冒険者登録 #仲間
「契約しだいでは、助けてやらんでもない」
そう言って俺は囚われている女と5人の男の方へと向かった
「こいつらか……うわ、なんかヘボそうな武器持ってやがるな、the☆チンピラって感じ」
《女の方は獣人族の様ですね。》
「へぇ……あれが獣人族か」
《それも狼のですね。狼は知能も高く、女でも筋力があるのできっと奴隷として売り払うつもりなのでしょう》
「ほぉー、じゃぁなおさら助けなくては」
《何の契約をするつもりなのですか?》
「まぁ、見とけって!」
そう言って立ち上がり、ポッケに手を突っ込んだままチンピラと女の前に立つ
「ねぇ、そこのお嬢さん」
「はぇ?」
「あぁ!?んだてめぇは!」
「殺されてぇのか!」
「いやいや、お前らお嬢さんじゃねぇだろ、お前らにはかまってる暇ねぇんだよ」
「あぁ!?んだとぉ!?」
「ところでお嬢さん、ウチと契約しない?」
「契……約?」
「契約だとぉ?こいつはもう俺たちのもんなんだよ、ガキは大人しく金目のもの出して下がってな」
「うるせぇよ……俺よりも小さいジジイにガキなんて言われても説得力ねぇよ」
「ぐぐぐ……バカにしてるのか?このガキァ……」
「それで、契約の話なんだけど……」
「ぶっ殺してやる!」
そう言って武器を持ち立ち向かってくるが、右足1本で向かってきたチンピラ男の頭を地面に叩きつける
「ほぼスローモーションみたいだったな、それで嬢さん?契約の話なんだけど……」
「すごい……」
「うちの仲間に入らない?」
そう身振り手振りで言ってチンピラ達に地面に頭を伏しているボスと思われる奴を他の奴らの方へ投げ捨てると担いで逃げていった
「ボ、ボスがやられた!逃げろ!」
「嫌だァァァ!まだ死にたくなァい!」
「ママァ〜〜〜〜〜!!」
そう言って逃げてくチンピラ達を見てフッっと鼻で笑い「ダッさ」と暴言を吐き散らした
「あの……」
「あぁ、大丈夫だった?」
「えぇ、それで契約の事なんですが……」
獣人族の少女は黙り込む。きっと迷っているんだろう。
「契約を捨てるんなら俺もう行くぞ?」
「あ!いや……その……」
聞けば獣人族の狼、人狼族は結構貸し借りの激しい種族らしく、借りは必ず返すというなんとも男前な種族らしい
「あなたの仲間に……なります!」
「じゃぁ契約を……っとその前に、一つ質問ね?」
「何でしょう?」
「魔族、魔物に対しての因縁ってあったりする?」
「因縁……ですか?」
魔族達への因縁があるのに魔族達の仲間に入れるなんて馬鹿なヤツだ
「……ありません。」
「嘘じゃないな?」
「えぇ、もちろん」
「それとこの契約を了承した瞬間にもうお前は俺の仲間だ。仲間になった途端、お前がこの仲間という組織から抜け出せるのは死ぬ時のみだ。それでも入るか?」
「……はい!」
「んじゃぁ契約成立っと!」
そして両手を大きく広げる
「ようこそ魔帝王軍へ!君を魔帝王軍第1号と認定致します!」
「ま、魔帝王……軍?」
「あぁ、この事については秘密ね、今は隠蔽かけてあるから大丈夫だけど、絶対に誰にも言わないでね?秘密だよ?」
「え、えぇ……って、魔帝王軍って何ですか!?」
「あぁ、その前に自己紹介をしていなかったね」
「ちょ、ちょっと……」
「俺は元魔帝王を打ち倒した、新魔帝王の桐谷 優飛だ、よろしく〜」
俺がそうと自慢げに言うと……
「元魔帝王を打ち倒した……?新魔帝王……??」
彼女は混乱してしまい、最終的に目が点になって動かなくなってしまった。
「お、お〜い、大丈夫デーすかー?」
「ハッ!」
「やっと気づいた」
オロオロとした様子を見せて俺の方を困ったような目付きで見つめてくる。するといきなり姿勢を正して
「え、えと!仲間になります!」
キリッとした顔つきで元気に言う、がそれはもう言われているからとっくに仲間になっている。
「それもう聞いたから、契約成立って事でもうお前、俺の部下な」
「ぶ、部下……」
「そそ!だからお前はもう死ぬまで俺に仕えることだ、分かったな?」
「えぇ……って死ぬまで!?」
「おう、死ぬまでな、ちゃんと警告したんだぞ」
「うぇぇぇ……」
すると彼女は後悔したように涙を流し、その場で座り込む
「そう泣くなよ……」
俺も少女の前でしゃがむ
「だぁってぇ……死にたくないよぉ……」
「そう簡単に死なねぇって」
「ほんとォ?」
「そりゃそうだなんたって……」
俺は立ち上がり、自分を親指で指さす
「魔帝王を人類で唯一倒し、そして魔帝王になった男だからな!!」
ドーンと構えて言う
「……そ、そうですね、そうですもんね!」
するとどこかから、全知全能ではない別の声が聞こえてくる
《人狼族の『ヒューラ』が仲間になりました。》
「うん?」
「どうかしました?」
「いや……なんでも?
(おい、全知全能?さっきの声はなんだ?)」
《はい。これはいわゆる……あなたの世界で言う世界の声、ナビゲーターのようなものですね。》
「ほぉー」
「???」
「あぁ、なんでもない、早く行こう」
「どこにですか?」
「う〜ん……とりあえず、アイラ森林にレベル上げしに行くか」
「レベル上げ?」
「あっ、」
そういえば、レベルは異世界から召喚された勇者の称号を持つものしか存在しないんだった、何とか誤魔化さなければ
「え〜っと……あぁ!そうそう!俺たち人間って魔物と戦うと強くなるじゃん?」
「そうなんですか?」
「……まぁ、強くなるんだよ!それでな!その現象を俺の中ではレベルが上がるっていう表現の仕方をしてんだ!そんで略してレベル上げ!分かった!?」
「へぇ……」
どうだ?イケるか?大丈夫か……??
「そうなんですか!へぇー、知りませんでしたよ!優飛さんは学者様だったんですね!」
良かったー!ヒューラちゃんが天然で!もう可愛い!大好き!愛してる!
「そんじゃいこっか」
「はい!」
そして俺は右手を伸ばして転移魔法を開く
「速く来て……って、どしたの?」
「いや、転移魔法を使えるって……けっこうレアなんですよ」
「そなの?……って、そりゃ俺は魔帝王を倒したからな、お前にとっての規格外は山ほどあるだろ、気にすんな身が持たんぞ」
「そ、そうですよね」
「ほら、手ぇ貸してやる、来いよ大丈夫だから」
そう言って手を伸ばすとすぐに少女は両手で俺の手を握りしめた
「(けっこう大胆なやつなんだな……)」
《そういう事も無いですよ。なぜなら、この少女にとってあなたは師匠的存在なんですから。》
「(そうなんだな、あんま必要無さそうな情報ありがとう)」
そして俺は少女の手を引き、強・敵・な・魔・物・があちこちで歩き回る森の中心へと続く門をくぐった。