表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/28

016


「ここね。」



梓ねーちゃんに連れられてやって来たのは、とあるビルだった。

さすがに多少は有名になったからか、たまたま場所的に電車では都合が悪かったのかは分からないが、移動が車に変わったのは正直助かった。



「入るわよ。」


「は~い。」



入口の自動ドアをくぐると受付が有って、一人の受付嬢が座っていた。



「本日、歌のレッスンを予約している斉藤です。」


「斉藤様ですね。お話は承っております。

 3階のAスタジオがレッスン場となっておりますので、そちらへ向かってください。」


「わかりました。」



俺達は、言われた場所へと移動することにした。

3階へエレベータで上がり、廊下を進むと、目的の部屋まで到着した。

部屋の中からはピアノを弾く音が聞こえていた。



「失礼します。」


「失礼します。」



梓ねーちゃんに続いて俺も挨拶をして中に入る。

人が入って来たことに気が付いたからか、ピアノの演奏は終了した。



「本日、レッスンを受けさせていただく斉藤です。私はマネージャーの梓で、こっちが妹の千秋です。」


「千秋です。宜しくお願いします。」



俺は頭を下げて挨拶した。



「僕は、『長谷川 樹』だ。宜しくね、千秋ちゃん。」


「はい。」


「申し訳無いが、マネージャーは外で待っててくれないかな。」


「分かりました。それでは失礼致します。千秋、頑張るのよ。」


「はい。」



梓ねーちゃんは、レッスン場から出て行った。



「さて、これからレッスンを始めるのだけど、千秋ちゃんは歌の経験は?」


「学校の音楽の授業で歌ったくらいです。」


「完全な初心者って訳か。

 よし! まずは、千秋ちゃんがどのくらい歌えるのか確認してみよう。」


「わかりました。」


「歌ってみたい曲は有るかな?」


「どんな曲でも良いんですか?」


「構わないよ。」


「でしたら、『勇者戦隊 イセカイジャー』のオープニングが良いです!」



俺がそう言うと、長谷川さんは唖然とした顔でこっちを見てた。

良いじゃないか。小学生の時に滅茶苦茶好きだったヒーローなんだぞ。今でもソロで歌えるくらい覚えてるしな。



「ち、千秋ちゃんって、ずいぶんと面白い子なんだねぇ~

 ん~まあ良いか。それを歌ってみようか。アカペラになるけど大丈夫かい?」


「はい。もちろんです!」



俺は一度大きく深呼吸をした後、歌い出した。



「ほぅ?」



歌っている途中で、長谷川さんの声が聞えた気がしたが、今、サビで一番良いところなんだ! 邪魔しないでくれ!

そして、俺は最後までハイテンションで歌い切ったのだった。



パチパチパチ……



「いやぁ、思ってた以上に良かったよ。正直ビックリした。

 最初にこの曲を選曲をしたときは、どうしようかと思ったけどね。」


「はぁ。」


「基礎は、まぁ、これから頑張れば良いとして、才能は十分有ると感じたよ。これなら問題無さそうだ。」


「ありがとうございます。」


「千秋ちゃんはアルトかな。高い声は少し苦手じゃないのかな?」


「高い声は……確かに苦手かもしれません。」



男だからね。こればっかりは仕方がない。



「練習すれば大丈夫さ。じゃあ発声の練習をしようか。ピアノの音に合わせて『あ』を言ってくれ。」


「はい。」



俺が返事をすると、長谷川さんはピアノを弾き始めた。



『ドレミレドー』


「あああああー」


『ド#レ#ファレ#ド#ー』


「あああああー」


『レミファ#ミレー』


「あああああー」



こんな感じでレッスンは進んでいくのだった。



・・・・



「よし、今日はここまでにしようか。」


「あ、ありがとうございました。」



随分と長い時間レッスンをしていたみたいだで、外はもうすっかり真っ暗だ。



「千秋ちゃん。初心者とは思えないほど上手だったよ。これなら次の段階に進んでも良さそうだ。」


「はぁ。分かりました。」


「次のレッスンは日程が決まり次第マネージャーに伝えておくので、それに従ってくれ。」


「はい。」


「今日はお疲れさん。またな。」


「はい。お疲れ様でした。」



俺は長谷川さんに挨拶をすると、レッスン場を後にした。



「終わったの?」


「うん。結構疲れたよ。」


「そっ、なら明日も学校が有るし、さっさと帰って休みましょうか。」


「そだね。」



こうして俺のアイドルとしての第一歩が始まったのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ