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神鳴寮  作者: MASA
17/24

銀×雀=籠の中の鳥、檻の外の獅子⑤

「大丈夫か?」

「はい、すごく気分が悪いですし、これが夢か現実かどうかも分かりません。

でも何となく大丈夫かと聞かれると大丈夫だって思えます。」

「よく頑張ったな。」

そう言って、銀は優しく雀の頭を撫でる。

「あの、私どうしちゃったんですか?」

「俺はこの手の専門家じゃない、だから正確な事は言えないが、大和とのデートの日の次の日から、楽しさの熱が冷めて、思うところがあったのだろう、悩むことがあったんだろう、心ここに非ず。

雀の心が非常に不安定になっていたのは見て取れた。

こっちに来て確かに雀は自我を持ち、人としての当たり前の生活を行う事で、少しずつだが、雀の体から神を受け入れる素養は消えて、本来の祇園雀という人間が形成されていった。だが、どうしようもない事に先天的にお前の魂は普通の人より不完全だ。

俺は魂というものを信じていないが、それをこの場で否定してどうしようもない。

他の存在との親和性が高く、心が揺らぐと、そこから『何か』に付け入られやすくなってしまう。今回の場合、君の言う神か、それとも悪霊か、『何か』は分からないが、それが雀の中に入り込んで雀に揺さぶりをかけて、体を奪おうとした。

精神が不安定になっていたこともあるが、何か心当たりはないか?

直接的に考えられるものとして、お前を取り返そうとしてきた島の人間。彼らに接触されたり、不自然な出来事、出会いは?何かをされたとか、日常での違和感は?」

「いいえそういう事は、、前に一度銀さんに助けてもらった時からは、

あの時の銀さんのおかげでたぶん諦めたんだと思いますから、そういう事はないかと、

でもどうして私が憑りつかれてるってわかったんですか?

私も周りの皆も気づいてませんでしたよ。」

「違和感は感じていたさ、ボーっとしている事も多くなっていたし、

今日みたいに絶対にどんなに遅くなっても一人で帰ってきたりしない。

でも決定的だったのは、さっきから、大和の事を大和さんと呼んでいた。その呼び方は昔雀がこっちに来たばかりの頃の呼び方だ。

その呼び方大和が嫌がるからやめただろ。それをわざわざ戻す理由がない

まぁ、最初は君と大和の仲が進展し、お互いを異性として認識するようになったことに起因するかとも思ったが、それもどうも違うように思えた。」

「そういえばさっき私大和さんって」

「心に何かが侵入しても意識が奪われるわけじゃない。まずは意識を弱め雀という存在をまずは薄く使用とする。その為に意識を薄め、違和感を奪う、そして心を潜在的に不安定にさせて、さらに自分というものを拒絶させ、心を消して一番大事な心の支えを奪う。

最近変な夢見てたんじゃないのか?寝ている間の方が直接影響しやすいし、何より、お前が大和に嫌われるという妄想に対する恐怖は本物だった。」

「はい、よく覚えていないですけど、とても怖い夢を見てた気がします。それで大和さんに会うたびに、私怖くなって」

「今は大丈夫か」

「はい、本当にありがとうございます。でも、すごいですね、銀さん。

こんな事も出来ちゃんですね。」

「俺は除霊師ではないからな、君の中に入った『何か』を払えるわけじゃない。

でも、生きている人間にはそれだけで強い力を持っているらしい。

大和の家にいる本物がいうにはそれこそ心が揺るがなければ、誰であれ、どんな悪霊もつくことはできないらしい。俺の場合、我が強くてそれが尋常ではないとのことだ。

強固な自我と退社への絶対的な拒絶の成せる天然の退魔体質。例外だそうだ。

本職は労なく憑き物払えるが、俺の場合はそうはいかなし、それに何より、憑かれた相手が自分自身を強く持たない限り、俺の殺意は効果をなさない。

悪かったな、いろいろひどいことを言って、大きく揺さぶり不安定にする事、自分の意思の中で一番強い感情に働きかけて、自分自身を認識させること。

自己啓発っぽくて着ないな言い方だが、雀にはこれが一番効果的だと判断した。

俺の場合、これがないと払えないからな。

まだ無理に、起きようとするな。」

そう言って銀は雀が取ってきた熊のぬいぐるみを頭の下に入れ込み仰向けに寝かせる

「ジョイプライズ君は枕じゃありません!」

「名前つけてるのか?」

「いいえ、ちゃんと名札にそう書いてありました。」

銀は胴体に書いてあある素材表記の所の製造元名を確認する

「雀、それこのクマの名前じゃなくて、このぬいぐるみを作ってるメーカー名だぞ。」

「え!それじゃこの子の名前は?」

「だからつけているのかと聞いたんだ。ちなみにこのキャラクター名はお昼寝クマ、、何て読むんだグリZZZリー?」

「グリさんですね。すみません、グリさん名前間違えていました。ごめんなさい」

雀に突っ込むのが飽きたのか銀は雀を寝かせ、まな板を持ってきて夕食の準備を始める。

作業を始めて10分ほどたつと、雀は起きて、銀に話しかける

「あの、私も手伝います。」

「もう大丈夫か?」

「はい、もう全然大丈夫です。」

「全然大丈夫は日本語がおかしい。まぁ、いいや、手伝うんなら、ちょうどいい、少し教えようか?」

銀は雀を連れて台所に連れていくと雀に少し長めの、熊のエプロンを貸す

「わぁ、かわいい、これ銀さんのですか?」

「そんなわけないだろ、俺は汚れても問題ない。それは姉さんのだ。」

「似合います。」

「あぁ、可愛いよ。」

「、、、、っぷ」

「どうかしたか?」

「銀さんの口から可愛いって変な感じですね。」

「一つ言わせてもらうが、俺の美醜の判断は他のそれよりも機械的で標準に近いものだぞ。

ただそれに自分の主観はなく興味がないだけだ。

君たち3人の中で一番顔立ちが整って美人なのは、湊。

男が一番彼氏にしたいような明るくて笑顔が魅力的なのは潤。

そして見て言いてカワイイくて世話を焼きたくなるのが雀。

まぁ、バランスがいいんじゃないか?」

「それじゃ大和君たちは?」

「そうだな、

一番大人な魅力で、頼りになるし、男として魅力が異常に高いのが大和。

一番いい夫、いいお父さんになりそうだが、奥手で万人に優しいから婚期が遅そうなのは大貴。

一番友達に欲しくて、男女関係なくどんなことでも気兼ねなく相談できるのが千里。

そして一番顔がよくて、性格が最悪なのが俺。」

「ふふ、性格が悪いって自覚あるんですね。」

「天然でここまで、ねじ曲がれると思うなよ日頃の研鑽のおかげだ。

さ、それじゃ、無駄話は終わり、教えるぞ」

銀は手際よく、というよりまるで機械のように正確にレシピを教えていく。

言葉で言われても分からない雀だったか、実際にやって行く内に、だんだんと理解できて言った。

「雀はあれだな、とろいけど、上手だな。少し練習すれば、物になるな。」

「、、、、あの銀さんお弁当のおかずって言ったらなんですか?」

「なんだ?大和に作ってやるのか?」

「別にいいじゃないですか、」

「そうだな、一番メジャーなのは卵焼きかな、でも俺はおいしいとは思わないし、家によって甘かったりするからな、作ってあげるにはヴィジュアルのアピールは出来るけどあまりお勧めしない、特に砂糖入りだと、焼くの難しいし、後は唐揚げとかだけど、油使うから、気をつけろよ。というか雀、鳥肉にした味とかつけないといけないけど触れるか?」

「うー、見た目的にあれですけど、頑張ります。」

「ま、でも、実際、気持ちを込めて作ってくれたら、何でも嬉しいものだぞ、それこそ握っただけのおにぎりでもな。それにいきなりレベル高いの作ると後々のハードル上がるぞ」

「銀さんも嬉しいですか?手作りだと」

「俺は人から何かをされるのが大っ嫌いだからな。そうでもない。」

「ホント変わってますね。」

雀は、この目付きの悪いいかつい男が可愛いと思えくすりと笑う。

雀に笑われた事が、余計癪に障ったのか、それとも恥ずかしかったのか、銀はいつも以上に無口で、作業をすすめる。

「さ、次は?」

「後はしばらく弱火で放置、それで出来上がりだ。」

銀は何をするわけでもなく、じっと火の前に佇んでいる。普段であればこの時間に使った包丁やまな板を洗うものだが、この日に限っては何だかんだで雀がやってくれている為、

それをする事も出来ない。

する事がなく、自分の横で、雀もじっと鍋を観察しているのが耐えられなくなった銀が目線をあわせずに雀に話しかける。

「さっきさ、雀を追い詰める時、何もしなくても失っていくといったな。」

「はい、そうでしたね。」

「今のまま、変わらぬ事を望むのは無理だ。

でも、どう変わっていけるかは選べる。そろそろ、変わるにはいい頃合じゃないのか、

湊の事もある、そう遠くない未来に、俺も大和も変わらざる得ない。

花の高校生活、高校2年が一番楽しい時じゃないのか?これから後2ヶ月もしないうちに夏休み。先送りするにはもったいないと判断するぞ。」

「銀さん去年何もしてませんでしたよね。でもそうかも、しれないですね。」

その後、雀も銀も何もしゃべることなく、火を止めると、銀はいつものように、

皆と一緒に食べる訳ではなく、自分の分だけ、わざわざ炊く前によ超えていた残っていた冷えたご飯とりわけ、自分の部屋に戻って行く。


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