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初めての友達!

あけましておめでとうございます!

夕食が終わってお風呂や同衾という『新婚イベント』を3人の嫁が『ぜひ自分と!』なんてアピールをしてきたけど俺はきっぱり断った。


「今日は色々ありすぎたから、お風呂と睡眠くらいひとりでゆっくり取りたいんだ」

「それなら仕方ないのじゃ」

「仕方ありませんわ」

「仕方ないよな」


とりあえず俺が一番風呂で、あとは嫁たちとマリア姉さんとカレンが入るらしいけど…。


かぽーん


「お風呂っていつの間にこんなに広くなったんだ?!」


うちは両親のおかげで家はそこそこ大きく湯船も広い。

元々足を伸ばせる程度に広かったのだが、横にも3人くらい並べるほどの広さになっている。


「洗い場の広さも広くなってるし、お風呂場自体を拡張したのか?」


まああとで聞くか。


ともかく、怒涛の一日だったな。


嫁が100人できるとかありえないことになったし…。


明日の入学式、大丈夫かな?

巻物に書いてあった同じ中学出身の美少女たちと顔を合わせるんだよな。


二人とはほとんど接点なんて無いから、かなみさんのように『実は好きでした』なんて都合のいいこと無いはずだ。


久遠がその二人を選んだ理由って美少女だからだけなんだろうか?

それとも別の理由があるのかな?


うーーーーん、わからん。




お風呂を出て『お先にー』と声をかけて自分の部屋に直行。


…あれ?


俺の部屋も広くなってないか?

ベッドも3倍くらい広いし。


ベッドの形状は今までと同じで、見覚えがある傷もある。


なのに大きくなってるってことは…。


「久遠!ちょっといい?」

「なんじゃ?」


扉を開けて久遠を呼ぶとシャツ1枚の久遠が文字通り飛んできた。


「うわぁつ!なんて格好してるんだ!」

「今からお風呂に入るところだったのじゃ」

「それならあとでいいから!」


色々と危ないところが見えてしまいそうなので久遠から顔を背ける。


「そんなことをしなくても大丈夫なのじゃ!」

「わたくしがあちこちに『光の精霊』を放っておいたので、万が一の時は『謎の光』で大切なところを隠します」


フィーネの声がするのでそちらを見ると、フィーネは完全に全裸だったが、謎の光とやらがうまく胸や腰周りを隠していて見えなくなっていた。


「だからってそんな格好でうろつくなっ!」

「す、すまぬのじゃ!」

「旦那様、申し訳ございませんでした!」




とりあえずみんながお風呂を出てからリビングで事情徴収をする。


「お風呂やレイジの部屋が大きくなったのは『間取三倍増』の札を使ったのじゃ」

「そのまんまのネーミングだな」

「御札に書いた通りの効果を出すためにはこういうシンプルなネーミングのほうがいいのじゃ」

「で、室内が3倍の広さになるってこと?」

「家具なども含めてそうなるのじゃ」


勉強机どころか椅子まで大きくなってたからな。


高さが変わってなくてよかったけど。


「これから100人の嫁が出入りするのじゃ。『新しい家』ができるまではこれで我慢してほしいのじゃ」


新しい家?


「100人住んでも大丈夫な家なのじゃ」


どこの物置だよ!

って、あれは上に乗るだけか。


「そんな大きな家なんてこの敷地に建たないだろ」

「今は無理じゃ」


今は?


「まあ楽しみにしておるのじゃ」


不安だけど、久遠を信じてやるか。


ともあれ寝よう。



凄く広くなったベッドに大の字になる。


うーーーーん、気持ちいいな。


色々考えたいけど、もう考えつかれたから寝よう。


明日は入学式だからな…。






「…のじゃ」

「ん…」

「朝なのじゃ」


もう朝?


眼を開けると目の前に久遠の顔があった。


「なっ!いきなり起きるでない!驚くのじゃ!」

「驚いたのはこっちだよ!人の寝顔をそんなに近くで見るんじゃない!」

「別に見ているだけのつもりはなかったのじゃ…ほっぺにおはようのキスをじゃの」

「え?」

「何でもないのじゃ!朝ごはんができてるから早く来るのじゃ!」


今朝はカレンとかなみさんがエプロンを付けて食事の支度をしていた。


「どうだ?あたしのエプロン姿、似合ってるか?」


トップアイドルのエプロン姿が見られる日が来るとは思っていませんでした。


「似合ってるよ」

「そうか!じゃあ大盛な!」


嬉しいから大盛って…え?大盛?


「ご飯とみそ汁?!」


いつも朝はトーストだけなんだけど、平日にこんなちゃんとした朝ごはんなのはお父さんとお母さんが戻ってきたとき以来だな。


「おお、何だかホッとする味だ」


みそ汁を飲んでそう言うとかなみさんの顔がほころぶ。


「これ、うちのおばあちゃん直伝なんだぜ。気に入ってもらえて良かったよ」


話し方は男っぽいけど頬を染めて恥ずかしそうにそういうかなみさんは完全に乙女だった。




さて、入学式だけど両親は海外出張だから参列しないし、気楽に行くか。



俺の通う聖トランシルバニア学園は元々ミッション系の女子高だったのが今年から共学になった高校だ。

だから2年生以上は女子しかいない。


どうして俺がこの学校を選んだかと言うと、マリア姉さんに強く勧められたからだ。


『レイジくんと毎朝一緒に通いたいな』


なんて言われたら断れないって!


ただ偏差値が結構高くて、マリア姉さんに家庭教師してもらってなければ合格しなかったよな。



「おい、お前、その制服は聖トラの新入生だろ?」

「ちょっと顔貸しな」


俺かと思って振り向いたら、どうやら同級生の男子が別の高校の男子に絡まれているらしい。


「やめてください。入学式に間に合わなくなります!」

「俺たちの頼みを聞いたら放してやるよ」

「聖トラに通い始めたら俺たちに女を回せよな。お前イケメンだから楽勝だろ?」

「俺は盗撮写真とかほしいけどな!」

「そんなことできません!」

「なら、ちょっと入学式には遅れてもらおうか」

「せっかく整えた髪がぐしゃぐしゃになるけどな」

「ついでにその整った顔もぐしゃぐしゃにしてやるぜ」


そこまでするのなら、友達同士のじゃれあいではなさそうだな。


「ねえ、ちょっといいかな?」


俺は3人の強面男子の肩を後ろから叩く。


「ん?」

「何だあ?」

「あっ、コイツも聖トラの生徒だぞ!」

「高い所は平気かな?」

「え?」

「は?」

「いきなり何言ってるんだよ!」


俺は3人の腰のベルトを掴むと次々と上に放り投げる。


「しっかり捕まらないと危ないぞ」

「うそっ?!」

「ひぎゃっ?!」

「ひえええっ?!」


3人は飛ばされた街灯の上に必死につかまっている。


「な、なにしやがる!」

「こんなことしてただで済むと思ってるのか!」

「ひええええ、助けてええ!」


俺は無言で傍らにある石を手にする。


「おい、そのままポールに抱きついて滑り降りれば降りられるぞ」

「お前、早く降りろよ」

「俺は高い所駄目なんだよお!」


なんて言ってる彼ら目掛けて石を投げつける。


ヒュン!


「ヒイッ!」


俺が投げた石は狙い通り一人の男子生徒の前髪を掠めた。


「いじめっ子は退治しないといけないとお父さんが言っていたけど、君たちはいじめっ子かい?」

「ひっ」

「こ、こいつヤバイ奴なんじゃねーのか?!」

「ああっ!こいつ『玉中の孤狼』じゃないか!」


見かけた揉め事の仲裁ばかりしていたら変な二つ名がいっぱいついたんだけど、そんな呼ばれ方もしてたかな。


「で、いじめっ子なのか?」

「ち、違います!」

「ちょっと彼と仲良くなろうと思って!」

「助けてえ!すみませんでしたあ!」


どうやらいじめっ子ではなかったようだ。


「はあっ!」


バゴーン!


俺は街灯に蹴りを喰らわすと、その衝撃でで落ちて来た3人を次々と受け止めて地面に下ろす。


「じゃあ、俺とも『お友達』になってくれるかい?」

「ヒイッ!」

「す、すみませんでした!」

「舎弟にしてください!」


舎弟じゃなくて友達が欲しいんだけどなあ。


「じゃあ、もういいよ。行って」

「はいっ!」

「失礼しました!」

「これからは気を付けます!」


そう言って3人は走り去っていった。


「あ、あの」


イケメンくんが俺に声をかけて来た。


「ありがとう。助かったよ」

「気にしなくていいよ。それにしてもまた友達を作りそこなったな」

「え?あれって本気だったの?」

「もちろんだ。俺はどうしても友達を作りたいんだ」

「『玉中の孤狼』って言われてたけど、もしかして玉川原中学校に居た綿山君?」

「そうだけど」

「俺は双子峰中学校出身の加藤広重って言うんだ」


ん?どっかで聞いたことある名前だな。


「そうだ!サッカーのジュニア代表の?!」

「それももうやめたけどな」


そういえば試合中に靭帯を切る大けがをして代表からはずれたってニュースになってたな!


「スポーツ推薦も無理になってたから浪人も覚悟していたのに、なぜかここの推薦が通ったんだ」

「そうなのか。でも、普通に歩く分には大丈夫そうだけど?」

「学校の授業レベルのサッカーならできるよ。でも、全力でやれないから部活は無理なんだよ」


寂しそうに言う加藤君。


「綿山君はどうして聖トラを受けたの?」

「姉さんがここに通っていて、どうしても一緒の高校に来てほしいって言うから」

「そっか。それにしても噂には聞いていたけど、すごい力だね」

「馬鹿力なだけだよ。スポーツとか繊細なことには向いてないから」

「でも助かったよ。サッカーをやめたとはいえ、あんな奴らに『蹴り』を使いたくなかったからさ」


どうやらあの3人を相手にしても退ける自信はあったらしい。



そのまま俺たちは談笑しながら一緒に歩いていく。


「通学路が同じってことは、家は近所なのかな?でも中学は双子峰だから、軒津のあたり?」

「笠部だよ」

「え?!裏の稲荷の反対側か!」


うちの裏山にある稲荷神社を超えると双子峰学区の笠部という地区に出る。


「綿山君って裏山の向こう側に住んでるの?!」


お互いに稲荷神社を背にしているから、どちらにとっても裏山なんだな。


「意外と近かったんだね!ちなみにあの稲荷神社の宮司はうちのお父さんだよ」

「へっ?!」


間抜けな声が出てしまった。


「あそこって、宮司さん居るの?」


駐車場が数台分しかない小さな神社なんだけどな。


「うちはこのあたりの小さな神社の宮司を兼任してるんだよ」

「そうなのか」


待てよ。

ということは、稲荷神社の神様である久遠を俺が嫁にしたってことは、宮司さんに言った方がいいのかな?


宮司おとうさん!祭神むすめさんを下さい!』


とか言わないといけないんだろうか?


「加藤君は神職を継ぐの?」

「継ぐ気はないけど、継がされるかな」

「そうなんだ」

「妹は喜んで巫女とかやってるけどね」


へえ、巫女さんか。


「今朝早くに『裏の稲荷神社に用事があるので行ってきます』って出かけて行ったけど、何かあったのかな?」


まさかそれって…。


「ちなみに妹さんってなんて名前?」

真白ましろって言うけど」

「ぶっ」


思わず吹き出す俺。


加藤真白って、巻物の中にあった名前じゃないか!


「加藤君って…」

「ねえ、そういう呼び方やめない?」


え?それってまさか…。


「お義兄さん?」

「なんでだよっ!そうじゃなくて、名前で呼ばないってこと」

「どうして?」

「どうしてって…友達になりたいなって思ったからさ」

「本当?!」


マジ?

友達?!

フレンド?!


「ううう、広重えええ」

「おい、何泣いてるんだよ?」

「だって、俺、友達が始めてできたからあ」

「そうかそうか」


俺の頭をポンポンとしてくれる広重。


「俺の事もレイジって呼んでくれ」

「あ、よろしくな、レイジ!」


こうして、俺に初めての友人ができた。


でも…友人がお義兄さんになったら友人じゃなくなるのだろうか?

それとも『兼任』できるのかな?


とりあえず、広重の妹をお嫁さんにするのはかなり先にしておこうと思った。

お読みいただきありがとうございます。

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