(大和-運×雀)=クローズマイワールド②
「どうかした?」
「何か聞こえませんか?」
「何かって、、、ここら辺は日曜日でも建設中の建物も多いし、車の音もかなり、、、」
「こっちです!」
雀は大和の手を離し、建設中の建物に躊躇ないなく入って行く。
全面を鉄板で覆われ、その間につけられた扉を躊躇いなく、大和は入る事に戸惑うが、このまま待つわけにはいかないと雀を追いかける。
入った建物は、周りの建物とは違い、建設が中止されているのか、人がいるようには思えず、また最近まで工事をしていた形跡もない。
「雀!どこ」
「やまと君!こっちです。」
雀の声は敷地内の建物の中から聞こえる。声は陽が当たらない昼間でも薄暗い方向からしている。あの怖がりの雀が良くといいたくなる場所まで、、、
「雀、ダメだよ勝手に入っちゃ」
「やまと君、見てください。ネコさんの赤ちゃんです。あの、この子が、入口の近くで助けを呼んでたんです、追いかけてきたらこんなに、、、」
雀はすごく不安そうな表情で、子猫を抱きかかえている。
そして雀の足元には段ボールの中にタオルが敷かれ、そこには3匹の猫がぐったりしている。どうやら、捨て猫のようだが雀が抱きかかけている1匹以外、動物に詳しくない大和でも弱っていると一目でわかる状態だ。
いつからここにいるかは分からない。ただそれほど前ではないだろう、とは言え、生後間もないような子猫では衰弱は激しい事は動物に詳しくない大和が見ても明らかだった。
何故こんな場所に、見つけてもらう事よりも、捨てているところを見つかる事を恐れた結果か、大和はまだ見ぬこの子たちをここに捨てた飼い主に殺意に近い感情を覚える・
「あの、、やまと君!私どうしたら」
泣きそうな雀、大和に選択肢はなかった。
「大丈夫、落ち着いて。ここに来る途中、ペットショップがあった、ちょっとそこで聞いてくる。雀はココにいて」
「あの、私も行きます。」
「俺が走っていた方が早いよ。ごめん。」
大和は携帯で子猫の写真を撮り荷物を投げ捨てるように埃をかぶった床に置き、
携帯と財布だけを持って、ペットショップに走って行く。
おそらく、食べるものがなく衰弱しているのだろう。とは言え、どうしたらいいか分からない。大和が息を切らしながら、ペットショップにつくと大きな声ですみませんと挨拶をした。
ペットショップの中にいる人たちはその声に驚き、大和に視線が集まるが
大和の深刻そうな表情で、察したのか、店長と思われる男性が大和に近寄り事情を聴く。
大和は柄にもなく、慌てながら感情的に画像を見せて必死に説明する。
それを感じ取り店員さんは落ち着いた様子で状況を確認していく。
おかげで大和は落ち着きを取り戻す。
「画像を見た感じだと、生後1か月未満、目は空いているし、生まれて三日はたっているね。このくらいの子だと、まだ餌は食べられない、子猫用のミルクを哺乳瓶で飲ませてあげる必要があるよ。」
「願いしますそれに必要なものを下さい。」
「哺乳瓶とミルクで3000円くらいするけど、大丈夫かい」
「?もちろんです。」
「そうわかった。それじゃ、うちでミルクを作っていくといい。
後できれば、タオルか何かで包んであげて温めてあげる。
もし、ミルクを飲めないようなら、スポイトか脱脂綿に湿らせて、、」
「それをお願いします。」
「、、、わかった。君は捨て猫に必死だね。ちゃんと飼う覚悟はあるのかい?」
「家がそういう環境じゃないから飼えるか分かりませんが、でも助けたいと思いますし、見捨てたりはしたくありません。」
「そうか、分かった、もし、どうしても無理だったらもう一度おいで、こちらで引き取り手を探せるようにしてみよう。」
大和は何度もお礼を言いながら、また全力で、子猫の元に戻ってくる。
「やまと君!!」
「大丈夫、これミルク、」
雀は大和から哺乳瓶を受け取ると、残りの子猫に何度も少し待っててねと語りかけながら、ミルクを上げていく。
「良かった全部飲んでくれた。子猫たちがミルクを飲んでくれた。よかった」
ミルクをあげ安心したのか、急に泣き出した。子猫たちを持ち上げた時そのあまりの軽さに今にも消えてしまいそうな命の重さに雀は恐怖を感じていた。
だが、それでも生きようとして一生懸命ミルクを飲んでくれた事が雀にとって救いだった
「ごめんなさい。私、、」
「いい、大丈夫だよ。でも、まだ飲みそうだね、俺もう一度ショップに行ってミルク作らせてもらうよ。」
大和はもう一度ペットショップに走り、無事に飲んでくれたお礼を言い、落ち着いたら病気や生まれながらの疾患の可能性があるため動物病院に連れて行くようにアドバイスを受ける。そしてもう一度ミルクを作らせてもらうと雀の元へ戻っていく。
大和もこの状況となれば子猫は大丈夫だろうと思い。急ぐという点では変わらないが、先ほどまでとは違い心の余裕が出てくる。だが、結局あれやこれやで5000円近く使ってしまった。すでに変えるための交通費も若干足りない。動物園に行くことは無理だろう。
「やっぱり、今日は不運だな。いや、そうでもないか、あの子たちは生きている。今年は意外に大したことがないのか、それとも日付を読み違えたのか」
大和が戻り、もう一度、子猫たちにミルクを上げると、雀はペット用の毛布の中でおとなしくしているお腹いっぱいになった子猫たちの様子を嬉しそうに見ている。
そして雀昼を過ぎた頃、雀は予想外いや、予想通りの事を大和に告げる
「この猫達を飼う?」
「はい、」
「いや、はいじゃなくて、うちはペット飼えないでしょ。さっきも言ったけど、ペットショップにお願いするか、俺の実家で変える人を探すかとか、、」
「ダメです!この子たちは私がお母さんとして責任を持って育てます。」
「雀、命を飼うっていう事は大変な事なんだよ。」
「?何当たり前のことを言っているんですか?」
「、、、それにその子たちを連れて動物園に行くつもりかい?」
雀は大和を信じられないという目で見つめる
「大和さん、つらそうなこの子たちを連れて動物園に行くつもりだったんですか。」
「い、いや、そうじゃなくて、、、そうだ、それに銀が飼っていいっていう訳ないだろ。」
「それは、、、でも、説得します。」
「無理だよ、あの銀がいいっていう訳ない。」
流石に完全に自分の世界に入っている雀でも銀の関門は分かっているのか黙り込んだ。
「、、、、、、、ます」
「え?なんて?」
「だったら私ここに住みます!ここでこの子たちと一緒います!」
そんなことできるわけがないと事を言葉で、理屈で説得しようとするが、
雀は一切同意しない。こんなに頑固な雀は久しぶりだ。
飼うの飼えないの、そんなやりとりが約30分。
雀を説得しようとして雀から恨まれるよりも、雀の味方をして、銀を説得して飼えないまでも銀に直接雀を説得してもらった方がいいんじゃないか、そう思えてきた。
「分かったよ、とりあえず、銀に猫を連れて帰る事だけは言うからいいね。」
「分かりました。あの、駄目だったら私が銀さんを説得します。」
大和は雀を安心させるために銀を電話をかける
「あ、もしもし、俺だけど」
「番号を見ればわかる、用件を、というより、用があるなら直接来い」
「いやすぐにはいけないっていうか、あのさ、銀にお願いがあって、、」
「大声でわめくは、聞こえている。」
大和は建物の周りが防音壁で囲まれているとはいえ、工事の音や車の音が大きく思わず、大声て話していた、大和はさらに建物の奥、比較的静かな場所に移動し、声量を落として話を続ける。
「あぁ、ごめん、実はさ、今雀と一緒にいるんだけど、雀が、」
大和から少し離れた場所にいる雀を確認すると、その横にある資材が今にも崩れそうになっていて、雀はそれに気づかず、何気にそれを触ろうとしている。
「雀!駄目、危ない!」
その声に驚いた雀は思わず、後ろに身を引く、しかしそのせいで、足に資材があたり、結果、雀の目の前にある資材が雀に向って倒れ掛かってくる。
「おい、雀と一緒なのか、、おい!」
銀の電話を中断し、大和が雀を覆いかぶさるように、雀を抱きかかえ、資材の崩落から、雀を助け出す。大和は鉄のパイプで頭を打ち、少し意識を失いそうになる
「大丈夫?」
「はい、すみません。私、、」
「いや、無事で何より。」
大和は一安心し、電話を続けようとするが、自分の手の内にあった携帯がなくなっている。
とっさに崩れた資材の方を見ると、買って半年の携帯が、見事に壊れている。
「やっぱり、今日はついてないな。」
銀が怖がり離さない、雀の手を引いたまま、壊れた携帯電話を回収しようと立ち上がり、足を踏み出した瞬間、足元の板が割れ地面の下に落下していく。
そこは地下駐車場のための換気口を作るための穴の上、建築途中で中止されたため、そこをとりあえずべニア板で塞いでいた。そうとは知らず勝手に入った二人は、そこの上に乗り、先ほどの資材の崩落で傷ついたべニアはその重さに耐えきれず、崩れてしまった。
大和は雀を引き寄せ、望地一度抱きかかえるように庇い、背中を丸め落下の衝撃に備えるが、強く体を打ち、ぶつかった衝撃で、頭を打ち意識を失ってしまう。
次に大和が気が付いた時、自分の上に乗り泣いている雀の声だった。
「雀、、」
「大和君?よかった大和君生きてた。」
どれくらい意識を失っていただろう、雀はかなりの時間、意識を失った大和と一緒にいたようで、大和が気が付いたことで、さらに泣き出した。
「今日は泣かせてばかりだね。」
大和が体が痛む中、とりあえず、この状況から脱しようと、立ち上がろうとするが、体が動かない。というより、激痛で動けない。骨が折れているのか、それとも、何か別の理由なのか、大和は狭い空間の中で体の向きを変え動こうとするが動くことが出来ない。
「大和君痛いの?」
「少しね、それよりここどうなっているの?」
大和は状況を確認する自分たちは狭い空間に閉じ込められ、およそ3mほど落下したのか、
上には光が見えるが、見事に崩れた資材が覆いかぶさり、上の様子が分からない、それに自分の体の下、横には自分たちと一緒に崩れた資材蔽われ、まるで落とし穴に落ちたように身動きを取ることが出来ない、雀が自分の上に載っていたのも、そこにしか居場所がないからだ。体が十分に動くのなら、これだけ凹凸があるのだ、大和は上ることが出来ただろう。だが今の状態ではそれも不可能。
「あの!誰か、いませんか!」
大和が叫ぶが、この穴の中から、建設中の建物を抜け、防音壁を超えて、工事や車の音が騒がしい状況で、通行人に気付いてもらえる可能性は皆無だ。
それに大声を出すだけでも体は痛む
「まさかこの短期間で2回も落ちるなんて、ついてないな」
「ごめんなさい、私のせいで、」
「雀のせいじゃないよ、これはむしろ僕のせい。」
「いいえ、大和さんは何も悪くないです。」
「雀には黙っていたけど、今日は僕が一年間で唯一運が悪くなる日なんだ。
それも普通じゃないくらいらしい。そうでもしないと、偶然、資材が崩れそうになっていたり、偶然足場が崩れたり、偶然視界を奪うように覆いかぶさったりもしないさ。」
「でも私が、、」
「だから雀のせいじゃないよ。悪いのは俺だ。今日はそういう日だってわかってたのに、雀にそれを黙って、雀と遊びに行ける事がうれしくて、甘く見てた。」
大和は自分の下半身が動かす事もできず、痛みもほとんど感じない事に不安を覚える。
もしかしてさっきの衝撃で脊髄を傷つけたか、背中に感じる痛みに本当はどうしようもなく不安だが、それでも今は雀を不安にさせなことが大切だ。
「でも、今大切なのはどうやってここから出るかだ。
まずはそれを二人で考えよう。大丈夫絶対に出られるから」
その時既に、二人が閉じ目られて5時間がたち、日が傾き始めていた。




