〜天才ピアニストでヴァイオリニストが異世界に降り立つ〜
俺は死んだ。
と思っていたが,何故か森の中で仰向けで目が覚めた。
自分自身のワールドツアー中の移動の飛行機が事故に遭い墜落しそうになったのは覚えている。
いや! 確かに墜落したはず……
とりあえずここがどこなのかは分からない。
右手には相棒のヴァイオリンのケースを持っている。
「とにかく歩いてみるかぁ……」
俺はそう独り言を呟きながら立ち上がり歩き出した。
そして俺は今,巨大なイノシシのような動物に追いかけられて全力で逃げている最中だ。
小さい時からずっとピアノとヴァイオリンしかしてこなかった俺には走って逃げるなんて無理だ。
「もう無理だーー!!」
そう思った瞬間,急にイノシシが倒れた。見るとイノシシの頭に矢が刺さっている。
「大丈夫??」
声の方へと目を向けると木の上に弓矢を持った綺麗な金髪ロングの耳がやたら長い女性がいた。
「あなたがジャイアントボアに追いかけられているのが見えたら助けたけどあなたの獲物だったからしら?」
彼女がそう言いながら颯爽と木の上からジャンプし降りてきた。
俺は状況がよくわからず混乱していると,彼女の方から話しかけてくれた。
「あなた冒険者でも狩人って感じでもないわね? こんな森で何をしていたの?」
「いや……気付いたらここにいて……。ここはどこなんですか??」
「気付いたらって! 大丈夫??」
言葉を交わしていると遠くから何人もの声が聞こえこっちへと向かってくる。
「おーーい!! ルイーザ!! 獲物どうだった??」
「こっちよ!!」
「おお! ジャイアントボアじゃないか。ルイーザこの人は?」
体格のいい男性が俺の事を助けてくれたルイーザと呼んだ彼女に問う。
「ジャイアントボアに追いかけられてたから助けたんだけど,気付いたらここの森にいたんですって」
「ん?? そうなのか?? 俺はローレンツってんだ! おたく名前は??」
「奏です」
「カナデかよろしく。カナデは気付いたらここに? しかもそんな格好で」
「本当に分からないんです。気付いて目が覚めたらこんな場所に。それに記憶も曖昧で……」
「なるほど……何か記憶操作の魔法でもかけられたのか? そして捨てられたのか? なあ爺さんどう思う?」
いかにも魔法使いといったローブ羽織ってトンガリ帽子を被ったおじいさんが答える。
「そんな魔法もある事にはあるが,どうかねぇ〜?? 高レベルの魔法じゃからの〜。なんとも言えないがの〜」
「俺はカナデを俺達に同行させようと思うが皆どうだ??」
ローレンツの言葉に皆が同意した。
「カナデはどうだ? 俺達は今,王都を目指してるんだが,一緒にどうだ?」
正直めちゃくちゃ怪しいというか心配だ。だが,もしまた何かに追われたら俺はきっと対処できないだろう。そう思った俺は彼らと一緒に共にする事を決めた。
「分かりましたよろしくお願いします!」
「おし!! じゃあよろしくなカナデ!!」
「俺の仲間を紹介しておくな。エルフのルイーザ。そして魔法使いのハルゲン。リザードマンのリングストンに神官のエリスだ」
ローレンツはそう紹介してくれた。が,魔法使い? エルフ? リザードマン? 訳が分からなかった。とにかく俺はローレンツ達に付いていく事にした。
ローレンツ達に付いて行き,色々と話を聞いていくと,この世界はよく見るファンタジーの世界のようだった。魔物や魔法というものが存在,跋扈している世界だという。
俺は夢でも見ているのだろうか? だが,この現実感は夢のものではない。
確かにリングストンのような存在も,ルイーザのような存在も地球には存在しなかった。ジャイアントボアと呼んでいた巨大なイノシシをハルゲンは浮かせて運んでいる。これが魔法というやつか。俺は現実だとそう感じていた。
「よし! この辺で野営の準備をしよう」
ローレンツの一言で皆が野営の準備を始めた。森の中で今夜は野宿するようだ。
ジャイアントボアの肉を調理し,食事の準備を始める。テントなどを設置し,野営の準備が終わったようだった。
「カナデさんもどうぞ」
エリスから食事を渡された。
「エリスありがとう。ローレンツ王都まではどの位かかるんですか?」
「そうだなぁ。あと二日って位じゃないかな」
「そうなんですね。見ず知らずの俺のことなんか助けてくれてありがとうございます。」
「別にいいさ! あそこで別れたらカナデはモンスターにやられて死んじまうだろうしな。それが分かってて助けないのは寝覚めが悪い。それに戦えそうな姿もしてないし武器も持ってなさそうだしカナデは安全だろうと思ってたからな」
「なるほど……」
「それとずっと大切に持っているその箱はなんなんだ?」
「これですか? これはヴァイオリンです!」
「ヴァイオリンってなんだ?」
「楽器です。音を奏でる道具です」
「へぇ〜」
「本当に!? 私何か聞いてみたい」
ルイーザがそう反応した。
「拙者も何か聞いてみたい」
無口だったリングストンが初めて言葉を発した。
「では何か一曲弾きましょう」
焚き火だけの灯りの中,星々が光る青空の下,満月が見え隠れするような場所で弾くなんて初めてだ。しかし,何故か俺の頭に今流れる曲があった。俺は浮かんだ曲を弾く。
「♪〜〜〜♫♪〜〜♪〜〜〜〜♫〜〜〜」
助けてくれた皆に感謝を込めて,シューベルト作曲『アヴェ・マリア』
弾き終わると,皆微動だにしないで,止まっている。
ルイーザはホロリと涙を流していた。
「す,凄い!!」
リングストンが褒めてくれた。
「ありがとうございますリングストン」
「初めて聴いたわこんな綺麗な音」
涙を拭ってルイーザが答えてくれた。
俺の事なんて誰も知らない。俺に媚びた発言でもない事も分かる。だらこそ素直に褒めてくれたことがとても嬉しかった。
食事を終えてテントの中で休んた。俺は色々あったからか,すぐに眠りについた。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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