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エグジスの極夜  作者: 素だと口が悪い人間
第一章 一部 孤高の少年と救われない少女
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18話 尾行、踏み出せない一歩


 時刻は進み夕方。


 キョウヤは街中を歩いていた。

 街中は昨日、一昨日に続き大勢の人で賑わっていた為、かなり歩きづらいがまだ日があるため前のようなことは出来ずに普通に歩いていた。





 ◆ ◆ ◆ ◆


 (お、いたいた)


 刹那は、キョウヤの少し離れた所を歩いていた。

 何時もなら、直ぐにキョウヤの所に駆け寄る刹那だが、今日は駆け寄る事をしなかった。


 (こういうことは、あまりしたくないんだけど)


 刹那がキョウヤの少し離れたところを歩いている理由。

 それは、キョウヤを尾行する為であった。

 

 (悪いのは、私なんだけど)


 刹那がキョウヤを尾行している理由は、キョウヤの家を知るためだった。

 別にやましい事など考えているわけではない。

 

 (きっかけがあれば・・・)


 と、刹那はあの言葉を思い出す。


 『変わらない・・・お前は』


 という、キョウヤが言った言葉を。

 

 「・・・・・・」


 刹那は昨日キョウヤが言った言葉を自分で解釈して何時会ったのか思い出そうとしたのだが、思い出せないでいた。

 直接、キョウヤに聞けばいいだけの話であるが、それをするのは何故か躊躇ってしまう。

 何故かは分からない。

 けど、


 「と、危ない危ない」


 刹那が慌てたように言う。

 

 少し考え事をしてしまって、危うくキョウヤを見失いそうになっていた。

 

 (集中、集中)


 刹那は心で、そう思いながら前方を歩いているキョウヤに意識を向け直した。

 特にこれといった事も無いので、やはり何も思い出せない。

 しかし、


 (・・・何だろう)


 刹那はキョウヤを見て、不思議な感覚になった。

 何時もはキョウヤの隣によくいるためだから後ろから見るの珍しいからなのかも知れない。

 しかし、刹那の感じた感覚は説明出来なかった。


 懐かしい


 という感覚。

 それは珍しいという言葉で説明出来るものでは無かった。

 

 「・・・・・・」


 同時に思い出す、否、思い出してしまう。


 ある男の子を


 自分を唯一普通の子供だと言ってくれた男の子を。


 だけど、その男の子はもう。


 (と、危ない)


 また、考え事をしていた為キョウヤを見失いそうになっていた。


 (・・・私って集中力が無いのかな)


 考え事をしないと決めてたらまた考え事をしていたので刹那は、そう思った。





 「・・・出た?」


 刹那は不思議に思いながらそう言った。

 キョウヤを尾行していた刹那だったのだが、最初はキョウヤの家は街中の何処かだと思っていたのだが、そんな刹那の推測を裏切る様にキョウヤは希望の街『アルド』を出た。


 (珍しいなー)


 と、刹那は思う。

 刹那の知るかぎりでは街の外に住む生徒は一人しかいない。

 何故なら、『アルド』は都市にも勝るとも劣らない大きさの街なので普通に街中で暮らせるからである。

  

 (どうしよっか?)


 尾行は続ける事は出来る。ただし、祭で人が多かった街中と比べ、街の外には隠れる場所が無いのでキョウヤに見つかる可能性が高い。

 刹那は少し考えたが、やがて結論を出した。


 「ここで諦めたら、女が廃る!!」


 言って、刹那もキョウヤに続く様に『アルド』を出た。



 『アルド』の外は一面の野原であり、その中に一本道があり、人はその道を使って街を行き来する。

 当然、それはキョウヤも例外ではなくその道を通っている。


 「この位、空いていれば大丈夫なはず」


 と、言って刹那は先程より距離を取っていた。

 距離を取ってみてもキョウヤは普通に歩いている。


 (何処まで行くんだろう?)


 多少の距離は歩いているのでそろそろ着いてもいいんじゃないかと思うのだが、まだ着かないらしい。

 暫く歩くと一本道がY字に分かれた場所が見えてきた。


 「どっち行くのかな?」


 右の道に行けば次の街に続く道であり、左の道に行けば『メルスの森』である。


 「・・・・・・」


 刹那としては右の道に行ってもらったほうが都合がいい。

 しかし、キョウヤは迷う事などせずに左の道――『メルスの森』に続く道を歩いて行った。


 「うっ・・・」


 ここで刹那は足を止めた。理由はキョウヤが左の道に行ったからである。


 「・・・・・・」


 遅れてY字の道に着いた刹那は少し考えた。このままキョウヤの後を追うか、諦めるか。

 しかし、先程と比べ刹那の表情は暗い。

 

 「でも、・・・行かないと」


 行かないと分からない。刹那は本来の目的を達成するために左の道を歩いて行った。


 「・・・・・・」


 刹那に先程までの余裕は無かった。明らかに歩くペースが落ちていた。


 まるで、重りが付いているかの様に。


 「あっ・・・」


 何とか重たい足を動かすと『メルスの森』が見えてきた。

 キョウヤの姿はもう見えない。ただ、『メルスの森』に入って行ったのは分かる。

 

 刹那は歩き『メルスの森』の入口に差し掛かった。


 「行かないと・・・」


 刹那は暗い表情のまま言うと歩き出そうとした。


 しかし、歩き出せなかった。足が地面に縫い付けられたかの様に足が動かなかった。


 「・・・・・・」


 刹那は俯くと踵を返して元の道に帰っていった。


 「本当に、最低だな・・・私」


 と呟いて、刹那は『メルスの森』を後にした。

すいませんが、暫くテスト期間に入ってしまうため、二週間ぐらい投稿出来なくなってしまいます。


テスト期間が終わり次第直ぐに投稿しますのでご了承下さい。

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