5話 真夜中の戦い
場所は変わり、屋上。
そこには、少年がいた。(正確に言うと、仰向けに寝そべっていた。)
本来なら、屋上は出入り禁止になっており、ドアにもしっかりと鍵が掛かっているのだが、三日前に少年が鍵を壊したのは、まだ新しい出来事である。
当然、屋上に無断で出入りしているので教師達に色々言われたのだが、それも最初だけであり、今では少年に何か言う教師は一部を除いてはいない。
実際、今は授業中なのだが教師達はそれを容認している。
やはり、最初は「授業にでろ」など、言われたが問題を起こし過ぎて、緊急の職員会議が開かれた。その中には、退学だ、停学だ、等の言葉があったが、そんな事を少年が知るはずもない。
そして、四時間に及ぶ話し合いの末、少年に処分が出された。その内容は、
――授業・試験等を免除する代わりに金輪際、授業・試験に関わる事を禁ずる。
と、いうものである。
簡単に言えば、免除してやるから、自分達に関わるな、という学園側の自己中な意見である。
屋上の件も自分達に関わなければいい、という学園側の暗黙の了解によって無視されている。
なので、少年は屋上で寝そべっている。
そして、こんな少年に関わりたいと思う生徒がいるはずもなく、少年は何時一人でいる。
無論――それは少年にとっては当たり前の事に過ぎなかった。昔、いや『あの時』からずっと一人で生き抜いてきた少年には当たり前の事だった。
そして、少年は空を見る。 そこには雲が一つもない青空があった。
しばらくそんな空を見て、
「・・・・・・・・・」
少年が何を思っているのかは誰も知らない。
時刻は進み、夜の学園。
既に教師・生徒は誰もいない学園の中を少年は歩いていた。(理由はただ、あの後寝てしまい、起きたら夜だった。)やることなどなく、普通に家に帰るしかないので少年は玄関を目指していた。特に幽霊やら侵入者などに遭遇せずに、普通に歩き、少年は玄関口に着いた。
玄関はガラス張りの押したり、引いたりするタイプのドアである。
少年はそのガラス張りのドアを引いた。
しかし、ドアは少し音が鳴っただけで開かなかった。 それもそのはず、ドアには鍵が掛かっていて、専用の鍵が無ければ開かない仕組みになっている。
少年はしばらくの間、押したり、引いたりしたが開く様子が無いので少し下がって腰を下ろし・・・
「・・・・・・っ!!」
ドアに向かって思い切り殴った。
だが、
「・・・・・・」
人を簡単に吹き飛ばす程の威力の拳を受けたにもかかわらずドアは割れなかった。割れなかった所かヒビすら入っていない。
この学園に使われているガラスは全てテロ対策用のガラスである。
なので、外側はもちろん内側にも当て嵌まる。
そして、このガラスを壊すには学園の一学年を集めて有りったけの魔力を使った魔法で壊せるかどうかぐらいである。
だから、いかに少年の拳が人を簡単に吹き飛ばす威力でも、学園の一学年の力を合わせた魔法に比べればその程度の威力にしかならないのである。
更に、念には念を押しておりこのガラスにはある魔法が仕掛けられている。
その魔法が質が悪い魔法であり、そして見事なまでに相性が良いため、一種の「絶対防御」といっても過言ではない。
しかし、そんなことを入学したての少年が知るはずも無く、何回もドアに向かっては殴っている。
そのまま、時間は刻一刻と過ぎていく。
それでもなお、少年は殴りつけている。自分の行動がドアをより「絶対防御」と呼べるものにしていることすら気が付いていない。
さらに、時間が過ぎても少年はドアの前にいた。
が、さすがに殴ることはやめており、ドアをじっと見つめていた。
このドアをどうやって壊すのかを考えていた。(別にドアにこだわらなくても脱出方法は存在するのだが・・・)しかし、いくら考えても壊す手段が考え付かなかった。
しかし、少年の顔は真剣になり、
「・・・・・・・・・」
そして、少年は一つの決断をした。
その後、少年は学園内を歩いていた。
ただ、ただ、普通に歩いていた。 そして、少年の後ろには先程まで少年がいた玄関が見える。少年の行く手を阻んでいた「絶対防御」と同等のものがあった。いや、存在していたはずだった。
しかし、その「絶対防御」といえたドアは綺麗に「切断」されていた。
少年は、そのドアを振り返ることなく歩いている。
予告していた通りに更新出来なくてすいません。これでも一様受験生なので色々あって手が付けれず今回は文も短めです。
次は何時になるかわかりませんがなるべく早く出来る様にします