序章 始まりの物語
初めての執筆活動ですので、誤字脱字、分かりにくい文などあると思いますが頑張りますので楽しんでいただけたらと思います。
序章
その異変は突然だった。俺と妹の明穂は行きつけの公園で遊んでいた。
俺はその時7歳で明穂は6歳。とくに喧嘩をすることもない仲のいい兄妹だ。今日もいつも通りに明穂と遊んでいた。
その日はなんだか空が赤くなるのが早いなと感じたのを覚えている。公園の時計を見ると時間は4時半。
「そろそろ暗くなり始めそうだから今日はもう帰ろうか」
砂場で山を作り、自分と山を挟んで反対側に居る明穂に話しかける。
「え~もうそんな時間なの?あと少しでトンネルが完成しそうなのに~」
明穂はほほを膨らませむくれた顔を見せてきた。それでもしぶしぶ納得して穴を掘るのをやめたようだ。
「もう空が赤くなってきてるからね、また今度お兄ちゃんが手伝ってあげるからさ」
自分と妹の砂で汚れた手を洗ってから家に帰ることにした。
街はたくさんの走る人で賑わっていた。その時は気づかなかったけど、すでにこの時点で火が街を蝕んでいたのだ。
「何か今日は人が多くてにぎやかだねおにいちゃん!」
「そうだな、なにか近くでイベントでもあってるのかもな」
そんなことを話しながら、明日は何をして遊ぶかを明穂と話し合いながら家に向かう。
しかし、家に着くと自分の目を信じることが出来なかった。自分の家が火に包まれていたのである。
怖くなって俺は、一瞬で頭の中が真っ白になっていた。何も考えることができない。ただ赤々と燃え上がる炎を見ていることしかできなかった。
「どうして家が燃えてるんだ……」
ただそれしか口にすることが出来なかった。そこでつないでいる明穂の手から、震えが伝わってきていることに気づき我に返る。
「おにいちゃん、これ……」
「とりあえず離れるぞ明穂!近くにいると火に巻き込まれる」
その時、玄関の扉が燃え落ちて廊下が見えるようになった。そしてまた俺は目を疑う。廊下に父さんと母さんが柱に倒された状態で倒れていたのだ。
「お、お父さん!!」
俺は走り出そうとしたところで、腕をつかまれた。
「ダメだ那月くん!!行っては君まで巻き込まれてしまう!」
俺をつかんだのは向かい側に住んでる仲のいいおじさんだった。
「離してよおじさん!お父さんとお母さんが中で倒れているんだ、早く助けないと……お父さんたちが死んじゃう!」
俺は必死に叫んだが、おじさんは離してくれなかった。
するとこっちの騒ぎに気付いたお父さんが苦しそうにうめきながらも、声を上げて言ってきた。
「那月!早く明穂を連れてここから逃げなさい!もうお父さんたちはだめみたいだ……。お前たちの成長を見続けることができないのはほんとに残念だが……。いいか、お前が明穂を守るんだ。2人で助け合いながら生きるんだぞ!」
俺はもがきながら一生懸命に叫ぶ。
「そんなこと言わないでお父さん!今僕が助けるから!だからそんなこと言わないで……」
「那月!いい子だから今はお父さんの言うことをきいて……」
お母さんが目に涙を浮かべながら叫んでいた。
「お、お母さん……」
俺の声は涙声になっていた。理解したくはなかったけど俺はもうお父さんたちが助からないことを悟っていたのだ。
お父さんは俺の腕をつかんでいたおじさんを見て最期に「頼みます……」と言った。
そのあと俺と明穂を抱えておじさんは悔しそうに歯を食いしばり、その場から逃げだした。
するとすぐに家は音を立てて崩れ落ちた……
だけど、それだけでは終わらなかった……
それは突然目の前に現れた。
見た目は蜘蛛の形をしているが大きさが普通じゃなかった。頭からお尻までは1mくらいあった。それに肌は石でできてるかのように、灰色でゴツゴツしていた。そんな化物がよく見ると近くの家の壁や屋根の上に数匹確認できる。
今は数匹だけど囲まれるのも時間の問題に思われた。
そのことを悟ったおじさんは俺と明穂を下して言った。
「君たちは先に逃げるんだ……ここはおじさんが何とかするから、君たちは早く逃げなさい!」
よく見るとおじさんの足は震えていた。
「おじさんも一緒に行こうよ!」
「それじゃ、ダメなんた……いいかい?那月くんが明穂ちゃんを守るんだ。もう君たちを守ってくれる人はいない。だから那月くんが明穂ちゃんをしっかり支えてあげるんだよ。いいね?」
そういうとおじさんは声を上げて化物の方に走っていき、化物を引きつけながら走って行った。
こうして俺と明穂だけが残された。
俺はおじさんの言った通りに、明穂の手をしっかり握って走り出した。明穂はずっと泣いていたけど、自分が泣くわけにはいかなかない。
しかし、神様はさらなる不幸を叩きつけた。
走って逃げていると明穂が躓いて転んでしまい手が離れた。
その時、謎の影が自分と明穂の間を飛び抜けた。
影の正体は、またしても見たことのない化物だった。一言で言い表すなら、巨大な蚊みたいなもの。
その化物が俺と明穂の間を遮り、明穂に近づけない。
するさらに5,6匹の同じ化物が表れて明穂を抱えて飛び上がった。
「お、おにいちゃん、たすけてーーー!」
「明穂ーーーーー……」
俺は必死に明穂に手を伸ばしたが、伸ばした明穂の手に触れることはなく中を切った。
どんどんと明穂と俺の距離は開いていく。どんなに一生懸命走ったところで、追いつくことはなかった。
そのあとのことはよく覚えていない。気が付くと学生服を着た人達に保護されて、俺は助かった。
「お父さんたちと約束したのに……明穂を守るって約束したのに……」
俺は悔しくて泣いていた。そして誓った。
「俺が絶対に明穂を助ける」
するとこの部隊のリーダーみたいな人が近づいてきた。見た目は15歳くらいだろうだろう。
「お前は力が欲しいか?」
そう俺に話しかけてきた。
俺は相手の言ってることがよくわからずぽかんっとしていた。
「おい、聴いているのか小僧!」
俺はびくっと肩を震わせて、相手と目を合わせる。
「力……?」
「そうだ。お前が望むのなら、俺が鍛えてやる。もちろん、それなりの地獄を見ることになるがな」
すると、横からリーダーらしき人と同じくらいの女の人がリーダーに話しかけた。
「しかし、東雲隊長。勝手に助けた子供を軍に入れるわけには」
「そんなの俺の知ったことじゃねぇ。それにこいつが来るか来ないかはこいつ次第だ。それでどうするんだ?俺と一緒に来るのか?」
「お前についていけば、力が手に入るのか?」
「ああそうだ。お前を俺が強くしてやろう」
俺は、東雲隊長と呼ばれた男の目をしっかり見据えて言い返す。
「俺を連れて行け、そして今すぐ……明穂を取り戻せるだけの力をよこせ!」
それを聞いた東雲隊長はフッと笑う。
そしてあれから10年の月日が経った。
今や日本は全体の半分以上が崩壊した。
今日も俺は明穂を救うためだけにヘラヘラと、平和な世界で堕落する。