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時折 十三 (過去 十一 光)

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 (あき)が下の道路にいた。


 此処(ココ)からなら、明継(あきつぐ)(こう)が住んだ部屋が見える。


 明かりが灯って居るので、二人が生活しているのが、分かる。


紅時(べにとき)が云っていた時期か……。」


 煙草を吸いながら、時間を待っていた。

 やはり人通りは少ない。たが、神経を研ぎ済ませば視界に入る。


 親皇派と非親皇派だ。必ず、此の部屋を監視している。


「明継は、本当に紅を守れるか疑問だな……。慶吾隊(けいごたい)は、皇の公認で警護に当たってるが、林 修一(しょういち)だったか。常継(つねつぐ)の直属だから、俺の顔を知ってるかも知れないから、近付かなければ、大丈夫だろう。」


 修一の方が感が鋭いと感じている秋。

 明継は部屋に入ると警戒を解いてしまう。皇の息子を守ってるとは思っていないのだろう。


「秋さん……。どうですか……。」


 横から半田が顔を出した。


「まだです……。半田さんも損な役回りですね。皆に悪の根元だと思われている等、辛いでしょう。」


「もう、慣れました。皇と継一さんを繋ぐ役回りなら、九州軍部と兵部と繋がり、啓之助(けいのすけ)さんと世界の動向を通じなくてはならない……。」


継一(つぐいち)は、九州で待機している。電話(マデ)繋いで貰って悪いが、通信履歴が残るから、余り話しは出来ない。難儀な物だよ。」


「でも、最短での情報共有が出来ますよ。此れから、我々は連絡すら出来なくなる。ついに、皇が佐波(さわ)様を後継者に選びました。此処(ココ)まで伸ばせたのも、九州軍部が力添えしてくれた御陰です。」


「文が明継に知らされる日だものな……。此れで、もう止める手立てはない……。明継が、捕まるか、逃げるかは本人が決める事だ。」


「心配でしょうに……。何も云わず、影武者になられたのも秋さんが親だからですね。継一様が誰よりも信頼しているのが解ります。でも、時子さん迄天都によばれなくても宜しかったのではありませんか……。」


「紅時が云ったのですよ。紅が逃げる覚悟を決めるのは、時子さんの御陰らしいです。私は時子さんに合う事は許されない。紅時も嫌がってるからね。だから、危ない事がない限り、出るつもりはありません……。」


 秋が眉を細めて時間を待った。

 紅時が云う公園の木蓮も咲いていた。明継達が部屋から逃げる時期に差し掛かっている。


「此れから始まる流動する未來の為に、負けないで欲しいですね。皇も毎日祈っておられます。結果は戦争で知っていても、傷が浅い事を願います。」


「皇らしい優しい考えですね。でも、人が大量に死ぬのは否めない。例え、人種が違っても人の命です……。我が国がした事は許されないと思いますよ。」


「許す許さないではなく、戦争がそう人を変えるのです。我々だけでも間違わない様にしないといけません。二人が逃げる世界でも戦争が起こるのでしょう……。ならば、余計に我々は間違えてはいけない。」


「勝者が歴史になりますからね。だから日本は一度負けなければならない。甚大な被害を残してか……もう、変える事の出来ない未來は、我々しか知らない。」


 明継の部屋の瓦斯灯(ガストウ)が消えた。

 今、窓の布を引いて、外を見ている雰囲気が伝わってくる。


 秋は直ぐ様、修一の居る部屋を確認した。元から監視部屋にしている為、何の変化もない。


「修一は動けないな……。此れで監視部屋が撤去になる。」


「長い事、林一兵は頑張っていましたからね。1人だけの監視を許したのも、常継さんですし……。慶吾隊(けいごたい)も動き出し始めます。では、そろそろ佐波様の文を渡して来ます。」


 明継の暗い部屋を見上げながら、半田が去ろうとする。


「少しお待ち下さい。不審がって門前払いをされるかもしれません。少し様子を見ましょう。」


「継一様より、明継さんの事が良くお分かりで……。」


 修一が居るので慶吾隊の監視はない。その他の親皇派が場所を動いている。追いかけるか……と、秋が爪を噛んだ。


「大丈夫です。彼らは政府の方達です。皇を担ごうとしてる派閥ですが、皇は首を振る事はないでしょう。外国の圧力がない限り開戦はいたしません。」


「啓之助の諜報か……。」


「私の息子も左院に入っています。兵部は私が管理していますから、何とか綱渡りが出来ている状態ですが、時間の問題です。皇の力で押さえているのが現実です。瓦斯(ガス)抜きに侵略をしている状態です。」


 秋が嫌な顔をした。


「徴兵制が悪かったのかもしれませんね。」


「ペリーの力を見た九州は無理です。徴兵制が男子だけでなく、女子に迄、話がまわってしまっている。皇が否定しましたが……。近代化を継一様が進めて居ます。造船技術も発展しました。ですが、負けるのですよね……。」


「間違えなく負けます。だから、傷を少なくする為に、我々でも力を注ぎましょう。」


 半田が頭をさげた。


「お気をつけて……。」


 二人は違う道を歩いた。


 秋は顔を覚えられない為に、半田は明継達に文を渡す為に。


 光は見えない。

 此れからくる大戦を止める手段はないと知っているからだ。

読んでいて辛くなりましたら申し訳ありません。


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