第五話 とある俺、とあるライバルに腹を立てる!?
目深に被ったフードのせいで、男の顔がよく分からなかった。
中肉中背で、俺と身長は同じぐらいだ。
「誰だよ、お前!」
「僕はリキッド。君は?」
「ブルーガだ! なんで、俺の■ふわふわパウダーを――!?」
その男は、フードを肩に落とした。
切りそろえたおかっぱの髪型が似合って格好良いのが妙に腹が立つ。
勝ち誇って目を細める顔には、男の表情があざけている。
「■ふわふわパウダーは、君のなの? あの『ダンジョン①』は、みんなのものだと思うけど?」
「でも、お前だけのものでもない! あんなに大量に売り払われたら、俺の分が売れなくなるだろ!」
「でも、お蔭で俺は大儲けできたよ。君のお陰だね! 君の方に足を向けて眠れないね~! じゃあな~ブルーガ君!」
「は、腹立つ~! 絶対に俺がどっちを向いて眠っているか知らないだろ!」
俺はムカムカしながら、元来た道を戻って行った。
しかし、いつまでもリキッドのことを考えるのも癪に障るので、脳みそを切り替えることにした。
「当分、食料はあるし、これからの策を自宅で考えよう!」
俺は、そう思って脳みそを切り替えようとした。
俺は、『ダンジョン①』の横にあるアパートまで帰ってきた。
アパートの階段へと歩みを進めようとしているときだった。
「ブルーガ君!」
「えっ?」
振り返る。どうやら、呼び声は道の向こうからのようだ。
ペドラーさんがシートに広げたアイテムの後ろで、座って手招きしていた。
なんだろうと思って、駆け寄って行く。
すると、ペドラーさんが、俺の持っている■ふわふわパウダーのビンに気づいた。
「■ふわふわパウダーをまた売ってくれないかな?」
「えっ? これ、買い取ってくれるんですか?」
「昨日の■ふわふわパウダーがすぐに売れたんだ! 良かったら、お願いできないかな?」
昨日売ったばかりだから、ペドラーさんのところでは売れないと思っていたのに……!
俺は泣きそうになって、手の甲で涙をぬぐった。
「ペドラーさん、ありがとうございます……!」
「これからもよろしくな!」
「はい!」
【ブルーガは、28,200Sを手に入れた!】
「これで、当分大丈夫だ!」
せっかくだからと俺は、他の露店を見て回ることにしたのだった。