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005


あの後ねーちゃん達が帰って来たのだったが、どうやら本当に見失っていたみたいだ。

そう言うことなら探してくれたのかと聞くと、勝手に帰ってくるだろうと言うことで、そのまま3人で遊びに行ってしまったらしい。許すまじ!


何だかんだで腹が立っていたってのも有ったので、折角貰った『吉田 翔』のサイン入りハンカチは、誰にも渡さずに俺が持って居ることにした。

CMで使用した服も、色々と聞かれると面倒なことになりそうだったので、紙袋に入れてタンスの奥に仕舞っておくことにした。



・・・・



それから数日して、家族でTVを見ていた時、それは起こった。

例の炭酸飲料のCMが流れたのだ。



「!?」


「うわっ、何この子、凄く可愛いじゃん!」


「ホントだ~可愛い~!」


「これ絶対吉田さんに恋してる顔だよね。代わって欲しい!!」



俺があまりのショックに、口開けて唖然としていたからか、梓ねーちゃんが聞いて来た。



「ん? そんなに見つめててどうした? もしかして千秋ってこんな感じの子が好みなの?」


「可愛いもんね~、でもこの子、最近何処かで見た様な記憶が有るんだよなぁ~……何処でだろう?」


「くそっ! 羨ましすぎる!! 殺す!」



千歳ねーちゃんが良い勘をしている。気付くな~!!

そして沙月ねーちゃんが怖い……

何はともあれ、結局最後までバレることは無かったので助かったのだった。ほっ……


しかし、世間でこの謎の美少女(?)の噂が大々的にニュースになったのだ。

TVだけじゃない、SNSやトゥイッター、LINヨ、色んなアプリによりどんどん拡散していったのだ。

もちろん俺の学校でも同様だ。



「なぁ、昨日の炭酸飲料のCM観たか?」


「観た観た、チョー可愛い子だったじゃん! 俺一目で好きになっちゃったぜ! ジュースも10本も買ったぜ!」


「俺も俺も! あんな子が彼女だったらなぁ~ もちろん家には1ダース有るぞ!」


「だよな! あの子名前何て言うんだろうな。俺は箱買いだ!」


「ちょっとネットで調べて見よーぜ! へっ、俺は1グロスだぜ!」



物凄く盛り上がっていた。



「どうかバレませんように。」



俺は震えながら必死に神様に祈るのだった。

幸運なことに、正式な契約を結ばなかったことが功を奏したのか、俺の情報は一切バレることが無かったのだ。やったぜ!


だが人と言う物は、隠されると探したくなる生き物らしく、毎日の様にあちこちで噂が飛び交っていた。

似た様な人物を見かけたとか、2年C組の●●ちゃんじゃね? とかの情報から、私がその噂の人ですと言って来る人も現れた。まぁ、直ぐに偽物とバレたみたいだったがな。

終いには、例の炭酸飲料のメーカーが、このCMで大儲けしたらしく、CM第二弾を出したいから連絡下さいと広告を出していたのにも驚いた。連絡しないけどね。


人の噂も四十九日と言うように、何の情報も無いまま2ヵ月程経つと、新たな情報が何も出なかったこともあり、世間もそろそろ落ち着いて来たみたいだ。ほっ。

炭酸飲料のCMも終わって、新たに別のCMに変わったことで、俺はようやく普通の一般人へと戻ることが出来たのだった。



・・・・



あれから4ヵ月経ち、すっかり世間から例の美少女のことが忘れ去った頃、ある番組のトーク番組で事件が起こった。

俺はその番組を見ていなかったのだが、そのトーク番組のゲストに『吉田 翔』が出演しており、例のCMの話が上がったみたいなんだ。

その時、吉田さんが思わす、「ああ、千秋ちゃんね。」と思わず言ってしまったのが最後、再び美少女を探せブームが起こってしまったのだ。全国の千秋さん。ごめんなさい!

そして俺が何を言いたいかと言うと、只今、絶体絶命のピンチなのだ。それは……



「ち~あ~き~ちゃん? 分かってるわよね?」


「イ、イエス、マム!」


「何処かで見たこと有る子だと思ったんだよね~、良かったスッキリしたよ~」


「えっと、その……はい……」


「私の吉田さんに……殺す!」


「た、タンマ! お願い! マジ許してください!」



思いっきりねーちゃん達にバレたのだった。まぁ、姉弟だもんヒントさえ有れば流石に分かるよね。

俺は命欲しさに必死に説明するのだった。



・・・・



「吉田さんのサイン入りハンカチ、私のよ!」


「違うこれは私の!!」


「例え姉さんが相手だとしても、絶対負けない!!」



案の定というか、説明の最後でサイン入りハンカチを貰った話をした後は、上記の通りになったのだ。

貰った服については何の興味も持たれなかったが、例のサイン入りハンカチで醜い争いが起こっている。正に骨肉相食むだな。

俺的には吉田さんのサイン入りハンカチなんて要らないから、別に取られたとしても惜しくは無いのだが、姉妹の争いの原因になったのを見てると、何とも言えない気持ちになるのは何でだろうな。

とりあえず最後は長女の特権と言うか力の差(?)で梓ねーちゃんが勝ったとだけ言っておこう。


まぁ、何にせよ、これで全部終わりっと、良かった良かった。












と思っていた時期が俺にも有りました(遠い目)



「千歳、例の特殊メイク、沙月はパンツを穿かせる!」


「りょうか~い♪」


「まかせて!」



今、俺に何が起こっているか言わなくても分かるよね? 俺の尊厳は何処にあるんだろう……

何でそんなことになったのかと言うと、引き出しに仕舞っておいた吉田さんの名刺が見つかったからだ。えっ? 監督はって? 知らない子らしいです(同情の涙)

沙月ねーちゃんが俺の許可も無しに、勝手に引き出しを開けて見つけたのが切っ掛けで、サインのお礼と言って電話をしやがったんだ。

それからどういった流れでそうなったのかは知らんが、四姉妹で吉田さんと合うアポを取り付けたのだ。何てこった……



「はい、コレを着る!」



そう言って渡されたのは例の貰った服だ。



「待て待て待て、これを着たら色々バレるって! 無理無理無理!」


「やれ!」


「りょうか~い!」


「おらぁ! 大人しくしろ!」


「いやああぁぁぁぁ~~~~!!!」



・・・・



「それじゃ、出発するよ! 吉田様待っててね!」


「「おー!」」


「シクシクシクシク……」



相変わらず俺の意思を無視して連れていかれるのだった。



「ねぇ、あれって!」


「うそっ! 本物?」



当然と言うか何と言うか、思いっきり目立ってますね。

例の服ってだけでも目立つってのに、マスクもサングラスも無しの素顔を晒してるんだもん。そりゃバレますわ。

すると、一人の男性が近づいて来た。



「あ、あの、例のCMの子ですよね? ファンです! 握手して下さい!」


「あ、ありがとうございます。」


「うおぉ~!! やった~~!! 絶対この手は洗わないぞおおぉぉ~!!」



仕方ないなと、握手をしてあげると、男性は叫びながら走って行ってしまった。



「ウチの千秋がとっても可愛い件。」


「私達、もしかして女性として負けてる!?」


「千秋のくせに、生意気~!」



何やらねーちゃん達がボソボソと話しているが、聞いたら駄目な気がする。うん。無視しよう。

そんなこんなで色々と有ったが、何とか目的地へと到着したみたいだ。

何で分かったのかって? そりゃお店の周りに沢山の女性が居たからだ。しかも「翔~!」、「翔君~!」とか騒いでいる時点でバレバレだ。

と言うか此処、普通の喫茶店じゃん。営業妨害してないか? お店の人に怒られないのだろうか……



「行くわよ。」


「は~い。」


「うん。」


「へいへい。」



俺達がお店に入ろうとしたら入り口に居た女性に止められた。



「すいません。本日は貸し切りで……もしかして斉藤様でしょうか?」


「そうよ。」


「吉田様から話は聞いております。中で待っていますので、このまま入ってください。」


「ありがとう。」



流石は社会人の梓ねーちゃんだ。堂々としているな。颯爽とお店の中へと入るのだった。


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