冒険者登録
魔王城を侵略し、魔族の領域だった土地も得ることができた。そして俺は新たな魔帝王となったのだ。
「魔帝王にもなったわけだし、まずは街で情報収集でもするか」
そう玉座に座って言うと、創造魔法を展開する
『創造魔法、ワールドマップ』
地面にこの星の世界地図が映し出される。それには地形や土地名も詳しく描かれており、自分の位置も示されていた。
「なるほど……俺がいるところはここで、あのクソ王とクソ姫がいるライアント連合国は……ここか、何だよ内陸国かよまっすぐ行けねぇじゃねぇか」
ライアント連合国は内陸国、それに反してこの魔帝王領域は広い海に浮かぶ島国だった。しばらく考え、俺は立ち上がる
「目当てのライアント連合国からは遠いが、まずはここから1番近いアイラルド国に行くか」
『創造魔法、飛行魔法』
飛行魔法のオリジナルスキルを手に入れ、外に出る
『SCP-001、ゲートガーディアン』
魔帝王を倒したゲートガーディアンにこの魔族の領域に入って来た人間を能力で追っ払うように言って飛行魔法で海を飛び越え、アイラルド国の港に到着した。
「思ったよりも早く着いたな」
「お?おめぇここらではあんま見ねぇ顔だね!格好からして……アンタ、冒険者かい?」
私は魔帝王を倒した新たな魔王です、なんて言えない。まぁ、今は自分は冒険者だって事にしておくか
「はい。まぁ、今から登録しに行くのですが。」
「そうかい、そこの道を左にしばらく進んだらギルドがあるんから、そこで登録してくりゃいいさね」
「ありがとうございます」
「ま!頑張んなよ!」
「はい!」
そこの道を左にまっすぐ、か。
進んでいくうちにこの街についての情報も結構得られた。パン屋に精肉店、所々にある小さな家。電気は使われておらず、生活はほとんど魔法で成り立っている。魔法の使えないやつは魔石で代用しているのが見て分かった。値段の見方は1ゴールドにつき、日本円で言う10円に近かった。そしてコインにも種類があり、
木=1→銅=10→鉄=50→銀=100→金=1,000→白金=10,000→クリスタル=100,000という順になっていた。そして道の途中で冒険者と出会い、「冒険者になるなら敬語は使うな」と注意された
「ま、こんぐらい情報を得られれば上出来だろう。」
そして俺は今、ギルドと思われる場所にいる。
大きな門を開けて中へはいるとそこにはとてつもなく大きな空間が広がっていた。
「な……何だこれ、これも魔法か!?この大きさの建築物にこんな大きな空間は作れないだろ、魔王城1個がすっぽりと収まりそうだな」
そう呟いていると後ろから誰かに肩を叩かれる
「あ、あの……」
「うわ!」
「ご、ごめんなさい!」
小柄な体に短髪の赤っぽい髪に黒い縁のメガネ、まさに陰キャっぽかった。右の胸ポケットについている名札には『イール』と、この国特有の言語で書かれていた。
「大丈夫だよ、イールさん、それよりも冒険者登録をしたいんだがどうすればいい?」
「あ、あぁ、えっと……ぁそこです……」
「……大丈夫か?」
「は、はい!大丈夫ですです!」
「ホントに大丈夫なの?」
「はいです!」
少々、彼女の勢いに呑まれながらギルドのカウンターに向かう。そこには右胸ポケットに『ムミナ』と書かれた名札をつけた女性が立っていた。
「冒険者の登録ですか?クエストですか?」
「あっあぁ、冒……」
「冒険者の登録ですね。」
被せて言われたことに少しムッとした顔つきを見せると、受け付けの人がニッと笑って言った
「そんな顔しないでくださいよ。あんなに大きな声で喋っていたら、ギルド職員なら誰だって気付きますよ」
「は、はぁ……」
「じゃぁ、まずコレに手を当てて下さい」
そう言うと少し大きめの水晶を出された
「これは?」
「ステータスを映し出すことの出来る道具です」
ヤバい、今のステータスを見せたら、きっと大騒ぎになる、隠さなければ……隠さなければ!
「どうしました?」
「いや、ちょっと……おトイレに……」
「あぁ、それなら早く行ってください、ここで大の大人がお漏らしをされては見てる側も恥ずかしくなりますからね」
「は、ハハハ……」
そして俺はトイレに逃げ込んだ。
「どうする!?俺!いったいどうすればいいんだ!?考えろ、考えろ、俺!」
俺は今、和式トイレの個室で頭を抱えて悩んでいた
「全知全能!助けてくれぇ!」
《……はぁ、隠蔽魔法を使ってはどうでしょう?》
「おい、最初のため息はなんなんだ」
《はい?》
「隠蔽魔法ってどう使うんだ?」
《ステータスを開き、隠したい場所をどのようにして隠したいのかを想像して発動すると、ステータスが想像したように置き変わります。》
「なるほど」
《この魔法は姿をも隠蔽できます》
「ほぉー、じゃぁまずステータスっと」
低い音とともに現れたステータスプレートを見て少しの間考える
「なぁ、全知全能、」
《はい?》
「冒険者の普通ってどんくらい?」
《どういう意味でしょう?主語述語をよく使ってください》
「そのまんまの意味だよ」
最初の頃は弱すぎてダメだし、今は今で強すぎてダメ、どうすればいいか俺には分からなかった
《……私がしましょうか?》
「いいの!?」
《まぁ、》
「じゃぁ……お任せで」
《了承を確認、強さのランクはどうしましょう?》
そう全知全能が言うと目の前に新しいプレートが出てくる
「えぇっと……SSS、SS、S+、S、A、B、C、D、E、F……10等分か、えっととりあえず……」
そう言った時、個室の向こうからノックが聞こえてくる
「あの……大丈夫ですかー?」
この声は……あのカウンターにいたお姉さん!?
「だ、だだだ大丈夫ですよ!」
「驚かせたようですみません」
「いゑえ!大じょーぶですので!!」
「そ、そうですか……何かあったら言ってくださいね」
「はい、ありがとうございます」
音を聞いて出ていったのを確認すると「ふぅ…」ため息をつく
「あっっっぶねぇぇぇ……」
《間一髪でしたね》
「あぁ、それとランクだけど、一番下のFにしてくんないかな」
《F……ですか?》
「何か問題でも?」
《いいえ、ですが……》
「問題ないならいい、Fで良いよ」
《そうですか……では次にクラスです。神を表すGランク、帝王を表すEランク、王を表すKランク、超人を表すSランク、凡人を表すOランクに別れていますがどれにしましょう?》
「GODゴッド、EMPERORエンペラー、KINGキング、SUPERスーパー、……Oは分からないけど凡人って意味なんだろな、とりあえずO……いや、Sで」
《はい……反映出来ました。》
「速いな……まぁ、いいだろう」
そして個室を出て真っ直ぐにカウンターへと向かう
「あぁ、お腹は大丈夫でしたか?」
「まぁ、何とか……ハハハ」
「ではこの水晶に手を当ててください」
「(大丈夫なんだよな?)」
《えぇ、凡人程度にはなっていますよ。》
手を当てると水晶がうっすらと光り出す
「(大丈夫……大丈夫だ!きっと大丈夫だ)」