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神鳴寮  作者: MASA
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大和×銀=男二人の真剣勝負外道編 1本目!

それは突然の発言だった。

「明日、この家全体で害虫駆除をやるから、家には入れないぞ、

念のため、TVや電子機器類にはカバーをかけておいてくれ。

どうしていいか分からなかったり、カバーがなければ言ってくれ、こっちで手配する

予定では10時から17時までだが、伸びる可能性も大いにある。

害虫駆除が終わったらメールするが、雀は携帯持っていないだろ

明日は大和と一緒にいてくれ

以上だ、何か質問は?」

普段食事の準備こそすれ、準備が終われば自分の部屋に戻り、同じ家の中にいるはずなのに、先週のエアコンの取り付け日以来、誰も一言も会話をしていない銀が久しぶりに現われての突然の発言に一同、沈黙を保つ。

「よろしい、沈黙は異議なし、肯定という事だな。じゃ、よろしく」

「ちょっと待て、銀、いくらなんでも説明しなさすぎだ。意味が分からない。」

「この家の害虫駆除を行います。害虫駆除は薬剤の散布を伴います。

時間が立てば人体に害はないが、作業中は散布中の薬剤を呼吸器に取り込む可能性があり、

建物内にいる事は望ましくありません。その為自分も含めこの家の中にはいられません。

故に、外出を義務とし、電子機器へのカバーのお願いします。

以上で不足事項はございますか?」

「僕は理由を聞いているんですよ。」

「害虫駆除と申し上げました」

「なんて突然害虫駆除をするのかと聞いているんです。」

「先週エアコン取り付ける際に、壁に穴開け、外に室外機を設置しました。

その時、このボロ屋が見かけ以上に害虫の影響をうけている事を察し、軒下等の確認を行いました。

結果この家を保全するために、害虫駆除が必要だと判断しました。

そしてその為に最速で、最も効果的に白アリという名のゴキブリの仲間を駆除殲滅するために家ごとプロに頼むのが最善と判断しました。以上でよろしいでしょうか」

「、、、あの、銀さんなんか怒ってますか?」

銀が敬語で早口でしゃべっている事に疑問を持った大貴がたずねる

「俺も大貴の完璧主義ほどではないが、俺が管理する物が害虫に侵食されているという事実が非常に我慢ならない。

だから最速を以て殲滅を行う」

大貴は普段温厚で、何事にもまぁ、いいかという事なかれ主義だが、事趣味のものに関しては異常なまでの完璧主義者。

ゲームであれば実績の解除は絶対に済ませないと気が済まないし、食玩やフィギアであれば全種類集めないと気が済まない。

兎に角、完璧でなければ許されず、もしゲームで通信が必須で、地方に住む彼では収集が不可能であれば、すぐにゲームは辞めるし、有料ダウンロードコンテンツがある場合もクリアをやめてしまう。

フィギアも箱に傷がついてしまえば途端に興味を失ってしまう徹底した完璧主義者だ。

大切なものが一瞬でごみになる。その感性まで含め、銀は完璧主義者と評している。

「あぁ、そういえば銀さん。完璧主義がどうかはともかく、虫嫌いだもんね。」

潤はせんべいを食べながら、部屋の隅に置かれたアリの駆除用の餌に目をやる。

それだけではない。台所にはゴキブリ用、コバエ用庭のムカデ等の害虫を寄せ付けない散布剤、手の届く範囲に殺虫スプレーに窓には揮発性の殺虫剤がかけられている。

もちろんこれだけの古い家で庭にはたくさんの木や花が植えられている以上、虫を避ける事は出来ないが、台所、風呂場は使用後は徹底的に水気を無くし、ゴキブリが発生しないようにしているし、ごみも特にお菓子の食べかす等のごみに入れっぱなしにすることも嫌うし、各個人のごみ箱は密閉度の高い蓋付だ。

そのおかげもあってか、この家ではゴキブリを見た事はないし、家の中で虫が湧いている所も見た事がない。

「、、、、俺は足が4本以上ある生き物の存在意義が分からん。そもそも、あの黒い悪魔など、あの機動性、容姿、しかも飛行能力を兼ね備え、時には人に向ってくるまさしく悪魔だ!

あんなものの親戚がこの家にいるなど我慢ならんにもほどがある!」

銀は感情的になり、身振り手振りを加え雄弁に語る。

「事情は分かりました。銀が虫が苦手なのは予想外でしたが、」

「俺は虫が苦手なのではない嫌いなのだ!訂正を要求する。」

細かい男だなとは思いつつも、ここで突っかかってたのでは話が進まないと大和はその事を顔に出す程度にとどめ、話を続ける。

「で、なんで俺が明日雀と一緒に行動しないといけないですか?」

「なんだ、雀と一緒にいるのは、そんなに嫌か?」

「そうじゃありません、なんで銀が決めるのかって言ってるんです。」

「潤は明日大学のボランティアサークルの打ち合わせだろ、

大貴と千里は俺の中では問題外。かと言って、雀を一人で外で一日時間を潰してきてくれというのは、未就学児の初めてのおつかいより危険だろ。

だから湊かお前かと思ったが、そんなに嫌か」

「べ、別にいやじゃない、けど」

大和は雀の事を邪険にしているわけではないが、言葉に気を使いながら、雀の方を見ると、銀を睨みつけ頬を膨らましている、明らかに子ども扱いされたことを怒っている。

だが、その気持ちは大和も分かる。

例えば雀を一人で繁華街においておくなんて、自分がいつ爆発するか分からない時限爆弾を持って寝ている方がまだ安心できる。

「なら、いいじゃないか」

「ただ、銀が決めつける事が気に入らないつってるんですよ。

前々からその人を見下したような物いい。

辞めてもらうようにお願いしても聞く気はない、何様のつもりですか」

「もちろん、俺は俺だ、何も虚偽の立場を誇示しているつもりはない。

俺みたいな、イカれた人間は誰かの代表はなくいつだって俺でしかない。

何かを模しているわけでも、神や仏、君の親の威光を借りているわけでもない。

何様だと自分より上が、様をつけなければいけない程の存在だと何を思いあがっているのはどちらだ。君と対等に意見を交わすには立場がいるのか」

急に大和の言葉遣いが普段から見る影もなく荒々しくなった。

皆は大和のその様子にまた始まったと憂鬱な気分になる。

しかも今回は銀は銀でシロアリに気付いたことで爆裂機嫌が悪い。


大和は元々この寮に住む必要のない人間だ。

彼ら4人が島から出る前、大和はどん引きするほどの大豪邸の実家から銀に連れ出され家を出た。

そして、銀は彼の力を利用し、神鳴島の神社の本殿に閉じ込められた雀を連れ出させた。

その縁もあって彼は今でも雀の近くにいるが、

そもそも大和は銀の事が唯一といってもいいほど嫌いな人間で、時折、というか周期的にこうやって銀に対して敵意をむき出しにする。

もちろん悪いのは銀の方だが、銀が謝るわけでもなく、口出しすれば、理屈が通っているかは別にして銀に口で負かされ、その事で大和のイライラが増すだけで自体が悪化する。

だからしばらくすればほとぼりがさめる。

皆、口をつぐみ、二人が一緒にいる場合は必ず雀が一緒にいるかを確認する。

二人とも雀がいる前では、雀を不安にさせない為、それなりにブレーキをかける。

だが、今回は違う二人ともすこぶる機嫌が悪い。

「じゃあどうすればいい?頭を下げてご機嫌をうかがえばいいのか?」

「心がこもっていればそれも良いですが、そんな心のこもっていないお願いなどされても嬉しくありませんから、そうですね。

折角の機会です、勝負しましょう、それで銀が勝てば銀の命令に従います。

そうでなければ、、、」

大和の頭の中に、もし自分が勝った場合、雀を一人にさせるか、もしくは最悪銀と一緒にいる事になるのではないかと思い浮かぶ。

それは勝利の報酬としてはあまりに納得がいかない。

「どうした俺が負ければ、なんだ?」

「そうですね、一週間、朝晩皆と一緒に食事をとるというのはどうでしょうか?

皆で会話をしながら、ここで一緒に」

先週エアコンを取り付けた際にも、銀はみんなのいる前で、食事の準備をして大皿で全員分まとめて給仕はしたが、自分だけ、別で食事とをしている。

銀はいつも、わざわざ冷めたご飯と、冷えた汁物を食べる。

銀は食事に楽しさなど感じておらず、必要以上のものは不要と考えているからだ。

それどころか、普通に温かい食事をする事を人間味があるという事で、嫌っている。

そしてもう一つ何より銀が嫌っているのは、みんなで食事をした場合、後片付けは、2人で一緒に担当する。つまりは自分で使った食器を他人に片付けられるのだ。

それは銀にとって他人の世話になるという事。とにかく銀はそれが何より気に入らない。

なんともない事に思える事だが、銀にとっては本気になるに十分な理由だった

「言ってくれる、もし、明日遊びに行く金を出してくれ、事前連絡の不備を詫びろという事であれば、大和が怒る事にも一理あるからたまには負けてやってもよかったものを」

「嫌いでしょそういうの?えぇそうなれば、食事中ずっと話しかけてあげますよ。

銀が大っきらいな某日曜夕方のアニメの家族団欒のシーンみたいにね。」

潤ほか全員が、何がそこまで嫌なのか理解できないが、銀が本気で怒っている事だけは理解できた。

「いいだろう、挑発に乗ってやるよ、勝負なんだそっちの言うとおりに聞いてやる。

そしてもしおまえが負ければ3本勝負にしてやる。心に敗北を刻んでやるよ」

「いいでしょう、そうですね。それじゃ、それ、それで勝負しましょう。

カードゲーム、確か前に大貴と俺がやっているときに口出ししてましたよね。

さぞ強いんでしょうね。」

「いいだろう、後悔するなよ」

「大和、それは、、」

「もう遅いよ、乗ってきたのは銀だ、その軽率な判断を後悔させてあげるよ。

僕の目的は既に銀に勝って食事を一緒に取らせる事だだよ。手段は選ばないさ。」

大和は自分の部屋に、カードを取りに行く。

大和は、カードゲームはそのイラスト目的で小学生の頃からやっていたが、中学に入ってやらなくなっていた。この寮に来てからは大貴がいる事で、再びその心に火がついた。

大和が戻ってくると、銀は大貴のカードボックスからカードを選んでいる。

「何してるんスか?」

「見ての通りだ、デッキを組んでいる。後少し待っていてくれ、その代わり、先攻でも後攻でも好きな方を取ってくれ、」

「勝負になるんですか?」

「確かにそれは心配だ、そうだ大和、今のうちに君が勝てる次の勝負の内容でも決めていてくれ」

まるで自分が圧勝するかのような物言いを、

さも当たり前にする銀に、大和はムカつきを隠せない。

「大和君、余りイライラしないの、雀が怖がるでしょ。

それにこんな勝負負けてもいいなじゃない、勝負に勝っても、こんな事でムキになるなら、大和君の折角の男の格を下げちゃうわよ。」

「湊、気を使ってもらって悪いけど、僕は男である前に男の子なんだ。勝負に負けていい勝負なんてないんだ。」

「そうだ大和君やっちゃえ!」

「大和君、頑張って」

潤があおり、雀が応援する。

「はぁ、もういいわよ、でも、やるからには銀さんの鼻っ柱へし折っちゃいなさい。」

女性陣は一様に大和の応援をする。一方銀はそんな事を全く気にせず、よく集めたと感心しながら大貴のカードをあさって行く。

「俺、なんか銀さんの事応援したくなってきたわ。」

「セン、、、」

普通だったら、和を乱す銀の方が気に入らない千里が、大和と女性陣の雰囲気を見て見事なまでに鞍替えする。

「まぁ、応援されなくても、俺が勝つけど、」

「コレ、俺のお勧め、コンボ用のカードです。どうっすか?」

「千里の小細工なしの超攻撃戦士デッキも個人的には好みだが、これは大和に勝つためのデッキさ。カードの周りの良し悪しに関係なく、大和に勝つためだけのね」

そう言って銀は笑い、大貴は同情の眼で大和を見つめる。

「銀さん、手加減。」

「すると思うか?」

「まぁ、そうですよね」

十分後、デッキを組み終わった銀が、テーブルの上にシートを引き、カードを交換する。

「カードシャッフルしなくていいんですか?」

「別にいいさ、どうでも、どうせ勝つのは俺だし、お前のカードをいくらくっても変わらないしな、それより良くくっておけよ、いかさましてるかもしれないからな」

お互いのカードを戻し、まるで合わせたように声を重ね叫ぶ

「デュエル!」

「何、あの掛け声?」

「えっと、あれはこのゲームを始める時の掛け声っていうか」

「それもルールなの?」

「ルールはルールだけどむしろ、言わないと落ち着かないっていうか」

「ふーん。」

湊は聞いておいて興味なさそうに生返事をする

「銀さんがノリノリなのが理解しがたいわね。

後何、あのカードの引き方、あれもルールな訳」

「いや別にルールとかじゃないけど、自然に、そうなるっていうか、あ、あのさ興味があるなら今度教えようか?」

「いえ、全く、、」

「だよね。」

実益を伴わないと興味を持てない湊にこの魅力は伝わらない。

余程退屈なのか始まったばかりだというのに、湊は携帯をいじりだした。

一方勝負は1ターンを終え、銀の攻撃だが、銀は考え込むようにじっと大和を見つめる。

「なんですか?」

「大和先に言っておくが、カードゲームで受けた時、もう遅いといったよな。

俺が、怒りにまかせてお前の絶対強運を忘れているとでも思ったのか?」

「、、、」

「絶対強運、遠野家の血とともに受け継がれる幸福を司る才能。

神鳴島の神憑きと違うところは生まれながらにその力に発言し、何者かの力ではなく、本人自身の力であり、力の強さは個人に依存する。その中でもお前の力は格が違う。

もはや運ではなく、運命そのものを捻じ曲げ変える力だ。

俺はお前のその力、欠片も疑っていないし、その凄さは誰よりわかっている

だから俺はお前に頭を下げ、雀を奪わせた」

「嘘をつけ、頭も下げてなければ、雀を奪って来いなんて言ってないだろ、銀がしたのは神鳴島の伝統を教えて俺を炊きつけ、資格を譲渡して、俺が引けない状況に追い込んで、言った事といえばめちゃくちゃにぶっ壊してこいだ」

「そうだったか、まぁ、いいや、とにかくそこまでお前を高く評価している俺がまさかお前の絶対強運を考えずにこの勝負を受けたとでも?」

「分かってて受けたんですが?だったら残念でしたね。僕は、、、」

「今、手札にあるのは、、、」

銀は大和の手札を言い当てる

「そしてその伏せカードはトラップの、、」

すべて正解、まるで見えているかのようだ。

「そう、いつだって最善が手の内にある。だからそれが最善。

俺が今までお前のデッキを把握していないとでも?

そしてお前の力を把握していないとでも?

お前の絶対強運は絶対だ。もしもや揺らぎはない。

あるとすれば言葉で惑わし、そこにお前の意思を介在させることで選択を誤らせること。

そして、お前の運命はそのカードをお前自身がシャッフルした時点で誰もそのデッキの並びが分からなくなった。それでもそれはお前にとって一番都合のいい並びだ。

それはいくら俺がカードを切った所で変わらない。観察する事で確定する物理の世界の様に、お前のそのカードは俺が何をしようと、最善であると確定している。

だが、とは言え、量子や猫のように不確定なわけではない。

そうしてセットし始まってしまえば、変わる事はない。

お前の力であれば0.1%可能性があればいかさまさいころの勝負でも勝てるさ。

でも完璧なイカサマ師のテクニックの前ではもはや運も運命も介在する事は出来ない。

だからこそ、お前はあの時、神の目が仕切るイカサマなしの勝負に勝てたが、

もし、あれが人間相手の勝負なら、お前は負けていた。」

「回りくどい」

「このゲーム確かに運が左右する面もあるが運が絶対じゃない。それ以上にデッキ相性が重要だ。俺はお前のデッキを把握し、それに対抗するためだけにこのデッキを汲んだ。

だから例えばこのカード、相手の伏せカードから一枚選び、指定した種類のカードであれば墓地に捨てさせることが出来る。

例えばこのカード、カードの名前を宣言し、それが手札またはデッキにある場合無条件でゲームから除外し、相手に1000ポイントのダメージを与える。

例えばこの永続トラップ、効果対象の範囲は狭いがお前のデッキには効果は絶大だ。

通常の勝負であればリスクが高く使いづらいカード。

だが、おまえのその強運故、今ある手札が何かは手に取るようにわかる。

つまりは、俺はリスクなしにこのカードを使える。

そして、お前の運命はお前自身にしか影響しない。

もし当たりくじが入ったくじから交互に引くのなら俺に勝ち目はない。

でもこれはお互い別のデッキ。お前には相手の運を下げる力はなく、俺のカードをいくら切ろうが、それで俺のデッキの周りを悪くすることはできない。

つまりはこれで終わりという事だ。今日は俺も運がいいらしい。

さ、これで俺のターンは終わりだ。お前はおとなしく、その場にいるモンスターを生贄に召喚すればいい。そしてその手札の魔法カードも発動させればいい、モンスター効果ともどもそれで俺のトラップが発動して終わりだよ。」

今まで勝ちを確信していたのに、手の内すべたが読まれ、対策まで万全。

大和は銀が自分のカードを持っていない事で油断していた、だが、それも嘘に思えてくる。

全ては大和に対抗するデッキを違和感なく作るための嘘、

全ては大和に勝つためだけに、

全てを見通されているという事は、

全ての可能性は予測内、最善と思われる手こそ罠。

ならば想定外の中にこそ、可能性は存在する。

大和は銀の予見に反するようにあえて手札を温存し、自ら動くことを避け、好機を待った。

自分のデッキを読み切り、対抗したのなら、こちらから動かなければ耐える事は出来るはず。所詮は対抗するためのこちらの手段を封じる事を主眼に置いたカウンターデッキ。

最高のめぐりで常にカードは巡ってくるだが、今の手札は良くても銀のカードめぐりは常に最良ではない。時間経過とともに有利になるはず

「残念だけど、銀の思い通りにはならない。さ、これで僕のターンは終わりだ。」

大和は予見とは違い、ほとんど何もせずにターンを見送った。

「、、、、、、さ、それじゃ、これで俺の勝ちだ。俺が勝つために必要な後一つを教えよう、

それはさっきのターン俺が言った手を封じる事。

さっきのターン想定通りなら、俺は負けていた。

そう、これはトラップカードなんかじゃない、魔法カードだ、それも速攻じゃない。

ただ、伏せておくという事が重要だったのさ。

でも、その効果は絶大、流れは途切れ、お前の勝機は失われた。

お前はターンを重ねるたびに自分が有利になると思っただろ、だがそれは大きな間違いだ。お前は常にいつだって予想通りの事が起きる、それが当たり前、それが当然。

そしてそれを生かすために普通からするとピーキーなデッキだ。より効果的にその運を生かすために、そういうふうに変えていったデッキだ。だから想定外には対応できない。

僅からずれで崩壊する。ターンを重ねるごとに有利になるのはお前じゃない俺だ。

いまさら遅いぜ、行くぞ、俺のターン」

そして4ターン後、大和は銀に敗北する事になる。残りライフポイントからすれば惜敗のように見えるが、それでも、完敗、銀は勝つべくして勝ち、大和はなすすべなく敗北した。

「さ、これで先ずは一勝、次は何で勝負する」

さも勝利が当たり前のようにロクに喜びもせず、後片付けをし、間髪入れずに次の勝負を要求する。

もし銀が負けていたら勝負は終わり、大和が負ければ3本勝負という約束、

まるで銀の中では最初から3本勝負であるかのようなふるまいだ。

「卑怯だぞ。ルールもろくに知らないふりをして」

「そんなことしていないだろ」

「してただろ!自分のデッキも持っていないふりをしてカード大貴から借りて、俺を潰すために」

「俺は何事でも勝てるための手段をとる、お前のデッキを知っている以上、お前の力を知っている以上最初から、それに対抗する形で組まなければ勝ち目はない。それを卑怯と言われようが、俺の中ではそれで初めて対等な立場だ。この勝負の分かれ目はそこじゃない。2ターン目の俺の言葉でお前が選択を謝るかどうかそれだけだ。

それに大貴からカードを借りたのは、カードは持っていないからだ。集めるのにお金がかかるからな」

「嘘つけよ、カードも持ってない奴が、初めて使うデッキであそこまでうまく戦えるかよ。」

余程負けた事が悔しいのか、大和の言葉に強い感情がこもる

「あのさ、大和、銀さん確かにカードは一枚も持ってないのは本当だよ。ただ携帯ゲーム機で出ている方はやってるから、冬に発売されたカードまではほとんどすべてのカードを把握しているよ。それこそ大和よりも詳しい、使えて当然さ。僕から見て、さっきの勝負は公平だったと思うよ。」

「大貴はどっちの味方なんだよ」

「僕はどっちの味方でもないよ。だってこれは勝負だ。

たかがゲームというなら大和は熱くなるべきじゃないし、

真剣勝負だというなら銀さんが勝てるためのデッキを組むのは当たり前だよ。

僕が大和と勝負する時デッキの構成は変えなくても、戦い方は大和に合わせているそれは卑怯かい?相手を知っているならそれは当然だよね。

もし、銀さんが大和のデッキの内を知っていて、大和が銀さんのデッキを知らないのが不公平だというなら、それは筋違いだよ。大和は銀さんがデッキを組んでいるのを見て、甘く見たよね。それ以前にこのゲームなら銀さんに勝てると思って慢心したよね。

自分が負けるわけがないって、もし僕が大和の立場なら、前にデッキを知られている可能性がある相手が、自分の目の前で自分と戦うためにデッキを組みなおしているなら、僕も自分のデッキを見なおす。それが当たり前だよ。

ま、それでも納得がいかないっていうならもう一度カードゲームで勝負すればいい。

でも、一つ言っておくけど、銀さんは僕よりも確実に強いよ。」

大和と大貴では勝率は5分5分。

運の要素はあるとはいえ、それでも戦い方を知っていれば、負ける時は負ける。

大和は今からもう一度戦うにしても手持ちのカードで今以上のデッキは思いつかないし、まして頭の中にうまく立ち回る戦術もない。

そう、ここでもう一度勝負を挑み負ければいい訳のしようがないほど完敗だ。

運という力を使い、ただそれでも実力で負ける

だから大和はもう一度勝負を挑もうとはしなかった。


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