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彷徨える貴方  作者: 黒井基治
第3章 北の大陸 魔導試験編
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第36話 魔導教会

ユリウルス暦 876年 1月 2日


台所すらない、安い宿の部屋で、ティナは暖炉のそばで鍋をかき回していた。背後のベットに横たわるウラドは、スヤスヤと、寝息をかいている。ティナは山菜の入った汁物を少しだけ、木べらで掬う。熱湯に近しいのでティナは舌がジリジリと焦げぬよう念入りに息を吹きかける。


ズズズズ−−−−


「んー −−−−薄味だけど、まだ塩まで買えるほどではないからなぁ」


ティナは木べらを軽くコンコンと鍋の淵で叩き、山菜を落とすと、それを椀の上に置き、分厚い手袋をはめる。そして、鍋の薄い持ち手を掴み上げ、テーブルの鍋敷きの上に乗せる。


ドン−−−−コトン


ティナはフッと一息つくと、窓の方を見る。窓からは朝日が少しだけ顔を出しており、空は紫立っている。ティナは目を丸くして窓のそばに駆け寄り、軽く手を合わせ拝む。この慎ましくも美しい、今から活気立つ花が咲くかの様なこの空は、誰が見ても、神がかった良き景色だと、東のものなら皆思うだろう。


「今年も、お願いします−−−−」


ティナは空に向かって一礼した後、そばの1人用ベットで大きく眠るウラドの隣に立つ。そして、少し肩を動かして気合を入れる。彼を起こすのは、地引き網を引くのと同義だ。


「ウラドさん!朝ですよ!」


「待っで−−−−起こすの早い。」


ガラガラの声で目も開けられていないウラドはティナの少し筋肉で太くなった腕を退かすようにバタバタとしている。ティナはため息混じりに言う。


「早くないです!時計も、今は6時ですよ!」


「昨日は遅くに到着したのに−−−−元気だねぇ−−−」


「起きる時間は固定しないと、クッチャネー生活になってしまいますよ!」


クッチャネー生活とは、ウラドの寝て起きて食べてまた寝るといった、自堕落生活を指す。ティナはウラドを抱き上げる。この娘、何故か筋力は人並み以上だ。獣人は皆筋力がある方だが、スラム育ちで男手の代わりに生きてきた彼女は、やはり違う。自身の頭二つ分違う彼を持ち上げている。ティナが下ろした時、ウラドは漸く立ち、顔を洗って、席についた。ティナが椀に汁物をよそうと、ウラドは不思議そうに覗きながら言う。


「なんか、初めて見るね。これ。」


ティナはふふんと鼻を鳴らし、尾を振りながら言う。


「『お雑煮』ですよ!!東では今日は三ヶ日なので!」


「サンガニチ?」


「はい。新年である1月1日から3日間をそう言うんです。その期間、神社などでお詣り−−−−お祈りをするんです」


ウラドはお雑煮を音なく啜りながら頷く。かれこれ800は生きている事になるが、東の文化はそこまで知っているわけではない。だが、この時期になると、東はどこも明るくなるのは、この事だったのかと今更ながらに知った。


ゴンゴンゴンゴン


ノックの音がした。


「郵便です。『ベリアール』様から、『ウラド』様へ」


丁寧でハッキリとした男の声がした。ウラドは少々出たくはなかったが、名を出された以上、本人が出ねばと思い、朝から立ち上がり、ドアを開けた。そこにはやはり、郵便の男がいた。茶色と淡い山吹色が特徴的な制服は、外でもよく目立つだろう。男は一通の手紙と、茶色の厚い紙箱を手渡した。ウラドが領収書にサインをすると、男は一礼して他へ行った。ウラドは早々に閉め切ると。その箱をそばの暖炉で凍えた体と共に開ける。


「何が入ってましたか?」


ティナは立ち上がり、興味津々で対面に座り込む。ウラドが箱を開けると、中には一冊の茶色の表紙の本、そして、銀色の金属ブレスレットで、空色のガラスが銀の間に大団円を結んでいる。メモ、そして、一枚の四つ折りの羊皮紙が入っていた。メモの中身を、ウラドは拾い上げる。


『本とブレスレットはティナへ。羊皮紙はウラドヘ。』


との事だった。ウラドは妙に思いながら、羊皮紙を開く。ザラザラとした感覚がする。


『アベルへ


ベリアールから、北に来た言われたので手紙を書きました。早く帰ってきてほしいです。その時は、土産話を期待してます。


                 サタエルより』


「お知り合いですか?」


ティナがウラドに尋ねる。


「あぁ、僕の引きこもり友達だよ。」


ウラドはそれを神妙に見つめると、丁寧に折り戻し、ある箱を召喚した。真っ黒に近い木製の大きな箱だ。


ガゴン––––ガチャ


ウラドが箱を開けると、中にはふさっと手紙が敷き詰まっていた。どれも古いのか茶色に変色していたり、中には真新しいものもある。ティナは目を丸くして言う。


「わお、沢山ですね!」


「まぁね。大体820年分はあるかな。」


ティナは面白半分で手紙を取り出そうとしたが、ウラドは慌てて蓋を閉じる。


「は、恥ずかしいから、また今度ね。」


ウラドはやけに頬を赤くして言うので、ティナは良いですよ、と言いながらも内心ニヤニヤとしていた。


さて、朝餉も終わり、2人は出かける支度をしていた。向かう先は、この都市の出口にあたる関門だ。関門での手続きをする事で、国境を越え、無の國へ行く手立てとなる。ウラドは関門へ向かう中、皆々の妙な感覚を感じ取っていた。やけに、練り上げられた雰囲気を感じていた。ティナはそんなのも気にもせず、後を歩く。


関門に着いた時、聳え立つ壁の影の中、2人は関門の衛兵に話しかける。


「すまない。国境越えがしたい。出國申請は可能か?」


衛兵は堅苦しい声でハキハキと言う。


「陸路で越えるなら、魔導士である必要がある。魔道資格はあるか?」


「–––––僕、一応薬師で通っているから無いんだけど。」


「なら、無理だな。」


軽くあしらう衛兵を見て、ティナはウラドの背中からヒョッコリ顔を出して言う。


「取得方法はありますか?」


ティナは最大限刺激しないように発言したが、衛兵は握り拳を作りながら蔑むように怒鳴る。

                  

「黙れ獣人!お前とは会話しない規則だ」


ウラドはムスッと眉間を寄せると、軽く挨拶だけして関門から立ち去った。ティナは少し耳をしおらせながら、街の北へ向かう。道中、ウラドは歩幅を広く歩く。ティナがテトテトと追いかけながら言う。


「あの、陸路で行けない以上、海路しかないのでは?」


「いや、海路は今は『寇』と言う盗賊がいて危険だ。仕方ないから北の【カレリア】へ向かう。」


「あそこはとても寒いそうですね––––」


「そう。だから、今回は色々調達するよ。」


「はい」


それから、2人は各々買い出しに出かけた。ティナは重い食糧、ウラドは軽い日用品を買いに向かった。ウラドはメモを見ながら順調に買い出しを行う。石鹸、薬草、泥炭、カリ鉱石、鉄鉱石、亜鉛、銅など、薬屋から雑貨屋など街の端まで行くような距離を歩き回った。


ふと、メモ用紙を確認すると、ふと、宿で受け取った手紙の存在を思い出した。ウラドはなんの気無しに手紙を召喚し、それを開けた。


『今日、ティナの誕生日』


ウラドは目を丸くした。この文字はベリアールであろう、何故誕生日を知っているのか気色悪い。いや、それよりも何か買わねば。彼の中で知音への辟易と焦燥で胸中が渦巻いて気が滅入りそうであった。一先ず、ウラドは小走りをした。


ティナは重たい食料の入った麻袋を抱き抱えていた。スラムの洗濯カゴと比較しても軽い方ではあった。正直、自分自身が出来ることはこの程度しかない為、彼女は文句なんて贅沢は湧くことはなかった。さて、また街の中心にある広場へ行く。各々の買い出しが終わり次第、広場での集合となっていた。そしてそのまま、北へ向かうらしい。広場には屋台が幾つか点在している。花屋にパン屋、旅人に向けた簡易的な土産屋もある。ふと、その屋台に隠れるようにして、もう一つ屋台がある。浅葱色の天幕の下には男女関係なく似合いそうな装飾の類があった。こういったものは若い人でも美しい者がに合いそうなほど煌びやかに思える。だがそこに、見慣れた後ろ姿があった。


「ウラドさん?」


ティナは疑問に思い、少し天幕に隠れて様子を伺う。彼はブレスレットやイヤリングを手に取っては、いやこれは軟骨がと言ったり、腕が太いから入らなさそうだななど言っていた。彼も身なりを飾りたいと思う時が、やはりあるのだろう。しかし、一向に決めようとはしていない。そうしてほぼ全ての品を取って見たのち、彼はまた別の屋台へ向かった。洋菓子店だろうか、これは悪くない。そう思って見ていると、ウラドは自身の露銀袋を覗いて、ギョッとしては、また立ち去った。見ていると面白いのだが、小一時間はそんなことの繰り返しであった。流石に買いたいのであれば買えば良いのにと、だいぶティナも呆れた頃、漸く、ウラドは赤い天幕の屋台で買い物を終わらせた。少し大きめの紙袋には膨らみが分かるほど物が入っている。ティナは好機だと思い天幕から飛び出した。


「ウラドさーん!!!」


ウラドはワッと驚いたように飛び上がって言う。


「ティナか?!ビックリしたよ。もう終わったのかい?」


「はい!ウラドさんは何していたんですか?」


ウラドは紙袋を見る。不思議そうに振る舞いながら、ティナもそれを見る。すると、ウラドは紙袋を差し出して言う。


「今日、誕生日なんだろう?あげるよ。」


「え––––ありがとうございます––––え、なんで知っているんですか?!」


ティナは尾をビンと伸ばし少し恐ろしげなものを見る目で言った。ウラドは訂正するように語気を強めて言う。


「僕だって!ベリアールに言われるまでは知らなかったよ!!変な気はないから!!」


ティナはまるでしたたかに目を細める。まるで砂漠の国のメジェド神だ。ウラドは肩をすくめて言う。


「そんな胡散臭い人を見るような目はしないで––––」


ウラドは気を紛らすように先を早足で歩き出した。ティナはまさか今まであちこちを歩いていたのは自分のためだったのかと自覚すると、なんだか安心した。自分の為にしてくれたような気がしたからだ。


長い時間歩いていると、2人は北の大陸の福屋にたどり着いた。『看板には獣人は主人と共に』と言う看板が掲げられていた。ウラドは呆れたように言う。


「本当に呆れるよ。人間というのは、どうして許容できないんだろう。」


ティナはその看板を見て少し残念にも思ったが、そもそもこの服の値段では獣人は買えないというのは自明の理であった。彼女は手ぬぐいを取り出し頭を覆った。服屋は落ち着いたモダンな雰囲気で高級感はあった。だが服自体はジャンルが多く、見ていて飽きない。ウラドは言う。


「とりあえず、まずは君のを探そう。今のそれ、東の服に北の上着着せただけだから、ものすごく似合っていないんだよね。」


ティナは自身の服を見下ろす。確かに喪服のようではあるが、素材は素晴らしいのに、と彼女は思った。


女性物の服はどれも丈が長く生地も厚い。ウラドが生地を指先で触っていると、ティナがある一着の服を持ってきた。ふんわりとした袖でカフスがキュッと窄まって固く、襟は簡素なハイネックだ。特にフリルといった装飾はない。ベストは碧の厚い生地に金の東にも似た紋様が縦のボタンに沿って縫われている。下は同じ碧の膝丈程のスカートだが、中は白のボトムスが内臓されているようだ。シャツの生地は薄いが、透けはしない。ベストも裏地があって暖かそうだ。こういった物が好みなのかと、ウラドは関心した。そして彼は遠目で確認しながら言う。


「いいと思う。」


ウラドは実際よくわかっていなかった。女性の服は大抵どの女性にも似合う物が多いからだ。ティナはまた胡散臭そうに見つめると、まぁいいかと言ってカゴに丁寧に入れた。だがその時、ウラドはベルトの棚を見て言う。


「そのスカートの腰あたり、少し膨らみすぎだと思う。このベルト着けたら?」


そういって、彼は細い布製の白い帯を彼女のカゴの中に入れた。彼女は満更でもなさそうだ。一方のウラドは、一応北の服はあるが、もうだいぶ古い。この際買い換えようとも考えていた。ウラドは反対の方へ向かう。北の男物はなんとなく理解している。主に動き易く、大きいのだ。ウラドは身長は一般的だが体格は細いので大抵の服とは合わない。だがこの店は細身の服もあるようだ。一先ず、カゴを取り出しハイネックの白シャツ、黄土色のストレートズボン、茶色の革手袋を放り込んだ。奥のレジ打ちで服を全部買い込み、2人は早速試着室で着替えを済ませた。出てきた時、2人はまるで別人で、ティナも上京した娘のようだった。


さて、長くはなったものの、2人は街の端にある魔導士の街に入って行った。街は雪が降り積もっており、地下街にも関わらず極寒のようだ。ウラドは街の入り組んだ路地道を辿っていくと、途端に路地の隙間に差し込むように光が食い込んできた。ティナは目が眩んだが、少しして目を開けると、街とはうって変わって別の、開けた空間に出た。あたりは草原で、奥には崖、海原が広がっている。ティナは目を丸くしてウラドに尋ねる。


「あの、ここは?」


「ここは––––『駅』みたいなもので『船』みたいなものかな。」


ティナは首を傾げた。


先へ進んでいくと、ポツンと看板が突き刺さっている。ウラドはその看板を見て言う。


「前の奴ら、まだ()()()()()か。」


少し呆れるように言うと、すぐに棒が地面からまるで水面から出てきたかのように露出した。


「よし来た。」


ウラドは棒を握り締めると、ティナに手を伸ばす。戸惑いながらもその手を取る。先ほどの革手袋のせいで感触は固く、冷たい。


「あの、どうやって行くんですか?」


「土竜の要領だ。おいで。」


ウラドはティナの手を一度握り直すと、詠唱した。


           【波すら追い越す魔法(ドノーレ・レヴァント)


ゴポゴポポポ––––––


足元がまるで水に飲み込まれるように沈んでいく。ティナは思わずウラドの手を強く握り締める。


「これは?!」


「離れないでね。()()()()()()()()。」


鋭い声でそう言うと、身体はどんどん飲み込まれ、地面から、2人は消えて行った。ハッキリと水の中に潜り込んだ感覚がしたため、ティナは目を瞑り、息を止めた。その時、ウラドはトントンと彼女の肩を叩く。ティナが目を開けると、思わず息がゴボッと泡を立てた。だが息は出来る。妙な場所だ。目の前が、まるで珊瑚礁のようであった。浅葱色の海が潮に乗って流れ、魚も泳いでいる。だがよく奥を見ると、やはり波に持って行かれた人間たちもいるようだ。ゾッとする彼らの果てを、ティナは思わず目を逸らす。フジツボにヒトデなどが揺らめき、人の往来もあった。ウラドは棒を突き立てながら歩き出す。棒には淡く光る臍の緒のような物が、奥と繋がっている。ウラドは言う。


「ここはね、名前がないから、魔導士達は『胎盤』と呼んでいるんだ。」


それを聞き、ティナは微笑して応える。


「なるほど。東では子供は船に乗って母親の元へ向かうという言い伝えがあります。まさか東の文化と繋がっているんですね。」


「まぁ、使うのは大抵術師か錬金術師だからね。」


2人は胎盤を歩いた。時折人と会い、軽い挨拶もあった。ティナはふと、もしかしたら本当にこうやって親元へ来たのだろうかと考えるのだった。


やがて海の果てに着いた。果ては岩石の壁が聳えており、もう先へは行けない。ウラドは棒から手を離す。すると、また潮の流れが変わり、2人は渦潮に飲まれた。それでも尚、ウラドはティナの手を離すことはなかったおかげで、2人共に海から這い出た。服は不思議と濡れてはおらず、ティナは眼前の大きな石門の前にいた。街なんてほとんど見えず、奥にあるであろう何かの尖塔ほどしかない。ティナは驚愕の面持ちで言う。


「ここが、目的地––––ですか?」


「あぁ。魔道試験会場を担う魔道都市【カレリア】だ。」


ウラドは杖を召喚した。今ここでは危険な気もしたが、魔導士の集まる都市故問題ないのだろうと、ティナは自己完結していた。2人は石門に入る。門番はおらず、代わりに術式が付与されている。魔道関連の犯罪者には特別な魔力が付与される。永遠に消えることのない刻印に近いものだ。都市は全体が石壁に覆われており、境界は見当たらない。街には宿が多く、そこらじゅうに魔導士の洗練された魔力が天高く伸びている。だがそこまで長くはない。自由だが規則正しく伸びているあたり、術師だろう。ウラドは杖をトンっと叩きながら奥の大きな建物に向かう。建物は木造の外壁で、屋根は捻れた尖塔と玉葱のような妙な形をした尖塔もあるようだ。門は遥か高く開かれており、現代の魔導士界隈とは相反するような気がした。ウラドは入り口から見える受付の新緑の制服の娘の元へ行く。娘は淡々と一礼する。


「こちら、魔導教会です。ご用件は?」


「魔道試験を受けたい。」


正直ここは人が多い。彼らは鋭い眼差しで敵か否かを選定している。娘は受付の本をペラペラと自動操作魔法で手でかざすだけでページがめくれている。そして言う。


「ございますね。級は?」


「–––––え、級?」


知らぬ単語に間抜けになるウラドを他所に、娘は淡々と説明する。


「はい。5級から1級までございます。1番上が1級です。」


「あちこち旅してるから、制限があったりするのかい?」


「大抵の場合1級であればどこでも行けますよ。ただし、渡航される方全員が所持している必要があります。」


ウラドは杖に体重をかける。正直、ウラドは自身が受かるとは踏んでいた。しかし、問題はティナだ。基礎魔法は殆ど知識でのみだ。使いこなせなければ辿る末路は想像がつく。ティナは言う。


「が、頑張ります––––!」


ティナはそう言うが、耳もぺたんとして、自信がなさそうだ。だが、今はそうして貰わないと困る。ウラドは言う。


「受験者は2人で。1級を受験する。」


受付の娘は淡々と一礼すると、白紙のページに2人の名前が記載された。


さて、2人は都市で宿を紹介された。受験者の宿だろう。ティナは久々に魔法の本を取り出す。そして、ふと紙袋とベリアールからの品物を思い出した。ティナはそれらを全て取り出した。ベリアールからの本は買ったばかりなのか真新しい。中心には太陽の金色の印が押されている。内容は東の神々についてだ。ブレスレットは、見慣れない物故西か北にでもあるのだろうか。一先ずそれを右手の腕に通す。何か力がハッキリとしたような気がした。そして紙袋を開ける。中には箱があった。手のひらほどで特に装飾はない。銅製の留め具を開けると、その中には裁縫の針が数本入っていた。他にも空色のマフラー、白色のヘアゴム、革製の腰つきポーチなどがあった。ティナは尾を振って喜んだ。そしてふと、スカートの裾を見る。前から思ってはいたが、スカートの類は寒さには良いものの、動くには少し難しい。ティナはうーむと悩んだ後、先はどの裁縫道具でスカートの青の布を左右ともに縦に裁ち、針で布がほつれないように端同士をなっておいた。こうすれば、開脚しても問題ない。丁度、スカートの内部はズボンのようになっていたゆえ。その時丁度ウラドが部屋に戻ってきた。彼は疲れたようにベットに埋もれて言う。


「試験は次の週だそうだ。」


「それまで、勉強の時間ができそうですね。ちなみに–––––魔導士の試験ってウラドさんは受けたことあるんですか?」


「ない。錬金術師ってバレたらそれこそ吊るし首だ。」


「哀しいですね––––錬金術は悪い物でもないのに」


「まぁ、仕方ないよ。歴史が色々証明している。ま、そう言うわけで僕も術式に関して勉強しないと。ティナも練習してみようか。」


ティナは頷いた。その心中は、期待に応えたいとする情熱とそれを裏切ってしまった時の罪悪感と焦燥が踊りあっていた。


2人は杖を持って外に出ていった。


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