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〜クルル山脈に棲み着くドラゴン〜

 次の日の朝,支度を済ませた俺達は依頼の為に王宮を出発しようとする。すると――

 「よう! 待ってたぜ」

 「あれ? ダマールどうしたんだ?」

 「案内役がいるだろ? 国王に頼んで案内役は俺にしてもらったんだ。元々は俺が頼んだ事だしな」


 「そうなのかわかった案内頼むよ」

 「じゃあ行こうかの〜」

 「魔物が来てもオイラに任せな」


 俺達はクルル山脈へと向かう。昨日使った鉱山の入り口ではなく,別の入口から向かうようだった。連れて行かれた場所に行くと,魔法陣が描かれた場所に連れて来られた。


 「ここは?」

 「冒険者さすけ様が作った魔法陣だ。魔力を流し込むだけで,移動出来る魔法陣で,ここからクルル山脈に向かうんだ」


 「そんな凄いものがあるのか……」

 「誰でも作れるものじゃないらしい」

 「さすけとやら相当やるな」

 「クロエでも出来ないのか?」

 「余はこういった複雑な魔法は出来ない。人間はむしろこういった魔法を得意とするからの! それでも簡単に作れる代物じゃないのは確かじゃ」


 「なんだかドキドキしてきたなぁ〜大丈夫かよ」

 「じゃあそろそろ行こうか」

 魔法陣が光り出し,目の前が一瞬見えなくなったらと思ったらクルル山脈にいた。


 「もう着いたのか」

 「それじゃあ行こうか」

 「戦いになったら皆余の後ろに隠れるじゃ。前には出るなよ?」


 少し進むだけで次々に魔物達が現れて,俺達目掛けて攻撃を仕掛けてくる。

 「大丈夫かの??」


 「だ,だ,大丈夫」


 「任せろクロエ! カナデはオイラが守る」

 「任せたぞロイ」


 「なんだ? カナデは戦えないのか?」

 「ダマール,俺は全く戦力にならない! クロエが俺達パーティーの最高戦力だからな」

 クロエが捉えられなかった魔物が一匹こっちに向かってきた。

 ダマールが前に立ち迎え撃とうとする。すると突然水の魔法が魔物を捉え魔物が倒れた。

 「今のは??」

 そう思うと俺の頭の上に乗っていたライムがブヨブヨと動いた。


 「まさか今のはライムか??」

 そうだよと言いたげにライムは俺の頭上で飛び跳ねて反応した。


 「ライムお主やるの」

 スライムってこんな強いのか??


 今はそんな事はどうでもいい。魔物に襲われすぎて進むことも全く出来ないこの状況をどうにかしないといけない。


 「ライム戦えるなら,クロエを手助けしてもらないか?」

 するとライムが動き出し,先程放った水魔法をあちこちに放ち魔物を駆逐していく。


 「ライムよ助かるのじゃ! もっとガンガン攻めてもよいぞ」

 しばらくの間,クロエとライムによる魔物の蹂躙が始まった。


 「す,すげ〜」

 ロイが言葉を漏らす。


 やっと魔物達からの攻撃が止んだ。

 「これでやっと進めるの」

 「す,すっげ〜〜!! ドッカンキーンって!! 魔法ってすげ〜な!!」


 「かっかっか。やっとロイも余の凄さが分かったか?」

 「オイラも魔法使えるようになる??」

 「そうじゃの簡単ではないが,使えるようになると思うぞ」

 「クロエ今度魔法をオイラに教えてくれよ」


 「ん!? まあよかろう。今度教えてやろう」

 「やったぜ」


 「そんな事よりさっさと先に進もうぜ。また魔物が来たら大変だろ?」

 「そうじゃの。先にいこうかの」


 「ダマールそれで俺達はどこへ向かうんだ?」

 「あそこに見える洞窟があるだろ? あそこを探索してもらいたい。奥は鉱山なんだがドラゴンが棲み着いてどうしようもないんだ」


 「ほほう! ドラゴンとな。見に行ってみようかの」

 「ドラゴンって他のドラゴンと交流とかあるのか?」

 「ほとんどないな!」


 「大丈夫なのか?」

 「大丈夫とは?」

 「クロエより強いって事ないか?」


 「カナデよ! 今までお主は余の何を見ておったのじゃ!? 余より強いドラゴンなんて存在する訳がなかろう」

 「え!? クロエってそんなに最強なのか?」


 「ロイよ一つ言っておくが,ドラゴンの中で一番強いのは余なのじゃ」

 「かっこいい!!」


 「そこまで言うなら,クロエ頼んだぞ」

 「任せておくのじゃ」


 「じゃあドラゴンのいる鉱山に入るぞ」

 俺達はドラゴンの棲む場所へと入る。

 クロエは鼻歌交じりに歩みを進める。


 「ここはミスリルがよく取れる鉱山だったんだ。ドワーフにとっては生命線なんだ。ここだけでも使える様になったらかなり助かる」

 「奥から変な魔力を感じるのじゃ。奇妙な魔力じゃ」


 「奇妙ってのはどういう事なんだ?」

 「近くに行ってみないと詳しく分からないのじゃ」


 俺達は奥へと進んでいく。広々とした採掘場に到着した。

 辺りに光る鉱物があちこちに点在している中央にドラゴンが寝ていた。


 「あれがドラゴンか……」

 「まだ生まれたばかりのひよっこじゃな! カナデ達はそこで待っておるじゃ」


 クロエは警戒も全くせずにドラゴンへと近づいていく。何をするかと思ったら,ドラゴンにパンチを食らわして寝ているドラゴンを起こした。


 「お主,余の声が聞こえるか??」

 「グオオオオ」

 ドラゴンは起きると目の前のクロエに向かって攻撃を繰り出そうとする。


 「おすわり!」

 クロエがそう言うと,ドラゴンは地面に貼り付けになって全く身動きが取れなくなっている。俺には何が起こったのか分からなかった。


 「崇高なるドラゴンがこんな所で何をしておるんじゃ! 余の声が聞こえんのか? 誰がそんな事をしたんじゃ?」

 クロエは何をしているんだ……


 「そうかぁ……もうお主自分の自我がないのか……同胞として苦しませずに逝かしてやろう」

 クロエがアイテムボックスから大剣を取り出した。そして剣を振り下ろすとドラゴンの首が飛んでいった。


 相手はドラゴンだったが一瞬にして,決着がついた。

 「クロエ大丈夫か?」

 「ああ問題ない……まだ子供のドラゴンじゃった」


 「何か分かった事があるのか?」

 ダマールがクロエに訊ねる。


 クロエがドラゴンの死骸を漁る。するとクロエの手から真っ黒い水晶のような物がドラゴンの中から出てきた。


 「それは??」

 「分からない。でもこれがこやつの自我を失わせた原因じゃと思う」

 「え!? つまりはどういう事?」


 「誰かがやった可能性があるっていう事じゃ。クルル山脈にいくつかこれと同じ魔力を感じる場所がいくつかある。魔物が突然現れたのもそれが原因じゃと余は思う」


 「そうなのか!?」


 「じゃから余は今からこれを回収してくるからカナデ達はここでゆっくり食事でもしておれ」


 「クロエ一人で行くのか?」

 「お主らがいると遅くなるからの。余がさっさと片付けてくるのじゃ」

 クロエはドラゴンを回収し,出口へと飛んでいく。


 「クロエーーー! 気をつけろよーーー!」

 「それにしてもクロエ,ドラゴン相手に一瞬だったな。あいつあんな強かったんだな」

 「なんだ? お主ら黒竜の伝説の事何も知らんのか?」

 「ダマールのおっさん何か知ってるのか?」


 「知ってるというか有名な話しさ」

 「どういう話なんだ?」

 遠い遠い遥か昔のおとぎ話をダマールは話してくれた。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「今後どうなるのっ……!」


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