男を図るプレゼント
銀に相談して相談相手を間違えたと思った千里は話を聞いてくれる潤たちに事情を話す。
「なるほど、ねぇ、確かに、あれで喜ぶかは微妙だし、まだ仲良くなってないのに、いきなりあの大きさのぬいぐるみじゃ、好みだったとしても少し重いかな。」
「あ、あの、それじゃ、あの人形プレゼントだったのに、湊ちゃんが、、、」
「いいのよ、雀は気にしなくて、あんなもの大したものじゃないのよ。どっちにしろ、あげたところで引かれるだけだから。」
「な、何もそんないい方しなくても」
「そうよ。告白するまでわからないでしょ!私、セン君の事応援するよ。」
恋愛絡みだと潤の食いつきがいい
「えらくセン君の肩を持つわね。まぁ、かなわない恋をしているという点では潤の蜂須賀先輩と同じだからね。」
「ちょちょっと湊何言ってんの、私は、別にそんなつもりは、ただ、その、なんていうか」
潤の声がどんどん小さくなっていく
「で、でもどうしよう、、せっかくの高千穂君のプレゼント、、明後日が生徒会長さんの誕生日なんですよね。」
「別にいいんじゃないか?どっちにしろあげられないわけだし、
彼女たちに選んでもらって別のものを考えた方がいいんじゃないのか、」
大貴はキリがよくなったのかゲームをスリープモードにし会話に参加する。
「それじゃ、俺が心を込めて選んだ気持ちが伝わらないだろ!」
「、、なんだよ、それそう思って選んでるなら、最初から迷うなよ」
「あと、もう金がない!」
「そっちが本命かよ。」
「だってあれ定価1万500円割引聞いても6300円するだぞ。」
「うわ、高っ」
「でも、ぬいぐるみだからそれくらいしますよ。この間私、やまと君にもらった兎の奴、小さかったけど1500円くらいかかったって言ってましたから。」
大貴は知っていたそのぬいぐるみは、本当は原価400円しかしない事を、それが1500円もしたのはUFOキャッチャーで大和が苦戦し、
最後は大貴が取ってあげたためだ。つまりは500円3回×3の内、見るに見かねた大貴が最後の1回だけ助け舟を出した結果だ。
「、、、、さっき裁縫もできるって言ってたわね。できるんなら何とかしてあげてよね」
少しは責任を感じている湊が銀に頼む。
「別にかまわんが、このまま直しても、多少後が残るし可愛くない、そうだな、少し待て」
そう銀は部屋の隅にある新聞の束の中から裏面が空白の広告を取出し、何かを書き始めた。
「まぁ、色合いの悪趣味さは米国のセンスだ。あれはあれでありだが、日本人にはあの目が何よりきつい。だからまずは目を変えて、せっかくついたカッター傷も元に戻すことはできないからあえてそれを生かして、包帯を巻かせて、こんな感じでどうだ。」
さらさらっと書いたにもかかわらず、驚きのクオリティ、
満場一致心の中で「絵がうまい」「かわいい」と思ってしまう
「これは往年の名作ファンタジールランドのマスコットのムイムイオマージュですか」
「流石、大貴その年でレトロゲームまで把握する知識と、ここから推察するその洞察力指すがだ。」
あんたら1歳しか変わらんでしょうがと、潤は心の中で突っ込む
「ま、まぁいいんじゃないんですか。それで、でも本当に出来るんですか」
「問題ない、革から財布やバッグを作れとなると道具はないが、この布製品の程度の改造なら、すぐにでもできる。どうする?」
「分かったわ、お金は私が出すから、明日までに間に合わせて」
「?別に年下から金なんかとらないさ。待ってろ、すぐに直す。」
そう言って銀は最短距離で自分の部屋に帰りすぐ大きなボックスを持って戻ってきた。
そして慣れた手つきで、機械の様無駄のない動きでぬいぐるみの改造を始める
「でも、すごい道具ですね。趣味なんですか」
「趣味ではない、出来るだけだ。この道具は姉さんが残していったものだ。」
「姉さんって、え!銀さんお姉さんいたんですか」
「何故驚く」
「だって一人っ子ぽいし、どんな人なんですか?」
「?潤たちもあったことあるぞ、一番最初にここに来た時、君たちを船まで迎えに行った人覚えてないか?あれが姉ちゃんだ。」
「、、、、似てねぇ、、」
「まぁ、年離れてるしな。」
「残していったってことはここの寮出身者なんですか?」
「俺の前の管理人さ。大学を卒業して、就職するから俺が引き継いだ。
雀、その箱の中の左側にある白い布を取ってもらっていい?」
雀は言われるがままに箱を開けるとそこにはいろいろな形をしたボタンなどの小物などがたくさん入っている。」
「うわっ、何ですかコレすごい。」
「欲しいのがあったらあげるよ、うんそれ、少し持ってて。」
銀は雀に布の端を持ってもらい、ぴんと布を張ると、長さを図り手際よく裁断していく。
「お姉さんって裁縫に興味が?」
「というより、デザインとか物を作るのにかな。俺は壊す方が得意だけどな。」
「今日はよく喋りますね。」
「それは正しくない物言いだ。俺はいつでも口を開けば口数は多い。ただ自分の事を話す機会が少ないだ。ここでこうしていると手は埋まるが耳と口が空いている。
それがもったいないだけだ、黙れというなら黙るがどうする?」
湊は、だったら黙ってくださいと言いたいが、確かに少し気になるし、何より、周りの皆が聞きたそうな顔をしている為話を続けさせる。
「あの、私、皆さんよりも早くこちらに来ていましたので、銀さんのお姉さんにお会いした事ないのですけど、何をされてる方なのですか?」
「裁縫の趣味が高じて、外国語学部を途中で辞めた後、服飾の大学を出て今はウエディングドレスとかそういうの作っているよ。
今では外国で作るところが多いから、国内産で作っている所が少ないから東京。
本当はデザインもしたいらしいがそれはまだできないらしい。俺も去年から会ってないよ。」
「ウエディングドレス!マジで」
潤が勢いよく食いつく
「まぁ、それだけじゃなくてパーティードレスとかも作ってるみたいだけど、」
「銀さんもそういうのに興味あるんですか?」
「俺が興味があるかどうか、興味があるのか?」
「もういいです。」
「冗談だ、俺は興味はない、でも姉さんみたいに何か実際にある物を作れる人は尊敬しているよ。まぁ、俺はどちらかと言えばまだ機械とかのが興味があるかな、」
「機械ってことは、宇宙船とかですか?」
「まぁ、今の俺じゃ、全然無理だけど、でも、それはすごく楽しそうだな。」
銀は雀の言葉に嬉しそうに答える。
「さて、これでどうだ。」
作業を開始して1時間半、後半は黙って黙々と作業をしていた銀が完成した人形を、ぶつけるように放り投げ千里に渡す。
「すげぇ、イラストの通りだ。」
「可愛いわ。これ、ちょっと欲しいかも。」
「顔に似合わず、ね。」
「褒め言葉として、取っておくよ。」
「ところで結局センはそれあげるの?」
「、、、、まぁ、色々と考えたけど、物なんかに頼らず、まずは会長と仲良くなる方法を考えようって思うんだ。せっかく直してもらったこれは、その時が来たら渡そうかなって、」
千里は遠くを見つめるような目で窓の外を見つめる
「高千穂君かっこいいです。」
「雀、騙されちゃダメよ。カッコつけてるけど、渡せないって事だから。」
「まぁ、私は、気持ちわかるから何とも言えないかな。」
「予想通りだよ。セン」
「ヘタレが、」
「なんだよ。なんでそんな言われないといけないんだよ。じゃあ、ちなみになんだったらいいんだよ」
「だから物の問題じゃなくてお前がヘタレだって話だろ。」
「でも確かに、、気になるわね。ちなみに銀さんだったら何を上げる?」
「、、、、女性には花を、だろ」
「普通、、、、」
「うーん、外れではないと思うけど、正直高校生でそんなに好きでもない子から花束貰っても、そういうのはほらシチュエーション込じゃないと、というか銀さんは今面倒だからわざと花っていったでしょ。」
「欲しいものがあるならはっきり言う、気持ちが大事っているなら、何をもらっても文句は出ない。思いがけないサプライズが欲しいっていう馬鹿なら右ストレートで十分だ。」
「最低、、」
「俺は見ての通りジェンダーフリーだ。人間の性別に興味はない。」
「恋愛感情の欠片もない、人を好きになったことはないの」
「俺はいつだって俺が大好きだよ」
「そうじゃなくて、女性で好きな人はいるの。芸能人とかでも」
「、、、そうだな、、マーガレットサッチャー、エリザベス女王も好きだが、
やっぱり、オードリー=ヘップバーンかな」
「あの昔の映画の」
「そうだ、だが、映画の中の彼女ではなく、女優として引退した後だ。
彼女は晩年、貧困に苦しむ子供たちのため尽力した。
彼女は子供の為に怒り、そして泣いた。その姿は銀幕のどの姿よりも美しい。」
「銀さんってなに、熟女好きなの?」
「個人の資質に年齢は関係ないが、その雑誌の小娘の為の命令に従うつもりはないが、
先ほどあげた人たちならば、俺は命をかけて命に従っていいと考えている。」
机の上には見るからに銀が大っ嫌いそうな潤のティーンズ雑誌が
「もうあれね、趣味嗜好が変わっているとかそういう問題以前に物の考え方が違うわね。はい次、大貴君。」
「え、僕、僕もなの?」
「そうよ、ここにいるんだから、はい、早く」
「、、、、僕ならその使えるマグカップとか、そんな感じかな」
「、、、それは重いわ、、」
「え、なんで」
「だって日常的に使うものを恋人でもない異性からプレゼントされるのはちょっとね。」
千里に続き、大貴も落ち込む、大貴はあまり色恋沙汰には興味がないが、こう面と向かって駄目だしされるときついものがある。