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神鳴寮  作者: MASA
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5000円の有効活用

「ここに五千円があるとしよう、この金を今一番有効に使える方法とは何かを考えた。」

という訳で、俺は衣食住に困らないこの状況では、自分が一番満足できる心の充足こそが有効なお金の有効な使い方!それはそう、彼女の笑顔だ!」

そういって高千穂千里は居間のテーブルの上に大きなぬいぐるみを取り出す。

「で、この結果か、、何これ気持ち悪い、アメリカ人の感性じゃないか、、」

彼の親友で、同郷の由布大貴はその人形のなんとも言えない目と造形に引いてしまう。

全長70cmはあるその巨大さもあって不気味度倍増だ

「いや、俺もどうかと少しは思ったんだけどさ、あそこの雑貨屋で安く売ってたからさ。あそこならうちの高校で人気じゃん。」

「それはそうだけど、、たぶんそれでも売れ残ってたから安くしてたんじゃないのか」

「やっぱりそうかな、、だんだん自身無くしてきた。」

「ちなみにそれいくらしたの?」

「6300円、」

「馬鹿、、、、五千円超えてるじゃん」

「足りない分は俺の貯金から補ったよ」

「なぁ、銀さん。どう思う?やっぱりダメかな?」

畳の上に脚立を置き、エアコンの取付をしている宮司銀に尋ねる

「、、、どうでもいい、なぜなら結果お前はそれを、会長に渡せないからだ。

というかお前は女子か、相談じゃなくて『背中を押してほしいだけ相談』するんじゃねぇ」

「な、なんで会長だって分かるんすか!」

「高校生にもなってぬいぐるみが最も喜ぶという選択肢に入る者の中から、千里が惚れる可能性のある容姿重視の対象者、かつ、この時期にと考えると、あいつだろ。」

「銀さんも会長の誕生日を把握してるなんて、まさか銀さんも!」

「んなわけ、あるかボケ、ただでさえ惚れた腫れたに興味がないのに。あんな自己陶酔型の、自己中に好意を抱くか、ぶっ殺すぞ。それよりそこのリモコンで電源入れてみてくれ。」

大貴は机の上にあるリモコンで、エアコンのスイッチを入れる。

エアコンは問題なく電源が入り、銀は、風をチェックしている

「なんかいつもより、恨みは言っている言い方っすね」

「嫌いなんだよ。あいつは、人には自分勝手可能どうするないう癖に、自分が何か興味があれば、周りに無理矢理同意させて、皆で決めた事だとかほざきやがる。

しかもすぐに泣けばいいと思っているわ、

大したことじゃなくて悲劇のヒロイン気取るわりには、

同じ目に合っている人間には皆もつらいんだからと、いう癖に、

自分の場合は、自分の不幸話を始めやがる。

あいつの誕生日を知っているのは副会長が俺と同じクラスで、そういう話をしてるからだ。

わざわざ学校手誕生日パーティだと、んな事する暇があるなら仕事に一つでもしろってんだ。、もういいよ、消して、ありがと」

銀は脚立から降りて脚立を廊下に出し、エアコンの下に広げたブルーシートを折りたたむ。

「まぁ、とは言え、そんな事よりも顔が優先の千里があいつの事を好きになろうがそれは一向に構わないし、そういう変わったぬいぐるみでも、喜ぶ可能性は0じゃない。

あぁいう馬鹿は自分が愛されていると自覚すること自体を喜びに感じるからな。

だが、問題は千里がそれを渡せないという事だ。」

「あぁ、確かに、セン、いつもノリ軽いけど、マジな時ビビりですもんね。」

「な、俺のどこがビビりなんだよ!」

「じゃあ聞くが、お前、会長の家も知らなければ、さほど仲良くもないのにどうやって渡すつもりなんだ。」

「それは、、、、学校で、、」

「で、カバンに隠せないそれを、堂々と学校に持っていくと、それも、3年の教室か生徒会室か、いずれにしても人がいる前でそれを持ち歩き渡せる度胸があると、

なるほど千里、俺はお前の事を見なおした。お前の未来の彼女の事を悪く言ってすまなかった。それだけのことが出来る度胸があるなら、きっと釣り合うはずだ。

面の皮が厚い者同士、仮面夫婦もできるんじゃねか」

千里はぬいぐるみに抱きつ横に転がり、銀に傷つけられた心を紛らわそうとする。

「邪魔だ、後気持ち悪い。男がぬいぐるみに抱き着くな。どんだけ豆腐のメンタルなんだ」

「セン、銀さんに相談すりゃ当然そうなるよ」

銀は、千里を無視し見えもしない玄関に障子越しに目をやる。

「帰ってきた。」

ここは神鳴島と呼ばれる人口三百人程度の離島に暮らしている子供たちが、

高校に入学する際に合わせて入る学生寮「神鳴寮」。

学生寮と言っても学校公認ではなく、島から出てきた子供たちが親元を離れる為、

共同生活をするための場所で、昔は島所有の宿泊所として使われていた。

それより昔は、この大きな屋敷はそれなりの金持ちが、当時の「ハイカラ」全開で立てられた大邸宅で、現在は周りの建物より遥かに古く、遥かに大きな、時間が止まったような異質な建築物として、それなりに有名だ。

そんなコの字型の大邸宅を、現在は中庭を隔て、右を男子寮、左を女子寮として使用している。彼らが今いる中心部分は、男女関係なく共同スペースで、TVがあるのも、冷蔵庫があるのもここだけで、管理人以外は彼らは何もすることがない時は大体ここにいる。

そしてこの寮を管理しているのが、両親からここの管理業務を奪い取り、ここに住み着いた先ほどから口が悪い現役高校生、宮司銀だ。

ここの寮に暮らすのは銀も含め計7人。

銀と遠野大和以外の5人はみんな神鳴島の出身者。

3年間誰もいなかった島の出身者が去年から同時に5人も入学してきた。

先ほどからぬいぐるみを抱いている惚れっぽく、とにかく恋人が欲しい高千穂千里。

その親友で、ゲーム好きで普段は冷めているが、好きな事になると熱くるなる由布大貴。

「ただいま、男が3人集まって何を真面目に話してんのよ。」

そして彼女ら3人。

明るいムードメーカーで短髪がよく似合うスポーティーな印象を受ける烏帽子潤

彼女の名前は「じゅん」が正しい読み方だが、こっちに来てからは可愛くないという理由で「うるる」で通そうとしている。

「というか銀さんがいるなんて珍し、」

そしてその親友で両親は島出身者ではないが、彼女は島で生まれ、島の呪いを受けた

一番冷静で、口数の少ない八代湊。

「ただいま帰りました。本当だ、銀さんが皆と一緒にいるなんて珍しい!」

そして一番最後に入ってきて二人の影隠れてしまっている一番小さい子が祇園雀。

島の出身者だが、一番根深く、特殊な立場でありながら、島の呪いから解放された唯一の存在だ。

彼ら5人が神鳴島の出身の高校生だ。

彼らが受ける島の呪い、それは神憑きと呼ばれる力。

この神鳴島で生まれた命は須らく、神憑きと呼ばれ神仏妖の類を秘め生まれてくる。

それは人ならざる力を宿し、昔から、この島に住むものは化け物として恐れられ、神の使徒として崇められてきた。

国の法の上位に島の掟があり、この国もまたその事を知りながら利用している以上、彼らの掟と伝統を放置するしかなかった。

それどもまでこの島は特異で異質でそして絶大だ。

神憑きは生まれながらにその力を秘めているが幼い内は、普通の人間と変わりない。

だが、成長するにつれ、自分の内側から自分ではない別の意思の声が聞こえるようになってくる。

自分にしか聞こえない、自分ではない何者かの声、それが始まり、そうしてほどなく彼らは力に目覚め、普通の人間ではなくなってしまう。

姿を変える者、天候を操る者、未来を見通する者、心を清める者、魂を開放する者、その力のあり方は憑かれた神により様々で、おおよそ血脈で系統こそあれ、それは覚醒してみなければ分からない。

多岐にわたる神憑きは20歳前後でその力に覚醒し始め、25になる前には間違いなく覚醒する。

それは仕方のない事で、何百年も変わらない事でこの島においては、命が生まれるという事は、同時に新しい神がこの世に顕現されたというという事と同意義だ。

そして神憑きに目覚めた者が、人にあふれ、電波にあふれ、悪意にあふれた現代社会で生きる事は極めて難しく、過去に、とは言っても7年前にも神憑きの島のものが首都に出てきた際。力を暴走させ、多くの使者を出す大きな事故を起こさせたとさえされる。

故に神憑きになったものが、島の外で暮らす事は難しく。

彼らは高校、長くて大学程度までしか、島を離れて生活する事は出来ない。

だから彼らは今を満喫し、後悔しないようにと足掻いている。

ここはそんな彼らが親や島の束縛から離れ唯一の場所。

そして自分の意思で行動できる貴重な時間なのだ。

「なに、雀どうしたの?」

おどろき潤の影に隠れる雀を見て湊が訪ねる。

「高千穂君の所に、怖いのがいます。」

「怖いの?怖いのってなんだよ。よく見てよ、可愛いだろ!」

千里は雀に、その人形を近づけようとするが、雀は怖くて目をそらす。

すると、湊は躊躇いなくカバンから、カッターナイフを取り出して、千里が買ったばかりの人形の顔面の真ん中にカッターナイフを突き立てる。

驚きのあまり、声も出ない千里

「大丈夫よ雀、怖いのは私が退治したわ。」

「湊やり過ぎ。というか、カッター持ち歩くのやめなさいって言ったでしょ。」

「か弱い女の子の嗜みよ。安全神話が夢物語の現代社会じゃ、自分の身くらい、自分で守れなくちゃね。」

「な、何するんだよ湊!これ高かったんだぞ!」

湊は怖いが、自分のものを壊された千里が自分を奮い立たせ、その責を問いただすが、湊はそんな千里の頭を踏みつけ、顔の上で足をぐりぐりし畳に押し付ける

「何を言っているの、雀を怖がらせたでしょ。万死に値するのよ。

セン君は一応知らない間柄でもないからそれだけで済んでるのよ、ありがたく思いなさい。」

「、、、湊、そんな姿勢じゃパンツ見えるぞ」

「別にストッキング履いてるから、そんなスカートの奥まで判別できなでしょ。問題ないわよ、それにセン君なんかに見られてもなんとも感じないわよ。」

その様子をあーまた始まったとあきれてみる潤と、どうしていいか分からずおろおろする雀、そして、その様子をちらっと見ては知らないふりをする大貴

「大貴、お前今、羨ましいと思ってるだろ」

銀が大貴の様子を見てそうつぶやく

「な、何を、僕はそんな、」

「あら、大貴君も踏んでほしい訳?私さっきまでブーツはいてたから、足、匂いがするかもよ。それでもよければ踏んであげるわよ。踏んでほしいのは顔、それとも下かしら」

「、、、」

急に黙り込む大貴。

「おい、こら、助けろ!!銀さんも、助けろ、いや助けてください」

「あら、いい声で鳴くわね、その口の中に私の足をねじ込んであげようか」

「まったく、おいこら痴女。そういう事は、Mな恋人でも作ってしてろ、

下ネタ全開で不快だ、ぶっ殺すぞ」

「女の子相手にぶっ殺すなんて」

「俺は男女平等だ。俺の正義に反すれば、男女関係なく、潤と雀以外は、親であれ何であれぶっとばす!」

この男なら本当にやりかねないのが怖い

「ちょっと!なんで私だけ入ってなのよ!」

「お前だけ入っていないんじゃなくて二人だけが例外だ。

俺が顔を覚えている数少ない人間の中で、その二人は言えばわかるから、ぶっとばす理由がない。お前は人の話は聞かないし。自分の意見を絶対的だと信じてる。」

さっき会長の事を言っていたのと同じような事を言っている

「礼を尽くす相手には礼を尽くすそれだけだ。

だからよく分からない去年の前半までは優しく敬語で気を使ってやってただろ。」

確かに銀は第一印象と今の印象が違う。

「まぁ、まぁ落ちつて、ところで本当に銀さんがここにいるって珍しいですね。」

「俺はエアコンと室外機の取り付けだ。去年壊れたままだったからな、もうそろそろ暑くなるからそういう訳にもできないだろ」

「そんなのものできるの?」

「資格はいらないし、やるべき事は把握しているからな。」

「一応管理人なんですね。めったに出てこないけど。」

嫌味を込めて湊は呟く

「俺は一人が好きなの、管理人の立場を放棄ているわけじゃないさ。

湊も何かあれば言ってくれ、エアコンの取り付けから、PCの設定、裁縫、料理まで基本的にはなんでも大丈夫だ。」

銀は先ほどまでの悪態などなかったかのように湊に接する。

別に銀は湊に対して怒っているわけではない。

自分の行動原理に従って語り、行動しているだけだ。

「で、二人は何してたの?」


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