魔王城
門をぶち破り、俺は中に入って長い長い廊下を歩き続けていた。アベルには門の前で入って来ようとする魔物達を倒してもらっている。
「にしても長すぎじゃないか?」
《そうですね。》
「いや、おかしいでしょ」
《何がですか?》
「いや、もうかれこれ2時間は歩いてるよ?この魔王城の大きさに2時間も歩くスペースなんてないでしょ」
《……そりゃ同じ道をずっと歩かされてますもんね》
「どういう事だよ」
《そのままの意味です。ずっとここの廊下を歩かされているんです。まぁ、魔法の1種ですね、コレは》
「早く言えよ……で?どーやったら抜け出せるの?」
《まずは右に3歩行き、そして左に2歩、そしてまた左を向き、4歩、その後……》
「……なるほど、そう来たか」
…………………………………………
《抜け出しました。》
「っはぁーーー!」
1歩でも踏み間違えば戻されるってどういうことだよ!!抜け出せたけど……500回くらい試して
「よし次!」
《……この先、トラップが約50個設置されています。》
「は?」
『カチッ』
ガクンと下がる右足とともに聞こえてきたのは『カチッ』という不気味な音。コレは……
《トラップを踏みました。トラップが作動します。》
全知全能のスキルがそう言うと、頬に何かがかすめ、血が垂れ落ちる。
《残り、53個のトラップが仕掛けられています。》
「ひゃぁァァァァァァ!!!」
……………………………………
《トラップゾーンを抜け出しました。》
「やっと抜けた……てかトラップゾーンって名前まで付けてるし」
《暇でしたものずっと数えるだけで》
「……分からないことも無い」
「(コイツ……スキルのクセになめやがって後で覚えてろよ……)」
《言っておきますが、覚えるつもりもありませんので。》
「コォーイィーツゥーー!」
《では参りましょう。魔王が待っています。》
「フンっ!……そういえば、ここって幹部的なのいんの?」
《はい。まず最初に、悪魔の魔女のインラル、次に剣士の魔将のフィン、その次に槍の魔将のスーデン、スピードの魔将のスピール、豪腕の魔将、ゴウゴーデン、という順になっています。》
「なるほど、ならコイツらを使った方がいいだろう」
そして俺は目の前にあるドアを開ける。
「……おや?坊や、あんた一人かい?いつもなら多人数で来て私を滅多刺しにしようとするんだけどね〜、まっ!私が返り討ちにしちゃうんだけどねー!アッハハハハ!」
そして魔女は高笑いし始める。
『SCP-106、オールドマン』
紫色の魔法陣に想像と記憶を捧げ召喚する。
「グゥゥアァ……」
「なんだいアンタ召喚者かい?」
「よく分かったな。」
「でもそれ、想像召喚でしょ?」
「ほう……想像召喚を知っているのか」
「そりゃそうよ、それにしてもそんなのに戦わせて大丈夫なの?ひ弱そうなおじさんだけど」
「あぁ、大丈夫さ、だってコイツらは変わった戦い方をするんだ。いけ!オールドマン!」
そう言うとオールドマンは地面に潜り込んでいく。
「……っ!めんどくさいわね…『サーチ』……!」
「ウグァァァ!」
「もうこんなところに…!それに私の『サーチ』に引っかからなかった!どういう事!?」
「だから言っただろう?コイツらは変わった戦い方をするんだ」
「でも動きは遅い!『ファイアーストーム!』ハハハハ!コレでアンタごとチリに化してやる!コレでアンタは……!」
『ファイアーストーム』が出現する。が、たった3秒程で消えていく。
「……っ!」
「ざ〜んね〜んで〜した!コイツは触れたものを腐食させる能力を持っているんだ。どうだ?驚いたか?」
「そんな……そんな事は……!」
「絶望している暇はたさないぞ?インラル」
オールドマンがインラルにしがみつき、腐食した地面の中に引きずり込む。
「や……やめろ!やめてくれ!やめてくれー!うぁぁぁぁ!嫌だァァァ!死にたくない!まだ…まだ死にたくない!嫌だァァァァァァ!……」
魔女の声が地面の中に消えていく。
「運が悪かったな、そいつは若い生き物の絶望の叫び声が大好きなんだ……ま、もう聞こえてないだろうがな」
そして俺はまた歩き出す。魔王になってアイツらに復讐するために!
悪魔の魔女のインラルがオールドマンに連れていかれたところでその場を離れ、大きな扉の前に座る。
「次の相手は剣士の魔将のフィンか。剣士……アタッカー……自己戦力にすれば役にたつだろう」
『キギィ……』
両手で扉を押し開けて中に入る。
「お?殺られたのか、インラルのババァ……こんな雑魚に殺られるだなんて、やっぱアイツも大したこと無かったんだな」
「絶望の叫び声を上げて消えてったよ聞こえなかったのか?」
「聞こえなかったな、あの扉は空気すら通さないからな」
「へぇ……」
全く動揺しない。むしろ笑ってやがる……流石は幹部だな。ま、俺が勝つけど?
『SCP-049、ペスト医師』
俺が想像した通りのペスト医師が魔法陣の中心から出てくる。
「スゥゥ……シュゥゥゥゥ…………」
「あ?なんだァ?そいつァ?」
「ペスト医師って言うんだ、こいつ結構強いんだぜ?」
「へぇー、こんな細い腕っぷしでよく言えるな」
「戦ってみればわかるって……いけ、ペスト医師アイツを倒せ、余裕があれば実験したっていいぞ」
「は!馬鹿にしおって!」
するとフィンは剣を構え、すごい勢いで突進してくるがペスト医師は余裕でかわす。
『ソレでも剣士か?』
「な!?召喚獣が喋った!?」
『そりゃそうだ。獣では無いからな』
「くっ!」
驚いた。まさか召喚したやつが喋れるとは
《凄いですね。》
「あぁ、そりゃそうだ。なんたってペスト医師はな……」
《いいえ。あなたの想像力です。喋れるようにするほど凄い想像力をお持ちとは思いもしませんでしたよ。》
「あ、その事ですか。」
それはいいとして、ペスト医師も結構つまらなそうにしてきている。大丈夫だろうか?あの剣士
『はァ……』
「な、何のため息だ?それは」
『つまらない。実につまらない。異世界の剣士、それも魔物の魔将だから楽しみにしていたのにな。たったこれだけの力しか持っていないとは……実につまらない。』
「な!?なんだと!?」
『まぁ、魔物の体を実験できるのだ。そこは我慢しておこう。』
「舐めるなァァァ!!……」
フィンが大きく振りかぶったところでペスト医師が喉にひと突き。フィンはその場で倒れ込んだ。
『フン。弱ったらしい体。どうせならゾンビにして配下に加えましょう。』
すると両手で巨体のフィンの口を強く掴む。するとフィンは掴まれたままバタバタと暴れだし、苦しみ、もがき始めた。段々とフィンの顔が青緑色に染まっていく。
「ヴ、ヴァァァァ……」
『あなたは私の配下です。私に従いなさい。』
「えっぐ……コレがペスト医師か……」
「(消えろ)」
すると俺が召喚したペスト医師とペスト医師が作ったゾンビフィンは砂になって消えた。その途端、体がいっきに軽くなるのが分かった。
「すっご、ナニコレ?」
《どうやらアベルの方でも強敵を倒したようです。いわゆる……裏ボスですね。》
「なるほど……あそこにもそんなやつがいたのか。ま、あのアベルの事だ。瞬殺だったに違いない。」
...
『オソい……ナニやってイル?主人ハ?』