第二話 とある俺、とある露店の店主と取引する!?
朝のほの赤い光と肌寒い外気を感じながら、俺は露店の方に歩いて行った。
俺は、■空き瓶を売っている露店を探した。
大体の露店は専門店というわけではなく、アイテムを冒険者から買った物を売りさばいているようだった。
大体の露店は、シートの上にアイテムが沢山並べていた。
あちらの店には盾や弓矢やマジックアイテムらしきものなどがたくさん並んでいる……。
こちらの店には槍や鎧や服などがたくさん並んでいる……。
小箱……お札……指輪……ガラスのビン……。このガラスのビンは空き瓶だ!
「あ。あったぞ……!」
思わず笑みが零れる。
そちらに足を進めて行くと 露店の店主は強そうな男だったので、しり込みしてしまった。
思わず足を止める俺に、その店主は愛想の良い笑みを向けてきた。
心なしか安心して俺は、その店主の方へ歩いて行った。
「おう、兄ちゃん! 何か買っていくか?」
「この、■ふわふわパンを売ってもらえませんか? できたら、その■ガラスのビンと交換して貰いたいんですが」
そういうと、露店の店主は身を引いて嫌そうな顔になった。
「ダメですか?」
「う、うーん……」
店主は唸りながら、顎を親指と人差し指で触っている。
察しろと言いたげだが、何時までも気付かない俺に、言いにくそうに、その店主は口を開いた。
「兄ちゃんよ。この■ガラスのビンを冒険者から買った値段は、300Sだ。■ふわふわパンは1つ100Sだろ? どう考えても、俺の方が損をするじゃないか」
「えっ?」
並べられた■ガラスのビンの値札を見てみると、売っている値段の値札は600Sになっている。
「そ、そうか。損をしてしまうのか……」
「そうそう、損をしてしまうんだよ。だから、売れないかな~?」
このままだと、俺の計画が頓挫してしまう。
■ガラスのビンに入れたふわふわパウダーを高値で売るという俺の計画が台無しだ。
「うーん……」
困り果てた俺に、露店の店主は優しい笑みを向けてきた。
「なんで、兄ちゃんは■ガラスのビンが欲しいんだい?」
冒険者初心者の俺に優しいわけというわけではなく、俺がどうしても■ガラスのビンを手に入れたがっていることに興味をひかれたらしい。
多分、冒険者初心者が手に入れたがるのは、たいていが武器と防具だからに違いない。
「そ、そうか!」
店主の問いかけのお陰で、俺の脳裏にひらめくものがあった。
俺の表情が希望で明るくなっていくようだ。
「店主さん! 俺、■ガラスのビンの中に■ふわふわパウダーを入れて売ろうと思っているんだけど、それを込みで売ってくれませんか?」
「兄ちゃん、それは良いアイディアだな! ■ふわふわパウダーは量によるが、このビンにいっぱいだと、10,000Sぐらいになるからな!」
「じゃあ、売ってもらえますか? あとで収穫して持ってきますんで!」
店主は快く首肯してくれた。
「じゃあ、このガラスのビンを兄ちゃんに600Sで売るから、差し引きで俺が兄ちゃんに9,400S渡せばいいってことだな? ほらよ!」
店主は、俺に■ガラスのビンを渡してきた。
「おおっと……!」
俺は、うっかり落としそうになり、大慌てしながらそれを受け取る。
片手に持っている■ふわふわパンの袋が少々邪魔だ。
「えーと……!」
「やるよ! ■ふわふわパウダー入りのガラスのビンは、また持ってきたら9,400S渡すから、その時にな!」
「は、はい! じゃあ、この■ふわふわパンは?」
店主は、ガハハと豪快に笑った。
「食っちまえ! 兄ちゃんの朝飯か昼飯にでもすればいいさ!」
「ありがとうございます!」
店主は強面なのに、意外と良い人だった。
「おう、兄ちゃんよ。俺はペドラーってんだ。兄ちゃんの名前は?」
「ええと……」
俺は、自分の名前が行方不明なことに気づいた。
困り果てたとき、この異世界に来た時のことを思い出した。
効果音と共に言われた名前が確かブルーガだった。
「ブルーガです。よろしくお願いします、ペドラーさん!」
「良い名前だな! よろしくな、ブルーガ!」
俺は、■ガラスのビンを手に入れた!
そうして、俺は『ダンジョン①』のあの場所に向かったのだった。