- monologue -
物心ついた頃から一度も離れたことが無かった故郷を離れ、旅を始めたきっかけは、父の失踪だった。
全くの着のみ着のままで、下準備も何も無いまま、ただ闇雲に村を飛び出た。すぐに父が見つかると踏んでいて、
遠出するだろうことなど頭の片隅にも無かったからだ。それは、自分を連れ戻そうと後を追ってきたテルルも
同じだった。
これほど先が見えない…『終わり』があるのかさえ分からない長旅になろうとは、当初は誰も想像していなかった。
父の足取りを追い、次第に父が消えた理由を探し求めるようになり、それはまたやがて別の目的へと形を変え…
そんな風に、背中は絶えず何かに後押しされ続けていった。
既に、立ち止まることなど出来ない状況にまで、足を踏み入れてしまっていたのだ。
旅に出なかったら…父を追わなければ、今頃自分はどうなっていただろうかと、ぼんやり物思いにふけるとふと、
そんな思いが過ることがある。
苦しい。逃げたい。どうして“自分”なのか――
…辛いだろうけど、それは持って生まれたあなたの力なの。あなた自身なの…
こんな力、おれは要らない
…身捨てては駄目よ。あなたの元を離れれば、力は暴走してしまうわ…
そんなこと言ったって、全然おれの言うことなんて聞きやしないじゃんか
…焦らずに、じっくり付き合えばいいの。最後は必ず、『器』であるあなたを守るから。委ねていればいい…
でもかといって、支配されてはいけないわ。あなた自身が喰われてしまうから…
そんな難しいこと、おれには出来ないよ
…決めつけないで。『選ばれた者』と思う必要は無いけど、相性が良いからこそ、あなたに備わったものなの
だから。だから、これだけは守ってね…
何?
…あなたの持つ力は、決して誰かに利用されてはならないわ。あなたの意志で、あなたのために…あなたの思う
誰かのために使うこと…
おれの意志で…
…あなたの力も、きっとそう望んでいるはずよ。だから、お願いね…
……
次回更新予定日…2010/11/1
…なんとも薄っぺらくて、申し訳ありません…