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神鳴寮  作者: MASA
7/24

大和×銀=男二人の真剣勝負外道編 3本目!!!

「え、マジ?」

日が沈み暗がりの中、銀は大和に男子寮側の外庭に呼び出されていた。

「マジです。悪いですけど、俺、一発銀さんの事殴んないと気が済まないみたいんで、悪いですけど、これじゃ、小細工の仕様がないでしょ、」

言葉は丁寧だが、心の中では自制心が限界を超えそうなのは誰の目にも明らかだ。

「大和君やり過ぎ、雀も心配しているわよ。」

「悪いけど潤、怖いんなら雀を連れて部屋に戻っていてくれ。それに銀さんもやる気みたいだ。」

「別にやる気出してないし、まぁ、俺は別にこれでも構わないが、ルールを決めとこうぜ。

互いにマジ切れするのはいいけど歯止め効かないのはまずいだろ、

大和は俺の骨を折るくらいには力強いし、俺は本気で大和を殺せる程度の残忍性と殺意は持ってる。」

「いいでしょう、それじゃ、武器はなし、」

「OK、場所はこの庭、家の中や、塀の外はなし」

「了解しました。あとまいったと言ったらそこまで」

「OK、制限時間は5分。」

「5分?」

「あぁ、長引けばそれこそテンションが上がってきて俺の歯止めも聞かなくなるし、柔道の試合で3分。5分で勝負がつかなければ引き分けどうだ?」

「若干、異議を唱えたいところですが、了解しました。ほかには?」

「俺は以上だ。お前の方は?」

「それじゃ、この勝負で勝てば3勝分というのはどうでしょうか」

「どういう意味だ、今は一勝一敗、何の意味がある」

「さっきのは俺の負けでいいですよ。銀が携帯いじってたり、ほとんど盤面を水に携帯ばかり見ている事を疑問に重い口にすべきでした。初戦と同じ理由で負けている。

それにもともと銀が将棋できないのなら、ああするしか勝ち目はなかった。だから銀の勝ちでいいです。それに5分過ぎて引き分けっていうのも、気持ち悪いでしょ。

言いましたよね、俺、一発殴らないと気が済まないって。」

「背水の陣、不倶戴天の心持ってわけね。マゾだね。まぁ、いいや。なんでも」

「その代わり、俺、銀さんがまいったって言っても、一発殴らせてもらいますからね」

「自分でまいったって言ったら終わりっつってんのに、、まぁ、別にいいさ。それじゃ、始めようぜ。」

周りが心配する中、二人は真剣な面持ちで構える。

「それじゃ、行きますよ!」

大和は勝負の口火を、開け銀に向かって走り出す。そして、銀もそれにこたえるかのように、向って行く。そしてお互いがぶつかると思った瞬間、銀は大和の体をずらし、そのまま走り去った。

「三十六計逃げるに如かず、5分で引き分けなら、逃げても2勝1分けで俺の勝ちって事だろ、頭使えよ少しは、」

銀はそのまま女子寮の方に走り去っていく。

その行為に唖然とする一同だが、

「銀!!!!」

あれだけ真剣勝負だといい、本気で怒っている事も知ってなお、人を馬鹿にして、大和は完全にブチ切れ、感情のまま大声を上げる。その声に思わず雀は潤にしがみつく。

大和は暗がりの中大和を追って走っていく。

脚は大和の方が早い、そして、腕力もまた大和に分がある。この家の周りの庭、どう逃げようが一方通行それに大和には考えがあった。

一周目ぐるりと大和は銀を追いかける。再び雀たちの前を通り過ぎた時にはその距離は明らかに縮まり、大和は銀の姿を捕え、さらに距離を縮めていく。

大和は追いかける途中、女子寮の外庭から、入り口の庭につながる所に設置された、普段は開けっ放しに、なっている木の扉に施錠をして、ここに戻ってきていた。

このままいけば同じ時点に差し掛かった時、この時計回りでは鍵は反対側であけることが出来ず、よじ登ろうにも、それほどの時間がある距離ではない。

つまりは銀はそれ以上逃げる事は出来ない。

「あ、いた。ちょっと、さっきの声何!それに大和君と銀さん、何がどうなっているの」

女子寮の自分の部屋の前を笑いながら銀が、真剣な顔で大和が走っていた事で、ただなら雰囲気を感じ取り、湊も駆け付けた。

「大和がマジ切れしてるんだよ。」

「マジ切れって、あんたたち、止めなさいよ。こんな馬鹿な事で喧嘩させる気?」

「止められないだろ、てか要は喧嘩だ。

それもルールのある喧嘩、こういうので発散でもさせないと、大和も限界だろ」

「もういい、だったら私がとめる。」

湊は二人を追いかける。

一方、大和は女子寮の直線に入る最後の角を曲がろう足した時、暗がりの中、物陰に隠れていた銀の足に引っかかり、豪快にこけていた。

爆笑する銀、大和はもう頭に血が上り過ぎて、感情はむちゃくちゃだ。

「どうしてここにって顔してるな、そりゃお前がどっちにしろ先で鍵かけてるだろ、

それだけの事、さて、からかい終わった事だし、そろそろまともに勝負してやるよ。」

そう言い残し、銀は来た道を今まで以上に全力で走って戻っていく。

「銀さん!何やってるんですか、大和君は!」

「湊、そんなところにいたら危ないぞ、もうそろそろ怖い怖い鬼が来るぞ」

そう言って銀は湊を避け、元いた場所近くまで戻ってくると、上がった息を整えながら、草むらの木に寄りかかり大和を待つ。

取り残された湊は、訳が分からないまま立ち尽くすが、程なく大和が歩いてくる。

「や、やまと、、くん」

大和のあまりの怒りに満ちた表情に、湊は言葉を最後まで発することが出来なかった。

普段の大和を知っているし、怒った時の大和も知っているはずだった。

でも、今の大和は知らない大和だ。そして大和を心から怖いと思う以上に、あの大和を見て楽しそうにテンション高めに子供のように笑う銀が理解できなかった。

元の場所に戻ってきた大和は、皆の視線で、木の陰に銀がいる事を気づく。

「よう、遅かったな、すっかり俺は休ませてもらったぞ」

「ポケットから手を出せ、」

「なんでだ?気に入らないなら出させて見せろよ。来いよ、もう鬼ごっこは終わりだ。

そしてこの勝負も、お前相手に手を使う必要なんてないさ」

銀は寄りかかった木から腰浮かせ反動で離れる。

大和は銀が逃げられないように、にらみを効かせながら銀に近づいていく

「ねぇ、あそこって確か銀さんが掘った雑草とか捨てる深い穴がなかったけ」

潤がふと思い出したように千里に尋ねる

「そうだっけ?」

「確かそうよ。」

だが、戻ってきた湊も誰も同意しない。

「こんなところ、めったに来ないからわからないわ、そんなの見当たらないけど勘違いじゃない?」

ふっ、と大貴が何かを思い出したように笑う。

この空気を読めない状況で笑った大貴にギャラリー3人の注目が集まる。

「ごめん、ちょっと、流石に感心して。」

「何がだよ。」

「銀さんの本来のカードデッキってダークヒーロデッキなんだ。

コミュニティーに入れない逸れものが自らマスクをかぶり、自分の意思でヴィジランテをやってるそういうヒーローが好きなんだ。

だからそういうのが出てくるアメコミが好きで、

その中でも、段取りの良さや準備に定評のある鉄男や、蝙蝠男が大好きなんだ。

銀さんは大和君や僕たちみたいに特殊な力を持っていない。

でも、それを補ったあまりある、強い心と向上心、そして頭脳を持っている。

銀さんは最初から喧嘩する気なんかないんだ。最初からこれがしたかったただそれだけの為に、あんなに大和を怒らせてたんだなって。」

「だから何の話よ。」

「僕は覚えていないけど、銀さんの手前、潤さんの言う場所に確かに穴はあると思う。

そして銀さんはこう言う自体に事を予測して、、、」

大和は銀がよけらない速度で全力で殴るために、思いっきり体重をかけて踏み込み加速しようとする。その瞬間だ、大和の足元が突然崩れ、大和が消えた。

「銀さんはその穴を落とし穴にした。たぶん3本勝負にするって言った時点で。いや、明日の話をあんなにそっけなくした時点で、銀さんは落とし穴を作っていた。

無駄になってもいい。でも、万全を期する。

今日の挑発すべてがこのためだけに、そこまでして、ただ銀さんはあの落とし穴に大和を押したかったそれだけなんだよ。それが分かったらからおかしくて、馬鹿でしょあの人」

「おかしくないでしょ、落とし穴なんてヤバいでしょ!」

「大丈夫、それなりに深いけどたぶん中身は草むしりした草がたくさん詰まってて安全だよ。」

「流石は大貴、その洞察力、恐れいる。どうだ大和、中々面白い座興だろ。」

「面白くない!ぶっ殺す!」

「お前が殺すなんて使うなよ、キャライメージ壊れまくりだぞ。それにどうあがいたところで、半身以上穴に埋まってるんだ。この狭い穴を上るには地面に手をかけなくちゃいけない。俺はその手をこの足で踏めば、お前は上ってこれない。

もし足を掴もうと考えているなら、お前が上がってきたところを、顔面を蹴ってやればいいそれでお前は上がれない。そしてあと1分30秒、それで勝負は終わり俺の勝ちだ。」

「ふざけんな!こんなの認めるかよ。」

「ならあがいて見せろよ、ご自由に、出来るならだが」

大和が必死に這い上がろうとするが、ことごとく銀に邪魔をされる

「はい、時間切れ。勝負は引き分け、これで終わり、俺の勝ち、明日は雀の事を頼むぞ。」

そう言って銀はポケットに突っこんでいた手を初めてだし大和に手を差し伸べる。

「いいのか?逃げなくて」

「逃げる?何で勝負は終わったぜ。」

「終わってない、まだ何も終わってない。」

「ガキだね、まぁいい、ほら」

「あの、、変じゃありません?」

雀は銀が差し伸べた手に違和感を覚える。

「変?どれが?」

「だって銀さん。将棋の時つけてなかった手袋付けてますよ。

銀さん普段洗剤使うときも、草抜きする時も、手袋絶対につけないじゃないですか、

なのに今、意味もないのに手袋をつけてます。

今思えばですけど、さっき鬼ごっこしている時も銀さんずっと手をポケットに突っ込んでましたよね、あれ出してた方が早いですよね。なのに入れっぱなしで、、」

「大和ダメだ、それ銀さんの罠だ!」

「正解」

大貴の呼びかけ、時遅く、大和が銀の手をつかみ、全身の力を預けた瞬間、銀は手を離し、模造品の腕とともに大和が再び穴に落ちていく

そうして響き渡る悪魔のような銀の楽しそうな笑い声

「今日の敗因怒り。怒りは冷静な洞察力を失わせる。

よく出来てるだろそれ、周りはゴムで加工してあるから、感触が本物見たいだったろ。

これがしたかった、全てはこの時のために、もうこれで十分満足だ」

「どれだけ性格がねじ曲がってるのよ。」

湊があまりの馬鹿らしさに見下すように吐き捨てると、地獄耳で銀が答える。

「一つ言っておく、俺は性格がねじ曲がっているわけではない。

ねじ曲がっているとは後天的な出来事により影響を受けたような物言いだ。

俺は性根が腐っている。間違てもらっては困る。」

「大和大丈夫か!!」

大貴と千里がかけより、大和を引っ張り上げる。

そして大和は、引き上げると問答無用で銀に殴りかかる。

銀は防御し急所を割けるが、本気の大和の体重をかけた打撃、

吹き飛ばされ、地面に倒れこむ

「ったく。あーもう、」

「大和!」

千里と大貴は大和を止めようと体を抑えるが、大和の力が強くあっさりと、それを振りほどく、だが、大和は銀に襲い掛からず沈黙を保ち、大和は誰とも眼を合わせず、俺は悪くないと面持ちで、大きく深呼吸をする

「ふ、はははは、流石にシャレにならないな、お前の本気は、下手すりゃ折れてるぞ、馬鹿げた力だ。流石に格闘技を本気でやっていた奴は違う。

さて、それじゃそろそろ頭に血が上り過ぎて、血管ブチ切れて少しは冷静に慣れたか。」

銀は跳ね上がるように、起き上がり、上着を脱ぐと大和を手招きする

「銀さん!まだやるつもりですか?」

大貴と千里をはじめみんなが本気で銀に自制するように求める。

今の大和は大和であって大和じゃない。止めるなら銀の方だ。だが

「あぁ、当たり前だ。ここからが大和の言う所の真剣勝負だ。

かけるものもなし、ただのガキの喧嘩だ。

俺も久しぶりに楽しませてもらったからな。本気でやってやるよ。来いよ、」

「そうだ、その目だよ。あんたの、悪魔で、化け物みたいなその目だ。」

先程までに比べると口調は落ち着いているが、普段の大和ではない。

「やまと君、ダメだよもうやめもう、喧嘩なんかしちゃダメだよ」

怖がりながらも止めようとする雀、だが大和は大丈夫だからと言って、

皆を部屋に戻して、二人っきりで殴り合う事を懇願した。

もちろん雀も湊も納得したわけではない誰も彼もが二人を説得し辞めさせようとする。完全に一線を超えようとしている。二人とも引く気なんてない。

仕方がないと察したのか二人の感情がかろうじて共感はできないが、理解はできる潤と千里が、さんざんやり過ぎないように注意し、3人を連れて部屋に戻って行く。

その後響き渡る鈍い音、砂利に突き飛ばされる音、壁にぶつかり家が揺れる。

そしてたまに聞こえる笑い声。

「ホント馬鹿じゃないのあいつら、殴り合って喜んで、」

嫌な音がするたびに不快になりながら恐怖心から湊が感情的になる

「確かに暴力的なのはいけないけど、あそこまで行くと少しかっこいいかなって思う。」

「はぁ、何それ潤もどうかしてんじゃないの?」

「まぁ、そう思うけど、でも、銀さん生き生きしてるし、大和君も普段と違って男の子の真剣な顔してる。あの顔、蜂須賀先輩の試合前と同じ顔なんだ。

大切なことなんだと思う大和くんにとって銀さんに喧嘩で勝つって言う事は、

大和くんが唯一勝てなかった相手で、唯一手加減をしなかった相手が銀さん。

何かにつけて大和くんが銀さんに勝負を挑むのはきっと男の子の意地だと思うの、

勝ちたいって、どうしても勝ちたい」

「普通に考えたら大和くんが銀さんに負けてる事なんて何もないわよ。」

「人間的にも、家柄的にも、運動神経だって大和くんの方が上じゃない。」

「そういう問題じゃないんだよ。大和くんが納得できる形で勝ちたいんだよ、」

「でも、喧嘩するのはよくないです。私は皆に仲良くしてほしいです。」

「そうね、皆そうよ、そしてそれは二人も分かっていると思う。だけどそれでも、、、

まぁ喧嘩なのはよくないけど、相手に勝ちたいっていうのは男の子の性なのかな。

スポーツかと勉強とかで争ってくれればいいんだけどね。

でも二人にとって一番納得がいくのが、喧嘩だと思うんだ。

分かってあげてとは言わないし、やめてって怒っても良いと思うけど、

ただ、大和くんと銀さんの事を怖がらないでいてあげて、

部屋に入っているようにお願いしたのも、きっと雀に怖い思いをさせたくなかったから、

馬鹿なことだって、怖い事だってわかっているから、雀には見られたくないんだよ。」

「潤、えらく語るわね。」

「うん、二人が真剣なのは分かるから、その気持ちは伝わってくるから。」

そんな会話をしている内に、いつの間にか音は止んでいた。


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