021
ファミレスに向かう最中、俺達はずっと無言のままだった。何か気まずい……
そして、居心地が悪いまま目的のファミレスへと到着した。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「2名です。」
「それでは、空いているお席に案内します。」
案内された席は一番奥の窓際だった。比較的会話が聞かれにくい場所だったので、内緒話をするには丁度良かったかもしれない。
とりあえずドリンクバーを2つ注文して、まずはジュースを取って来てくることにした。
そして戻って来た後は、お互い向かい合ったまま無言が続いている。
「・・・・」
「あ、あの、お話って何でしょうか?」
「……確認なんだけど、千秋ちゃんは、あの時の千秋君で良いんだよね?」
バレた!? でも、何となく舞ちゃんを見た感じでは、まだ確信を持っているって感じでは無いっぽいな。
誤魔化すことも出来そうだが、何となくこの子に嘘を吐くのって嫌だな。仕方がない、これで終わることになるかもしれないが、腹をくくるか。
「う、うん。そうだよ。」
「変態さん?」
「ち、違うよ! これには深い訳が有って……」
「それって話して貰えるのかな?」
「もちろん。最初から話すよ。」
「うん。」
俺はねーちゃん達に無理やり女装させられて放置されたこと、その時にCMの撮影で翔さんに会ったこと。
これで終わったと思ったのに、TVで翔さんが俺の話をして、ねーちゃん達にバレたことで、性別を偽って無理やり芸能事務所に所属させられたこと。
雑誌のモデルをやらされて、今度は舞ちゃんとのユニットを組むことになったのを、順番に説明した。
「呆れた~ 冗談みたいな話だけど、それって本当なの?」
「本当だって!」
「だって、梓さんって、しっかりしていて優しそうだったし、そんなことする風には見えなかったけど?」
「あれは外向けの顔で、俺にとっては恐怖の対象だ。小さいころからの刷り込みで、逆らえないんだよ!」
「そ、そうなんだ。」
血涙を流す勢いで言ったせいか、とりあえず納得してくれた……のかな?
「それで、これからどうするの? 私と一緒にアイドルやるの?」
「本音を言うと、昨日までは恥ずかしいので辞めたかったかな。
でも、今は舞ちゃんと出会って、舞ちゃんと一緒になら頑張ってみても良いかもって気持ちも有ったりするよ。」
「何で私と一緒ならやりたいのよ。」
「何でだろう? 正直自分でもよく分らない……かな。」
「そっか。それにしても、う~ん……何て言ったら良いんだろう。」
「やっぱり、こんな風に女装している人とは、気持ち悪いからやりたくないとか?」
「正直、千秋君……いえ、この場合は千秋ちゃんの方が良いのかな? 千秋ちゃんは、言われなければ分からないレベルで可愛いし、それについては問題無いかな。」
「だったら、何が引っかかってるの?」
「それは……やっぱり内緒!」
「えー! 教えてよ!」
「嫌! 言わない!」
「分かったよ。もう聞かないから。」
そんなにも真っ赤になって否定されるほどの理由ってよっぽどのことなのだろうな。