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エグジスの極夜  作者: 素だと口が悪い人間
第一章 一部 孤高の少年と救われない少女
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2話  老人と少年と狼

(なんで、こうなったんじゃろう?)


ケイルナートは、そんなことを思っていた。


本来なら今頃は既に家に戻っているはずだったのが今は地面に倒れているのだから無理もない。(一番の原因は薬草を食べた事なのだが、)

それでも


(なんでこうなったんじゃろう?)


と、思わずにはいられなかった。

それと同時に先程の事を思い出していた。


最初は蒼銀の狼に喰わえらた時、終わったと思った。だが、蒼銀の狼は自分を喰わえて少し歩くと自分を放り投げた。身体が動くなら受け身も取れたが、身体が動かないから喰わえられていたので受け身など取れず思い切り地面に身体を強く打った。蒼銀の狼は自分を放り投げると何処かに行ってしまった。

その後直ぐにあの少年が来たのだ。

 来るなり、勝手に死人扱いするは、踏みつけてくるわで、見下してくるわで、むかついたのだが、

少年は見た目、十五、十六歳ぐらいであり、服は黒を基にしたジャケットを着ており、前にチャックが付いている。ジャケットの首もとには、フサフサの毛が付いていた。

一方、ズボンは、こちらも黒を基にしたジーンズであり、動き易い印象を受けるジーンズでもあった。顔は、目はつり目だが、全体的に整っていて、女性の服装なら女と言われても信じるかも知れないぐらいだった。そして何より印象的だったのは、髪は後ろに伸ばしてあり、長さは腰まであるが垂らしてはなく、軽い孤を描くように腰まである「銀色」の髪である。

銀色の髪を見たことが無かったからと言ってしまえばそれまでなのだが、それだけではないような気がした。そう、それは、少年にはなにやら得体の知れない・・・


 


 と、考えたところで、


 「おい・・・ジジイ」


 少年の声が聞こえた。

 それに対して、


 「おお・・すまんな・・ありがとう」


 ケイルナートは答えたが


 「・・・・・・・」


 少年は何も言わずに手に持っていた解毒草を投げた。

 



 ケイルナートがこの状況になった原因でもある「白い草」を。






 それを見て、ケイルナートは


 (・・・・・・・・毒草じゃん)


 思わざるをえなかった。なので、


 「これって・・・・毒」


 「喋る暇があるなら早く食え」


 「・・・・・・」


 ケイルナートはそれで何も言えなくなってしまう。

 そして、食べることしか道は無くなってしまった。


 (さらば・・・ウバルス)


この世界とサヨナラすることを決心して・・・

ケイルナートは目の前にある毒草を食べた。








◆◆◆


「食ったんならさっさと立て」


少年の声が聞こえてくるが、空耳だろう。

何故なら自分は毒草を食べたので死んだはずなのだが・・・


「いい加減早く立て、ジジイ」


まさか、死んでもこんなことを言われるとは、


「死ね」


なんか悲しいな、なんか思ってると、


「ぐふ!?」


何故か、頭に痛みを感じたので堪らず目を開けると少年が、またしても自分の頭を踏んづけていた。

しかも、今度は踏んだだけではなく頭をぐりぐりやってくるので、


「やめんか!!」


跳びはね、すかさず魔法を、


「アース・・ぬ!?」


放とうとした所で気付いた。

そう、先程まで全くと言っていいほど動かなかったのに今では普通に動けていることを

その事に疑問をもっていると


「・・・どうした?」


少年が聞いてきたので、


「あれは何じゃ?」


「・・・あれ?」


「さっきの薬草の事じゃ」


「さっき・・・・・・?」


「ワシが食べた薬草の事じゃ」


「ああ、『白氣草』(はっきそう)の事か・・・」


「白氣草・・・?何じゃそれは?」


「・・・・・・・・・知らないのか?」


何か憐れまれている様な気がするのだが、


「初めて聞いた名じゃ」


そう言うと


「・・・・・・あっそ」


 少年はそれだけしか言わなかった。


 「・・・・・・・・」


 「・・・・・・・・」


 「・・・・・・教えてくれんのか?」


 「何で教えなければならない?」


 「・・・・・・・・」


 白氣草(はっきそう)の事がすごく気になるが、少年の態度を見る限りでは教えてくれないだろうと判断したので、仕方なく別の話題にしてみることにした。


 「ま、まぁ・・・・とりあえず助かったわい」


 「・・・そうか」


 「とりあえず、お礼をさせてもらいたいんじゃが・・・」


 「・・・・・お礼?」


 「そうじゃ」


 色々とあったが結局はこの少年が助けてくれたので、お礼の一つや二つはしないといけないだろう、そんな事を思うと


 「帰れ」


 「・・・・・・・は?」


 「聞こえなかったか?・・・・・帰れと言った」


 「おぬし何を言って・・・」


 「お礼なんてどうでもいい。だからとっとと帰れ」


 ケイルナートは呆然としてしまった。お礼をすると言ったら、帰れなんて言われたのだ。誰であっても呆然とするだろう。

 少年はそんな事はどうでもいいと踵を反して歩き出してしまった。


「ちょ、またんかい!!」


ケイルナートはそんな少年を引き止めようと声を掛けたが対する少年は足を止め、肩越しにうんざりとした口調で、


「・・・・・・まだ何か用か?」


と、言った。


「あるわ!!バリバリあるわ!!」


「・・・・・・あっそ」


少年はまた歩き出してしまった。


「ちょっとまた・・・」


んか、と言おうとする前に草むらから音が聞こえてきた。正確には草むらを掻き分ける音である。

だが、この場合、人か魔物かの二択に絞られるが大抵は後者である。そして案の定出て来たのは、


「・・・グルル」


先程の蒼銀の狼であった。

 狼は草むらから出てすぐの所で止まったがずっとこちらを睨んでいる。

 そんな狼を見てケイルナートは、 


 「ホッホッホ、また会ったの」

 「グルルルッ」


 「今度は何じゃ?ワシを喰いに来たのか?」


 ケイルナートは冗談交じりに言ってはいるが目が笑っていない。


 「たかが狼ごときがワシを喰えると思っておるのかの?」


 「グルルルルル」


 「・・・・魔物ごときに話しても仕方が無いかの?」


 その瞬間、場の空気が一変した。

 木々や草が激しく揺れ動き、風の音さえ大きく聞こえる。さらには場の空気さえも震えだしている。

 この場の変化は、ケイルナートが殺気を放ったからである。 

 殺気は本来、相手に対して作用するものだが、大き過ぎる殺気は周りにまで影響を及ぼしてしまう。だから、強弱を付けたり数を限定したりするものなのだが、ケイルナートは何も抑えていない。寧ろ、全開で放っている。

 

 「・・・・・ほう、やるのう」


 しかし、ケイルナートは未だに立っている狼を見てそんな言葉を口にしていた。

 これまで、ケイルナートが殺気を放って平気だった者はいなかった。ある者は泡を吹いて気絶したり、ある者は発狂したり、またある者は殺気を放たれた瞬間にショック死したりと平気だった者はいなかった。

 だが、目の前の狼は何事も無く立っている。

 そして、そんな狼――魔物に苛立ちを覚えていた。

 ケイルナートは魔物が嫌いである。人間ならいいが、魔物ごときが殺気を受けても平然としているなら尚更である。


 「ガルルルル」


 「・・・・・・」


 そして、ケイルナートはそんな魔物を見て、次の行動を行おうと右手を上げた。すると、右手が光出した。そして、それを思い切り地面に叩き付け、









 「・・・・・・やめろ」


 ようとした所で、少年に腕を掴まれた。

 

 「なっ!?おぬし!?」


 「・・・・・・」


 「この手を離せ、小僧」


 ケイルナートは少年に殺気を放つ。

 だが、


 「・・・・・・ジジイ、殺すぞ」

 

 と言って更に力を込めて握り返した。


「なっ!?」

ケイルナートは驚いた。 何故なら至近距離から殺気を放ったのに普通にしているのだ。狼も凄いがそちらは距離が多少離れている。なのにこの少年は、何事も無い様に普通である。


「・・・・・・ジジイ」


少年がそう言うと更に強く握ってきた。


「・・・・・・今すぐやめろ」


「嫌じゃ・・・と言ったら?」


「このまま腕を折る」


「・・・・・・」


ケイルナートは右手の光を消して、殺気を抑えた。すると、それに伴って木や草、風も元通りになった。 そして、狼も何処かに行ってしまった。

全て何事もなく終わった。




少年の目が赤くなっていた事を除いては









「おぬし、学園に通っておるのか?」


いきなりジジイがそんなことを言ってきた。

先程躊躇いもなく殺気を放って、魔法も発動しようとしてたくせに、なに言ってやがるこのジジイは?。

俺は異変を感じてこの場所に戻ると、このジジイが周りの迷惑を省みずに好き勝手しようとしたから止めただけなのだが、


「・・・・・・・・・」


このジジイの変わり様が早くてイラついているのだが、このジジイが察する事は無いだろう。現にさっきから学園、学園と五月蝿い。


「・・・・・・」


「学園に通っておるのか?」


「・・・・・・・・・」


「どうなんじゃ?」


「・・・・・・・・・」


「どう――」


「黙れ」


流石に何回も言われると更にムカつくので言ったのだが


「おぬしが言えばすぐ終わる事じゃぞ?」


「・・・・・・・・・」


全く知らないジジイに何で教えなければならない?――なんて言ったら更にややこしくなるだろう。

ならリスクが少ない方を選んだ方がまだいいだろう。

そう決めると


「・・・・・・行ってない」


と、言った。


すると、ジジイは、


「そうか、なら」


一旦区切ると、こう言ってきた。










「魔法学園に行ってみないか?」

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