私は最弱召喚者
いつも通りだった。いつも通り、何気なくすごしていた。俺はいつも通り変わり者で、オタクのままだった。だけど、この2年A組全員が、これから先、いつもとは違う人生を送る事になるだなんて誰も思わなかっただろう。
…………………………………………………
目の前が真っ白に光り出すと、途端にしりが地面に叩きつけられる。
「こ、ここは……?」
「よくぞ参られました!勇者御一行!」
「は?」
なんだ?映画の撮影か?急にそんな事言われても困るのはこっちだ。
「おいなんだよ!!急にこんな所に連れて来やがって!テレビかなんかだったら今すぐ止めろやゴラァ!」
俺のクラスにいるヤンキーが大声で反抗する
「や…やめろって、ホントにここの国王陛下だったらどうすんだよ…」
「あァ!?あんな派手な国王がどこにいんだよ!」
「それは…」
「突然呼び出して申し訳ない、ここはヴィーラントという世界だ。つまり、ここはお前たちで言う異世界だ。そして、世が収めるこの国はライアント連合国だ。」
異世界?ヴィーラント?ライアント連合国?なんじゃそりゃ?嘘もほどほどにして欲しい。
「まずはステータス、と唱えて頂けませんか?」
国王の横にいた老人が出て来て言う。
「ステータス!」
色んなところからそう聞こえる。俺には見えないが、そう唱えたヤツらはキャッキャと笑い、興奮している。どうやら自分にしか見えない仕組みらしい。だが、俺はあんな風に大声で言うのは少し恥ずかしい…
「ス、ステータス」
『ヴヴン…』
低い音をたてて、薄い水色をした板が現れる。
「おぉ、すげぇ…」
名前は桐谷 優飛と表示されていて、職業は召喚者、スキルは召喚Lv.99、対話に体力上昇、身体能力上昇、限界突破、か。称号に転移者と勇者がある、体力上昇と身体能力上昇と限界突破のスキルはこの称号のおかげだろう。
「召喚者、か…」
「お前召喚者か、ちょっと意外だな」
「どういう意味だよ」
コイツ誰だっけ?周りの事あんまり気にした事ないからな。なんてったって好きな事にしか人生を注いでないからな。
「ちなみに俺の職業は冒険者だったぜ!」
「ほう…!冒険者か!中々いいではないか!」
「そんなにいいんですか?」
「冒険者は上達力が高いんだ!だからすぐにLv.も上がるし、能力値も高いから戦いでは前線に置かれるほど有力なんだ!ちなみに……えっと……」
「あぁ、優飛です。」
「では優飛、職業は何だったんだ?」
「召喚者です。」
何も隠さず言った。召喚者についての情報を得るため…というのもあるが、もう少しこの世界について知りたいという事もあった。
「ほう…召喚者か。MPはいくつだ?」
「MP…ステータス」
ステータスのMPと書いてあるところの横の文字を読んでみる。
「えっと……100です。」
「は?」
「100……です。」
「100??ハッハッハ!召喚者のクセにMP100だと…!?」
「なんですか?どうかしましたか?」
国王の横に座っていた女王と思しき人物が近ずいてくる
「あ…いや…」
「す…すいません。ですがこの男、召喚者という職業にも関わらず、MPが100しかないと言うのです。私はこれに呆れてしまったまでです」
「MPが…100しかない!?召喚者にも関わらず!?勇者として召喚された人間がか!?」
目を丸くして言う。その顔には、怒りの表情も混ざっていた。
「兵よ!!コイツを捕らえなさい!」
「はっ!」
立派な槍を突き立てた兵が俺を捕らえる。
「え…なんで!?なんで俺が捕えられなきゃいけないんだよ!」
「あなた達を召喚するために、いったいどのような犠牲があったか…あなた達は知る由もないでしょう」
「は…?犠牲??」
「この者を廃棄処分とします!」
「いや、なんでだよ!!呼んだのはてめぇらだろうが!!」
「行き先は…魔界へ」
「なんで…なんで俺がこんな目に合わなきゃ行けないんだよ……!」
俺は魔界に飛ばされてしまった。急に呼ばれたと思ったら、いきなり出ていけだと?しかも罰として?意味が分からない……!
「クソ!」
紫色の硬い土に拳を突き立てる。
「クソ!クソ、クソ、クソ!!」
手に血が滲む。悔しい、ただそれだけだった。あんなクソみたいな奴らに俺は人生を奪われたんだ。しかも身勝手な理由で
「絶対に…絶対に復讐する…!俺の人生を砕け散らせた罰を…!アイツらに…!」
《ピコン!》
跳ねるような音と共にプレートが開く。
《シナリオ、反逆勇者をクリアしました!》
「反逆…勇者?」
シナリオ……クリア?クリアしたら何かあるのか?
《シナリオ、反逆勇者をクリアしたため、称号、『勇者の怒り』、『反逆者』、『全知全能』を得ました。》
「称号?勇者の怒りと反逆者は分かるけどなんで全知全能までついてくる……!」
『全知全能』という単語を唱えた途端、頭に何かが破裂しそうな程に流れ込んでくる。
「う……うあぁぁぁぁぁ!!!」
そのまま俺は倒れ込んでしまった。倒れ込んでもなお、何かが流れ込んでくる。痛みは引きそうにない。あぁ、目が…閉じ…る……
「……………う、うぅぅぅ……」
目が覚める。頭の痛みは無くなっていた。それに何だろう……?視界が広い気がする。それに倒れる前よりも頭が軽い…と言うよりも、体全体が軽い。いったい俺の体に何が起こったんだ?
「ステータス」
唱えてみると、『勇者の怒り、全知全能のインストールが完了しました!』という字がデカデカと出てきた。
「な、何だこれ?インストール?」
しばらくするとそれは消えた。いったいなんだったんだ?そして俺はプレートを見るた。そして驚くことに全てのステータスが5000を超えていた。しかし、相変わらずMPは100のままだった。
「すげぇ…でもどうせならMPも上げて欲しかったな」
《それはなりません》
どこかから声が聞こえてくる。
「え…だ、誰!?」
《コレは全知全能のスキルをインストールしたため、得た恩恵です。》
「な、なるほど……?」
《私は貴方様のどんな質問にもお答え致します。》
「じゃ、じゃぁ……」
俺はたくさんのことを質問した。この世界の事、この世界の常識、この世界がどのような事態に陥っているのか、などなど…そしてその中には驚きの事もあった。
「え!?この世界の名前ってヴィーラントじゃないの!?……ってまぁ、あの国王が言った事だけど…」
《当たり前じゃないですか、自分の世界の名前を知っている人なんて、大賢者スキルか、この私の様なスキルを持っていなければ知る事はできませんよ。ちなみにこの世界の名前はフィローガです。》
「へぇ…それよりも、なんで俺はMP100でなきゃいけないの??」
それは俺が最も聞きたかった事の1つだ。なんで100でなきゃいけないのか。こんな絶望を味わってもなぜこうでなければならないのか。それが知りたかったんだ。
《それは、貴方様の想像力が尋常ではないほど高いからです。》
「そ……想像力??なんで想像力が高いと100なんだ??」
《それは、召喚者特有のスキル、召喚の方法、仕方によります。》
「召喚の方法?召喚の方法は1つじゃないのか?」
《えぇ、召喚方法は2つあります。1つは、この世界にいる魔物を召喚するという方法。コレは、レベルが高いければ高いほど強い魔物を召喚できます。ですが、強くなるほどMP消費量が多いです。》
「そうか……だから俺をゴミ扱いしたのか」
《そして2つ目、コレが貴方様のMPが100という理由になります。それは、想像した魔物を召喚できるというものです。コレは、想像が鮮明であれば鮮明であるほど強くなります。そしてMP消費量は比較的少なく、たった1でいいのです。しかも、倒したとしても得られる経験値はたったの1。なので、倒した者がさらに強くなるということも無い。そしてあなたが最も召喚できる魔物の数は100体。そしてまた回復すればもっと出せる、というものです。》
「こりゃもはやチートだな」
いや、待てよ……?想像?もしかしたらあれが使えるかも……
《どうしましたか?》
「いや?なんでもないよ」
《そうは見えませんが?顔が笑っていますよ。》
そうだ。俺は変わり者のオタクだ。コレを知っている者はなかなかいないだろう。俺のいた世界の最強で最恐のモンスター、コレは1つの国や星だけではなく、複数の世界を破壊するほどの力を持つんだ。
そして俺は、この世界の新魔王となり、アイツらに復讐するんだ!