表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/28

003


「これが台本になります。」


「あ、はい。」



スタッフらしき人に台本を貰ったので読んでみることにする。



「炭酸飲料のCMか。」



子供以上大人未満の未成熟の女の子が大人の男性に恋をする内容だ。甘酸っぱい恋の味って感じらしい。確かに今の俺の年齢くらいだな。ターゲットもその年代を狙っているみたいだ。そしてシナリオはこんな感じだ。


遠く離れ離れになっていた男性が、何年かぶりに帰って来る設定だ。

例の炭酸飲料を飲みながら公園で待つ俺。そこに男性、まぁ吉田さんがやってくる。

それに気が付いた俺が嬉しそうに吉田さんへと走り寄り、頬にキスをして、お帰りとの台詞と供に、大人っぽく背伸びをした微笑みを浮かべて終わる15秒ほどのCMだ。



「ふむ、これくらいなら何となりそうか。」



正直、頬とは言え、男性にキスをすることに抵抗が無い訳では無いが、これも100万円のためだ。この位は我慢することにしよう。

それにしてもそれなりに会話をしたにも係わらず男性だってバレないもんだな。

確かに俺は成長が遅くて低身長だし、声変わりも済んでいない。だからと言ってバレずに女の子に見えるってのもある意味ショックなんだよね……



「そろそろリハーサルをします。」


「あ、はい。」



スタッフが呼びに来たので返事をしてプレハブから出ることにした。



「うわっ、何これ!」



外に出てビックリした。物凄い数の野次馬がいた。さすがは人気役者の吉田さんの影響だ。おそらくSNSとかで拡散されたんだろう。

それにしても、撮影する方向には誰も居ないのに、その反対側は物凄い人が居る。そのギャップが面白い。

向こうから吉田さんが歩いてきて俺に声を掛けてきた。



「君……えっと、そう言えば名前を教えて貰えるかな?」


「あ、はい。お…私の名前は千秋です。」


「千秋ちゃんね。可愛い名前だね。今日は宜しく頼むよ。」


「はい。」


「まずは通しで動きを確認するぞ。準備してくれ!」



向こうで椅子に座っている監督が大声で声を掛けてきた。吉田さんは待機場所へと移動し、すぐさまスタッフの人が近づいてきて声を掛けてきた。



「では、一つ一つ動作を確認しながら一通りの流れををやってみますので、その通りに行動してみて下さい。」


「わかりました。」


「では、これを両手で持ったままで、向こうのベンチに座ってください。」



指定されたベンチに腰掛けると、ギュッとペットボトルを両手で掴んだ。



「そして一口飲んで、ため息を一つついてください。


「ふぅ……」



俺は言われた通りにため息を一つついた。



「次に吉田さんが現れるので、走って抱き着いて下さい。」


「はい。」



吉田さんが出てきたので、立ち上がって走り出した。



「ストーップ! 千秋ちゃん待って!!」


「えっ?」



スタッフに止められてしまった。何かやらかした!?



「千秋ちゃんって、陸上部?」


「いえ、違いますが。」


「そ、そうなんだ。う~ん、何と言うか、もうちょっと女の子っぽい走り方って出来ないかな?」


「あーはい。やってみます。」



どうやら走るフォームが問題だったみたいだ。確かに女の子の走り方って男性とは違かったな。

えっと……あれ? 女の子ってどういう走り方してたっけ?

おっぱいがプルンプルンと縦揺れしている記憶しか無いぞ!?



「こうかな? いやこうか?」


「……そこの照明係の人、ちょっと走って貰えますか?」


「はい!」



俺が試行錯誤をしていると、スタッフの人が気を使って照明を担当してた女性スタッフの人にお願いしてくれた。

俺は、女性スタッフが走っているのを観察する。……なるほど女の子っぽい走りってこんな感じになるのか。

胸がステータスの方だったのでしっかりと集中して観察できたのは幸いだった。



「えっと、腕の振りはこうで、足はこんな感じだったかな?」



俺は全力では無く、軽く内また気味にして走る。腕は肘を伸ばし気味に少し開いて左右に振ってみて気が付いた。

あーこれって、オカマが走る時の恰好だ。何か納得した。



「いいよ、いいよ~ その調子!」



どうやらOKみたいだ。

後は吉田さんに抱き着くだったな。

あれ? 何処に抱き着くんだ? 腕? 腰? 胸元? 頬にキスするってことは首か? だが俺と吉田さんの身長差は30cm近くもあるから届かない。どうすんだ?

すると吉田さんが少し屈んで両手を出してくれた。ってことは首が正解だろう。俺は首に抱き着くことにした。



「はいOKです。後は頬にキスした後に台詞を言って、カメラに向かって微笑んでくれれば終了です。動きは大丈夫でしょうか?」


「はい。大丈夫です。」


「ではリハーサル本番行きますので、ベンチに戻ってください。」


「はい。」



いよいよリハーサル本番だ。1発でOKもらってやるぞ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ