銀×雀=籠の中の鳥、檻の外の獅子⑥
そしてその日の夜10時
そんな事があったとは欠片も知らない大和の部屋をノックする音が聞こえる。
「はい、空いてるよ。」
大和の声にも反応しない事に不審に思いつつも、大和はドアを開ける。
そこにいたのは何と雀、風呂上がりで、Tシャツとパンツ一枚だった大和はドアの先にいるのが雀だと分かると、
雀が気づく前にいったんドアを閉め、慌てて、ズボンをはき、再びドアを開ける。
「どうしたのこんな時間に、それにこの寮の決まりで、雀は男子寮の方に来ちゃだめだよ。とうか鍵、どうしたの」
「マスターキーを勝手に借りて、」
「ばれたら銀に怒られるよ、で、どうしたの、急ぎの用事?」
内心は慌てつつも、不安げな表情をしている雀に気を使い優しく話しかける
「あの、、大和さん。今週末、急なんですけど、私と一緒に遊びに行きませんか」
「え、、、、えっとそれはどういう」
「だから私と一緒に、その前言ってた動物園に行かないかなって、駄目ですか」
「ダメじゃない、全然。分かった行くよ。絶対、マジで」
嬉しさのあまり言葉がむちゃくちゃになる
「あの、皆には黙っててくださいね」
「という事は二人で?」
「はい、あ、だめですか?」
大和は全力で首を横に振る、それにさっきから雀の恥ずかしそうな表情、何があったのか分からないが、明らかに勇気を振り絞って遊びに行こうといってくれている。
「デート楽しみにしてます。それから私頑張ってお弁当も作ってみようと思います。
だから好きなもの、あったら言ってください。」
「なんでも!なんでもいい!」
「何でもは困ります。」
「それじゃ、ソーセージ、それとおにぎり」
大和は料理をしている事を見た事のない雀に気を使う。
「分かりました沢山用意しておきますね。それじゃ、おやすみなさい。」
笑顔で手を振り、音を立てないように駆け足で帰っていく雀を最後まで見送り雀が完全に離れ、一人になったことを確認した大和は、それまで学校で、大きな声を出せて言われても、出したことのないほどの大きな声で
「っしゃーーー!!」
と雄たけびを上げる。
「大和うるせぇ!静かにしろ、銀さんにぶんなぐられんぞ」
雀が出て行った入口から、そのタイミングでコンビニから戻ってきた千里がその大声に驚きながらも、大和を怒鳴りつける。
「うるせぇ!誰が何と言おうと今の俺は最高にハッピーで、ハイで、今の俺は最高に無て、、」
「そうだな、最高に無防備だな、うるさい近所迷惑だ、黙れ」
銀は殴るどころか、静かに音もなく、迅速に大和の背後に忍び寄り、ジャンプし背中に張り付き、そこから全体重全霊をかけ、曲げた両足を伸ばし、大和を蹴り飛ばすというより、足で突き飛ばすようにして大和を吹き飛ばし、自分も後方に吹き飛び、着地を決める。
一方大和は、千里からすれば『死んだ!』と思えるほどの勢いで、凄まじい音を立てながら自分の方まで吹き飛んでくする。
「銀さん!やり過ぎですよ。」
「ふざけるな、今何時だと思っているご近所様に迷惑だろうが、それにそいつの大声に俺がびっくりして思わず、ビクッとなって、お茶をこぼしたじゃねぇか」
「銀さん以外に普通の反応だな」
「あんたは限度ってもの知らんのか」
「あ?やんのか?」
「ふふふ、俺はもうあんたとは違うんだよ。俺はもう大人、いや大人の階段を2段飛ばして駆け上がるんだよ。もう銀との子供じみたストレス発散の喧嘩だとかもう卒業したんだよ。それに銀もいい加減大人になれよ。失礼」
そう言って大和は、なぜか凄まじく上から目線で、自分の部屋に帰っていく。
「銀さん、、、大和頭」
「あぁ、少しやり過ぎたかもしれん。誰かに言うなよ、
言ったら俺お前を消さないといけなくなるからなぁ。」
「なんでそんな悲しそうな顔なんだよ。本気か、銀さん本気で俺をやる気か」
「でもさっきの大和、滑稽だけどムカつくな。やっぱぶっ飛ばそうかな、」
「あんたは本当に容赦がないな。悪魔か、」
「それはいい褒め言葉だが、どちらかと言えば『悪魔泣いていいの銀髪』のがいい。」
「そうか、それじゃ、まずは赤コートだな。」
「赤コートと言えば、、、」
銀と千里の不毛な会話が続く中、大和は一人、毛布を包み、それに抱き着き悶えていた。ニタニタが止まらない大和が、忘れるわけがないのに忘れないように、カレンダーに印をつけようとした時、大和は既にカレンダーにつけられていた髑髏マークで思い出す。
「あ、そう言えば、その日俺、、、、でもま、いいか、雀優先っと」
髑髏のマークの上から、大きな花丸を書き直す。




