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ようやく過去へ

嫁たちとのイチャイチャシーンはしばらくお待ち下さい。

晶先生はスーパーでコッペパンとブドウジュースを買ってきてくれていた。


「わかったぜ!最後の晩餐だな!『パンは私の身、ワインは私の血』って奴だな?!」

「そう!良く分かったわね、かなみさん!」

「へへっ。歌詞を作る時に調べたことがあったのさ!」


さすが信者ファンに『祈ってるかいっ?!』って聞いているだけはあるな。


「未成年が多いからワインの代わりにブドウジュースにしたけど、これを使って儀式をすればいいんじゃないかしら?」

「いいんじゃないかしらって、そうかもしれないってこと?」

「だって、思いつきですもの」


思いつきとはいえ、それで納得してしまった俺が居る。


「久遠。俺がこの方法で納得できたってことは、できるようになったってことか?」

「そうじゃ!レイジが『できる』と思えたならあればそれが可能になるのじゃ!」


すごいなそれ。

ある意味何でも出来るんじゃないのか?




さて、問題は誰が過去に行くかだ。


舞台は爆発して焼け落ちる忍者の館。

下手をすると、誰かが大けがをしたり死ぬかもしれない。


だからここは少なくとも『自分で自分を守れる人』で行かないと。


「魔法が使えるフィーネ。合気道の達人明日香先輩、それから」

「私はまだ達人というレベルではないのだが、あなた様のためなら同行したい」

「それからマリア姉さんとカレンもいいかな?」

「わかったわ」

「任せて、アニキ!」

「それなら私たちも!」

「うん!」


マリア姉さんとカレンが行くと聞いて身を乗り出して自分たちも行きたいと言ってくれる夕菜と瑠璃。


「マリア姉さんは『神速』だし、カレンは『神技』だから連れていくんだ」

「しんそく?」

「しんぎ?」

「こういうことよ」


いぶかしむ夕菜と瑠璃の前から姿を消して、一瞬で背後に回り込むマリア姉さん。


「え?」

「いつの間に?!」

「さらに分身!」


部屋の中で5人に分身するマリア姉さん。


「凄い…」

「じゃあ、カレンちゃんの『しんぎ』ってのは?」

「それとか」


俺はリビングのテレビを指差す。


「普通のテレビよね…あれ?電源は?アンテナ線は?」

「ビデオやゲーム機もついてないの?」

「全部無線で、ビデオとゲームは内蔵よ」

「「え?」」


目が点になっている夕菜と瑠璃。


「小さい頃から俺の力がありすぎて色々物を壊すから、カレンが遊具や電化製品の修理をして後始末をしてくれるようになって、いつの間にかそういうものも作れるようになったんだ」

「だからって、電源を無線とかありえないわ!」

「ゲーム機内蔵って、ソフトとかどうなってるの?!」

「その説明を始めると今日の議題が進まないから、おいおいカレンから聞いておいて」


はっきり言って、俺にも理解しきれないものな。


それから俺たちはどうやって赤羽幻斎を救出するかを話し合った。



「あとはパンとブドウジュースで儀式をするだけだな」


俺はコッペパンをちぎる。


「これは俺の体と思って食べてくれ」

「はい」

「ぱく」

「そしてこのブドウジュースを俺の血と思って飲んでくれ」

「うん」

「ごくごく」


…これでいいのかな?


「何も見た目に変わらないから、うまくいったか分からないよな」

「わらわにはわかるのじゃ。うまくいっておるの」

「そうですわね」


どうやら久遠やフィーネにはみんなの体から滲み出るオーラの様なものが俺と同質になったということでわかるらしい。


「それでは過去に…ってどうやって行くんだろ?さっきからロリ神様からの声が聞こえないけど」

『誰がロリ神様よ!』

「あっ、聞こえた」

『ロリーナよ!女神ロリーナ!話ならずっと聞いていたわよ!』

「じゃあ、俺とフィーネと明日香先輩とマリア姉さんとカレンを過去に送ってください」

『5人も過去に行けるようにするとかどうなってるのよ。とりあえず、過去に送るわよ』


そしていきなり俺の体が透き通っていく。


「おお」

「あっ、わたくしもですわ」

「私も」

「私もね」

「すごいっ!どういう仕組みかな?」


カレン、さすがにそれは機械じゃないからわからないと思うぞ。


そして俺たち5人は過去へ、戦国時代の赤羽幻斎の居る忍者の館へと飛んだ。






赤羽幻斎視点


「ふ、ふふふふふ」


普段は人前に見せないような薄ら笑いが出てしまうでござる。


今、この館には拙者一人きり。


拙者と同じ赤羽幻斎である兄者たちは他の忍者たち全員と退避した。


このまま人目につかないように他国に逃げる手はずになっているでござる。



城内には今まで死んだ仲間たちの骸や殺した敵の骸が並べてある。


なるべく多くの死体を用意して、検分に来た敵に忍者は全滅したと思わせないといけないからでござる。


それにしても…。


「死ぬ前に『恋』とやらをしてみたかったでござる!せ、接吻とかもしたかったでござるのにっ!」


こんなことならくノ一になればよかったでござる!


「でも拙者の体つきでは男を篭絡することなど無理でござるな」


拙者の母は平坦な胸と低い背丈をしている故に、拙者もくノ一は無理だと最初から言われていたのでござるが、実際にこの歳になっても体つきは子供のままでござった。


「忍法『傀儡』!」


拙者の忍法で赤羽幻斎のフリをした『人形』が立ち上がる。

拙者の体躯ではとても『頭領』と思われないでござるからな。


館に押しかけた敵兵の前で爆死して、さらに館中に仕掛けられた多くの爆弾が連鎖的に爆発する。


焼け跡からたくさんの『骨』が見つかり、赤羽忍は滅びたと思われるだろう。

少なくとも、頭領である拙者が死ねば、これ以上赤羽忍が狙われることはないでござる。


「それにしても…『兄者!拙者にお任せくだされ!』なんて格好を付けなければよかったでござる。でも、兄者が死ぬのは嫌なのでござるし、でも自分が死ぬのも怖いでござるっ!」


だがっ!それでも拙者はっ!


皆のために命を投げ出さなければならないのでござる!


「でもせめて!せめて誰でも良かったから、接吻くらいしたかったでござる」


しかし、今城内に残っているのは死体だけ。


さすがに死体と接吻したいとは思わないでござるよ。


どさっ


「何者でござるかっ?!」


背後に何者かが落ちて来た気配を感じて振り向くと、やけに体躯の良い18歳くらいの男が気絶している。


「敵?いや、この服装は異国のいでたちではないか?」


それにどこから現れたというのでござるか?

仮に気配を完全に消せるとしても、館の中には鳴子を始めとした警報具が張り巡らせてあるのにこの大きな体躯で全てすり抜けて来たとでもいうのでござるか?


それほどの腕利きでありながら、拙者の前で気絶するとか、いったいどういうことでござる?



とりあえず縄で縛ったでござるが…武器を持っておらんでござるな。


だからと言って油断はしないでござる。

この体躯を生かした体術の使い手やもしれぬゆえ。


ヒマでござるっ!


どうして敵は来ないのでござるか?!

兄者たちの見立てではそろそろこの屋敷に押し寄せるはずでは?



「くかー」


そして拙者の前で堂々と寝ておるこやつは一体何者でござるか?


…生きている男でござるな。


く、唇に触れても良いでござるよな?

拙者が捕らえた捕虜ゆえ、拙者の好きなようにしても…


ぴと


「ひゃっ」


唇に指を触れさせただけというのに、変な声をあげてしまったのでござる。


こ、こんなことで唇同士触れ合わせるなど、できるのでござるか?


いや、そもそも敵かもしれぬ男と接吻など…。


「アヤメ…絶対助けるからな…」

「へ?」


い、今『アヤメ』と言ったでござるか?!


『アヤメ』とは拙者が忍者になった時に捨てた幼名!

それを知っておるのは亡き母と兄者たちだけ!


もしやこの者は拙者を助けるために兄者たちが遣わした腕利きの忍者では?!

いや、腕利きでは気絶しているはずはないでござるな。


でも、拙者の名前を知っているとは…いや、アヤメなんて名前は珍しくもないでござる。


とりあえず、起こして聞くことにするでござる。


「起きろ!ほれ、起きるでござる!」


ゆっさゆっさ


「ん…?あれ?ここは?」

「気づいたでござるか?」

「その忍者装束!もしかして君が赤羽幻斎…のお子さん?」

「子供ではないでござるっ!…あっ、いや、まあそんなものでござるな」


危うく自分から正体をばらすところだったでござる。


「アヤメって名前の忍者知らないかな?赤羽幻斎の1人だって聞いてるけど」

「お主…なぜそのことを知っているでござるか?」


拙者はなるべく怖い口調でそう言った。


「ごめん。お嬢ちゃんにはわからないよね?じゃあ、頭領の所に連れて行ってもらえるかな?」

「お嬢ちゃんでもないでござる!拙者が赤羽幻斎でござる!」

「え?たしか15歳だって聞いたけど」


拙者の年齢を知っているのも兄者たちだけ。

やはり味方でござるか!


「これでも15歳でござる!」

「久遠より小さいんだな。それより、今から自爆するんだよね?」

「やはりお主は兄者たちに頼まれてきたのでござるな?して、どうやって拙者を生きたまま連れ出すのでござるか?」

「その前に、あと4人仲間が居るんだけど、どこに行ったのかな?」

「少なくともこの館にはおらぬと思うのでござるが」


警報具にもかかっていないし、気配も感じぬでござるからな。


「あっ、女神様?あの儀式は十分でなかったから10分くらい遅れてこっちへ来るって?」

「いったい誰と話しているのでござるか?」

「君を助けるように依頼してきた『ひと』だよ」

「兄者たちではないのでござるか?!」


わああああああっ!


「あの声は?」

「ついに来たでござるな!」


窓から館の外を見ると、大勢の武士たちが押し寄せてくるところだった。

お読みいただきありがとうございました!

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