018
扉の中に入ると、3人の人物が待っていた。
1人は長谷川さんで、もう1人は木村プロデューサだ。そして最後の1人は女の子だった。
「おはようございます。」
「「おはよう。」」
「おはようございます。」
俺が挨拶をすると、向こうも気が付いて挨拶してくれた。
女の子がこっちを向いた時、何処かで見たことが有る子だった。う~ん……何処だっけ?
「来たね。じゃあ説明しよう。
この子が、千秋君と一緒にユニットを組んでもらう『藤崎 舞』君だ。」
藤崎 舞? あぁ! 思い出した! カラオケで会った子だ!
えっ? 俺、この子と一緒にアイドルデビューするの? マジ?
「そして、今来たのが『斉藤 千秋』君だ。舞君のパートナーだよ。」
木村プロデューサが俺の名前を言うと、舞ちゃんは驚いた顔をした。
そりゃあ、前に合った男と同じ名前だもんな。そりゃビックリするわな。
と言うか、俺が男だってバレないか?
「斉藤……千秋……ちゃん?」
ほら、マジマジと俺のこと見てるじゃん! 大丈夫だ。完璧な変装なんだ、バレっこない!
俺は心臓がバクバクと脈打ってるが、平静を装うことにした。
「舞ちゃん、初めまして。
私、千秋って言います。宜しくお願いしますね。」
「あ、えっと、舞です。こちらこそよろしくお願いします。」
舞ちゃんが俺を見て戸惑っている様子に疑問を感じたらしく、木村プロデューサが聞いて来た。
「舞君、千秋君に何か気になることでもあるのかい?」
「あ、いえ。ただ知り合いと名前が同じだったので、ちょっとビックリしただけです。
ただ、向こうは男の子だったので、単に同姓同名だったみたいです。」
「なるほど、確かに異性で同じだったら驚くのも仕方がないか。」
「はい。千秋ちゃん、驚いちゃってごめんなさい。」
「いえ、気にして無いので大丈夫です。」
ホッ……どうやらバレてないみたいだ。
「2人のデビュー曲は、今作っている最中だ。完成次第知らせするようにする。
後はデュエット名だが、何かこんな名前とかの希望は有るか?」
「「名前……」」
俺と舞ちゃんは思わず顔を見合わせてしまった。希望と言われてもそんなにパッと思い付く物じゃない。
「まぁ、こちらでも幾つか案を考えておくが、君たちも考えておいてくれ。
俺からの話は以上だ。長谷川君、後は任せても良いかい?」
「はい。完璧に仕上げておきますので、素晴らしい曲を期待してますよ。」
「先方にそう伝えておくよ。それじゃな。」
木村プロデューサはレッスン場を出て行った。
「さて、木村さんに宣言しちゃったことだし、君たちを完璧に仕上げないとね。
ビシバシ行くから、覚悟しておけよ!」
「「はい!」」
こうして俺と舞ちゃんのデビューに向けてのレッスンが開始されたのだった。