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特別問題児  作者: キャンティ
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特別問題児2





特別問題児2







「……帰りたい」



美術室に無事辿り着いた俺は入る気にもならず、むしろ寮に帰りたい気分だった。

挨拶をするって言っても「よお!俺は永瀬一木ながせ いつき、これから一緒に行動するこのになった。よろしく!」と、爽やかに自己紹介をするなど、俺にできるわけがない。精々小さい声で自分の名前だけ言うのが限界だろう。だとしても、このまま美術室の前に立っていては下校時間になるし、他の生徒達に可笑しな目で見られる。


……入るしかないか。



「よし!」



早く終わらせて寮に帰りたい一心で勢いよく扉を開ける。

足を一歩踏み出し、前を向く。そして、俺は唖然とすることしかできなかった。何故なら、そこには美術室独特な風景ではなく、今でも水平線へと消えていきそうな夕日や夕日が反射され紅く染まった海が眼に入ったから。

え、海?俺は扉を開けただけなのに海だと?



「うーん、やっぱり夕日がイマイチなんだよね」



俺が今の状況を理解しているのに苦労していた時、少し困った様な、それでも凛とした声が聞こえた。視線を声の方へ移すと先程、羽毛田先生が見せてくれた紙に貼ってあった写真の女が椅子に座っていた。その表情はどこか困ったいて、女の前に置いてあるキャンパスを睨んでいた。良く見るとそのキャンパスに描いてある絵は今、正に俺の前に広がっている風景そのもので、彼女が絵に色を重ねていくたびに風景も変わっていく。

太陽は更に燃え、海は先程より輝く。波の音や鼻先の潮の匂いに全て本物だとわかる。


これが彼女の【イレイス】なのだろう。


イレイスとは、この学校の学生が『特別』が付く問題児になった理由だ。世間の言葉でいうとアニメで出る魔法みたいな能力だと言うけど、いつイレイスを使えるようになったのかは発表されていたない。この力を知っている人も数少なく、世間にも公式に明かされていない。

俺も急に能力が使えた時は驚き、この力を使えるまでイレイスの存在を知らなかった。

まあ、この白桜高校はイレイスを持った子達が様々な事情を持って入ってくる。因みに俺は、俺のイレイスを消すためにこの学校に来たのだ。大嫌いな俺の力を。

とにかく、彼女に自分のことを気付いて欲しくて軽くノックを三回した。ノックでやっと俺に気付いたのか一瞬びっくりしてはすぐに睨む。



「誰?」


「二年の永瀬一木で、今日からお前とチームになった」


「は?」



まるで不審者を見る眼で俺を見てくる。その視線が怖くてつい目線を泳がせた。

彼女の気持ちも理解できる。急に人が入って来て、今日からチームになった。なんて言ったら俺でも不審者扱いすると思う。でも、ここは信じてもらわなければならない。



「ほ、本当だ。俺、転校生で、羽毛田先生に挨拶してこいって言われて」


「……ほんと?」


「ほんとのほんと!」



まだ疑っている七星に俺は全力で首を縦に振る。もの凄く恥ずい。

七星は俺をじーっと見つめ続けて数十秒後、手に持っていた筆やパレットを自分が座っていた椅子に置いて俺に近づき、絵具で彩った右手を差し伸べた。



「私は七星瑠奈。好きに呼んでいいわ。これから宜しくわ永瀬くん」


「よろ、しく」



つい先まで警戒していたのに、いきなり握手を求める彼女に戸惑いながらも手を取り、軽く上下に振っては離す。

意外と呆気なく認めたな。こいつにとっては直ぐに認められるものだったのかな。



「見た通り私のイレイスはこれよ」



そう言って七星は最初見た時と変わらなく、綺麗な夕日と海を指差す。



「簡単に言うと、私が描いた風景を『実際』に造ることが出来るって感じなのかしら。貴方のイレイスは?」


「……。」



彼女にイレイスを聞かれて俯く。



「……話したくなければ良いわ。校則だしね。でも、私とチームになるには条件があるわ」


「条件?」


「そうよ。私はチーム行動をしない。放課後はここでずっと絵を描く。そのためにこの学校に入ったの。あ、心配しないで。課題をする時はちゃんとチーム行動するから」



一緒に行動しないほど俺は嬉しいけど、俺もチームに無理矢理入ることになったのに、こいつは何で俺に条件を掛けてくるのか分からない。それに一気に言われ思考が上手く回らないが、しっかりと聞き取れたのが一つあった。



「課題?」


「なに、先生に聞いてないの?チームで先生が出してくれる課題をクリアしなきといけないのよ。これもチーム行動に入っているから。寧ろ課題だけやったら他にチーム行動をしてない時ある程度目をつぶってくれるわ」



聞いてない。一言も言われてない。

羽毛田先生、こんな大事な話をしてくれなかったのかよ。


後で覚悟しとけ。



「例えば?」


「それはそれぞれよ。そうね。例えば、先生の忘れ物を探すとか」



それ、普通はパシリって言わないか。



「私もチームに入ったことは無いから分からないけど」


「分からないのかよ!」



ツッコミを入れた俺が気に入らなかったのか、一回睨むと七星は戻って席に座る。



「これでいいでしょ。私は今から絵を描かないといけないの。だから帰ってくれる?」



俺の事を見向きもしないで邪魔者扱いし、絵を描き始めた七星の後ろ姿に「あ、うん。ごめん」と言っては美術室を出なければならなくなった。

今日は色々と疲れてしまったから早く寮に帰ろう。そして明日、羽毛田先生に文句を言いに行こう。


俺は重い脚を無理矢理動かして美術室から離れて行った。


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