過去 十八 モガの警告
家に帰る為、階段を上っていた。
部屋のドア前で、節が腕を組んで仁王立ちになっている。
もう疎ましくするつもりはなく、明継は笑い掛けた。
節の方が余計、気味悪そうな顔をする。
「何だい……。」
「警告に来たの。貴方を、慶吾隊が捕まえに来るわよ……。」
「へぇ。」
呆けるつもりはなかったが、明継の口調からそうなった。
「紅隆御時宮様の誘拐容疑でよ……。此の部屋に、御時宮様がいらっしゃるでしょ。」
「あぁ……。今日にでも逮捕かい。」
血が頭に上っている節の問いに、明継が流した。
節は、余りに自然に、認めた方に驚いた。
少しの間沈黙が続く。
明継は、節に何を聞かれても、大丈夫だと決めていた。
彼は冷静だった。
「明日には、来るでしょうね……。」
明継は、口を開かなかった。
「慶吾隊が動けなかったのは、皇の権威があったからよ。誰かが、御時宮様の捜査を妨害していたらしいわ。隊ですら、今迄動けなかったようね。其の上、三年間も捜査しているのだから、遅過ぎるくらいよ。」
明継は、律之の顔が過ぎった。
「もっと、慌てると思ったわ。今迄、御時宮様の話をすると、可笑しくなっていたのに……。」
「もう決めた。一つ質問だが……。紅は、私が逮捕される寸前だと知っているのか。」
「いいえ……、全く。」
「では、話さない方が良いな。黙った侭で良いよな。」
独り言のように呟いて明継は、節を押し退けると、紅の待つ部屋へ入って行った。




