表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

少女は三つ編みと創作論を語ろう

作者: 森林樹木
掲載日:2026/03/01

「まあ、気をおとすなよ」


私は三つ編みになぐさめられている。

朝、玄関の扉を開けるとそこは森の中で、気がついたら家もなくなっていた。


「異世界転生ってやつ?」


死んではないか。


「いや、死んでないから、転生はおかしい。ここは、転移または転送と」


三つ編みの根元を掴んで、揺さぶってみた。

自分の髪の毛だ。


「痛い、やめて、くれ」


不安な顔をつくるのは得意だ。


「笑うといいぞ、ストレスを溜め込むのはよくない」


「私の考えを読んでるの……」


えーと、誰なんだろう、これは?


「ミッチだ」


やっぱり、思考を読まれている。


「その通りだが、その通りではない」


「じゃあ何?」


「俺はストーリーの強制力。このままではお前は死ぬ」



私は、私の三つ編み――ミッチに案内されて森の中を歩いてる。


「考えてもみろ、朝起きて、森の中だぞ。平然としているお前の方がおかしい」


確かに異常な状態なのに泣いたり、スマホを探したりしない方が変だ。


「お前は既に都合の良い物語の一部になってストーリーを推進している」


じゃあ、あんたは何なの?

人間の内心をきれいに表現できるなんてことがあるの。

自分でも判らないのに。


「匂い。感じないだろ?」


鼻から、大きく息を吸い込む。

感じない。

森なら、森らしい樹や土の匂いがない。


「もう、お前は物語の一部なんだ」


やっぱり、感情がよくわからない。

状況を淡々と受け止めてしまう。

本当なら、泣き叫んで、拒絶すべきなのだろう。

これが強制力?


「俺は、ナレーションなんだ。セリフが説明臭いだろ」


頷く。

都合がいい。

予想される状況に誘導されている気がする。


「本来、俺は地の文で喋るはずなんだ。それが、お前の髪の毛に固定されちまった。だから、ナレーションと強制力、内心の表現が混ざった状態にある。

ストーリーの展開上、お前は死ぬんだが。今の状況だと俺も死ぬ。

済まないが、俺を振ってくれないか?」


私は、言われた通りにミッチを振った。


「ぶるぶる」


なに?


「済まないな。物語の創作論が『説明するな、行動しろと』うるさいんだ。だが、私は髪だからな。それはムリだろ物理的に」


この髪、私なのに、私より感情面ですごい熱を感じる。


「これからも”行動”を説明するからな、その時はよろしく頼む」


ここは頷くべきなんだろうか。


「俺の死に対する緊迫感が足りない? よく言われるんだ。そんな時、言ってやるんだよ、お前は死んだことがあるのかって。そんな物無くたって、物語は進むんだってね」


私は、目を細めた。


「ほら、明るい場所に出たぞ。村まではあと少しだ」


私は歩き出す。


「あと、これは短編だから、オチはないからな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ