001
思いついたら書きたくなった。
「ほれほれ、逃げんなよ千秋~!」
「ちょ、梓ねーちゃん、やめてよ!」
「沙月ちゃん、そっち捕まえてね~」
「千歳姉ぇ、了解!」
「沙月ねーちゃん、千歳ねーちゃんも放せ!」
「ねーねー、千秋ならこのウィッグ似合いそうじゃない?」
「「いいじゃん!」」
俺の名前は『斉藤 千秋』15歳の高校1年だ。
現在、長女の梓ねーちゃん(22歳 社会人)と、次女の千歳ねーちゃん(19歳 大学1年)、そして三女の沙月ねーちゃん(17歳 高校2年)に化粧をさせられている最中だ。
いつもこの3人は俺のことをイジメ(?)るのが大好きみたいで、こうして普段から色々とおもちゃにされているのだ。
「大学の映画研究会で特殊メイクやってんだけどさ、これ試してみたいんだけど、良いかな~?」
「な、何だよそれ!」
千歳ねーちゃんがスライムみたいな物体を手に持ってやってきた。
「これ? シリコンだよ~♪ 梓姉ぇ、沙月、抑えてて~!」
「「了解~」」
「は、離せ!」
「これをこーして、こーすると……出来た!」
「マジか……」
何と俺の胸におっぱいが出来ていた。しかもDカップは有りそうだ。
「で、次はコレ♪」
「……物凄く聞きたくないけど、それって何?」
「コレはね~ 格闘技をするときに付けるファウルカップってやつなんだけど、ちょっと加工して千秋ちゃんサイズで作ってみたの~♪」
「作ったって、何で俺のサイズを知ってるんだ!!」
「え~! 言わなきゃダメ?」
「言ってくれ。」
「でも内緒~♪ じゃあ履かせるよ~♪」
「や、やめろ! やめるんだ!」
千歳ねーちゃんの手が俺のトランクスへと伸びる……い、いやああぁぁ~~~~!!
・・・・
「シクシクシク……」
「なぁ、これってマジヤバくね!?」
「やばすぎる、チョー可愛い!!」
「さすがは私達の千秋ちゃんね、愛らしいわ~」
「シクシクシク……」
完成した俺は、メイクやウィッグは勿論のこと、沙月ねーちゃんの服まで着せられたのだった。もちろんブラとパンツもだ。
男の俺が何でこんな目に……いや、逆らえない俺が悪いんだけどさ(涙)
「ねぇ、このまま出かけちゃわね?」
「はぁ?」
「いいね~」
「何処行く?」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待て!」
「遊ぶとこ多いし、街へ繰り出すで良いんじゃね?」
「そうしよっか~」
「俺、こんな格好で外なんか行きたくないぞ!」
「大丈夫大丈夫、違和感ないくらい可愛い……いや似合い過ぎてるから(笑)」
「ほら、行くよ!」
「や~め~ろ~!!」
俺は引きづる様に連れ去られていくのだった。
・・・・
「マジかよ……」
俺は今、街中で1人で絶賛迷子中である。。
何で1人なのかと言うと、ちょっと目を外した瞬間にねーちゃん達が消えていたからだ。
恐らくだが、近くで俺のことを観察しつつニヤニヤしているに違いない。
「と言うか、ここ何処だよ!」
確か電車で移動して駅で降りたところまでは分かったのだが、細い道を進んだり、何度も何度も道を曲がって進んだりした御蔭で、今俺が何処に居るのかさっぱり分からない。正真正銘、迷子と言う奴だな。
しかも最悪なことに、財布もスマホも没収されているため、電話で助けを呼ぶことも、タクシーを使って分かる所まで移動するって手段も使えない。
道を聞くにしても、見た目が化粧や服装から女の子にしか見えないが、だが男だ。
声を掛けた瞬間にバレて、変態扱いされるのは遠慮したい。
それに、万が一駅までたどり着けたとしても、電車に乗るお金も無いため、八方ふさがりである。
「はぁ、どうしよう……」
俺がトボトボと知らない道を歩いていると、沢山の人が集まっているのが見えた。
何だろうと見て見ると、どうやら何かの撮影をしているみたいだ。
興味を覚えた俺は、気分転換を兼ねて見学していくことにした。
「あれは、俳優の『吉田 翔』じゃん!! こんな所で会えるなんてすげーラッキー! まぁ、ここが何処なのかは知らんがな。」
『吉田 翔』は今人気No.1の俳優で色んなCMやドラマに出演しており、昨年の主演男優賞を受賞したほどの実力者だ。
もちろん女性に大人気で、ウチのねーちゃん達も大ファンだ。よく一緒にドラマを見せられていた。
俺? 俺的にはカッコイイ人だとは思うが、まぁ男だし、憧れてはいるが、その程度だ。
「それにしても何か問題でも有ったのかな?」
スタッフらしき人達が慌てているのが見えた。
「まだ来ないのか!」
「すいません! 何度も連絡したのですが、電話が繋がらなくて!」
「言い訳は要らん! 早く何とかしろ!」
「は、はい!」
どうやら出演者の誰かが遅刻しているみたいだ。他人事だが、ご愁傷様だな。
30分ほどしてまた動きが有った。
「吉田さん、すいません!」
「どうした?」
「共演予定の子が逃げました。」
「逃げた? 何でまた。」
「新人の子だったんですが、どうやらプレッシャーに負けたみたいで……その……すいません。」
「いや、君のせいじゃないよ。代役は用意出来るのかい?」
「それが……監督のお眼鏡に叶う様な子が居なかったらしく、今回の子も時間の関係で無理無理妥協しただけらしいんですよ。なのでまだ代役を見つけることが出来ていません。」
「仕方ないね。なら今回の仕事はキャンセルになるのかな。」
「申し訳有りませんでした。」
なるほど、役者ってのも大変だな。ま、俺には関係無いけどな。
興味が有ったから待ってたけど、撮影が無いのならここに居ても仕方ない。俺はこの場を離れることにした。
ぼふっ!
「あっ、ごめんなさい。」
「いや、こっちこそすまんね。」
振り返った瞬間、たまたま後ろに居た男性にぶつかってしまい、条件反射で謝ってしまった。
ヤバイ! 俺は今、女装中だった! 男だと気づかれる前に逃げよう!
ペコリ。
俺は頭を下げて、この場を離れることにした。
「君!」
ガシッ!
男性に腕を掴まれてしまった。
「っ!」
一瞬声が出そうになったが、何とか耐える。
とりあえず話して貰おうと掴まれた腕を引っぱると、掴んでいた手を放してくれた。今だ!
ガシッ!
と思ったが、今度は両手で両肩をしっかりと掴まれてしまった。勘弁してくれ~
「君、CMに出てみないか?」
「はい?」