしまいそうになって、テルルも

はっと気付いた。


「あ、えっとね、ここはあたし達が泊まっている宿屋で…昨日、いたところね? 覚えてる?」


ときり出し、テルルは彼がここにいるまでの経緯をかいつまんで説明し始める。シドもテルルの話を聞くごとに、

自分が気絶する前のことを思い出したようだ。


「…そうか、俺、気を失って…」


「覚えてないの?」


「ああ、記憶があやふやだ」


「…何があったの…?」


明るい調子で言葉をかけていたテルルが、ふと怪訝な表情になる。

彼女に顔を覗き込まれ、シドは自分の手元に視線を落としたまま、一時沈黙し…


「…たいしたことはないよ」


「…そっか」


そう言葉を切り、笑顔でテルルに振り返ったので、テルルはそれ以上何も聞けなくなってしまった。


「ありがとう、また世話になっちゃったみたいだな」


「お礼なら、ネオンに言えば? ってーも今本人、席外してるけど」


ふいに後ろから声が聞こえ、振り返ると今度は紫色の髪をした娘が、ベッドの縁に腕枕をする格好で、こちらを眺めていた。


「覚えてる? 私のこと。白い髪のお兄さんっ♪」


「覚えてるよ。えっと、名前が…」


「リンよ。 よろしくね、シド」


「ああ。 …? よろしくって…?」


「…あっ、あのね」


いきなり“よろしく”扱いされて戸惑っているシドに、テルルが遅ればせながら説明する。


「ネオンがね、あなたをこのパーティに加えようって持ちかけたんだ。もちろん、あなたさえ良ければ、の話だけどね!

あたし達も、喜んで歓迎するよ」


「それは…それは、『あの彼』も平気ってことなのか?」


…クロムだ!!


これまでの経緯からすれば当然の質問に、リンは眉根を寄せ、テルルは焦りの表情を見せる。


「う、うん、大丈夫なの、その辺も…! さっきね、説得したからっ」


「気にしなくていいわよ。多分あいつは、ネオンを独り占めしたいだけなんだろーしぃ」


「…ひとりじめ…???」


「あーっ!! ちがうの、クロムは心配症なだけってこと!」


リンの爆弾発言を受け、明らかに不可解な顔をするシドに、テルルはすぐさま言葉を改めた。


「あぁ、そういうことか…」


それなりに納得したシドだったが、リンは不満そうだ。


「なによう~、心配ってなだけなら私だって同じよ~」


「…リンっ…お願いだから言葉を選んでっ…」


「へーへー、わかったわよ、もう何も申しません」


もう一息で怒髪天をつきそうなテルルに、リンもしぶしぶ従った。

そんな二人の掛け合いを見て、シドはクスクスと笑い出した。


「面白いね、君達みんな…ごめん、笑い堪えられなくて…。ありがとう、誘ってくれて」


「じゃ、パーティに入る?」


「ああ、是非お願いしたいな。…ネオンにもお礼を言わなきゃな」


「さっき朝食食べに行ったところなの。様子見に行く?」


「ダメよ、無駄無駄」


すっかりノリ気なテルルとシドを、リンは冷めた表情で止める。


「あのコ、食べてる時は他のこと考えられないもの」


「そういえば、昨日は怖いほど食欲不振だったし…そうだね、多分夢中だ」


「きっと、いつもの5倍は食べてるわね」


「…それは…大変そうだな」


三人は、今まさに階下で繰り広げられているだろう、パーティ最大の問題児の様子を思い浮かべていた。


2011/1/9 一部改変

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