大和×雀=ウイークエンドショッピングモールイチャラブ観察日記③
大和は一通り自分たちに会う服屋や雑貨売り場を見て回り、
どこに行くか迷っていると、雀が見かけの派手さからゲームセンターに反応する。
「見て!大和君、あれ!」
プレゼントを買ってもらい、幸せ度MAXに興奮気味に指さした先には、
以前雀にあげたウサギのぬいぐるみが、
まずい、あれはUFOキャッチャーで取ったことを言っていない。
「見てください!やまと君!やまと君にもらった兎の友達ですよ!
こういうところにもいますよ!」
よく見るとデザインが違う。どうやら雀の中では別物として認識されたらしい。
ゲームセンターには一度も来た事がなく、UFOキャッチャーも見た事のなかった雀は、近くでお菓子を取ろうとしているカップルをもの珍しそうにまじまじと見つめている。
「大和くん、すごくおっきいです、いつも買っているのと!全然違います!」
さっきの映画館と言い興奮冷めやらぬ、雀は周りの騒がしい音も相まって大声でしゃべってしまう。
その様子を温かく見守られることが若干恥ずかしい大和は、一旦雀を連れてはなれる。
「大和くん、ここ凄いです!TVで見た遊園地です!」
「いや、ここゲームセンターだから、どうする少し遊んでいく?」
「いいんですか!」
「どうせ時間余っているしね。」
雀は1回だけ遊ぶと決め、隅から隅まで何度も行き来し、どれをやるか迷う。
やってみたいのはいくつもあるが、レースゲームやガンシューティングは難しそうだし、ダンスゲームやリズムゲームはそれなりに人がいて恥ずかしい。
やるなら簡単そうなメダルゲームか景品がもらえるUFOキャッチャーだが、
メダルゲームは交換機で単価が高い事を知り、UFOキャッチャーに狙いを絞る。
だが、それでもそこからどれをやるかで迷い続ける。」
「今まで潤や湊とも来た事なかったの?」
「はい一度も、湊ちゃんはこういう所はうるさいし、時間の無駄だって、それに潤ちゃんは休みの日は大学のサークルに行ってますし。というより、あんまり3人でどこかに行く事はないですね。行くとしても図書館とか、後は散歩とかくらいですか、」
「休みの日は雀は何をしているの?」
同じ屋根の下には暮らしているが、女子寮と男子寮が分かれている以上、始終一緒にいるわけではなく、朝ご飯の時と学校から帰ってから居間で一緒になる事はあれ、
大半は自分の部屋にいるため、雀が普段何をしているか、知らない事ばかりだ。
確かに島から雀は連れ出した頃は、もっとずっと一緒にいたが、
今の雀からは想像もできないくらい無感情で、本当に人形のようだった昔の彼女を知っているから今の彼女の事が分かるわけでもない。
特に休日は、大和は実家に帰る事も多いし、そうでなければ自分の部屋で勉強しているか、大貴と千里と話してるか遊んでいるかだ。
「一人で、勉強しているか、あ、後は図書館で借りてきた本を読んでることが多いですね。私馬鹿な上に、世間知らずですから、少しでも勉強しないと、、」
雀はずっと神社の檻の中で暮らし、人らしい生活などしていなかった。その為、こちらに来た時には辛うじて読み書きはできるが、学力では普通の人よりはるかに劣っていた。
それではいけないと大和と銀は代わる代わるに彼女に勉強を教えた。
言われた事を大変な事でも辛いとも思わずに当たり前の事としてできた事、感情の欠落が激しかった事が功を奏し、彼女は驚くべき速度で知識を吸収し、何とか、大和と銀と同じ高校に入れるだけの学力を身につけることが出来た。
とは言え、そんな事をしたのはその時だけ、しかも高校受験対策に関する知識だけだ。
それ故、彼女には普通の人以上に勉強する事は沢山あって、今でも必死に勉強している。
「そっか、それじゃ、このモール自体にもあまり来ないの?」
「はい、前に皆さんと一緒に、買い物に来て以来ですから3回目ですかね。
必要なものはここまで来なくてもそろいますし、あまり来る用事ありませんね」
「湊はよくここにある服屋さんとか来てるみたいだけど?」
「あ、それたぶん湊ちゃんのクラスの友達だと思います。」
「ほんとに休日は一緒には遊ばないんだ。」
「学校や家で普段からずっと一緒にいますからね。どちらかというと寮の中で話すことの方が多くてどこかに行くことは少ないですね。特に潤ちゃんは私たちと一緒にいる時まで、どこかに行っていたら体もお金も持ちませんよ。」
いつも仲良し3人組だが、意外と学校や居間にいる時以外は接点がないように思える。
男3人組は、テスト前も、遊ぶ時も、どこかに行く時も3人一緒にいるのが当たり前だ。だが、雀たちは自分達より仲がよさそうに見えるが、四六時中一緒にいるわけではないという事が意外だった。
「だから私今日すごく楽しいです。本当に遊園地に来ているみたいです!」
こんな事で喜んでくれるなら、毎週だって連れて行きたい。
それだけじゃないもっと楽しい場所とか綺麗な場所とか面白い場所とか、
お金や遠出できる足があればと思ってしまう。
雀は迷いに迷った挙句、胴長の熊の抱き枕状のなぬいぐるみに的を絞る。
1プレイ200円で大型のクレーンの左右のアームを微調整し、そのまま降りたアームが少しだけ狭まり掴むというより持ち上げて落とすタイプの大型プライズ専用のゲーム機だ。
とても初めてで200円で取れるものじゃない。
大和は雀が取れなかった後、自分が代わりに取ってあげようと財布の中身を確認する。
大和は、ゲームはヘビーゲーマーの大貴とやっているためゲーム自体は得意だが、
プライズゲームは苦手で、メダルゲームではこれでもかと発動する持ち前の絶対強運も、何故かこの手の景品ゲームではその力を発揮することが出来ない。
つまりは大和にとってこのゲームは鬼門で、要は下手なのだ。
とは言えこれを取れれば雀の評価はさらに上がる。
大和にとってこれは、昨日の銀との勝負とは桁が違う真剣勝負。
雀がお金を入れていない状態で横でやっている人を見ながらボタンを押してイメージトレーニングをしている間に、銀は素早く両替機で、両替を始める。
帰りのバス代、食事代を考慮し残された資金は3000円つまりは500円で3回×6、18回で手に入れなければいけない。もし、ここでそれだけかけて失敗すれば、
雀の評価もがた下がりだ。
大和は覚悟を決め、両替を開始する。そして3枚目の千円札の両替を終え、元々小銭が入る場所がほとんどない財布パンパンに百円玉を詰めた時
「大和くん!見て見て!」
熊のぬいぐるみが足を引きずるくらいの低空で迫ってくる。
もちろんそれが何のかは分かっている。雀だ、雀が大喜びをして大きなぬぐるみを抱えて持ってくる。
「取れたよ!あのね、つかめなくてダメだと思ったけど、引っかかって落ちてきたの!」
「それは本来そういうものだよ、良かったね」
大和は財布を雀の死角でしまう。
興奮冷めやらぬ、雀は大和に必死に状況を説明する。
大和は自分の覚悟が無駄になった事よりも嬉しそうな表情と、タメ口で話してくれる事で大和のテンションもあげてしまう。そうして我慢できなくなり、雀の頭をなでる
「よかったね、凄いな雀は、」
「そうです!私はすごいんです。」
大和が頭をなでた事も少しも嫌がらず、自分だけに向けられた自慢げな笑顔、
「ごめん、雀、少しだけお手洗いすぐ戻ってくるからここにいてもらっていいかな。」
大和は雀に断りを入れ、トイレに駆け込むと誰もいない事を確認して、思わずに焼けてしまう。大和は雀にメロメロで、自分の自我を保つ限界だった。大和は顔を洗い、気を引き締め直そうとするが、どうしても口元がゆるんでしまう、それは大和の中のプランでは許されない事だ、なんとか軌道修正しようと、必死に頭の中を整理しようとする。
顔を洗い、自分で自分の顔をたたいて、気を引き締め直し、なんとか雀の所に戻る。
大和は雀が熊のぬいぐるみを必死に抱いているのも可愛いが、そのままだとまた自分がキャラを維持できないので、熊のぬいぐるみを持ってあげ、出来るだけ、雀の顔を見ないようにして、ゲームセンターを出ていく。
大和は出来るだけ直視しないようにしているが、大和の持ったぬいぐるみを嬉しそうに熊の顔をのぞきこんだり、ちょこちょこ触るさまが、それはそれでたまらなくかわいい。
「さて、そろそろ、食事にしようか?何か食べたいものである?」
大和は端の生鮮食品売り場に近づき、レストスペースにある時計を見て切り出す。
ここの近くにはレストラン街がある、少しお昼には時間が早いが込むのは嫌だし、何より雀は小食な上に食べるのが遅い、今から出映画の時間にはちょうどいいと考えた。
だが、しかしここで誤算が発生する。
それは雀が何でも構わないといった為、雰囲気を考え、自然を装い、事前に頭の中で最有力候補だった1980円のランチメニューに定評のあるイタリア料理店をチョイス使用しとした際だ。続けざまに雀はどうしても自分でお金を出すといいだした。
当然、断固でして大和はそれを受け入れる訳にはいかない為、雀の説得を試みるが、このままでは喧嘩になるという所まで、雀は引かない。
大和は仕方なくプランを変更し、100円セールをしているドーナツ屋を選択する。
雀は何かにつけてお金を出そうとする所がある。
そんな事は十分わかっていて予測できていたはずだ、なのに、自分は軽く考えていた。
雀にお金を出させた事、それは大和にとって今回最大の失態で、人生最大の屈辱だ。
今時そんな考え方はもはや通用しなし、ましてや未成年同士だ。
それでも、雀に対しては、同級生である前に、同じ寮の住民である前に、恩人である前に
理想の男でありたいと願う大和にとってそれは彼の信念と誇りに掛けて許されない事だ。
この過ちを繰り返さないように、次の機会にずっと頭の中でどうすべきか策と、言葉を考えシュミレーションし続ける
「そんなに迷いますか?」
自分の世界に入っていた大和に雀が話しかける、トレーとトングを持った状況では、何を食べるが迷っているように見えても仕方がない。
「ご、ごめん、(別の事を)考えてた、雀は決まったの?」
「私も迷います。食べてみたいのいくつもあって、、」
「雀はいくつくらいなら、食べられそう?」
「3つ、、頑張れば5個くらいは大丈夫だと思います。」
「無理に頑張る必要はないよ、俺もいろいろ食べてみたいし、それじゃ、3個ずつ頼んで半分ずつにしようか」
大和は雀に最初に選ばせ、その後、雀の目が言っていたものをチョイスする。
流石に大和はそれだけでは足りない、というか甘いものでは食事した気にはならないで合わせて麺類を注文し、お礼を言って会計を済ませ人目につきにくい窓際の席に座る。
大和は熊のぬぐるみを座らせ、熊の頭に雀の帽子をかぶせる。
「わぁ、大和くん、それ私も食べたいと思ってたやつだ。気が合うね」
それはそうだ、そうなるように選んだのだから、
「それじゃ、食べよっか、」
二人は手を合わせ、いただきますといい頭を下げる。
こういうお店でそういう光景が珍しい上に、雀の高い声と、大和の凛とした声もあり周りの視線が集まる。
大和は、箸で切るか、紙ナプキンでつかんで千切るか、どうやってドーナッツを分けようかと迷っていると、
「大和くん、はい、あーん」
雀は手でドーナッツをちぎり、大和の口に持ってくる。
大和もこれは予想外、横目で他の席を確認するとやはり見られている。
これは難易度が高過ぎる、大和は少し身をそらし、先に麺が延びる前にこちらから食べると言い訳し、雀の差し出したドーナッツを受け取る。そして間髪いれず、自分のドーナッツを箸で切り、雀の皿の上に置く。このままでは自分も同じことを求められかねない。
「やまと君のそれも、おいしそう。」
「辛口坦々麺だから、辛いと思うよ。」
「大丈夫、一口ちょうだい、」
大和は小皿を探すが、見当たらない、大和は器ごと雀に渡そうとする
「大和くんが食べさせて、はい、」
そう言って雀が口を空ける。
この子はわざとやっているのか、そういう気がしてくる。
「早く、」
大和は急かされ、長引けば周りの目がさらに気になると、さっさと雀に食べさせる
「、、、、ありがとう、これくらいなら大丈夫かな。」
どうやら一口もらって満足したのか、行儀よく、自分のドーナッツを食べ出した。
大和も大きく心の中でため息をつく。雀はこちらから話しかけなければ、無言で大人しく、食事をするため、大和は気持ちの整理の為に話しかけようとはしない。
大和も落ち着いて食べようと、した時、また重大な事に気づく、この箸はさっき雀の口の中に入った箸、その感触が手に残るほど、確かに雀の舌に触れていた。
箸を変えるか、しかし、ここで変えれば、まるで雀が使ったものは使いたくないと取られかねない、かといってこのまま使うのは、、、大和のプライドが揺れ動く。
『箸の反対側を使うか?それでは箸を変えるのと変わらない、どうする、、、
そうだ、俺は自分のプライドよりも、雀を傷つける可能性がある事を選ぶような人間か、
違うだろ、俺はそんな銀みたいな自己中な人間じゃない。そうだなんてことはない。
普段だってみんな同じ食器から取り分けているし、スプーンは誰も分と決まってないじゃないか、そうだ一度洗ったかどうかの違いだ、大した事はない』
大和は結論ありきで、自分を納得させる言い訳を考える。
「あ、」
雀は静かにしているがテンションは高い為、足をスイングさせながら食事をしていた。その為、勢い余り、サンダルが大和の方に飛んでしまう。
「ごめんなさい。」
「いいよ、」
大和はトレーの上に箸を置き、上体を曲げ、机の下にあるサンダルを雀の方に足で戻す。
「ありがとう、やまとくん、」
「ん、大丈夫?」
「うん、食べ終わったらちゃんと履き直すね。ありがと」
大和は体を戻し、食事を再開しようとした時、背中に何かが当たる音と地面に何かが落ちる音、その瞬間、大和は全力で己の迂闊を否定し、恐る恐る視線を音がした方に移す。
そこには箸が落ちている、テーブルの下を覗き込むために曲げた体を戻す際、テーブルに触れ、その振動で、箸が落ちてしまった。
己の軽率な置き方のせいで、箸が落ちた。
『どうする、拭いて使うか?汁物で割りばしなので、汚れは付きやすいが幸い床は綺麗だし、まだ落ちて間もない、それにここはドーナッツ屋さんの為、机に備え付けの箸はない。
変えるにしてもカウンターに持っていかないといけない。
それを面倒を装えばいける』
自己完結な理論で、再び結論ありの理屈を考え、箸に手を伸ばそうとする。
「あ、大丈夫ですよ、すぐに新しいものをお持ちしますね。」
そう言って店内を巡回していたスタッフが、大和よりも先に箸を拾い上げる
「ご、ごめんなさい、ありがとうございます。」
「いいえ、お気になさらず」
「よかったね、やまと君親切なお店の人で」
「あ、あぁ、そうだね。」
大和は平静を装い、雀に笑顔で答える。
だが、心の中には引っかかるものがある。
頭ではこれでよかったんだ、最善だと納得させようと必死だ。
だが、何だろう、時間がたてばたつほど、最初に差しただれたドーナッツを食べておけばよかったと後悔ばかりが頭を支配する。
その後二人が食事を終えた頃には、ちょうど上映時間になっており、
仲良くは映画館の中に入って行く。そんな2人を物陰から見つめる4人
「で、どうするんだよ。まさかあの映画を見るのか?」
「見たくもない映画にお金は払えないわね。」
「どうする尾行辞める?」
「湊どう思う?」
「私は別に予定ないし、どっちでもいいわ、そもそも潤が言いだした事よ。
自分でどうするか決めなさい。」
「う―――厳しいな、映画ってどれくらい?」
「子供向けだからそんなに長くないと思うけど、えっと上映時間は3時10分までだね」
「約1時間半か、、、あ、そうだ。4人でカラオケ行かない?」
「カラオケ?この時間から?」
「うん、1時間だけだけど。この近くに安い所のあるの」
「誰が歌うのよ?」
「みんな歌にきまってるじゃん。まぁ、たぶん一人2曲くらいになると思うけど、」
「私嫌よ。」
「えー、いいじゃん。湊すっごくうまいじゃん、」
「それに一時間だけって。」
「だって時間つぶしだもん。それに湊私が決めろって言ったわよね。二人はどう?」
「俺は別にいいぜ、丁度腹も減ってるし、あそこなら食べ物も安かったしな」
「僕、カラオケ行ったことないし、マンガとかゲームの歌とかしかわかんないよ」
「別にいい、全然おっけー、じゃあ、決まりね」
2時間半後、潤がノリに乗って、予想外に大貴のテンションが上がり、上映時間ぎりぎりに4人はショッピングモールに戻ってきた。
「間に合ってる?」
「残念、少し過ぎてる。もういないんじゃない?」
「うそ、マジ?」
「おい、あそこいるの2人じゃねぇ?」
千里が指差した先は、ショッピングモールから外が見れる休憩所になっているような少し突き出た空間。
「あ、ほんとだ、あれ?でも雀ちゃんなんか泣いてない?」
「大和が泣かせた?」
「いや、たぶんだけど、、、ほら、あの子どもも泣いてるから、きっとラストかなんかで感動か何かがあったんじゃないのかな」
大和は、膝をつき、雀の目線に合わせ、手で涙をふき取る雀の為に、バッグからピンク色の兎の絵柄のハンカチを渡す
「なんなんだのハンカチは、あいつあんな趣味なのか?」
「ふ、甘いわね、普段銀はハンカチなんか持ち歩かないのよ。
大和君も銀さんと同じで、指を切ってもセロハンテープ、服が破れてもガムテープ。
雨の時は濡れて帰り、掃除の時は洗えばいいと躊躇いなく溝に足を突っ込むような人よ。
つまりあのハンカチは雀ちゃん専用、ちなみに、私専用も持っているわよ、あの彼は。」
「なんなんだあの男か、」
「それは流石にやりすぎだよね。」
「ちょっと待ちなさい、私の時は無地の黒色だったわよ。どういう事よ!」
「、、、ピッタリじゃね?」
千里は湊に思いっきり叩かれる、だが、湊の力では千里には効かない。
「ちょっとそこいちゃつかないで!あ、ねぇ、あれ、、、」




