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【完結】倫敦《ロンドン》  時折《トキオリ》、春 〜君を辿って〜   作者: 木村空流樹
第二章

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現代 十一 カラオケ

 秋継の家から出た(こう)律之(りつの)(はる)は、近場のカラオケボックスに来ていた。

 晴が歌っている隙に、律之が紅の側に寄る。


「昨日なは寝れたか? 発作は出たか? 」


「出たみたいなんだけど、覚えてないんだよ。回りが心配をしてくれてる。」


「秋継が居るから安定してるのかもな……。時継(ときつぐ)に会ってから、俺も夢を見なくなったからな。どうだろうな。」


 考えて込んでいる律之がコーラを飲んだ。


「話は変わるけど、律之の電話番号を節さんに教えた。仕事終わりに掛けるってさ。」


「俺に用事があるのか? 何の為だろう? 間違えなく、過去の話だろうな……。まあ、聞いてから判断する。」


 晴が歌い終わると律之の席に割り込んだ。

 無理やりお尻を挟んだ様な密着感がある。


「紅は何を歌うの? 」


「ビートルズだよ。先生が貸してくれたの……。メロディアスなナンバーばかりだから俺は好き。先生から貸して貰えば? 」


 晴は不満そうな顔をした。紅はタッチパネルで楽曲を決めている。


「敵からは借りない。」


「じゅあ。PV再生の曲にしょうか。数曲あるから……。」


「紅は天然だよね。普通は叔父さんの話をしないよね? 」


「まだ、晴と恋人ではないでしょ? だから、曲は関係ないし良いよね? 音楽の話くらいは雑談だからさ。」


 律之が歌いながら叫んだ。


「いつの間に、そんな話になってるんだ?!二人共!」


 紅と晴は耳を防いだ。エコーまで掛かっている。


「まだ、暫定(仮)彼氏だよ。叔父さんが邪魔で先に進めない。」


 律之が曲を止めずにマイクを置いた。


「じゃあ、紅と晴は両思いな訳? 秋継は卒業? ホントに? 秋継だって紅に興味があるだろう。あの態度は……。」


「嫌、昨日な聞いたけど……。言っていいのかな?叔父さんは節さんと結婚するってさ。まだ、プロポーズはしてないみたい。だから、僕が紅と付き合っても問題はない。」


 今度は紅がビックリしている。

 律之が思った。秋継と節の話が進んで居るなら、節の態度は正しい。過去の記憶を含めて彼女は悪くないと思った。


「じゃあ、秋継が紅に下心あるのが、何か嫌だ。大人の遊びに紅を巻き込むな……。」


 律之が又はマイクを持って続きを、歌い始めた。


「叔父さんが浮気するのは勝手だけど、紅を巻き込むのは、僕も頂けない。節さん一筋だったから、余計に腹が立つ。」


「先生と俺は恋人ではないよ? 」


「だからだよ。紅を泣かしてる。心ない言葉で紅を傷付けたよ。」


「でも生徒として仕方なく……。」


「じゃあ。僕に嫉妬するのも、小門オカド違いだよ。僕だって一様は生徒何だからさ。」


 律之がマイク越しに叫んだ。


「秋継が可笑(オカ)しい!」


 二人は耳を防いだ。叫びが音割れしている。


「ほらね?紅が罪悪感持たせる叔父さんが悪い。僕達まだ中学生だよ。遊ばれてるんだよ。」


「なのかなあ……?」


 紅は耳がペタンと垂れた犬の様になった。

 晴が紅の頭を撫でると、紅の頬を擦りつけた。

 中型犬を抱き締めて、頬を擦り付ける様に何度もする。


「紅は本当に可愛いなぁ。」


 紅は抵抗もせず、成されるが(ママ)だった。


「そこ!発情しない!」


 律之が、又マイク越しに叫んだ。

 三人は二時間歌いながら、雑談をしていた。







 カラオケを出ると律之(りつの)の携帯が鳴った。


(せつ)さんからだ……。昼休みに掛けて来たよ。」


 律之が直ぐに対応すると(こう)(はる)は夏の午後の光に当てられた。

 ジリジリと熱せられるアスファルトに、熱の風が吹く。


「先生の家に帰る? 」


「ごめん。今日は夜から塾だから、泊れない。何時(イツ)でも……授業以外で出るから電話して……。」


「晴の所為(セイ)じゃないよ。今迄、ありがとう。多分晴が居なかったら、律之の家と自分ん家と往復してたから……。一ヶ所に留まれるのは嬉しい。それに、先生が又お小遣いくれた。今度は一万も……。」


「叔父さん。あげすぎではない?確かに、紅が食材を買って、ご飯作ってるからだよな。叔父さんの分も含めてさ。今時居ないよ。中学生で料理出きるのって凄いよ。」


「料理って凄いよね。誰でも幸せに慣れる。食べてくれる人が居ると、尚更嬉しいよね。」


 晴が不服そうにしている。


「それは僕も入ってる? それとも僕以外の誰か? 嫉妬するのも嫌だよ。どっちか決めてよ。」


 紅の手を晴と恋人繋ぎにする。彼は嬉しそうに握り締めた。


「そんなつもりじゃないよ。誰でも嬉しいよねって言いたいの。晴も美味しいって言ってたでしょ? 」


 繋いだ手をブンブンとして晴の口に近づけ、紅の手の甲にキスをする。

 紅が耳まで真っ赤になった。予想外の行動にしどろもどろする紅。


「誰も見てないって……。」


 余計に晴が面白がる。クスクスと笑いながら、手の甲を(イヤ)らしく舌を出して舐めた。

 紅から言葉が出ない。嫌悪感がないのが不思議だと紅は思った。


「嫌では無いんだね?じゃあ、僕は紅が大切だよ。次のステップに行って良いよね? 拒否らないと進むよ。」


「まっ待って。まだ分からないよ。」


「もう、待たないって言ったよ。叔父さんが節さんを選んだのが、答えだよ。だから、紅も僕を好きになれば良いよ。舐められて気持ち悪くなれば、手が離れるでしょ? 僕とのスキンシップは大丈夫なんだよ。だから、次に……。」


「次って何? 」


 紅が男だから知っているが、言葉に出しと確認してしまう。

 晴が微笑んで、又、手にキスをした。


「恋人にする事、何て決まってる。カラオケに律之が居なければ、良かった。可愛い子のエッチな姿は自分だけが見たいよね~~。」


 紅の顔がもう一段階赤くなった。


「俺は男だよ。」


「関係ないよ。紅は恋が異性関係にしかないと思ってる? 女の子と同じ様に紅が好きです。だから、覚悟はしてね。男なら尚更解るでしょ? 」


「解るけど……。初恋もまだだし……。」


「僕と初恋をしょうよ! 楽しいよ。デートだけじゃないから、僕の家は人が必ず居るから紅の家は? 内鍵掛けてしまえば、大丈夫ではないの? お小遣い少ないから、中学生は大変だよね~~。」



 律之が携帯を仕舞いながら、紅達の方へ来た。

 手を繋いでいるのを、解っても何も言わず。紅に話し掛けた。


「秋継の家に時継(ときつぐ)も呼んでる。彼は既に行ってるみたい。記憶のある人間だけで、紅の記憶を呼び覚まそうとしてる。節さんが言うには記憶が戻る年齢は、明治の秋継と出会った年になると夢で思い出すみたい。だから、我々は七歳位で思い出すはず、俺は思い出したのもその頃だよ。昔の紅が登場するから、小さい頃に紅には話したけども、過去の記憶が紅にはなかったから、俺は諦めていたよ。今更、思い出してどうなる訳でも、無いのにな……。」


 紅が(ウツム)いている。


「俺は思い出したくない。」


 晴が紅の手を握った(ママ)背中を抱いた。流れる様な足さばきだった。


「叔父さんが過去の記憶で、逮捕されるのが納得出来ないんだよ。」


「確かに、事実と違うのが紅だけなんだよ。だから、節さん達は知りたがっている。過去は代えられ無いのにね。」


「嫌ならさ。僕ん家に泊りにおいでよ。深夜ならばれないしさ。」


 晴の瞳が輝く。彼の期待は別に有りそうだった。

 たが、紅は思い出すよりも皆と記憶の種類が違う事の方が引っ掛かった。


「先生が何で死ぬか知りたい。何故、僕だけの先生は逮捕されるのか知りたい。」


「分かった。秋継の家に行こう。」


 晴が嫌がって頭を振った。


「紅が思い出さなくても、未来は変わらないよ。僕が居るよ。側に居るよ!」


 背中から圧力を感じる紅。


「思い出したら性格が、変わっちゃうかも知れないんだよ。僕は今の紅が良いよ。嫌だよ。又、叔父さんに取られるの!」


「取られないよ。だから、安心して。」


「じゃあ、僕に好きだって言ってよ。僕だけの物になってよ!」


 律之が紅から晴を引き剥がした。無理やりではない自然と力が抜けていく。


「晴の好きな気持ちも解るけど、記憶に囚われてる節さんの為に力を貸して上げよう。出来なければ納得するよ。彼女も凄い不安だと思うよ。」


 紅は頷いた。


「晴には終わったらキチンと告白するからね。」


 晴が視線を反らした。


「分かった。待ってる。塾には行くけど、スマホは出しとくから、何時でも連絡して……。深夜になったら叔父さん家に行く。辛いけど見に行くよ……。」


 紅は晴に抱き付いた。愛おしいとは、この事だろうと思った。小さな女の子が我儘を言っている風に感じた。

 律之は紅が晴を抱きしめるのを、止めるのすらしなかった。

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