茜崎社長の負けフラグ回収
お待たせしました!
茜崎社長と初音ちゃんを連れて帰ると夕菜と瑠璃がエプロン姿で出迎えてくれた。
「旦那様、お帰りなさいませ!」
「あなた、おかえりなさい!」
満面の笑みでそう言われると蕩けてしまいそうになる。
「この子たちもあなたの嫁なの?すごい美少女揃いね!」
「え?私なんて他のお嫁さんに比べれば…ねえ」
「そうよね。みんな神懸ってるし」
「むしろ神だったり…ところでそのお二人は?」
「こちらはかなみの事務所の茜崎社長で、こちらがその事務所の子の久比岐初音ちゃんで、俺の嫁になったんだ」
「初音です。よろしくお願いします」
「「え?」」
固まっている夕菜と瑠璃。
「は、初音ちゃんって何歳?」
「小学6年生、11歳です!」
「いくら結婚に制限が無いからって…」
「でも成長する前のロリーナさんよりは雰囲気が大人っぽいわよね」
「それもそうね。よろしくね、初音ちゃん!私は朝霧夕菜、高1よ」
「初音ちゃん、よろしく!私は本田瑠璃。夕菜の親友で同い年よ」
「夕菜お姉さま、瑠璃お姉さま、不束者ですがよろしくお願いします」
さっそく仲良くなっているみたいで良かった良かった。
「夕ご飯の準備してるところだったけど、二人分増やすわね」
「あなた。今度から誰か連れて来る時は連絡くださいね」
「あっ、ごめん」
失敗したなあ。
でもこういうやり取りって夫婦らしくていいよね!
食事が出来てみんな集まったので、俺が茜崎社長と嫁になった初音ちゃんの紹介をして、みんなも自己紹介を始める。
もちろん茜崎社長は嫁候補だとみんなに言い含めておいた。
「わらわは久遠。裏の稲荷神社の神なのじゃ!」
「神?…ああ、そういう『設定』なのね」
うんうんとうなずく茜崎社長。
「わたくしはフィーネ・ド・エルキュリア。エルフィン王国の第六王女でエルフですわ」
「王女でエルフ?あなたの嫁ってそういう設定するのが好きなの?」
「フィーネの耳は普段は偽装しているから、見せてあげて」
「わかりましたわ」
フィーネが偽装魔法を解除するとポンと長くて尖った耳が現れる。
「すごい手品ね!」
「魔法ですわ!」
「触っていいの?」
「わたくしの耳を触っていいのは旦那様だけですわ」
「もしかしてあなたが4000歳以上なの?」
「さすがにそんな歳ではありませんわ」
「それは私の事よ」
ロリーナが手を上げる。
「私は女神ロリーナ。4000歳から先は数えていないわ」
「女神?!」
きょとんとするのも無理はない。
ロリーナは女神に相応しい美貌を持っているが、このメンバーの中では特に目立つほどではない。
そうなると何をもって女神っぽいと言えるかと言うと…うーん。
「ロリーナ。女神らしいことってできる?」
「女神らしいこと?呪いをかけるとかならすぐにできるわよ」
「ひいっ」
ずざざざっと背後に下がる茜崎社長。
「私は若死にした少女たちの魂を救う女神なのよ。下界でできる奇跡は困っている少女を救うことくらいで、あとは全ての女神が持っている『神罰』くらいしかできないのよ」
「じゃあ、やめておこう。それより、ロリーナの力で過去から連れて来たアヤメとジャンヌに挨拶してもらおうか」
すすっとアヤメが前に進み出る。
「拙者、赤羽幻斎こと赤羽アヤメ。忍者でござる」
そう言ってぴたーんと天井に張り付いた。
「これは確かに忍者ね。見世物の忍者なんかじゃこんなことできなそうだわ。でも、秘術を引き継いでいる忍者の末裔とかじゃないの?」
中々信用してくれないな。
次にジャンヌが進み出る。
「私の名はジャンヌ・ド・アーク」
「まさかジャンヌ・ダルク?!うそっ?!どうして生きてるの?!って、そもそもどうしてここに?!」
とりあえずかいつまんで説明する。
「過去に戻るなんてできるの?!嘘よね?!あなたも 子孫なんでしょ?」
「私が聖女と言われたジャンヌだと信じられないなら、『奇跡』を起こしましょうか?」
「奇跡?」
「ジャンヌ、奇跡って何?」
俺も初耳だ。
「私はフランスを救えと言われてから数年はミカエルの加護で『神眼』を使えたのよ」
「神眼って?」
「軍勢を眺めてどこが弱点かわかったり、個人ならどんな相手かとか見通せたりするのよ。王子が誰か見破ったのもその力ね」
「戦術眼と鑑定眼を足したみたいなものか」
凄く便利そうな能力だな。
「それが急に使えなくなってから裏切られて掴まったのだけど、若返ったおかげなのかまた『神眼』が使えるようになったのよ」
「もしかして私のことを見通せるとでも言うのかしら?」
「スリーサイズとか体重とかわかるわよ」
「そのくらいは見た目でわかる人もいるでしょう?」
「45.25キロね」
「なによその妙に正確な数字!男の人も居るのに言わないで!」
「あとは職業がわかるわ」
「職業くらい奇跡じゃなくてもわかるでしょう?社長よ、社長」
「あなたが『プロダクション社長』で『バ美肉Vチューブラー』だってわかるわ」
「いやあああああああっ!」
いきなり悲鳴を上げる茜崎社長。
いったいどうしたんだろう?
「カレン、『ばびにく』って何?」
「アニキ知らないの?ユーチューブラーの中でも自分を3Dキャラクターにして配信する人の事よ。おじさんが美少女キャラになったりするんだって」
「若さにあこがれたのじゃな」
「違うわよ!私は美少女になったんじゃなくて、美少年になってるの!それでかなみたちのことを応援する配信をしていたのよ!」
「「「え゛?」」」
忙しい最中にも社長室に籠って動画作成&配信をして事務所のアイドルたちを応援していたらしい。
「これですわね!」
素早くスマホで動画を検索して見せてくれるフィーネ。
「さすがフィーネ!検索名人!」
「さっそくテレビに映しますわ」
「いやあああっ!見ないでっ!」
食事をしながら『ゆうくんのアイドル通信』をみんなで鑑賞する。
名前が茜崎悠里だからゆうくんなんだな。
10歳くらいの可愛らしい少年のCGがかなみさんたちの曲やイベントの紹介をしてくれている。
ちなみに恥ずかしさのあまり茜崎社長は無言になってしまった。
「ところで茜崎社長」
「何よ」
「約束、覚えていますよね?」
「…」
「4000歳以上の嫁とか中世や戦国時代の嫁が居たら結婚してくれるんですよね」
「…なんで私なのよ?」
「かなみさんたちを支えてくれていた社長さんとして尊敬していますが、こういう動画配信をしたり、恥ずかしがったりしているところも素敵だと思います」
「私たちって何歳離れていると思ってるの?!」
「そのやりとり、またするんですか?」
「ううう…でもこの中で一番最初におばあちゃんになるじゃないの!4000歳なのに若いとか反則だわ!」
「それでも一生大切にするから」
俺はぎゅっと茜崎社長の手を握る。
「俺と結婚してください」
「…」
無言のままこくりとうなずく茜崎社長。
「悠里さんって呼んでいいですか?」
「自分が年上って思いたくないから呼び捨てが嬉しいのだけど」
「じゃあ悠里。これからよろしく」
「はひっ。わ、私もよろしくおねがいしましゅ!」
赤くなってかみかみで返事をしてくれる悠里。
「やっぱり悠里は可愛いな」
なでなでなで
「あうううううう」
赤いどころか真っ赤になってしまう悠里。
「年下に呼び捨てにされて頭撫でられるって、何だかすごく…イィ」
そのまま俺の胸にもたれかかってくる悠里。
そしてそのまま崩れ落ちる。
「悠里っ?!」
「どうやらオーバーヒートしたようじゃの」
「乙女ですわねえ」
「アニキ、ソファに寝かせておいてあげなよ」
「そうだな」
うちのリビングはダイニングと一続きになっているから大人数でも食事をとれるし、リビング部分にはソファもあるのでそこに悠里を寝させる。
「このまま悠里の動画を見ていようか」
「テレビが大きいから片付けながら見られますわね」
「そうじゃの」
夕菜と瑠璃たちが食事を作る当番で、フィーネと久遠が片づける役。
「お風呂沸かしてきたわよ」
ジャンヌがお風呂当番なのだが、人数多いけどどうやって当番決めているんだろ?
「マリア姉さん。当番はどうやって決めてるの?」
「スマホアプリで管理しているのよ。だからもし予定が入っても簡単に交代してもらえるわ」
「へえ、マリア姉さんの発案?」
「発案は私だけど、アプリを作ったのはカレンよ」
「カレン、ありがとうな」
「べ、別にアニキのためじゃないんだから。そのほうが便利だから作っただけで…」
そう言いつつも頭を差し出してくるカレン。
「ん?」
「わ、私にもなでなでくらいしなさいよ!」
「わかったわかった」
なでなでなで
「えへへ」
なでなで…するっ
「ひゃうっ?!アニキ!何で指を髪に絡ませるのよ?!」
「いや、カレンの髪の毛の触り心地が良くてつい」
撫でるのではなく髪の毛を指で梳いているとカレンの顔も赤くなってきた。
「無理っ!もう限界!」
脱兎のごとく逃げ出すカレン。
「怒らせたかな?」
「私は怒らないからやってくれるかしら?」
「マリア姉さん?いいよ…ってええっ?!」
マリア姉さんの後ろに嫁たちが列を作っていた。
「わたくしもなでなでと髪を手櫛で梳くのをしてほしいですわ」
「拙者もしてほしいでござる」
「私も」
「私も」
結局全員なでなでして手櫛で髪を梳いてあげたら凄く喜んでくれた。
なぜか久遠だけはキツネモードで全身手櫛を所望してきたので、ついでにモフらせてもらったけどね!
お読み下さりありがとうございました!
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