銀×雀=籠の中の鳥、檻の外の獅子③
「いいか、金の力は大きい。金という概念が人の社会を形成する上で必要条件であり、その重要性は言わずもがな、世の中の大半の問題は金で始まり、金で解決する。
人間関係の問題で、金で解決するほど安いものはないが、同時の見せた魔力で人を殺すことだってある。しかもそれは良くある事人の世界では理解出来る感覚だ。
雀もいずれは金を稼ぐために働く事になるんだ、それに何かをするためにも金はいる。
もう両親の金に手を付けようなんて考えるんじゃないぞ。
それに俺に頼りたくないなら、俺みたいに金を手に入れろ。
俺は自分で生きていけるだけの金を持っているから、両親なんぞとの縁も切れるんだ。」
雀の記憶に親はなく、親の愛情も知らない。そうなるように育てられた。
彼女が親というものを認識する事頃には、彼女の母親は既に死亡しており、
父親は誰ともわからない状況だった。
母親も、生前まともに自分の娘に会う事も出来ずに不遇な人生を送っていた。
それでも彼女の母親はほとんど顔を見る事も出来なかった自分の娘の為にわずかばかりのお金を彼女の為にと貯め、それを残していた。だからお金の大切さも知っている。
その残してくれたお金が、彼女が唯一両親というものの存在を実感できる『物』だ。
でも、それでも彼女がそのお金を使うことが出来たのは、そのお金を使う事が正しいと思えたからだ。
何のために母親がお金を残してくれたのか、
その疑問を口にした時、大和も、潤も、湊も、みんな同じように返した。
それは雀がお母さんから愛されていて、将来を心配して、少しでも幸せになってほしいと思っていたからだよ、と、
それが理解できた時、雀はお金の先にある親の愛情を確かに受け取る事が出来た。
だから、彼女は仕方がないと思える時、正しいと思う時お金を使う事が出来た。
それだけの覚悟をしてお金を使った。それは愛情を受け取り、申し訳なさと感謝の気持ちでお金を使った。でも、そのお金の使い方を銀は間違ったお金の使い方だと怒った。
そして銀はお金は力だと、お金があるから両親との絆を切ることが出来たと言った。
自分とは真逆の考え方。だから雀は許せなかった。
いつだって銀は正しい、でも今回だけは間違えているのは銀だ。
「幸せはお金で買えません。お金がすべてだみたいな言い方やめてください。」
「そうはいっていないだろ、そもそもお金は愛や幸せの比較対象ではない。
物は物、この世界、心は思考、頭の中の世界。
物質と非物質、心と物を比べているのはどこの誰だ。
時間を使い、体を使い、時に心を殺し、人はお金を稼ぐ。
それは酸素や水と同じ生きる為に必要ものだからだ。
綺麗な空気やきれいな水はいくらあっても困らないだろう。
でも必要以上には必要じゃない。お金も同じ。
生きるために必要で、あれば安心できるし、なければ不安になる。
まぁ、科学の進歩が人の心の成長を超えれば災いとなるように、
時に大金に飲まれ、金に使われ、身を滅ぼすような情けない輩もいるが
文明社会に生きるために金は必要なんだ。
世界は綺麗事では動かない、綺麗事を語るためにも実益が下で動く必要がある。
夢を語るなら現実を理解しろ、現実を直視した夢を語れ、」
「私嫌です、そういう何でもかんでも、お金で考える人は、お金がなくても人は生きていけます。そういうことを言っているから銀さんは冷たい考え方しかできないんです。」
「お金がなければ、死んでいる命が今もあります。同情では救えない命があります。
優しい心があれば、世界は平和です、愛があれば救われます。と裕福な世界に生きる人は語ります。でも愛なんかより、あなたがみんなにその愛を語る為に使っているお金をくださいそれだけで救える命があります」
銀は怖い目で、雀を睨みつける。
銀の語るそれは誰にでも言える事。でもそれはそれだけの事
でも、知ってしまった以上は銀にとっては地続きの世界。
そしてその『世界の狂気に対する憎悪』が銀の狂気の一因でもある。
「金を甘く見るな。徳を積むか、人望を積むか、金を積むか、知識を積むか、
年を取る程人は肉体的に衰え、容姿も変わっていく、
そんな中でスポーツ選手も、暴力を生業とするものも、美を生業とするものも、
年と共に肉体に頼らないそういう力が必要になる。その中で分かりやすい力が金だ。
これは好みの問題ではないただの事実だ。」
「私、初めて、人を本気で嫌いだと思います。」
「そうか、それは良かった。それに実にいい、そういう風に雀も怒れるのだな。」
銀は雀をじっと見つめる
「さてとは言え、この程度はまだいじめ足りないな。全く君と潤相手だとやりにくい」
「意地悪していたんですか?」
「まぁ、そう邪険にするな、理由がない訳じゃない、
人をいじめるのが趣味じゃないとも言い切れないがな、
さて、とりあえず、話題を変えよう。
先日の大和のとのデートは楽しかったか?」
本当に急に話題が飛び脈絡のなさに雀も戸惑う。
「、、、、デートじゃないですよ遊びに行っただけです。」
「いいや、あれはデートだ。実際君自身のそのつもりで楽しんでいただろ。
その事を君は帰って来てから意図的に否定していたし、
大和からもわざわざその言質を取っていた。あの会話違和感だらけだ。
本当に意識していないのなら、あの行はいらなかった。
なのに君は多少強引に否定的な事を皆に印象付けるためにあの会話を持ちだした。
それは何のためだ?
実際に君自身がそう思っていないから?違う。
大和の事が嫌いだから?違う。
そうしないといけない理由があるから、、、
君はいつまで今の関係を大和と続けるつもりだ。」
「どういう意味ですか?」
「君も大和の気持ちには気づいているんだろう。」
「、、、、何の事ですか?それより銀さん、そろそろ皆さん帰ってきますよ。
夕ご飯の準備をしないと、あ、そうだ、私も今日は宿題があったんだ」
立ち上ろうとした雀を無視して銀は話を続ける。




