17話 行き詰る捜査と視線
「いや、家に居たよ」
「そうですか・・・すいません忙しいのに引き止めてしまって」
「いや、気にすることはないよ」
そう言って、男性教師は何処かへ行ってしまった。
「全然ダメだなぁー」
刹那は大きく落胆したが、直ぐに「よし、次」と言って歩き出す。それに伴ってキョウヤも歩き出す。
「えーと、後残っているのは・・・」
「・・・・・・」
刹那は歩きながら考え事をしており、思った事を口に出して言っている。
キョウヤは相変わらず何も言わないが刹那と同じく歩きながら考えていた。
刹那の推測から、二人は先程から学園関係者に話を聞きまわっている。しかし、あまり進展する話は聞けていなかった。
「あ・・・先生」
と、刹那は前方に教師を見かけると一目散に走っていった。キョウヤは自分も走ろうか少し迷うが、先程から刹那と一緒に話を聞くと冷たい目で見られるので走って追いかけはしないで歩いて刹那を追うことにした。そして、自分が追い着いたときには、話が終わったらしく教師は何処かへ行ってしまった。
「どうだ?」
「全く」
刹那は大きな溜息をついた。
先程から始めてかなりの人数に聞いているが誰も同じ事しか言わないので刹那の気も滅入っていた。
「まだ続けるか?」
「・・・・・・うーん」
キョウヤに聞かれて刹那は少し悩んだ。
「・・・一旦止めて整理してみよっか」
「そうだな」
キョウヤと刹那は一旦聞き込みを止めて、屋上に戻った。
「今、現在分かっていることは、痕跡が少なすぎる事と学園関係者が怪しいってことだけだね」
「二つか」
改めて分かっている事を確認してみると、二つしかなかった。つまり、かなり勢いで調べていたということになる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
本当に勢いだけだったと、感じてしまう二人だった。
「何か、もう一つ分かる事があれば・・・」
「・・・もう一つか」
流石に、分かっていることが二つでは厳しい。しかし、もう一つといってもそれが分からないから今こうして二人は悩んでいる訳なのだが。
「どんな些細な事でもいいから本当に何かないかな?」
(・・・些細な事)
刹那の言っている事はもっともである。些細な事があればそれだけで少しは進むはずだ。しかし先程、色んな部屋を刹那と一緒に廻ったが何も出てこなかった。学園関係者が怪しいと言っても怪しいだけで確かではない。
(いや・・・待てよ?)
キョウヤは何か違和感を感じた。何かが違う。キョウヤはそう思った。しかし、その違和感が分からない。
だから、今分かっている事と先程の行動を思い返した。
(確かあの時・・・)
そして、一つ変だと感じる事が出てくる。
「一つ聞いていいか?」
「何?」
「さっき部屋廻った時って何も変わってないんだよな?」
「そうだけど・・・それがどうかした?」
刹那は何故キョウヤがそんな事を聞くのか分からなかった。
先程、部屋を調べまわったが何も変わった所はなかった。
「だったらなんで何も変わってないのに、無さ過ぎるんだ?」
キョウヤと刹那が部屋を廻って調べたが何も変わった事はなかった。そう、何も痕跡は無かったのである。しかし、刹那は痕跡が無さ過ぎると言っている。そこに、キョウヤは疑問を持った。
「えっ・・・言ってないっけ?ガラスが割れてたって」
「ガラスが割れてた?」
しかし、刹那はキョウヤの疑問に普通に答えた。
「ガラスが割れてたんだよ。この学園のガラスって最高級の物でさ、滅多な事じゃ割れないんだ。それが割れてたから学園側は侵入者がいるって思ってるみたいだけどね」
「それだけか?」
「うん、それだけだよ」
「・・・・・・」
キョウヤの疑問は直ぐに解決した。しかし、ガラスが割れてた事が分かった所でキョウヤは何も思い付かなかった。
「でも、変だよね?」
「何がだ?」
今度は刹那が疑問を感じたらしく、キョウヤに聞いてみる。
「何でガラスが割れてるんだろう?」
「・・・・・は?」
「いや、私の推測だといくら侵入者が凄くても、ガラスを割っただけで他に痕跡が無いっておかしいと思って、学園関係者なら物の位置ぐらい分かると思うから痕跡を残さないで出来るかなって思ったから学園関係者の仕業じゃないのかなって思ったんだけど・・・」
「・・・・・・」
「ここまで、痕跡が無いのに何でガラスが割れてるんだろう?」
「・・・・・・」
そもそも、侵入者の事は唯一の痕跡――ガラスが割れているから分かった事である。逆を言えばガラスが割れていなければ、誰も侵入者の事など気が付かなかったのである。
「ガラスさえ割れて無かったら誰も侵入者に気が付かなかったのに、何で割れてるのかなって」
「・・・そう言われると確かに変だな」
「だよね?誰がやったにせよ、割る必要なんて無いよね」
「割らないといけない理由でもあるのか?
「理由・・・」
完璧に痕跡を消しているのに、ガラスを割らないといけなかった理由は何なのか。キョウヤは考えるが何も思い浮かばない。
「割った所で意味があるのか?」
「最高級のガラスを割ったから、何時でも侵入出来るぞっていうメッセージ?」
「だったら割らない方がいいだろ」
「・・・だよね」
「ただ侵入する為に割ったは違うのか?」
「可能性はあるけど、そうしなくても侵入する方法は結構あるよ」
「・・・そうか」
考えれば考える程、分からない。ガラスを割る必要性を。
「・・・ただの悪戯か?」
「そんなわけ・・・・・・あるかも」
「・・・・・・は?」
キョウヤはただ単に思い付いた事を言っただけだったのだが、刹那が反応したので、少し驚いている。
「いや、もしガラスを割るだけの悪戯なら、痕跡は割ったガラスだけって事になるし・・・」
「・・・確かに悪戯ならそうなるな」
「ガラスを割るだけの悪戯なら、理由としては充分だけど・・・」
「・・・納得しがたいけどな」
「・・・・・・」
先程まで必死に考えて出た最終的な答えが――悪戯なんて答えに行き着いたのだ。もし、これが真実だったとしても、どうしても納得しがたいのである。
「今の所はここまでにしよっか」
「・・・そうだな」
二人とも今の所はここまでにして、また何か分かったら調べようということになった。
「そんじゃ、私は授業を受けてきます」
刹那は言うと屋上から出て行った。
キョウヤは刹那を見送ると後ろを向いた--正確には、下を見下ろした。
そこには、何時も通りの光景が広がっていた。
(誰だ・・・)
しかし、キョウヤは異変を感じていた。何時もの光景の中に存在する一つの異変を。先程からずっと感じている。
自分達を見張っている誰かの視線を。




