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幼馴染の妹はとびきり可愛い、互いに兄妹の様に思っていたのが変わるまで。

作者: towa
掲載日:2026/02/12

「お兄ちゃん……私……」

「メアリー、ぷ……ぶぶっ……あはは。お前……悪役令嬢と呼ばれているぞ」


 腹を抱えて笑う兄ハミルトンと妹メアリーは仲良し兄妹である。本日も家で仲良く課題をこなし休憩中である。



「うっ……お兄ちゃん……知っているわ。どうして私が悪役なのよ。どちらかと言えば、あの女が悪女じゃない」


「おい、おい。一応クレアは王女だろ。ほら噂では2人は想い合っているのにお前がマイケルを離さないからと……2人は何だっけ?」


「『真実の愛』だそうよ」


 不貞腐れてソファーに座りお菓子を摘む令嬢はメアリー17歳である。向かいに座りニコニコとしている男は兄のハミルトンである。


 メアリーは現在、高等学園の2年生で16歳である。淡い栗色の髪にピンク色の瞳、色白で可愛らしい顔のメアリーは1年生の夏に恋人ができた。相手は1つ歳上の騎士団長の息子マイケルである。現在は進級し恋人のマイケルは高等学園の3年生となった。昨年の夏に街で男達から絡まれるメアリーを助けたのがきっかけとなり、メアリーに一目惚れをしたマイケルの告白から付き合う事となった。当時メアリーはマイケルが騎士団長の息子であり、マイケルが兄のクラスメイトである事を知ったのは兄にマイケルを紹介した時だった。仲良く恋人期間を楽しむ2人の間に入ってきたのがこの国の王女クレアである。


 王女クレアとマイケルは幼馴染であった。王女クレアはマイケルに恋人ができた事を面白く思っていなかったのだ。

 


 新学期が始まり三年生となったクレア王女は隣国の王子との婚約が発表された。クレア王女の邪魔が激しくなったのも同じ頃である。昼休みや放課後にメアリーはマイケルと2人で過ごしていると何故かクレアがやって来てはマイケルと楽しそうに2人で話しをするのだった。


 クレアはこの国の王女であるが故か金色の波打つ美しい髪と大人びた身体付きであった。



 本日も同じく放課後に校庭のベンチで来月の夏祭りの話していた際もクレアはやってきた。そして、私を無視しマイケルと話だす。


「あら、メアリーさん。すいませんね。貴方は知らない話だからつまらないわよね」


「……いいえ。大丈夫です。マイケル様、私は帰りますね」

「あ、メアリー待て」


「マイケル、来週の事だけど」

「クレア、そのことなら違う日にだな」


 クレアはマイケルの腕にしがみ付くのであった。

「おい、クレア離れろ」

「いいじゃない」


 メアリーは戯れ合う2人の様子を見て、その場を去るのであった。



 家に戻り兄とお菓子を摘むメアリー。


「はぁ、結句マイケル様と夏祭りの約束もできなかったわ」


「そうか、あくまで噂だろう。マイケルはメアリーを好きだからな」

「そうだといいけど……」


「さぁ。もう少しだけ頑張ったら終わりにしようか」

「そうね」


 勉強部屋の2人は現在、他国の言葉の勉強中である。王都1の商会の子だ。将来の為に学びを深める努力家の兄妹であった。



 それから2週間が過ぎた頃からマイケルの様子がおかしいことに気付く。 そして翌月の夏祭りはマイケルから用事があると言われ一緒には行けなかった。


「マイケル様、最近忙しいのね」

「すまないな」


 最近は放課後、顔を合わせても会話は少なくなっていた。メアリーは勇気を出しマイケルに尋ねる。


「あの……マイケル様。クレア様とは」

「ん? クレアとは幼馴染だよ。心配するような事はない。ただ最後の王都での思い出が欲しいみたいなんだ。すまないな」


 そう言うと足早に去って行くマイケルであった。


 その日の放課後、メアリーは図書室で勉強をしていると、勉強している1組の女子学生がヒソヒソと話をしている。メアリーがいる事には気づいていないようだ。


「最近、クレア様とマイケル様が一緒にいますわね。仲睦ましく見ている私までうっとりしてしますわ」


「そうね。でもメアリーさんとは別れたのかしら」

「この前も街でクレア様とマイケル様が一緒にいるのを見たわ」


「いつの間に仲良くなったのかしらね。でもメアリーさんとマイケル様は仲が良かったけど最近は一緒の所を見ないわね」


「ほら、マイケル様は王女の幼馴染でしょ。ここだけの話、クレア様は取られたのが面白くなかったのかもしれませんわね」


「メアリーさんも可哀想にね。相手が王女ですから……」


「そうね、メアリー様は何もしていないのに2人を邪魔する悪役って事かしら。でも王女は隣国へと嫁ぎますわね。思い出作りかしら思い出作りが終わったらマイケル様はメアリーさんと? ちょっと不誠実ですわね」


「今回はクレア様から近づいたけど、クレア様は王女だからね。メアリーさんは……そうね、可哀想だけど悪役令嬢として2人の愛のスパイスとなるしかないわね」


 


 ガタンっ

「あっ……メアリーさん……あの」


「失礼します」


 メアリーは教科書を片付け図書室を後にするのだった。



 ◇◇◇◇


 メアリーはマイケルと付き合って、1年が経つ半年後には兄ハミルトンやマイケル、そしてクレアは卒業である。

 図書館で聞いた話に悲しくなりながら家に戻る。





「お兄ちゃ〜ん」


 兄ハミルトンの自室にノックなしに飛び込むメアリーであった。


「ん? メアリーどうした?」

「……お兄ちゃん」


 



「おや、メアリーどうしたのだ?」

「アレク……夏祭り以来ね」


 兄の親友で幼馴染であるアレクシスも遊びに来ていたのだった。


「メアリーどうした」

「ハミルトンの可愛い妹は何故、悲しそうな顔をしている?」


「お兄ちゃん……マイケル様とクレア様は想い合っているの?」


「……メアリー。その事だが、どうやら2人は何度も2人きりで会っている。夏祭りも2人で行ったようなんだ。メアリーはマイケルの事をまだ好きなのか?」


「最初はね……今はわからない。ずっと忙しいと言っているの……最近は会話も……私は嫌われたのかしら」


 涙ぐむメアリー。


「メアリー、おいで」


 立ち尽くすメアリーの元に来るのは兄ではなくアレクシスである。


「アレク?」

「アレクシス。メアリーは私の妹だ。俺の目の前で抱きしめるな」


「メアリーが可哀想ではないか。しかし、あの2人には困ったな」


 アレクシスはメアリーの頭に頬を寄せ自分の腕の中に抱き寄せ、頭を撫でる。そしてそれを大人しく受け入れるメアリーであった。


 兄ハミルトンの親友で幼馴染の彼アレクシスは、昔から兄の元に遊びに来ておりメアリーとも遊んでくれる兄の様な存在である。


「クレアは、卒業後は隣国に輿入れする。国王らは卒業までの間だからと放置している。メアリー、マイケルの事が好きならば今の状況を我慢するしかない」


 兄はお菓子を食べながらメアリーに話すのだった。


「でも……」

 メアリーを抱き上げ、ソファーに座るアレクシス。膝の上にはメアリーを乗せたままである。


「アレク……私は子供ではなくてよ」

「知っているよ。ほら、お菓子だ、王都で流行りと言っていたからメアリーに買ってきた」


 メアリーの口元に運ぶのはマカロンである。


「メアリーはピンクが好きだろ」


「……(パクッ)美味しい」



「おい、お前らお兄ちゃんの前だぞ。しかもメアリー、恋人ではない男からの餌付けに食いつくな」


「あはは、そうだったわ」


「さて、口煩い兄を持つメアリーはクレアとマイケルが浮気をしていても期間限定だと割り切り我慢できるのか?」


「嫌よ……浮気しているなら別れを告げるわ」

「そうだメアリー、それがいい」


 頭を撫でるアレクシスは思う。何故マイケルはこんなに可愛いメアリーを放っておくのだ。クレアよりも可愛く優しくそして勤勉であるのに……たしかマイケルの初恋はクレアだな。なんだかモヤモヤするな。この気持ちはなんだ?



「アレクシス……だから、それはお兄ちゃんの役目だ」

「いいだろ、私にとっても可愛いのだから」


そう言うと次の菓子もメアリーの口元に運ぶ。流石にメアリーは手で摘み受け取るのであった。


 その後は楽しく3人で茶を飲みメアリーは自室に戻るのだった。


 メアリーが去り賑やかだった兄の部屋に静寂が訪れる。


「メアリー1人がいないだけで、この部屋は急に静かになった。なぁ、アレク、確認する。お前はメアリーの何だ?」



「そうだな。ハミルトンの妹で……まぁ幼い頃から遊んでいたし幼馴染のような、俺にとっても妹みたいな……しかし最近は可愛らしく育ち……今は……マイケルの恋人だ」


「ちなみに、誰にでもあの様に慰めるのか?」


「ん? そんな訳ないだろう。抱きしめたり膝に乗せ餌付けを楽しむのはメアリーだけだが?」


 アレクシスは自分の行動が幼馴染や妹だと言う女性に対するものではないと気付いていない。アレクシスがマイケルとメアリーが付き合ったと報告した時を思い出す。くくっ、アレクシス、あの時のお前の顔……絶望感に溢れていたな。


「俺は……アレクシスの幼馴染でもあり親友だと思っている。お前になら『お兄ちゃん』と呼ばれてもいいと思っている」


「何故、お前を兄と呼ぶのだ?」


「お前……気づいていないのか? お前は顔がいい、頭もいい。性格は少し特殊だが……。モテるのに女を作らないのは何故だ? お前の親父は宰相だ、何処かの令嬢と婚約の話があってもいいだろ」


目の前の男アレクシスは宰相の息子である。成績も優秀であり見た目もいい。黒髪にグリーンの瞳、体型もスラリとした王子……いや冷静すぎるから優秀な執事の様だ。


 そして、幼馴染である俺は知っている。アイツは着痩せするタイプだ。あの服の下には鍛えた肉体を隠してる。男も羨む体型である。


「婚約? 全て断っている。メアリーが幸せになってからだ。正直マイケルでも不服であるがメアリーが選んだ男だ。幸せを見届けて浮気しない様に見張る必要があるからと両親に言っている」


 両親も気付いているのか? アレクシスよ……お前がメアリーに対する行動と言動は幼馴染でも妹でもないよ。早く気付け。



「おい、アレクシス。メアリーが幸せになってからって? それだとお前は独身の老人となっているだろうな。マイケルはクレアと何度も2人きりで会っているようだ。数人のクラスの奴らが教えてくれている。俺としては別れさせたい。マイケルの初恋はクレアだろ、誘われてコロリと落ちた可能性がある。しかし、メアリーとは別れるつもりもなさそうだ。マイケルはメアリーが気付かないと思っているのか……クレアが隣国に行くまでの秘密の関係だと噂さが広がっている。いや噂ではなく本当に浮気をしている。お前さ〜マイケルでも不服なんだろ」


「あの2人はクレアが邪魔をするまでは仲良くしていたからな……しかし浮気は完全にアウトだ。メアリーと結婚しても浮気する可能性がある。純粋にメアリーだけを愛する男でなければ」



 まだか……。


「それならさ、お前がメアリーを幸せにすればいいだろ。好きではないのか? お前にとってはただの妹の様な存在なのか? メアリーの恋人となれば餌付けも抱きしめるのも有りだな。結婚となるとそれ以上もお前だけだな。メアリーから愛を囁かれ愛される。お前の子を産み育てる。それはいくら俺がメアリーを溺愛していても兄の俺では無理だ」


 アレクシスは考える。昔から知る親友であり幼馴染の妹。ずっと見てきた。可愛らしい少女は今、美少女だ。あの日、自分がメアリーを男達から救っていれば自分の側でメアリーは笑っていたのだろうか。あの可愛らしい瞳で見つめられ、可愛らしい唇から溢れる言葉は私への愛か。私の手で彼女を

……。


「メアリーは私の……私はメアリーを好き……なのか。そうか、わかった。そうだな俺はメアリーを好きなのだな。俺が幸せにしてやればいいのか。マイケルと恋人になってからモヤモヤしていたのだ。最近はクレアとの事もあるからマイケルは失格だな。しかし久しぶりの餌付けは楽しかった。そうだなメアリーとマイケルには別れてもらおう」


「アレクシス……今頃気付いたのか。危なくマイケルと結婚するかもしれなかったぞ」

「そうだな……マイケルの浮気に感謝だな」



 とある日、3学年の教室は騒めいていた。

 

 仲良く並び身体を寄せ合いながら話ているマイケルとクレアの元に行き、ハミルトンとアレクシスは話しかける。


「おいマイケル、クレアと浮気するならメアリーとは別れろ」


「おい。俺はクレアとは幼馴染だ。メアリーとは別れるつもりはない」


「ほぉ、私もクレアとは幼馴染だ。幼馴染というのは口付けを交わし性行為をするのか? それなら私もメアリーとは幼馴染だ。口付けやそれ以上をしてもいいのだな」


「アレクシス……お前、何を言っているのだ。メアリーは俺の恋人だ」

「その恋人を悲しませているぞ」


「は?」


 

「いいか、マイケル。お前はメアリーと言う天使を恋人にしておきながらクレアと浮気している。街歩きだけではなく、温室に2人きりで何をしている。夏祭りもメアリーとは行かず2人で出掛けていたのだろう? マイケルはうちの可愛い天使のメアリーの恋人ではないのか? クレアがいいのなら別れろ」


「ハミルトン……流石メアリーを溺愛する兄だ」


 妹を愛する兄としてマイケルとクレアに言ってやったと堂々とするハミルトン。



「……して、クレア。隣国の婚約者に対し誠実な行動ではないぞ」


 冷静にクレアに話すのはアレクシスだ。


「いいでしょ。私の勝手よ。あんた達はいつもメアリー、メアリーって、あの子の何処がいいのよ。私は王女よ、もうすぐ隣国の王族の元にお嫁に行くのよ。卒業まで好きにさせてよ」


「クレア……この世にはメアリーよりも可愛く賢く愛らしい妹はいない。その妹が悲しんでいる。マイケルとクレアのせいでな」


 兄は天使メアリーの悲しむ顔を思い浮かべながら話す。



「クレア……私もクレアの幼馴染ではあるがメアリーは別格だ。見た目、賢さ、人格……そして行動の可愛さ。どれをとってもお前は足元にも及ばない。今からでも勉強したほうがいいぞ。お前は王女と言う肩書きがなければ無価値だ」


「…………おい、アレクシス。少し言い過ぎだ」

「この位言わないと、クレアは嫁ぎ先で恥をかくだろ」


「おい、アレクシス。クレアに酷い事を言うな」


 マイケルは2人の前に立ちはだかる。


「酷いのはお前らだ。昨日……温室で何していた」




 青褪める2人。


「私とハミルトン、そしてメアリーは放課後、温室に行ったんだ。何故なら昨日メアリーの元に不思議な手紙が届いた、『放課後、温室に来い』とな。1人で行こうとするメアリーを発見しメアリーに危険が及ぶといけないから、ハミルトンと私の3人で温室に行ったのだ」


 手紙を机に叩きつけるアレクシス。いつも冷静なアレクシスが更に冷たく2人を見つめる。


「それじゃあ……メアリーは」


「あぁ、お前らが口付けをしながら身体を繋げていたのを見た。と言うか私とハミルトンは見た、メアリーは目を塞いだから声だけ……いや少し見たかもしれないな。メアリーを呼び出し、行為を見せたかったのか? しかも、ここは学園だ。そんなに、お前らは欲求不満なのか? しかも何故、私達はお前らの行為を見なければならないのだ?」



「そうだ。メアリーはお前らが男女の関係だと知ったんだよ。メアリーの目と耳が穢れた。お前はメアリーの恋人なんだろ」


「嘘だ……メアリーに? しかも手紙? なぁクレア?」

「私じゃないわ」



「しかし学園でヤルだなんて随分とお盛んだな。私には理解出来ないが、お前らは他人に見せるのが趣味なのか? うちのメアリーとは別れてもらう」



「おい、アレクシス。それは兄である俺のセリフだ」


 マイケルは青褪める。


「俺は……メアリーに嫌われたのだろうか……クレアとは期間限定の……」


「期間限定だからと許される事じゃない。しかも現場を見たからな、かなりショックだったようだ。例えクレアと期間限定だとしても恋人に対し不誠実だ。ましては俺の可愛い妹を泣かした」


「そうか……。メアリーに謝ってくるよ」


 ため息をつき、教室をでるマイケル。ちょうどメアリーと鉢合わせる。



「マイケル様……お話があります」




「メアリー、私もだ」

「マイケル様……」



 誰もいない教室に入る2人、勿論ドアは開けたまま。


「すまなかった。見たんだろ?」

「はい……マイケル様はクレア様を?」



「クレアは幼馴染で……俺の初恋の人なんだ」

「それで浮気するのに忙しくしていたのね」


「それは……クレアが1人で隣国に行くのが不安だから俺について来てほしいと言われ。それと思い出作りを……私はクレアに言われ、護衛騎士の選考試験を受けていた。結果はダメだったが」


「マイケル様……受かれば私と別れて卒業後に隣国へと行くつもりだったの?」


「受かったなら、メアリーも共にと……」


「私に隠れて隣国でも浮気をするつもりだったの? そして落ちた今はクレア様を想いながら私と付き合っていこうと思っていたの?」



「違う、俺はメアリーと一緒にいたいと……」


「それなら何故浮気したの? 私が気付かなければ2人は卒業まで私に隠れて会うの? バカにしないで」



「メアリー?」

「何よ。私が何も言わない大人しい女だと思って?」



「すまない。私はメアリーが好きだ」


 頭を下げるマイケル。


「別れましょう。これで話は終了よ。さよなら」


「メアリー聞いてくれ。私は君を好きで……この先も君と……」


「貴方は浮気をしたわ。私は期間限定の浮気を許すほど寛大ではないの。私だってマイケル様を……もういいわ。行って……1人になりたい」


「メアリー……すまなかった」


 再び頭を下げてその場を後にするマイケルであった。



「うっ……うっ……」

 1人となり泣くメアリー。


 

 ◇◇◇◇


「なぁ、クレア。なんでマイケルなんだ」


「……だって、あんたの妹は私から彼らを奪っていったわ。私の苦労も知らないくせに」


「はぁ? 奪っていないだろ。そもそもメアリーは努力家だ。うちの商売の為と外国語も学んでいる。マナーもだ。可愛らしい顔は神からの祝福だがな。マイケルと結婚したらと料理や騎士の身体作りの勉強をしていたんだ。メアリーはマイケルを支えるつもりでいた。それに夏祭りも楽しみにしていたのにマイケルはクレアと行った。それにマイケルの誕生日もだ。メアリーは手作りの剣帯も用意していたのに、お前は……随分と豪華な剣帯を購入し渡したのだろう? あの男は嬉しそうにメアリーに見せびらかしてさ」


「いいじゃない。マイケルの誕生日よ」

「今までプレゼントなんて渡した事ないだろ。輿入れ前の遊びにしては趣味が悪すぎる」

 

 無言のクレアはハミルトンを睨みつける。


「私は王族だから、卒業後は好きでもない顔も知らない男と国の為に結婚するのよ。いいじゃない、楽しんだって」


「お前な……夫となる男はいいやつかもしれないだろ。顔も見ていない? お前は1年間何をしていた」


「私は……」


「お前……相手と会ったり手紙のやり取りは?」

「する必要ないわ。どうせ政略結婚なんだし。変な男に決まっている」


「お前……。何故手紙を読まない? 婚約者だろ。なぜ相手を……夫となる男の国を知ろうとしないんだ? クレア……後から後悔しても遅いぞ。なぁアレクシス……ん? アレクシス?」



 クラスメイトは気まずそうにハミルトンに話しかける。


「ハミルトン、アレクシスならメアリーちゃんを慰めると言い探しに行ったぞ」


 クラスメイトから言われ隣にいたはずのアレクシスがいない事に気付く。


「恋人と別れ可哀想な妹を慰めるのは兄の役目なのに……じゃあな。お前とは2度と話すことはない」


 クレアはハミルトンの後ろ姿を見送る。 クラスメイトからの冷ややかな視線を浴びるクレアであった。


「私が好きだったのはハミルトンよ……」


 クレアは小さく呟いた。


 そのうちの1人の令嬢が話しかける。


「クレア。例え王女でもやっていい事と悪い事があるわ。ハミルトンが好きならばマイケルと関係を持ったのは間違いよ。今からでも婚約者様からの手紙を読んだ方がいいわよ」




 1人教室で泣くメアリー。そこに足音が近く。


「メアリー……」

「うっ……うっ……アレク……私、マイケル様を振ってやったの」


「そうだね。聞こえていた」


 ゆっくりとメアリーの元に近づく。


「うっ……うっ……聞いてアイツ、クレア様の護衛騎士になろうとしていてね……一緒に隣国へ行こうとしていたの。しかも私を連れて行くとね。でもね、不合格だったみたいで一緒に行けないから私と……浮気しておきながら何食わぬ顔をし私と付き合っていこうとして……うっ……うっ……何も知らなかったら卒業まであの2人は何度も会っていたのかな。浮気しておきながら私を好きだと言っていたの……それなら浮気はしないでほしかった」




 アレクシスはメアリーを抱き上げ机に座る。メアリーを膝に乗せ抱きしめて頭を撫でる。


「メアリー……別れを選んで正解だよ。マイケルは君に誠実ではなかったね」


 涙をそっと拭うアレクシスであった。


「ねぇアレクも……クレア様を好きなの? 幼馴染なんでしょ。宰相の息子として一緒に隣国へと行くの?」

「俺が? 行くわけないだろ」


 思わず普段の口癖が出てしまう。



「皆、クレア様が好きなのよ。綺麗なお姫様のクレア様よ」

「私は違うよ、僕のお姫様は昔から君なんだけどな」


「アレク?」

「ごめんね。自分の気持ちに気付くのが遅くて。私がメアリーを幸せにするから、もう泣かないで」


 アレクシスはメアリーを強く抱きしめるのだった。その様子を兄ハミルトンは見ていた。頃合いを見て大きく声をかけるハミルトンであった。


「さぁ、メアリー帰るよ。今日は帰りにカフェでケーキをご馳走しようかな」

「それなら、私も共に行くぞ」


「お兄ちゃん……うっ……うっ……あのね、あのね」

「はいはい、たまにはお兄ちゃんも可愛い妹を抱きしめて慰めてやりたいのだが……アレクシス、離れろ」




 兄の元に駆け寄り抱きつくのだった。そのまま兄に抱っこされて学園をさるメアリー。その様子をマイケル、そして教室の窓から眺めるクレアであった。


「私は……」



 ◇◇◇◇



 メアリーとマイケルが別れて1ヶ月が経った。ひとつ変わったのが。


「メアリー、帰ろうか」

「アレク……私はお兄ちゃんと」


「私もハミルトンの所で課題をする。一緒に帰ろう」


「おい……はぁ、はぁ。お前……メアリーはうちの妹だ。メ、メアリーは俺と帰るんだ」


 急ぎ走ってきた為に息を切らす兄ハミルトン。



「チッ…………ハミルトンも来てしまったね。仕方ない、3人で帰ろうか」

「お前……今さ、舌打ちしたよね。俺と課題をするのに肝心な俺を置いて行くな」


「お前の家で待ち合わせでもいいだろ」

「…………」


 3人は時間さえあれば共に過ごしていた。学園内ではマイケルとクレアの不貞の話が影で噂されていたのだった。

 


 マイケルは父親であり騎士団長からクレアとは距離を置くよう言われていた。しかし学園内で時折、2人が姿を消す姿を見られていたのだった。



 卒業まで、あと2か月となる。既に卒業までの単位を全て取得済みであるマイケルは先に卒業し隣国へと旅立つ、そして隣国の騎士団へと入団した。

 学園での噂は真実となりマイケルは愛するクレアの為に恋人と別れ隣国へと向かう『真実の愛』だと言われるようになり、クレアは気分よく学園へ通うのだった。 


 クレアは、マイケルがいなくなり結婚の準備をしようとしていた。今更ながら婚約者となった隣国の王子からの手紙を読み始めたのだった。



「仕方ないから読んでやるわ」


 丁寧に書かれた手紙には自己紹介、次の手紙には返事がない自分への気遣いや隣国の話が書かれていた。一年間、見もしなかった手紙には婚約者からの優しさが溢れていた。


 最後の手紙のひと月前まで読み終えた。少しずつ内容が短く簡素になっていく。クレアは急ぎ返事を書かなくてはと思いペンを取る。卒業前に一度会うのもいいかと思い始めていた。


 クレアは父である国王に婚約者と会ってみたい事を伝える。



「クレア、どうした?」

「パパ……私、婚約者と会ってみたいわ」



「……クレア。今更、会いたいとは何故だ? 手紙のやり取りも無かったのだろう?」

「パパ、それは……お嫁にいくのだから一応ね」


「隣国の王子から何もするな、何も言うなと言われていた」

「え……」


「ちなみにマイケルとはどんな関係だったのだ? ただの幼馴染だったはずだ。それにマイケルは、あの商会の後継ぎハミルトンの妹と恋人だったのだろう? お前とマイケルは何をした」

「あの……パパ」


「まず、報告だ。隣国から婚約解消の書簡が届いた」


「え……嘘……」


「手紙すら読んでいなかったのか。今すぐ確認しろ。あとは騎士団に卸していた備品は正規の値段へと変わった。今まではメアリーが担当していた様だ。そのため格安での納品であった」


「そんなの、私に関係ないわ。他の商会に変えればいいじゃない」

「正規の値段にしても他より安く質もいいのだよ……。お前の婚姻の準備品も、あの子の両親が営む商会で購入することになっていた。全て納品拒否と支払った金銭の返却があった。あの家族はクレアの幸せを願っていた。お前はその大切な娘を傷つけた。全てお前とマイケルが壊した」


「私は……」



 急ぎ自室へ戻り、残りの手紙を読む。


 その手紙には婚約の継続を望むのかとの問いが書いてある。青褪めるクレア。


「え……私の事を調べていた?」


 更に手紙にはマイケルとの不貞が記されていた。しかも詳しく日時と場所もまで。 その中にはメアリーが見た日も記載されていた。


「メアリーに見られて日の手紙の送り主は……嘘よ……これじゃあ私はお嫁に……隣国には行けないの……嘘……嘘……これじゃ恥ずかしくて学園には行けない」


 最後の手紙には、一言『婚約は白紙に』と書かれていたのだった。


 「私はどうしたらいいの?」

 


 ◇◇◇◇


 隣国の騎士団入りを果たし1か月が過ぎた。マイケルは衝撃的な事実を知る。


「君がマイケル君か」

「あの……殿下」


「初めて会ったね。私はクレアの婚約者だった男だ」

「だった?」


「君らは不貞関係だったよね。知らないと思った? しかも君は幼馴染の妹と恋人だったよね。そんなにクレアの身体は良かったのかな? 僕にはメアリーちゃんの方が好みだったよ。可愛らしく賢い子だ」


「メアリーと会った事が?」


「まぁ、お忍びで君の国に行ったんだよ。あまりにも交流のない婚約者の意思を確認したくてね。その際だよ。迷子になってしまってね。たまたま、配達中のメアリーに助けてもらった。大きな商会の娘さんらしくて商会にもお邪魔したが品もいい。今は、いい取引先だよ。メアリーちゃんは街の人たちからも慕われていてね。当時、素敵な恋人がいると幸せそうだったよ。もっと早くにメアリーちゃんと出会っていたら側に置くのもいいかなと思う位にね」


「側に?」

「あぁ、一応、僕も王子だからね。国の為の結婚となるのは王族の勤めだ。勿論、娶った妻を大切にはするつもりだよ。しかし、相手の想いが他にあるならば、互いに恋人を囲うのもありだ。クレアが誰かを思うならメアリーちゃんを側に置くのもいいかと思った」


「クレア王女は……」

「婚約は白紙だよ。今後についての擦り合わせができなかった。手紙すら読んでいないかもしれないね。きちんと僕と話し合いをしていたら君もこの国に恋人として迎えるのも有りだったよ」


「クレア王女は殿下と……手紙のやり取りすらしていなかったのか」


「そうだよ。全く無駄な1年だった。僕だって暇じゃないのにさ。お忍びで行った君の国で迷子ついでにメアリーちゃんに街を案内してもらった。その時、見たんだよ。君とクレアは仲良く腕を組みデート中だった。クレアを見たことは無かったけどメアリーちゃんがポツリと君らの名前を呟いたんだよ。その時には既に君らの不貞の報告は入っていた。メアリーちゃん悲しそうな顔をしていたよ。そして君らが向かったのは連れ込み宿だ。仲良くキスをして寄り添って入店した」


「メアリーは私に何も言ってはいなかった」


「は? 言える訳ないでしょ。バカなの? 浮気相手と連れ込み宿だよ。君は堂々と皆の前で恋人のメアリーちゃんにクレアと連れ込み宿に行きましたと言えるの?」

「……」


「私もメアリーちゃんに酷い事を聞いたよ。彼らの入ったのは何処かと聞いた」


「メアリーに?」


「青褪めた顔して答えてくれた。タイミングよくメアリーちゃんの兄と友人が来た。その後はね、何も見なかったように振る舞っていたよ。かなり顔色が悪かったけど、あの場で彼女が真実を言っていたら兄と友人は店に乗り込んで行ったのかもしれないね。一緒に観光して思ったがメアリーちゃんは2人から愛されているのがわかったよ」


「メアリーは殿下に私達の事を?」


「勘違いしないで、僕はメアリーちゃんに身分を明かしてはいない。隣国だとバレないように南国の言葉で話していたんだ。まぁ、メアリーちゃんの兄の友人……アレクシスだっけ? 彼だけは気付いていたかもしれない。宰相の息子だろ、我が国に欲しいよ。あの兄妹は暢気に僕がただの観光客だと思っていたようで2人とも流暢に南国の言葉を話していた。他の国の言葉も話せるみたいで、あの位賢いなら恋人ではなく妻にしてもいい位だ」


「殿下、それでは私は……」


「隣国にクレアを支える為に来たのだろうが無駄だったよ。うちの騎士団からも退団してもらう。風紀を乱されては困るからね。まぁ君は国に戻っても居場所はないだろうから、新しい職場を用意したよ。娼館の用心棒だ。欲求不満な君にピッタリだ。運が良ければ娼婦を抱けるよ」



 王子に手で退室を指示されるマイケル。


「ほら、殿下は忙しいのだ。帰れ」

 側近らにも退室を促されるマイケルであった。



 メアリーは温室での事よりも前から知っていたのか?

 時折、悲しそうに俺を見ていたのは。


「私は……全てを間違ったのか」




 その言葉に王子は返答する。


「ん? そうだね。君らの行動でクレアは私との結婚が白紙となった。君は可愛い……女神、いや天使の様なメアリーちゃんの夫になり損ねた。ましてや恋人を裏切ってまで抱いたクレアはこの国に来る事はない。君はバカだよ」




 その後のマイケルは自国には戻らず、隣国の娼館の用心棒となる。食堂の娘と付き合いながら時折、娼婦を抱くマイケルは隣国での生活を楽しんでいた。時折思い浮かべるのは初恋の女性クレアではなく。また、食堂に務める恋人メアーナでもない。メアリーである。マイケルは思い出す。自分には可愛い恋人がいた。それなのに自分の初恋である王女を抱いた。今は自分の隣にいるのは普通の女性だ。とりわけ顔がいいわけでもない。いい身体でもない。性格だって少し卑屈で嫉妬深い。しかし彼女は自分を好いている。髪色はメアリーに似てる。娼婦を抱く自分を許すのは自分の顔を気に入っているからだ。マイケルは今の生活で満足しているのだった。



 ◇◇◇◇


 クレアの隣国の王子との婚約解消から3か月が過ぎた。婚約解消後クレアは実家で過ごしていた。不貞がバレて婚約解消されて恥ずかしくて部屋から出ない日が続いた。ひと月前の卒業式も欠席した。

 

 そんなクレアを国王は呼び出した。


「クレア……お前は私の可愛い娘だ。しかし王族である以上は国の勤めがある。このまま何もしない気か?」


「だって、婚約解消され、不貞も」


「自分が悪いのだろう? お前はどうしたい?」

「私は隣国に……」


「その話は終わった。これからどうするかだ」


「それならハミルトンと婚約を……」



「なぜ、ハミルトンの名が出る。お前が婚約者を裏切り浮気をしていたのはマイケルだぞ。クレア……君はハミルトンが溺愛している妹メアリーの恋人だったマイケルと不貞を冒し傷つけたんだ。婚約できるわけがない。最初からマイケルではなくメアリーと仲良くしマイケルとの仲を応援していたら違ったかもしれない。クレアが望めば隣国へと連れ行く事も可能だった。私は何度か言った、婚約者と交流を深めよ。とね」


「……アレクシスは? 彼も幼馴染だわ」

「アレクシスはメアリーに婚約の打診中だよ」


「それじゃあ……私は……」

「隣国以外の王族の元へ嫁ぐか、この国の他の貴族へと嫁ぐかだ。隣国以外から婚姻の打診がある」


「婚約ではなく婚姻?」

「他国ではクレアの事が既に明るみになっている。王族に嫁ぎ豊かではあるが正妻ではなく側室の要望、中には恋人も共に連れて来ても良いと」


「それならマイケルを……彼と共に他国へ」


「クレア……マイケルには何と告げた」

「私を支えてと……」


「クレアは彼に対する愛情はあったのかな? 愛情を互いに確かめたのか? 隣国からのご好意で手紙が来た。マイケルは騎士団をクビになり娼館の用心棒をしている。そして……既に恋人がいると」


「そんな……それじゃあ」


「まあ、考えるといい。クレアの人生だから」



 クレアは自国にはいられないと正妻の他に側室が5人いる南国の王族の元に嫁ぐのだった。


 クレアの選択肢は3つあった。1人はクレアよりも20歳上の39歳の小国の王弟だが国は豊かではなかった。二つ目は宝石の産出国で豊かな南国の国だ。正妻の他に側室が5人いる40歳の国王である。最後は自国の5歳歳上の子爵令息であった。


 クレアは考えた。まず自国の男を選択肢から外す。国に残り子爵の男の元に嫁ぐのはプライドが許さなかった。


 より豊かな結婚生活を夢みるクレアは5人の側室を持つ男に決めたのだった。自分が王女で若いから大切にされると思っていた。


 しかし待ち受けていたのは言葉も通じない相手であった。

ここに来て不出来な自分を嘲笑う夫。しかも夫の本命は正妻でだけであり、側室は国との繋がりを求める形だけの妻の座であった。夫は正妻をこよなく愛し、側室は部下達や他国との交渉のために側室を抱かせる。まるで人質の様な境遇であった。



 輿入れし1か月、夫には抱かれる事はない。側室の1人が言う。

「貴方も国に売られたの? 貴方が選んだのかしら? 貴方の話は聞いてますわ。あの大国の王子と婚約しておきながら不貞して、婚約解消ですってね。貴方もバカな事をしなければ今頃、裕福なお姫様で素敵な夫の正妻だったのにね。彼は顔もいいから勿体無いわね。その元婚約者様は、違う国の王女と婚約したわ。仲睦まじくしているようでね。そのうち会えるかもしれませんわ」



「…………貴方は何故ここへ?」


「私も貴方と同じ様なもの。まぁ、割り切って男達との行為を楽しんで、貴方なら大丈夫よね。だって恋人がいる男を寝取り行為を見せたんでしょ。ここでも同じよ。貴方にピッタリの場所ね」


「…………」


「他にも打診が来ていたでしょ。小国の王弟様よ。貴方にすれば歳上だけど、そちらの婚姻の話の方が正解よ。彼は優しい人だからね。彼はやり直すチャンスをくれるの……でも妻達は彼を慕い側にいる。大切にしてくれたかもね。私にも話が来たけど、こちらが裕福だろうと思い、あとプライドが邪魔をしたわ。小国の王弟だからと下に見ていたの……間違いに気付くも遅かったわ。それでは、素敵な夜を」



「うっ……うっ……なんで私が……私は王女なのに」


 突然、クレアの部屋には男が3人やってくる。


「王女なんだって、恋人のいる男を寝取り、行為を見せるのが好きだと聞いた。今晩は俺達の相手だ」


「嫌……嫌よ」


 ◇◇◇◇


「メアリー。そろそろ私と婚約してもらえないかな」

「ん〜まだ、マイケルと別れてから期間が……それにまだ学生なのよ」


「僕らは卒業したんだ。マイケルもいない。クレアも他の国への輿入れが決まった」



 メアリーの口に王都で人気のケーキを運ぶ男アレクシス。


 アレクシスはメアリーとマイケルが別れたその日の夜に両親にメアリーと結婚したいと話した。

 両親は婚約ではなく結婚と言うアレクシスに驚くのだった。

「アレクシス、急にどうした? しかも結婚か? メアリーは婚約はしていなかったが騎士団長の息子が相手だった。婚約者だったのも同然だ。つまりだな……」


 女性は妊娠の有無を確認する為に半年は婚約・婚姻ができない決まりであった。メアリーは最低でも半年は次の婚約を結べないのだ。


「アレク、今更どうしたの?」

「私は……メアリーを好いていたようだ。先日、ハミルトンに言われ気付いた。早くしないと可愛いメアリーは他の男に……父上?」



「くくっ……まぁ、向こうのご両親には伝えておくが、肝心のメアリーの気持ちは?」


「……私を好きではないかも。マイケルの恋人だったし」


「そうよ。アレク。メアリーちゃんが了承してからよ。しかも……婚姻ではなく婚約からよ」


 

「そうだ、アレクシス。メアリーは以前、私の様に優秀な男性が好きだと言っていたな。なぁ、クリスティナ」


「えぇ、私に優しく賢い人のお嫁さんで羨ましいと言ってましたわね」


「……そうか、父の様に優秀か……ハードルは高いが問題ないな。父上、卒業後は頼む」


「頼もしいな。頑張りなさい」



 そしてハミルトンとアレクシスは高等学園を卒業し、ハミルトンは実家の商会の後継ぎとして就職し、ハミルトンは父である宰相付きの文官となり、メアリーは3年生となった。



「おい、アレクシス。メアリーは可愛い妹だ。俺の前で餌付けはするな」


「……おい、兄よ。私にメアリーをくれ」


「アレクシス……今……今、俺を兄と呼んだな。メアリー、アレクシスと結婚してはどうかな? 俺はアレクシスの義兄となるのは気分がいい」


「お兄ちゃん?」

「メアリー、考えてみろ。こんなにお前を想う男はいないぞ」

 

「そう? アレク……私の事はいつから好きなの?」

「いつからなのかはわからないが……多分、初めて会った時から特別だった」

 

「アレク……」

「幼い頃、初めて我が家にお泊りしてオネショをしたね、泣くメアリーは可愛かった。初めての刺繍は芋虫だったね。きちんと額に飾ってある。あと……メアリーが私を愛称で呼ぶのは心地よい。後は――」

 

 

「おねしょ……芋虫……もう大丈夫よ。アレクの想いは伝わったわ」

 

 赤い顔のメアリー。

 

「メアリー、私にとって君は、怒っても、泣いても……笑っていても全てが可愛いし愛しいと思う。だから結婚しよう」

 

「アレクシス……そこまでメアリーを……よし、俺は賛成だから後押しは任せろ」

「頼もしい義兄で嬉しいよ」

 

 

「さあ、メアリー。これを見て、新居の図案だよ。昔、君の描いた可愛い家にしようと思っている。大人になった今なら変えたい部分もあるだろうから一緒に考えようか」

 

 1枚の画用紙に描かれた絵を見せるアレクシス。

 

「え……これは。あの夢のお家の絵じゃない? どうして、アレクが持っているの? 探していたのよ」

 

「何故? メアリーは遊びに来ては毎回絵を描いては忘れて行ったから。家だけじゃなくドレスの絵もあるぞ。今思うと理想の結婚式の絵の隣の男は私だったようだ。何せ髪と瞳の色が同じだからな。それを元にドレスを作ろうかと思っている」

 

「無くしたのではなく。アレクのお家に忘れていたのね」

「確か……家で無い無いと騒いでいたな……良かったじゃないか全てを叶える王子様がいて」

 

 アレクシスを見つめるメアリー。

 

「アレク?」

「勿論、私なら全て叶えてあげられるよ。僕と結婚する?」

 

 メアリーはアレクシスが大好きだった。兄の親友で私に優しく、かっこいいアレクシス。しかし、メアリーはアレクシスが自分を妹としか見ていないのに気付いていた。宰相の息子であるアレクシスはいずれ素敵な令嬢と婚約し結婚するだろうと思っていた。その思いを断ち切る為にもマイケルと付き合った。勿論マイケルの事は好きだった、時折触れるマイケルの肌……アレクシスとは違うゴツゴツとした男らしい手で撫でられるのも悪くない。それはマイケルが浮気をするまでだ。あの日、温室で見たマイケルとクレアの姿、マイケルはクレアに愛を囁いていた。ガラガラとマイケルに対する愛が消えていく。私を気遣い私から溢れる涙を拭き取ったアレクシス、私はアレクシスを。



「少しは恋人期間を楽しみたいから婚約からなら……」

「恋人期間か……いいな」

 

「さて、うちの両親に挨拶へ行こうか。そのまま泊まって行くのもいい」

 

 

 両親の反対もなくメアリーはアレクシスと婚約し、メアリーが学園を卒業し3ヶ月後に兄と一緒に結婚式を小さな教会で行った。

 

 この教会も昔、アレクシスと一緒に行った思い出の教会である。

 両親や友人たちに囲まれ幸せな時を過ごすのだった。

 

「しかし、お兄ちゃん? いつの間に隣のアマンダ姉様と?」

「昔から大好きだったから。僕の事はずっと弟としか見てくれなくてさ。卒業してからのお兄ちゃん頑張ったよ。メアリーもアマンダが好きだろ」

「大好きよ。大好きな隣のお姉さんが義理の姉になったのよ。とっても嬉しい」

 

「私も可愛い義妹が出来て嬉しいわ」


 仲良く抱き合うアマンダとメアリーであった。


「あの……ハミルトン、大切な義兄へ報告がある」

「ん?」

 

「お前は、叔父さんになる……」

「誰でも年をとればオジサンになるだろ」


「そうではない」

「ん? まさかお前……」


「我慢出来る訳がないだろう。こんなに可愛く美しいメアリーが側にいるんだ」


「まぁ、わからなくもないが……メアリーおめでとう。そうか……我が家の来年は子供らで賑やかになるな」

 

「そうね……ん? 子供ら?」


「メアリー、お前も叔母さんになるよ」

「え? まさか、アマンダ姉さんも?」

 

 

「そうだよ。あのさアレクシス、後で一緒にアマンダの親御さんの所へ報告しに行こうね。アマンダの父さんは怖いんだよ。君は義弟だ。だから義兄である俺と一緒に来て」

 

「え……あの人怖すぎだろ。盗賊みたいな顔した人だろ。無理だ」

「ちょっと、私のお父さんよ。それよりアレクシス……メアリーのパパの方が怖いかもよ。何せ、嫁に出す気はなかったようよ。結婚式でも、ずっと号泣していたわ。周囲もドン引きよ」


「……そうだな。義兄よ……私にも援護してくれるよな」


「あぁ……任せとけ」




 その後、アマンダの父、メアリーの父に仲良く叱れている間、アマンダとメアリーは仲良く女子会をし互いに結婚式の夜を迎えたのだった。



「メアリー、愛してます。私の奥さんになってくれてありがとう」

「アレク、貴方が愛を囁くのは私だけにしてね」


「……昔からメアリー以外に愛を囁いていませんよ」

「アレク大好きよ」

「私も大好きだよ」




 そして……時は少し過ぎ、メアリーの実家に可愛い子供達の声が響くのだった。

「見事にアレクシスにそっくりだな」

「そうだ……しかもメアリーが私に構ってくれなくなった」


「だって小さいアレクなんだもん。何をしても可愛いのよ」



 1歳の誕生日を迎える息子のエリック。その横には少しだけ膨らむお腹のメアリーがいる。

「次はメアリーに似た女の子がいい」

「アレク、そしたら私に構ってくれなくなるの?」



「メアリーは、いつでも私のお姫様だよ。だから……もう少し私にも構ってほい」

「ふふっ、私の王子様もアレクよ」



 メアリーとアレクシスはいつまでも仲良く暮らしていくのだった。

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