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大ハズレだと追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する  作者: 猫子
第二章 悪夢の怪馬

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第十二話 ロックセンチピード攻略

「ジジジジジジジジジジジジ!」


 岩蜈蚣は岩塊の合間を抜け、凄まじい速度でこちらへと向かってくる。


「やっぱり気持ち悪い……あの足の数……うう」


 ルーチェが岩蜈蚣の足を見つめながら、小さくそう零した。


「手筈通りに頼むぞ、ルーチェ」


「はっ、はい!」


 俺は盾を構え、その場に屈んだ。

 ルーチェが地面を蹴り、俺の盾の上へと跳ぶ。


「〈シールドバッシュ〉!」


 俺は盾で、ルーチェを弾き飛ばした。

 ルーチェは正面から向かってくる岩蜈蚣の頭を跳び越え、奴の身体の上へと着地した。


 そう、岩蜈蚣の最大の弱点。

 上に乗った敵に対する有効打が少ないことである。

 あの巨体の、無駄に長い身体が大きく足を引っ張っている。


「さて、俺は俺で時間を稼がないとな」


 俺は岩蜈蚣に背を向けて走り始めつつ、ルーチェの様子を尻目に確認していた。


 ルーチェは走りながら地面と並行に跳び、素早く身体を回転させる。


「〈曲芸連撃〉!」


 岩蜈蚣の身体を、ナイフが素早く刻んでいく。

 見事に三連撃が入り、岩蜈蚣の身体から体液が舞った。


「ジッ、ジジジジジジィッ!」


 岩蜈蚣が悲鳴のような声を上げる。


 普通であれば、〈曲芸連撃〉を三発全てまともに身体で受けて大ダメージを負い、かつ反撃もできないような〈夢の主〉はいない。

 だが、岩蜈蚣はその巨体故に、背に乗った敵の攻撃を全て直撃でもらってしまう。

 おまけに攻撃手段の乏しさから、まともに反撃に出ることも難しい。


「もう一発! 〈曲芸連撃〉!」


「ジジジジジジジジジジィッ!」


 続けて岩蜈蚣の体液が舞った。


――――――――――――――――――――

魔物:ロックセンチピード

Lv :60

HP :69/156

MP :71/71

――――――――――――――――――――


 六発全て直撃で入った。

 既に岩蜈蚣のHPは半分を切っている。

 ここまで既に、事前で思い描いていた予定通りである。


「よし、ルーチェ! 予定通り一度離脱しろ!」


「はいっ!」


 ルーチェは岩蜈蚣の背中を蹴って、近くの岩塊の上へと逃れた。

 不安定な足場だったが、ルーチェには天井だってスムーズに走れる〈曲芸歩術〉がある。

 速度を落とさず、岩塊の上を経由し、岩蜈蚣からさっと逃れていった。


「ジジジジジジジジジジィッ!」


 それに一瞬遅れて、岩蜈蚣が足を止め、その場で身体を横に倒し、激しく暴れ始めた。

 数秒暴れた後に、岩蜈蚣は起き上がり、周囲へ目を走らせる。


「ジイイイイイイイイイイッ!」


 頭部の周囲に、魔法陣が浮かび上がる。

 ルーチェの背を狙い、無数の岩の弾丸が発射された。


 岩蜈蚣の魔法スキル、〈ロックブラスト〉。

 素早く、手数もあり、威力も高い。

 岩蜈蚣の凶悪な攻撃スキルである。


 ……もっともそれも、この遮蔽物の多い、〈百足坑道〉の最奥部でなければ、という話なのだが。


 ルーチェは壁を走って逃げた後、岩塊の陰へとさっと入り込んだ。

 岩蜈蚣はルーチェの隠れた岩塊をしばし撃った後、結局すぐに〈ロックブラスト〉を止めることになった。


 岩蜈蚣は少しの間、ルーチェの隠れた岩塊を睨んでいたが、すぐに目を離し、俺の方へと走ってきた。


 岩蜈蚣は、逃げに徹したルーチェにはまず追い付けない。

 岩蜈蚣も、今のルーチェの軽やかな動きを見て、それを察したようであった。


 素のステータスであれば、岩蜈蚣はルーチェよりも速い。

 だが、遮蔽物だらけのこの場所では、〈曲芸歩術〉で好き勝手に動き回れるルーチェには、岩蜈蚣の巨体では絶対に追いつけない。


 岩蜈蚣は、致命的なまでにここの地形と適していないのだ。

 もしも岩塊だらけのこんな場所でさえなければ、凶悪な〈夢の主〉の一体として恐れられていただろう。

 いや、上に乗って連撃系スキルをぶっぱされるだけで大ダメージを稼がれる方の対策が先か。


 ゲーム中でもよく『手応えがないので〈夢の主〉としてもうちょっと頑張って欲しい』と、敵であるプレイヤーから応援されていた。


「ジジジジジジジジジジジッ!」


 岩蜈蚣が俺の方を追ってくる。

 俺はルーチェとは違い壁を走れないし、速度のパラメーターも低い。

 さすがに普通に走っているだけでは、岩蜈蚣を撒くことはできない。

 一瞬で捕まって、大きな牙で噛み砕かれてしまう。


 無論、策も無く走り回っていれば、の話だが。


 この場所は障害物の岩塊が多い。

 岩塊の配置を頭に入れ、岩蜈蚣の長い身体が絡まるように、なるべく細長い岩塊を巻き込む入り組んだルートを走っていく。


「ジッ!?」


 俺を追っていた岩蜈蚣の動きが大きく乱れた。

 身体の節が岩塊に引っ掛かったのだ。

 すぐにまた速度を上げて俺を追い掛けるが、また途中ですぐに大きく身体を揺らす。


 この方法を使えば、重騎士の速さでも充分岩蜈蚣を振り切ることができる。

 上手く岩塊を巻き込ませるのに失敗したらすぐ追い付かれるので、その辺りは慣れが重要になって来るが。

 何度も何度も身体の節が引っ掛かって減速する情けなさも、岩蜈蚣が半ばネタキャラ扱いされている理由の一つである。


 そして俺が同じ場所を何度も行き来させている間に、ルーチェと合流することに成功した。


「エルマさん、いつでも飛べますようっ!」


「よし、ここで仕留めるぞ」


 俺は先程同様、〈シールドバッシュ〉で岩蜈蚣へとルーチェを飛ばした。

 ルーチェは岩蜈蚣の頭部を飛び越えて身体に乗り、疾走しながらナイフを振り乱す。


「〈曲芸連撃〉! 〈曲芸連撃〉!」


 先程同様、三連打を二回連続で放つ。

 岩蜈蚣の背から毒々しい色の体液が舞った。


 夥しい数の脚が動きを止め、腹を地面に付ける。

 慣性に引き摺られて地面を削りながら僅かに移動した後、完全に動かなくなった。


【経験値を2379取得しました。】

【レベルが49から54へと上がりました。】

【スキルポイントを5取得しました。】


 無事に〈夢の主〉……岩蜈蚣を討伐することに成功した。

 予定通りの、順当な結果であった。

 弱点がわかりやすい魔物であったし、きっちりそこを突けるスキルも持っていたことが大きい。


「倒し方のお陰だとは思いますけれど……ミスリルゴーレムの方が強かったですね」


 ルーチェが苦笑しながらそう零した。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 経験値とレベルアップの量が適当にしか思えない いくらなんでも1レベルあたりの経験値上昇量が小さすぎる 経験値テーブルどうなっているのか
[気になる点] 攻略法はともかく、ボス弱すぎー
[気になる点] 敵が柔らかいような気がしたけど、このゲームバランスなら攻撃重視な世界観になるし確かに普通のタンク役重騎士いらないな。
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