009
「それじゃ私は仕事があるから、これで失礼することにするよ。今後のことについては、木村君に聞いてくれ。」
「はい。」
立原社長はそう言うと、部屋を出て行った。
「さて、軽く今後の話をしておこうか。適当な場所に座ってくれ。」
「はい。」
俺は、ねーちゃん達と適当に空いている席に着いたんだが、翔さんも座っていた。
「あれ? 翔さん。仕事は大丈夫なんですか?」
「うん。次の撮影までまだ時間があるからね。千秋ちゃんがどういった仕事をするのか興味があるし、僕も聞いても良いかな?」
「えっと。」
何と答えて良いのか分からなかったので、木村ディレクターへと顔を向けた。
「まぁ、吉田さんは同じ事務所の人ですから、外に情報を漏らすことも無いでしょう。構いませんよ。」
「ありがとう。」
どうやら聞いても問題ないみたいだ。なら良いのかな。
「では、今後の話ですが、千秋君は、何を目指したい?」
「えっと、それってどういった意味でしょうか?」
「役者をやりたいのか、アイドルになりたいか、それともモデルとかかな。もちろんどれを目指しても構わない。」
「私が仕事を選べるんですか?」
「正直言うと、俺は全部に挑戦してもらいたいと思っている。俺の直感でもそうすべきだと言ってるしね。」
「はぁ。」
多分、その直感は外れていると思いますよ? だって俺、男だしね。
「特に無いようなら、俺に任せてくれないか? 決して悪いようにはしないつもりだ。」
「えっと、一つだけ良いでしょうか?」
「どうぞ。」
「出来れば、肌を見せる仕事だけは遠慮させて下さい。」
「それは水着ってことかい?」
「はい。」
それを聞いた木村さんは、大きなため息を一つついた。
仕方ないじゃん。だって脱いだら一発で男だってバレて終わるからな。変態の烙印は遠慮したい。
「そのフェイスに似合わない素晴らしいボディなのに勿体ない……が、本人が嫌がるなら仕方がない。何とかそうならない方向で調整してみよう。」
「お願いします。」
偽乳なんだけどね。意外と気が付かないものなんだな。
「仕事が決定したら梓君だったね。そちらへメールを入れよう。スケージュールの管理等は任せたよ。」
「承知しました。」
「学校等の連絡は梓君が対応してくれ。こちらがマネージャーとしてのマニュアルだ。よく読んでおくように。」
木村さんがそう言うと、3cm程のファイルをテーブルへと置いた。
これが全部マニュアルなのか? 結構大変なんだな、マネージャーって。
「承知しました。」
「俺からは以上だ。何か質問は?」
「大丈夫です。」
「では、これから宜しく頼むよ。俺からの話はこれで終わりだが、千秋君にはプロフィール作成が残っている。
3階に撮影スタジオがあるから、そちらへ行ってくれ。」
「はい。」
「千秋ちゃん。またね。
千秋ちゃんのお姉さん達も、これら宜しく。」
「はい。」
「「「もちろんです!」」」
ねーちゃん達は天に上る様な顔で大喜びをしていた。良いけどね。
「「「「失礼しました。」」」」
俺達は会議室を出て、3階の撮影スタジオへと向かうことにした。