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美少年と部活を巡り、合気道部の女主将と対決する。

BL要素はありませんので念の為。

今日は入学式だけだから午前中で帰れるが、クラブ勧誘も始まっているみたいだった。


でも今年から入る男子生徒は自分で部活を立ち上げないといけないから大変だろうな。


『ラノベ部に入りませんか?』


ああいうのは男女関係なさそうでいいけどな。


どんっ


「あっ、ごめん」

「こちらこそ、ごめん」


ぶつかったのは同じクラスの…誰だっけ?

夕菜と瑠璃の二人とRINEで会話していたから自己紹介とかきちんと聞いてなかったな。


「綿山レイジくんだね。ボクは天竜院はやて…って自己紹介の時に言ったよね」


いや、覚えてないから助かったよ。

とは言えないけど。


「天竜院くんも部活見学?」

「そうだよ。でもどれに入るかまだ決めてないんだ」


中性的な外見と声。

一人称はボク。


実は女の子でした!ってオチがありそうだけど、高校までずっと男子生徒のフリとか無理だよね。


「ねえ、もしかしてボクが実は女の子だなんて思ってない?」

「え?」

「みんなそんな目で見るんだよね。こんな立派なモノが付いているのに」


と股間を指差す天竜院くん。


それはズボンの上からでもわかるくらいに自己主張していた。


「すまん」

「ううん、いいよ。気にしないで。それでね、水泳部に入ろうかなとか考えてるんだ。それなら上半身裸だから、女の子扱いされないよね?」


確かにそうだよな。


「この先は武道館みたいだな」

「水泳部の屋内プールはその先だから、武道館の見学を先にしようか」


しようかって、いつの間にか天竜院くんとクラブ巡りしている感じになったな。




「剣道の気迫が凄かったな」

「うん。でもボクは柔道がすごいなって思ったよ」

「100キロ近い巨体をあんな小柄な子が投げ飛ばすんだからな」


実際の試合であんな体重差のある取り組みは無いだろうけど、40キロくらいにしか見えない女の子が100キロくらいありそうな女の子(と言っていいのか)を投げ飛ばしたのはすごかった。


「部員集めのためにわざと投げられたのかもしれないけどね」

「いや、あれはちゃんと踏ん張っていたぞ」

「え?わかるの?」

「体重移動とかそういうのはなんとなくな」


幼い頃父親に中途半端に武道を叩きこまれたせいで、『力のやたら強い合気道家』みたいになったんだよな。

合気道なら相手の力を利用して投げたりするんだけど、俺は相手の力の方向を察して腕づくで投げるから合気道っぽくないんだよな。


「あっ、あそこは合気道部だよ!」


そんなマイナーな部活もあるんかいっ!


部長らしい女生徒に多くの部員が一斉に襲い掛かり、ほとんど力を使わないで捌いている。


「疑い深そうに見ていますね。どうです?私に有効打を一撃入れたら勝ちにするからかかってきませんか?」

「おう!やってやるぜ!」


畳に上がったのは今年入学した男子生徒。

身長は180くらいで体重も100キロ近そうだ。


「大丈夫かな?」

「さっきの体捌きを見る限り、いい加減な合気道じゃないと思うけど」

「え?そういうの詳しいの?」

「まあ、お父さんに習っていたからな」


どっすん


話している間に襲い掛かった巨漢がくるりと回転して畳に落とされた。


「へ?」


何が起こったのかわかっていない巨漢生徒。


「おおおお!」

「きゃあああ!すごい!」


合気道部の部長に対して歓声を上げる見学者たち。


「くそっ!」


そこでやめておけばいいのに、起き上がり際に部長の手を掴む巨漢生徒。


「捕まえたぜ」

「こちらがですよ」


ひゅんっ!


どっすん!


またしても畳に叩きつけられる巨漢生徒。


「な?どうして?くそっ!」


また立ち上がって部長の手を掴もうとしたところで、乱入した俺がその手を掴む。


「何だお前?」

「もう十分わかっただろ?」

「うるせえ!俺はまだ負けてねえ!」

「そもそも手加減して投げてもらっていたんだぞ。そんなことも分からないのか?」

「何?」


ぐおんっ!


巨漢生徒を縦に回転させて畳に顔から叩きつけ…


「ぎゃあっ!」


ぴたっ。


叩きつける直前に止めて、ゆっくり元の位置に下ろす。


「ふ、ふざけやがって!」

「手加減されているのに負けを認めないのは駄目だなあ」


俺は巨漢生徒を真上に放り投げる。


「ひええええええっ!」


たかだか5m程度でそんな悲鳴を上げるんじゃない。


頭から真っ逆さまに落ちて来た巨漢生徒をまた畳に落ちる直前で掴んで止める。


「ひ、ひいいい…」


元通りに立たせてやったら、そのままフラフラと逃げて行った。


「あなた、面白いですね」


部長が俺に声をかけてくる。


「合気道を学んでいましたか?」

「少しだけな」

「手合わせできますか?」

「少しだけなら」


俺はすっと右手を差し出すと、部長もすっと左手を出してくる。


そして手のひら同士が触れあい、お互い指を握りしめて…。



「んっ?!」

「くっ?!」


なるほど、これを投げるのは至難の業だ。

俺の力を全てコントロールされてしまいそうになる。


「普通そんなに力を入れていたらあっさり投げられるのですけど、中々投げさせてくれませんね」


これはなんとも…面白いな。


「えいっ!」


俺は全力で踏み込む。


「はっ!」


ぐるううんっ


景色が綺麗に回転して、


すとん


俺は足から着地させられた。


「わざと負けましたね?」

「勝ちとか負けとかあるんですか?俺は『楽しかった』ですけど」

「えっ?!」


俺は天竜院くんの所に戻る。


「いきなりあっちに行ったからびっくりしたよ」

「すまん。ああいうのを見るとほうっておけなくて」

「さすが玉中の『孤狼』は違うね」

「何だ、俺の事知ってたのか」

「今気づいたんだよ。そっか、綿山君がそうなんだ」

「孤狼?綿山君?」


いつの間にか合気道部の部長が俺の隣に立っていた。


「君は綿山レイジくんなのか?」

「そうだけど」

「私は永見明日香。あなたのつまぐふっ」


慌てて永見さんの口を手でふさぐ。


永見明日香って巻物にあった名前だ!

それにしてもみんなあっさり妻になり過ぎだろ?

ひとりくらい嫌がらないの?


「合気道に興味があるので、とりあえずRINE交換してもらえますか?」

「わ、わかったわ」


スマホを取りに行って頬を染めながらRINEを交換してくれる永見さんはさっきまでの合気道の達人ではなく、ただの恋する乙女にしか見えなかった。


「また連絡するから」

「うん、またあとで」



武道場を離れると、屋内プールが見えて来た。


「よし、水泳部の見学だな」

「ねえ、綿山君」

「なんだい?」

「さっき、永見部長さんってなんて言いかけていたの?」

「さあ?」

「口ふさいだよね?」

「…ちょっとまずいことを言いそうだったからな」


もしかして何か感づいたのかな?


「そういう時って口で口をふさぐんじゃないの?」

「え?」

「そのほうが男らしいのになあ」

「あんな場所でできるかっ!」


なんだ、単に俺が永見さんの口を手でふさいだのが不満だっただけか!


「それより水泳部に入りたいんだろ?」

「うん…ねえ、綿山君は部活どうするの?」

「帰宅部だな」

「なんで?」

「特に入りたい部活とか無いから」

「じゃあさ、ボクと…」


ぎゅっと俺の手を握りしめてくる天竜院くん。

手、柔らかっ!


「ボクと一緒に部活作らない?」

「男子だけの運動部かい?」

「そういうのじゃなくて、さっき綿山君がしていたこと」


何かしたっけ?


「男らしく合気道部の部長を助けて、しかもその心まで奪ったよね?」


奪ったというか、奪い済みだったというか。


「だからボクと『おとこ部』を作ろうよ!男らしいことをする部活をしたいんだ!」

「うーん、でもああいう事は無意識にやってるだけだからなあ」

「やっぱり凄いよ!打算とか下心無しにあんな事出来るんだから!」

「そんなに褒められるとくすぐったいんだが」

「だから綿山君みたいな男らしさを追求する部活にしたいなって」


それって、俺が入る意味あるのかな?


「部活は最低5人集めないと駄目だから、最初はサークル扱いらしいけどね」


もう凄くやる気になってるけど、どうしよう?


「最初は部活を友達2人で初めて、少しずつ大きくしていくのも楽しそうじゃない?」

「友達?」

「うん。もうボクたちは友達だよね?」


友達?!

今までボッチだった俺が入学初日で友達二人目だと?!


「よし、わかった!部活を作ろう!それと、はやてって呼んでいいか?」

「もちろん!ボクもレイジって呼ぶね!」


握っていた手を離してガッシリと抱き合う俺たち。


「野獣と美少年の愛…薄い本がはかどるわあ」


いつの間にか近くに居たラノベ部の先輩方がキラキラした目で俺たちを見ているけど、何だろうか?

お読みいただきありがとうございます!

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[気になる点] >「疑い深そうに見ていますね。どうです?私に有効打を一撃入れたら勝ちにするからかかてきませんか?」 漫画やアニメでよくある展開だけど、合気道って素人に技をかけると大怪我するからダメな…
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