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「それじゃあ、レッスンを開始をする前に……」



長谷川さんがポケットからSDカードを取り出した。



「君たちのデビュー曲が決まったよ。」


「「本当ですか!?」」



どうやらあのSDカードにデビュー曲のデータが入っているのだろう。……と言うか、そんな大事なデータなのにポケットに入れていて良いのだろうか。無くしても知らんぞ?



「じゃあ、早速聴いてみようと……おもったと思うが、これはレッスンが終わってからの楽しみにしておこうと思う。」


「「えぇ~~~!!」」


「相変わらず息がぴったりだな。よし、それじゃあレッスンを開始するぞ!」


「「は~い。」」



何だよ期待させておいてさ。だったら見せるんじゃねー!!

俺が恨みを込めた目で長谷川さんを見ていると、長谷川さんが俺の視線に気が付いたみたいだ。



「千秋ちゃん。その目は、一部の人たちを喜ばせるだけだよ?」


「確かに千秋ちゃんは可愛かったですね。」


「うぐっ!」



どうやら俺は恨みを込めた目では無く、ジト目になっていたみたいだ。確かに美少女(自分で言うな!)からのジト目はご褒美だな。気を付けよう。

こうして発声練習が開始されたのだった。




・・・・




「よし、こんな感じかな。」


「はぁ、はぁ、はぁ……あ、ありがとうございました。」


「ふぅ~……ありがとうございました。」



一番辛いダンスレッスンが終了した。これで今日のレッスンは終了だな。



「千秋ちゃんって意外と体力あるよね。何かスポーツやっているのかな?」


「いえ、特には。」


「まぁ、多いに越したことはないからね。舞ちゃんも同じくらいの体力をつけておくと良いよ。」


「は、はぁ。」



何となくだが、舞ちゃんの目が、男の子と比べないでくださいと言っている気がする。たぶんおそらく……



「じゃあ、お楽しみのデビュー曲を聞いてみようか。」


「「はい!!」」



そーいやそんなこと言ってたっけ。どんな曲なんだろうな。

長谷川さんがパソコンにSDカードをセットし、再生ソフトを起動させた。


♪~


曲は歌は入っておらず、メロディーだけだったが、ポップ調にも関わらずアップテンポな今時風の曲で、なかなか歌うのも難しそうな感じの曲だった。



「長谷川さん、この曲の歌詞って有るんですか?」


「もちろん。これだよ。」



長谷川さんがそう言うと、紙を1枚出してきた。

俺がそれを受け取って歌詞を眺めてみる。



「あ、私も見たいです。」


「じゃあ、一緒に見ようか。」


「うん。」



俺たちは仲良く隣同士でくっ付いて座ったんだが……良いのだろうか。

舞ちゃんの輪やらかい腕が当たっており、そしてもともと良い匂いがしていたのが、より距離が近くなったことで強さが増して……って、変態かよ!

深呼吸して気持ちを落ち着ける……が、胸いっぱいに深呼吸すると、舞ちゃんが香りがより強く……ダメかもしれない……



「へぇ……良いじゃない。」



舞ちゃんのそんなつぶやきを聞いた俺はハッとする。そうだった今そんなことしている場合じゃない! 俺は煩悩を捨て去り気合を入れるのだった。



「確かに良いかも。」



書いてあった歌詞だけを見ると、今時の女の子の恋の悩みや友達との友情、そして世の中の不満や苦悩を訴えるって感じの文章だった。

一部女の子の気持ち的なところに、理解は出来ても気持ち的に微妙なところが有ったのは、俺が男だからだろう。

まぁ、先ほどの曲に合わさると、その微妙なところも無くなる感じがするので、さすがはプロが作っただけは有るな。


ただ、気になる点が1つだけあった。AとBって書いてあるのだが、AパートとBパートとはちょっと違うか。ABと書いてあるところもあるからな。

と言うことはこれは俺たちが歌う箇所だな。でも、何で名前じゃなくてABなんだ? まぁ、聞いてみれば分かるか。



「長谷川さん、どっちがAでどっちがBを歌うんですか?」


「あ、私もそれが気になりました。」


「あーそれか。実はまだ決まってないんだ。」


「はい?」


「そうなんですか?」


「あぁ、両方を試してみて、より良い方を採用しようっとことになってね。次回のレッスン時にその辺りを確認するから、次のレッスンまでに歌詞を全て覚えてきてくれ。」


「「はい!」」



どっちが歌ったとしても歌詞は知っていた方が良いだろうから、覚えるのは問題ない。後はどっちがより合うかもあるが……本当に俺が歌えるのだろうか。

一応レッスンと発声練習のお陰で、アルトからメゾ・ソプラノまでの音域まで上げられたが、なんだかんだ言って俺は男だからな。



「千秋ちゃん、不安かい?」


「あ、はい。少し……」


「最初だから仕方ないと思うよ。でもね、僕は千秋ちゃんと舞ちゃんには無限の可能性が有ると感じているんだ。だから大丈夫さ!」



長谷川さんがそう言って力説していた。そうなのだろうか? まぁ、プロが見るとそうなんだろうな。



「千秋ちゃん、大丈夫だよ。一緒に頑張ろうね!」


「うん!」


「じゃあ、こいつも渡しておくぞ。」



長谷川さんがそう言って、ポータブルの再生機を渡してくれた。ありがたく借りておこう。



「じゃあ、今日は終わりにしようか。お疲れ様」


「「お疲れ様でした~」」



こうして今日のレッスンは終了となったのだった。



「じゃあ、千秋ちゃん、またね~」


「うん。ばいばい。」



舞ちゃんと別れた俺は、梓めーちゃんを探す。



「あれ? 梓ねーちゃんは何処に居るんだ?」



てっきりレッスン場の外に居ると思ったんだが見当たらない。

ふと、スマホにメール着信の記録が有った。



『打ち合わせが遅くなるから先に帰ってて』



そういう理由なら仕方ないか。帰ろうっと。


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