嫁たちのお出迎えにドキドキする
モフモフモフモフ
モフモフモフモフ
「善は急げだよ!早速、漢部の届出に行こう!」
「その前に、先生に部活の顧問をお願いしないといけないんじゃないの?」
「担任の神谷先生はどうかな?」
げっ
俺の嫁(候補?確定?)ではあるけど色んな意味で危険な先生だから辞めておきたい。
「乗り気じゃないみたいだね」
「漢部だから、男性教師がいいなあ」
「ここって元々女子校だから、男性教師は居ないんだよ」
え?
そういえば入学式でも見なかったような…。
「何でも、男性教師の採用試験で全員落ちたんだって」
「マジかよ」
「マジらしいよ」
じゃあ仕方ない。
「明日の授業が始まってから先生を吟味するか」
「そうだね」
とりあえず部活見学をする意味も無くなったので帰宅することにする。
「あっ!レイジくん!」
パタパタと向こうからマリア姉さんが走ってきて、そのまま俺をその豊満な胸に抱き抱え…られないように逃げ…られないように回り込まれ…の前に避け…られないように超加速して捕まった。
「な、何?今の一瞬で何だか凄いやりとり無かった?」
それが分かるとははやて、なかなかやるな?
「うふふ、レイジくーん♡」
「姉さん、人前だからそれ以上はやめてほしいんだけど」
生徒会長である姉さんの胸に顔を埋めさせられたら、何を言われるか分かったもんじゃない。
「姉さんって言ったぞ?」
「ほら、生徒会長が『私たち先輩をお姉ちゃんと思って』って言ってたから」
「そういうことか!」
「ううん、レイジくんは本当の弟よ!」
「「「えええええっ!!」」」
苗字も同じだからすぐバレるだろうと思ったけどさ、みんな驚きすぎだろ。
「あの『孤狼』が『聖母』の弟だと?!」
「見た目が全く似ていないぞ」
「きっと義理の弟に違いない」
「いや、それだと結婚出来てしまうぞ」
「それなら実の姉弟の方がマシか」
何だか凄く失礼なことを言われている気がするけど、とりあえず姉さんがいい匂いなのでどうでもいいや。
「レイジくん、一緒に帰らない?」
「うん。はやても一緒に帰らないか?」
「えっ?いいの?」
姉さんと帰るより友達と帰れるのが嬉しいからな。
「はやてくんはレイジくんのお友達なのね」
「はい!」
「レイジくんをよろしくお願いするわね」
「こちらこそよろしくお願いします」
あれ?変だな?
「はやて。姉さんと普通に話してるよな?」
「え?なんの事?何か変かい?」
「いや、姉さんと普通に話す男性って初めて見たから。みんな姉さんと話すと赤くなったりしどろもどろになったり、急に口説き始めたり恥ずかしがったりするから」
「っ?!そ、そうなの?」
「もしかしてはやては…」
「ま、待って!違うから!そういうんじゃないから!」
急にわたわたし始めるはやて。
あの慌てっぷり。
やっぱりか!
「はやて、君はやっぱり女の子…」
「違うって!」
「女の子に興味が無いんだな!」
「はひ?」
きょとんとするはやて。
「だから姉さんと普通に話せるんだな?」
「そ、そうかもね。だからって男の子が好きとかじゃないから、ね」
「ねえ、はやてくん」
「マリアさん、何でしょうか?」
「せっかくレイジくんのお友達になってくれたのだから、うちに寄っていかない?」
「おうちってどこですか?玉川原学区ですよね?」
「葉山よ」
「結構近いんですね。ボクは幸栄学区にある弓里なので、あのバス停からバスに乗って帰るんです」
バス通学だったのか。
「また遊びに来てくれよな」
「レイジの方こそ来てよね」
俺たちはRINEを交換して別れる。
「いい友達ができたわね」
「今日はもう一人友達ができたんだよ!」
「そうなの?それはよかったわね!」
そして家に帰り門をくぐると、姉さんが後ろに下がる。
「どうしたの?」
「レイジくんが先に家に入ってね」
なんだろ?
なんーて、鈍感系主人公ではない俺は気づいてしまった。
扉を開けるとエプロン姿のフィーネさんが三つ指ついて
『おかえりなさい、旦那様。食事にする?お風呂にする?それとも、わ・た・し?』
なんて聞いてくるんだ。
そこに姉さんが居たら雰囲気が台無しだからな。
一応、気づかなかったことにして驚いてあげることにしよう。
ドアを開けると、そこには案の定三つ指をついてお辞儀をしている…
「コンッ!」
狐モードの久遠が鎮座していた。
三つ指じゃないじゃん!わんこ座りじゃん!狐だけど!
「食事にする?お風呂にする?それともわらわにするかの?」
「久遠で」
「ほへ?」
モフモフモフモフモフモフモフモフ
モフモフモフモフモフモフモフモフ
モフモフモフモフモフモフモフモフ
「ま、待つのじゃあ!」
モフモフモフモフモフモフモフモフ
モフモフモフモフモフモフモフモフ
モフモフモフモフモフモフモフモフ
あー、堪能した。
「妹御よ!そなたの言う通りにしたらえらい目に遭ったのじゃ!」
「でも喜んでもらえたでしょ?」
「そ、そうじゃがわらわの体がもたぬのじゃ!」
「ふふーん、真の愉悦はここからよー」
「何じゃと?」
モフモフモフモフモフモフモフモフ
モフモフモフモフモフモフモフモフ
モフモフモフモフモフモフモフモフ
「やめるのじゃああ!それ以上は駄目なのじゃああ!」
カレンのやつ、自分が久遠をモフりたくて狐モードで俺を出迎えろなんて言ったんだな。
だがグッジョブだ、妹よ!
俺は二人を玄関に置いたまま自分の部屋に入る。
「おかえりなさいませ、旦那様」
ドアを開けるとフィーネが三つ指をついて俺を出迎えてくれた。
「ここって俺の部屋だよね?!」
「はい、妻として綺麗に掃除しておきました」
綺麗に掃除?
どこを掃除したって?!
「大丈夫です。旦那様の『秘本』はそのままにしてありますから」
やっぱりかっ!
「それにしても、旦那様はああいうのが好みですのね」
頬を染めるフィーネ。
ああ、奥さんに俺の汚点を見られてしまった…。
「何でしたらわたくしが旦那様の趣味にお付き合いしましょうか?」
なんだってっ?!
フィーネは魔法で姿や服装を変えられるから、コスプレも自在だ。
恥ずかしいけど、やってくれるというなら断るのは男じゃない!
「じゃあ、頼む!」
「はいっ!」
ばばっ!
両手を上に掲げるフィーネ。
魔法で変身するときにポーズとか要るのかな?
解除の時は簡単だったのに。
「闇より生まれ出でし漆黒の龍よ!我が身に宿りて敵を滅ぼさん!」
え゛?
「喰らえ!『漆黒暗黒邪竜降臨断破』!」
…
「旦那様、いかがでしたでしょう?わたくしの『暗黒呪文詠唱』は?」
な、な、な、な、
「何を見たんだ、フィーネっ!」
「押し入れの奥にあった、旦那様の秘本、『零慈非予言書』です」
あれ、まだあったのかっ!
俺が中2の時につい書いてしまった黒歴史本!
高校に入る時にそのたぐいのものは全部処分したはずなのに、よりによって一番どぎつい初期のものが残っていたのか!
「最初の一文から感動しました!『俺に慈悲など無い。すなわち零慈!そして俺は運命をも覆してみせる。故に我が未来を予言することなどできない!まさに零慈非予言書』って!」
お願いです、もうやめてください。
もう俺のライフは0です。
「旦那様、すごく素敵ですわ!ぜひあの書物にあるような魔法や必殺技をわたくしに伝授してくださいませ」
「そのうちにな…」
とりあえず俺は制服のままベッドにへたり込んだ。
「お疲れですのね。旦那様、膝枕をいたしましょうか?」
膝枕だとっ?!
恥ずかしくて断りたいところだったけど、もう断る気力も無い。
というか、むしろ俺の心を癒してほしいです。
「では失礼します」
ベッドの上で正座するフィーネ。
俺はフィーネのひざに頭を乗せるように横に倒れて行き、その長いスカートの上に…。
ぺち
ん?スカートじゃない?
素肌?
「旦那様、いかがでしょうか?」
「ねえ、フィーネ。さっきスカートだったよね?」
「はい。ですが、今はこうです」
フィーネのほうに頭を向けると、『ふぃーね』という名前のゼッケンが付いた体操服を着ているじゃないか!
「まさか、下は…」
「短パンですわ」
じゃあこれ、生足かああああっ!
「旦那様の秘本にありましたので」
そっちも見つけていたのか。だろうねえ。
「お気に召しませんでしたでしょうか?」
「ううん、最高」
「それは良かったですっ!」
フィーネの笑顔と弾む声に俺はもやもやしていた気分もふっとんでしまう。
「今夜の食事当番はわたくしではありませんので、食事ができるまでこうしていましょうね」
それにしても、隠し持ってる本がコスプレ本だけで良かったあ。
もしエロい本だったらどうなってたやら。
「ところで旦那様」
「なんだい、フィーネ?」
「スマホで見ているエッチな行為は、もう少しわたくしたちの仲が深まってからでもよろしいでしょうか?」
ぶぶっ!
え?何?俺が寝る前にスマホで見ている内容までチェックされてたの?!
そういえば、家の中にフィーネの光の精霊が飛び交っていたんだった!
まさか俺のプライバシー0なのか?まさに『零慈』じゃないか!
「駄目でしょうか?」
「フィーネの好きにすればいいよ」
そう言うしかないよね!主導権はあっちだし!
「このことは他の嫁さんたちには言わないでくれるかな?」
「言えるはずないですわ!」
そこまで必死に言われるとまたへこむんだけど。
「で、でも、旦那様さえよければ、とりあえず『ソフトSM』なるものを」
はい?
俺ってそんなサイト見たこと無いけど?
「スマホってすごいですわね。わたくしの国ではこんな便利なものはありませんでしたわ」
アイテムボックスからシュンっと赤いスマホを取り出すフィーネ。
「ついつい、妻として何をしたらいいかを検索していたら、裸の多いサイトに行ってしまって…」
さっきから言ってるのって、フィーネが自分のスマホで見ていたエッチな内容の事か!
「わたくしのような貧相な胸では旦那様にご奉仕できないことが多いのですけど、むしろわたくしをいじめて喜んでいただこうかと」
それでソフトSMかよ!
「駄目でしょうか?」
「駄…」
駄目と言いかけてふと気づく。
フィーネは自分の胸が貧相と言っていたが、太ももはこんなにむっちりやわらかだし、お尻も大きい。
「お仕置きでお尻を叩くくらいならしようかな」
「本当にやっていただけますのっ?!」
しまった、つい言ってしまった!
で、なんでフィーネはそんなに嬉しそうなんだよ!
「フィーネ、これからは勝手に俺の部屋を片付けるな。色々掘り出したり見たりしないでくれ」
「やってはいけないことでしたのね。それでしたら…」
俺の頭をそっとベッドに下ろすと、フィーネはベッドの上で四つん這いになってお尻をこっちに向ける。
ブルマと違って短パンだから、その体勢だと裾から下着が見えてしまうんだけど…って見えない?!
『謎の光』がしっかりカバーしているだと?!
優秀だな、光の精霊っ!
「旦那様。いたらぬ妻に、お仕置きをお願いします」
お尻が、いや、フィーネが俺に懇願してくる。
俺は強く叩くとかわいそうと思って、フィーネのお尻にゆっくり手を伸ばす。
ガチャ
「アニキ、夜ご飯できたって!…って、なにしてるんだよお!この馬鹿アニキ!」
バコーン!
カレンの見事な回し蹴りが俺の後頭部に炸裂する。
「誤解…でも…ない…か…」
そのまま俺の意識は飛んだ。
お読みいただきありがとうございます!
ブックマークや感想とか評価をよろしくお願いいたします<(_ _)>